仮想通貨(暗号資産)の相続税|評価方法や計算例、売却時の税率110%についても解説

更新日:

ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)にも相続税は課税されます。

しかし、仮想通貨の相続税評価額の考え方は不動産や株式とは異なっています。また、相続した仮想通貨を売却して利益を得ると所得税も発生しますが、相続税と所得税を合わせると税率が110%になるケースもあり、「おかしい」「納得できない」と考えている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、仮想通貨の相続税評価額の計算方法や、相続した仮想通貨を売却するときの税金、仮想通貨を相続するときの注意点について解説していきます。

※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

仮想通貨の相続税評価額の計算方法

仮想通貨の相続税評価額は、以下のように計算されます。

仮想通貨の相続税評価額

相続税評価額 = 相続開始日における取引所の取引価格 × 保有数量

仮想通貨(暗号資産)は相続税法22条により相続開始時の「時価」で評価することが定められています。

ここでいう「時価」とは、原則として被相続人(亡くなった方)が口座を持っていた取引所が公表する相続開始時点の価格を基準とします。

不動産のように路線価や固定資産税評価額を使うわけではなく、市場価格がそのまま評価額に反映される点が大きな特徴です。

ただし、「相続開始日における取引所の取引価格」をどう確認・判断すべきかは、取引所において安定した価格が形成されている場合価格が一義的に定まらない場合(自己管理ウォレットやDEXなど)で異なります。

それぞれのケースについて、見ていきましょう。

【補足】

自己管理ウォレットで保有している場合でも、BTCやETHなど活発な市場が存在する暗号資産は、原則として暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格を基準に評価します。

一方、DEXでのみ取引される流動性の低いトークンなど、客観的な相場が明確でない暗号資産は、売買実例価額や精通者意見価格などを参酌して個別に評価します。

関連記事

相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い

(1)取引所で安定した価格が形成されている場合

取引所で安定した価格が形成されている場合は、以下のいずれかの方法で「相続開始日における取引所の取引価格」を確認し、仮想通貨の相続税評価額を判断します。

  • 相続開始日の残高証明書の金額をそのまま相続税評価額とする
  • 相続開始日の売却価格をそのまま相続税評価額とする

なお、ここでいう取引所は原則として被相続人(亡くなった方)が実際に利用していた国内取引所を指します。

複数の取引所に同じ仮想通貨を持っている場合には、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者の中から選択することが可能です。

相続開始日の残高証明書の金額をそのまま相続税評価額とする

取引所に相続開始日の残高証明書を発行してもらいます。残高証明書には相続開始日の残高と、日本円への換算レートが記載されており、それをそのまま相続税評価額とする方法です。

相続開始日の売却価格をそのまま相続税評価額とする

取引所が売却価格を公表している場合は、その売却価格をそのまま相続税評価額とすることができます。

この方法では、残高証明書を取得しなくても仮想通貨の評価ができます。

ポイント

暗号資産は24時間取引されており「終値」が一意に定まりにくい性質があります。

取引所によって価格の公表方法(最終取引価格・一定時刻の価格など)が異なるため、取引所の公表ページや証明書類で根拠を確認・記録しておくことが重要です。

関連記事

相続税申告では残高証明書も準備|必要書類や通帳ではダメな理由

(2)価格が一義的に定まらない場合

取引価格が一義的に定まらない仮想通貨の場合は、その通貨の内容や性質、取引実態を考慮し個別に評価が行われます。

例えば、類似する売買の実例に基づいた価額(売買実例価額)や、専門家による鑑定価格(精通者意見価格)を用いて評価する方法が挙げられます。

【計算例】ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)の相続税評価額

実際にどのように評価額を計算するのか、ビットコインとイーサリアムを例に見てみましょう。

ビットコイン(BTC)の評価例

項目内容
相続開始日のBTC価格1BTC = 1,000万円(仮定)
保有数量0.5BTC
相続税評価額1,000万円 × 0.5 = 500万円

イーサリアム(ETH)の評価例

項目
相続開始日のETH価格1ETH = 40万円(仮定)
保有数量10ETH
相続税評価額40万円 × 10 = 400万円

このように計算自体はシンプルですが、相続開始日の価格を正確に記録・証明することが実務上の重要なポイントです。取引所の価格履歴を取得し、証拠として保管しておきましょう。

仮想通貨でも相続税の基礎控除や特例は使える?

