仮想通貨(暗号資産)に相続税はかかる?相続手続きと評価方法を解説

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仮想通貨の相続税

・仮想通貨には相続税がかかる?
・仮想通貨を相続するときの手順は?
・パスワードが分からないときはどうすれば良い?

相続税の計算やほかの相続人たちとの遺産分割など、相続が発生するとやらなければならないことがたくさんあります。

その中でも、近年注目されるようになり、まだ情報が少ない「仮想通貨の相続」に頭を悩ませている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、仮想通貨を相続する際に知っておきたいことを網羅的に解説していきます。

なお、仮想通貨は、2020年に金融庁により「暗号資産」という名称に変更されましたが、この記事では一般的に広く使われている「仮想通貨」と表記していきます。

仮想通貨にも相続税がかかる

仮想通貨も相続税がかかる対象として扱われる

被相続人(亡くなった方)が所持していた、ビットコインなどの仮想通貨には財産的な価値があるため、相続の対象となります。また、仮想通貨は相続税の課税対象となる財産なので、相続をすると、相続税が課税されます。

相続の方法としては、基本的に、代表相続人の銀行口座に日本円に換金されて振り込まれるか、仮想通貨のまま代表相続人の口座に移されることとなります。

相続税を申告しないとどうなる?

そもそも相続税の申告をする必要があるかどうかは、仮想通貨を含めた相続財産の合計額が、基礎控除額を超えるかどうかで判断されます。相続財産の合計額が基礎控除額を超えた場合には、相続税の申告が必要となります。

相続税の申告が必要なのにもかかわらず、相続税の申告期限内に正しい申告・納付をしなかった場合、延滞税というペナルティが課されます。加えて、無申告なのか、本来納めるべき金額よりも少なく申告していたのかなど、申告の状況によってさらに加算税が課されることとなります。

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仮想通貨を相続するときの手順

仮想通貨の相続手続きは、被相続人が利用していたそれぞれの取引所と代表相続人との間で行われることとなります。

(1)被相続人が生前利用していた取引所を探す

まずは被相続人が生前利用していた仮想通貨交換業者(取引所)を探します。被相続人が利用していたスマートフォンに取引所のアプリが入っていないか、ブラウザやメールの受信履歴に取引所とのやり取りが残っていないか確認してみましょう。

また、被相続者が過去の確定申告書の中で、雑所得として仮想通貨の利益を申告していないか確認することも有効です。

加えて、取引所のIDやパスワードを残す手段として、エンディングノートを利用する方もいるので、もし被相続人がエンディングノートを作成していた場合には一度確認してみてください。

(2)被相続人が亡くなったことを取引所に連絡する

被相続人が利用していた取引所を見つけることができたら、被相続人が亡くなったことを連絡しましょう。連絡する際に必要な情報は、各取引所によって異なるため、取引所ごとの問い合わせフォームを確認してください。

被相続人が亡くなったことを連絡する際に、下記で解説する「仮想通貨の相続税評価額」の計算に用いる、①相続開始日の残高証明書、②相続開始日の日本円換算レート、③過去の取引履歴の三つの送付を依頼すると、相続手続きをスムーズに進めることができます。

なお、取引所には銀行のような窓口はほとんど存在しないため、郵送でのやりとりをすることになります。

(3)取引所から相続手続きに必要な書類の案内が来る

問い合わせフォームから取引所に連絡をすると、相続手続きに必要な書類を知らせてくれます。通知の方法はメールや電話など取引所によって異なるので、各取引所のホームページで確認してください。

なお、問い合わせフォームで相続人の本人確認が出来た段階で、被相続人の口座が凍結されます。ほかの相続人がうっかり引き出してしまう可能性を考えると、なるべく早く取引所に連絡をし、凍結してもらった方が良いでしょう。

(4)案内に従い相続手続きに必要な書類を送る

(3)で通知された案内に従い、必要書類を取引所に送ります。

なお、必要書類には相続届や被相続人・相続人の戸籍謄本などが含まれます。取引所によっては書類が返却されないこともあるため、ほかの相続手続きでも必要となる書類は多めに取得しておくようにしましょう。

(5)取引所から仮想通貨の払い戻しが行われる

書類のやり取りが適切に行われると、仮想通貨の払い戻しが行われます。

仮想通貨の払い戻し方法としては、代表相続人の銀行口座に日本円に換金されてから振り込まれるか、仮想通貨のまま代表相続人の口座に移されるか、という二通りがあります。

なお、仮想通貨のまま代表相続人の口座に移してほしい場合には、代表相続人がその取引所に新たな口座を開設する必要があります。

払い戻しが行われた時点で被相続人の口座は解約され、相続手続きが終了します。

この後に続く、相続税の申告方法などに関しては『相続税の申告手続きについて解説|自分で相続税申告できる?』をご覧ください。

仮想通貨の相続税評価額の計算方法

仮想通貨の相続税評価額は、「活発な市場が存在するか否か」によって計算方法が異なります。

「活発な市場が存在する」とは、仮想通貨の取引所や販売所で十分な数量と取引がされており、継続的に価格情報が提供されている状態のことをいいます。一般的に、日本国内の複数の取引所で取引が行われている場合には、「活発な市場が存在する」に当てはまると考えて問題ありません。