仮想通貨を相続する場合、他の相続財産と合わせた遺産総額に対して以下の基礎控除が適用されます。

相続税の基礎控除

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

  • 相続放棄した法定相続人も、「法定相続人の数」に含めます。
  • 養子がいる場合、実子がいるなら1人まで、いないなら2人まで「法定相続人の数」にカウントできます。

仮想通貨も含めた遺産総額がこの基礎控除額を下回る場合は、相続税はかかりません。

相続税には基礎控除のほかにも、仮想通貨を含めた相続税の計算では、配偶者控除(配偶者の税額軽減)などの特例を適用できます。

  • 配偶者の税額軽減
    配偶者が相続する財産のうち、「1億6,000万円」か「法定相続分の金額」のうち大きい方までは相続税がかからない
  • 未成年者控除
    未成年者の相続税額から、「10万円×(18歳-相続開始時の年齢)」を控除できる
    ※余った控除枠は扶養義務者に適用可能
  • 障害者控除
    障害者の相続税額から、「10万円または20万円×(85歳-相続開始時の年齢)」を控除できる
    ※余った控除枠は扶養義務者に適用可能

関連記事

相続税の控除・特例一覧表|控除の金額や対象・要件をわかりやすく解説

相続した仮想通貨を売却すると税率110%?

仮想通貨を相続したうえで売却をすると、相続税と所得税がかかります。仮想通貨の価格によっては相続税が55%、所得税・住民税が合わせて55%がかかり、合計110%となってしまうケースもあり、そんなにかかるのはおかしいと感じる人も多いようです。

ここでは、相続した仮想通貨を売却した時に税金が二重でかかる仕組みと、税率が合わせて110%になるケース、節税対策について解説していきます。

仮想通貨を売却すると相続税と所得税の二重課税

仮想通貨を相続した場合、相続税がかかります。

そしてその後に仮想通貨を売却した場合、売却によって得た利益は雑所得として所得税の対象となります。

例えば不動産や株式の売却であれば、こうした二重課税の負担を軽減するため、売却によって得た利益から取得費だけでなく相続税の一部も控除できる「取得費加算の特例」が適用されることがあります。

しかし、取得費加算の特例は譲渡所得に対して適用されるものであり、仮想通貨を売却した時の雑所得には適用できません。

よって、相続した仮想通貨を売却すると、相続税と所得税の二重課税が発生すると言われるのです。

例えば

被相続人が200万円で取得したビットコインの死亡時評価額が1,500万円に値上がりしていたケースで考えてみましょう。

  1. 相続税
    「1,500万円」に対して相続税がかかります。
  2. 所得税:
    その後、2,000万円で売却した場合、所得税(雑所得)の計算では、被相続人が買った時の価格(200万円)を取得費として引き継ぎます。
    つまり、「2,000万円 - 200万円 = 1,800万円」が課税対象となります。

上記のように、「相続時に1,500万円に対して相続税を払ったのに、売却時にもその1,500万円分を含めた利益に対して所得税を払う」という、実質的な二重課税の状態が発生します。

二重課税で仮想通貨の税率が110%になるケース

相続した仮想通貨の売却で税率が110%(相続税55%、所得税・住民税55%)になるのは、以下の両方を満たす場合です。

税率110%になるケース

  • 仮想通貨を含めた課税遺産総額:法定相続分に応ずる取得金額が6億円超
  • 仮想通貨売却による雑所得*と、その他の所得(総合課税のもの)を合わせた金額:4,000万円以上
    *売却による利益から取得費を引いたもの

相続税の最高税率55%が適用されるのは、法定相続分に応ずる取得金額(課税遺産総額を法定相続分で按分した金額)が6億円を超える場合です。

一方で所得税は、「仮想通貨売却による雑所得を含めた、総合課税の所得の合計」が4,000万円以上の場合に最大となり、45%です。さらに10%の住民税がかかるため、所得税+住民税で55%となるのです。

ただし、課税遺産額や所得全体に相続税55%、所得税・住民税55%がかかるわけではなく、相続税なら6億円を超える部分、所得税なら4,000万円以上の部分が対象になります。

今後、仮想通貨売却の所得税は一律約20%になる見込み

仮想通貨を売却した時の雑所得は総合課税であり、これまではほかの総合課税の所得と合わせた金額をもとに、累進課税で税率が決まっていました。

しかし、令和8年度税制改正大綱により、一部の仮想通貨を売却したことによる所得は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の申告分離課税となる方針が示されました。

これにより、相続税・所得税を合わせて税率が110%になる問題が緩和されると考えられます。

明確な開始時期はまだ確定していないため、最新情報のチェックが重要です。

税率110%はおかしい!節税対策は?

相続税と所得税を合わせて税率が110%になりそうな場合の節税対策としては、以下が考えられます。

  • 生前贈与をする
  • 相続放棄する

生前贈与する

暦年課税で生前贈与をすると、毎年110万円の基礎控除までは贈与税がかかりません。これを活用し、生前に少しずつ財産を移しておけば、相続時の仮想通貨が少なくなり、税率が下がる可能性があります。

ただし、贈与した相手が相続発生時に相続や遺贈でその他の財産を受け取った場合、相続開始前3~7年の贈与は相続税の対象となる点に注意しましょう(生前贈与加算)。

生前贈与加算の対象期間

被相続人の死亡日遡る期間
〜2026年12月31日死亡日前3年間
2027年1月〜2030年12月2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与
2031年1月1日〜死亡日前7年間

※延長された4年間(亡くなる3〜7年前)の贈与については、その4年間に行われた贈与額の合計から100万円を差し引いた残額のみが相続財産に加算されます。

生前贈与には相続時精算課税という方法もあります。
この場合、贈与時には年間110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除までは贈与税はかかりませんが、相続発生時には、贈与した財産が相続税の対象になります。

ただし、相続税は贈与時点での価格で計算されるため、将来的に値上がりする仮想通貨なら、相続した場合の相続税より税額が抑えられます。

関連記事

暦年贈与と相続時精算課税は併用できない?違い・どっちが得かを解説

相続放棄

相続人が相続放棄をすれば、仮想通貨の相続による税金を負担せずに済みます。

相続放棄については、仮想通貨を受け取れないため売却もできないこと、その他の相続財産も相続できなくなることに注意しましょう。

ただし、生命保険金などのみなし相続財産や遺贈による財産の受け取りは可能で、この場合は受け取った分について相続税がかかります。

また、被相続人の子が死亡などで法定相続人になれない場合、その子(被相続人から見た孫)が代襲相続で代わりに相続人になれることがありますが、相続放棄では代襲相続は発生しません。

相続放棄をしたい場合は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出しましょう。

関連記事

相続放棄したら相続税は払わなくていい?ほかの相続人への影響も解説

仮想通貨を相続するときの注意点

パスワードが分からなくても相続税はかかる

仮想通貨のパスワードが分からない場合、仮想通貨のアカウントにアクセスできず、実質的に資産を動かせないケースがあります。

ただし、パスワードが分からない場合でも、状況によって相続税の扱いは異なります。

まず、国内の暗号資産交換業者(取引所)の口座で保有している場合は、IDやパスワードが不明でも、本人確認書類などを提出することで、残高の確認や相続手続きを進められる可能性があります。この場合、原則として相続財産として申告が必要です。

一方で、自己管理ウォレットで保有している場合は、秘密鍵やシードフレーズが失われていると、資産の移転ができず、実質的に利用できない状態になることがあります。このようなケースでは、評価や申告の取り扱いについて個別の判断が必要となります。

いずれにしても、IDやパスワードが分からないことを理由に申告を行わないと、延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。

また、被相続人が複数の仮想通貨や取引所を利用していた場合、特定の資産だけを選んで相続放棄することはできません。

国内取引所であれば、相続手続きに対応しているケースが多いため、早めにサポート窓口へ問い合わせることが重要です。海外の取引所を利用していた場合には、各取引所ごとに手続きが異なるため、利用が判明した時点で速やかに確認を行いましょう。

関連記事

相続税の延滞税はいくら?税率・計算方法と無申告・過少申告加算税との違い

スマートフォンやパソコンはすぐに処分しない

被相続人が所持していた仮想通貨に関する情報は、スマートフォンやパソコン内にある可能性が高いです。そのため、スマートフォンの解約やアカウントの削除を行ってしまうと、相続に必要な情報が集められなくなってしまいます。

スマートフォンやパソコンの解約手続き、処分に関しては相続の手続きがすべて終了してからにしましょう。

相続が終了するまで仮想通貨の売買・出金などはしない

相続手続きが完了するまでの間に仮想通貨の売買・出金などを行ってしまうと、各取引所の利用規約(借名取引の禁止)に違反するリスクがあります。

また、民法上、相続財産の処分行為は単純承認とみなされる場合があり(民法921条)、相続放棄を検討している場合は特に注意が必要です。手続き完了まで取引は控えることを強くおすすめします。

相続開始後、遺産分割が終わるまでの暗号資産は、相続人間で権利関係が未確定の状態です。相続人の一人が勝手に売買・出金すると、他の相続人とのトラブルや、相続放棄を検討している場合の法定単純承認リスクが生じるため、手続き完了まで取引は控えましょう。

仮想通貨の相続税申告は税理士への相談がおすすめ

仮想通貨の相続税申告は、通常の相続と比べて専門的な判断が必要な場面が多くあります。特に以下のようなケースでは、税理士への相談を強くおすすめします。

  • 複数の取引所・銘柄・ウォレットにまたがって保有していた
  • 評価額が大きく、相続税が高額になりそう
  • 「おかしい」と感じるほど税負担が重く、節税策を検討したい
  • 故人が仮想通貨を保有していたことは知っているが、詳細がわからない

仮想通貨の相続税申告を得意とする税理士は、暗号資産の評価方法や税務調査への対応にも精通しています。「相続税に強い税理士」を選ぶことが、適切な申告と節税につながります。

関連記事

相続税に強い税理士の探し方とは?評判の良い税理士の見極め方7選

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

相続税に強い税理士を探す

エリアを選ぶ

選択項目:

なし

相談内容を選ぶ

こだわり条件を選ぶ

相続税に強い税理士を検索する