対して、ある一つの取引所でしか取引ができない場合や、仮想通貨が新規発行されたばかりである場合などは「活発な市場が存在しない」に当てはまります。

活発な市場が存在する仮想通貨の場合

まずは、活発な市場が存在する仮想通貨の相続税評価額の求め方です。活発な市場が存在する仮想通貨の相続税評価額の求め方は二つあります。一つずつ確認していきましょう。

①相続開始日の残高証明書の金額をそのまま相続税評価額とする方法

取引所に相続開始日の残高証明書を発行してもらいます。残高証明書には相続開始日の残高と、日本円への換算レートが記載されており、それをそのまま相続税評価額とする方法です。

②相続開始日の売却価格をそのまま相続税評価額とする方法

こちらは残高証明書を取得しなくても評価できる方法です。取引所が売却価格を公表している場合は、その売却価格をそのまま相続税評価額とすることができます。

なお、取引所によって同じ仮想通貨でも取引価格が異なります。そのため、複数の取引所に同じ仮想通貨を持っている場合には、取引価格が低い方を仮想通貨の相続税評価額とすることができます。

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相続税申告では残高証証明書も準備|必要書類や通帳ではダメな理由

活発な市場が存在しない仮想通貨の場合

活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、その仮想通貨の内容や性質、取引実態を考慮し個別に評価が行われます。

例えば、類似する売買の実例に基づいた価額(売買実例価額)や、専門家による鑑定価格(精通者意見価格)を用いて評価する方法が挙げられます。

仮想通貨の相続税評価額を下げることはできない

相続税評価額において、例えば土地を相続した場合、税理士や不動産鑑定士などの専門家に現地調査と評価額の再評価を依頼すると、評価額が下がる可能性があります。

しかし、仮想通貨の相続税評価額に関しては、相続発生後に相続税評価額を下げる方法がありません。

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仮想通貨を相続するときの注意点

スマートフォンやパソコンはすぐに処分しない

被相続人が所持していた仮想通貨に関する情報は、スマートフォンやパソコン内にある可能性が高いです。そのため、スマートフォンの解約やアカウントの削除を行ってしまうと、相続に必要な情報が集められなくなってしまいます。

スマートフォンやパソコンの解約手続き、処分に関しては相続の手続きがすべて終了してからにしましょう。

相続が終了するまで仮想通貨の売買・出金などはしない

仮想通貨の取引を、本人以外が行うことは原則として法令で禁止されています。すなわち、相続の手続きが終了するまでは仮想通貨の所有者は被相続人であるため、取引をすることで法令違反となってしまうおそれがあります。

また、遺産の分割が終わるまでは、遺産は相続人全員の共有物という扱いなため、勝手に取引をしてしまうとトラブルの種になってしまう可能性があります。

海外の取引所を利用していた場合はサポートセンターに連絡する

海外の取引所を利用していた場合には、各国、各取引所の定めた手続きの手順に従う必要があります。日本国内の取引所とは手続きの手順が違う可能性もあるので、利用が判明した時点で、早めに該当する取引所のサポートセンターに相談するようにしましょう。

仮想通貨の相続に関してよくある質問

パスワードがわからないときはどうすれば良い?

基本的に日本国内の取引所であれば、IDやパスワードがわからなくても、本人確認をはじめとする必要書類を送ることで、問題なく相続手続きを進めることができます。

なお、IDやパスワードがわからないことを理由に「相続財産として申告しないことは許されない」ため注意が必要です。

また、被相続人が複数の仮想通貨や取引所を利用していた場合に、パスワードが分からない仮想通貨のみを相続放棄することもできません。相続放棄とは「すべての遺産を相続する権利」を放棄することをいうので、一部の遺産のみを相続しない、という選択はできません。

コールドウォレットとは?

コールドウォレットとは、インターネットに接続されていない環境で、仮想通貨にアクセスする秘密鍵を管理するウォレットのことをいいます。コールドウォレットには専用デバイスに管理するハードウェアウォレットや、紙に記録して管理するペーパーウォレットがあります。

対して、取引所などを利用する場合など、インターネットに接続してオンライン上で管理することをホットウォレットといいます。

被相続人が生前コールドウォレットを利用していて、そのとき秘密鍵を保存していた専用デバイスや紙が見つからないと、「仮想通貨を引き出せない上に、相続税はかかる」という事態に陥ってしまいます。そのため、相続について考え始めたタイミングで、信頼できる家族にコールドウォレットの話を共有したり、現金化して生前贈与をしたりすることをおすすめします。

家族が仮想通貨の相続で困らないように、事前にできる対策は?

家族が仮想通貨の相続に困らないように、生前にできる対策として、まずはデジタル資産のリストアップが挙げられます。自分がいなくても家族が自分の資産を把握できるようにしておくと、相続時のトラブル発生率を抑えられます。

デジタル資産をリストアップする方法としては、財産目録をつけた遺言書を作成するのが効果的です。財産目録がついた遺言書は、リストアップの役割だけでなく、相続後の遺産分割の手助けにもなるためです。

ただし、所持しているデジタル資産の種類とともに、IDやパスワードも記録しておく場合には情報漏えいを防ぐために、安全に保管できる方法を選ぶ必要があります。

相続税の相続税の無料相談

相続税について不安があるときは税理士に相談

相続税の手続きでは聞き馴染みのない言葉が飛び交うなかで、慣れない作業を多くこなす必要があります。

加えて、利用したことのない仮想通貨の相続手続きまで日常の中でこなすのは、困難であるという方も多いでしょう。

自分で手続きを行うことで、本来支払う必要のない税金を余分に納めてしまったり、あとから申告漏れが発覚して追徴課税や延滞税がかかってしまうおそれもあります。

相続税に関して不安があるときは、ぜひ一度相続に強い税理士にお問い合わせください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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