ネットストーカーされている…相談先と対処法は?弁護士ができる法的サポート
SNSなどネット上でのしつこい嫌がらせは、ネットストーカー(サイバーストーカー・ネトスト)の被害といえます。
一方的なしつこい連絡、アカウントを変えても続く追跡、ひわいな画像の送り付けなど「まだ我慢できる」「スルーすればおさまる」と静観することは、実は得策とは言い切れません。
ネットストーカーは被害者意識が強かったり、プライドが高く、自分を正当化するという心理があるともいわれています。あなたが何もしなくても、勝手にあなたへの執着を強め、さらに強硬な手段をとってくるケースもあるのです。
執拗につきまとってくる人物は、写真1枚、投稿1つを注視して、あらさがしをしたり、個人情報や弱みを探ったりしてくる可能性があります。早急に対策をとる必要があるでしょう。
ネット上の嫌がらせによって身体に危険を感じたり、脅迫行為を受けたりしているなら、まずは警察に相談しましょう。一人で悩む必要はありません。
目次
どこからがネットストーカーといえる?
ネットストーカーという行為には様々なパターンがあります。そのためあなたが特定の誰かからしつこい嫌がらせを受けているなら、すでにネットストーカーの被害者になっている可能性があるでしょう。
ネットストーカーの典型例は元恋人や知人が豹変するケースがあります。あるいは顔見知りでもないネット上の匿名相手から一方的に執着され、ストーカー行為を受けるケースもあるのです。
ここからはより細かく、ネットストーカーの定義や言動例について解説します。
ネットストーカーの定義
ネットストーカーとは、インターネット上で特定の人物に執拗につきまとい、嫌がらせや脅迫を行う人や行為のことです。
ネットストーカーを規制する法令には「ストーカー規制法」があり、ストーカー行為および禁止命令に違反した場合を処罰対象としています。
ストーカー規制法では、次のような行為をつきまといとしています。
つきまといの例
- つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
- 監視していることを告げる
- 面会ならびに交際の要求
- 乱暴な言動
- 無言電話、執拗な電話・FAX・電子メール・SNS
- 汚物などの送り付け
- 相手の社会的評価を下げること(名誉毀損)
- 性的羞恥心の侵害(例:リベンジポルノ)
- GPS機能等により位置情報を取得する行為
- GPS機能などを取り付ける行為
ネットストーカーにあたる例
ネットストーカー行為ともいえる言動例をみていきましょう。
執拗なメッセージの送信および返信の要求
SNS上で執拗なコメント・いいねを残すケースがあります。自己顕示欲から、特定の人物を恐怖させたり、驚かせたりするようなメッセージが送信されてくる可能性もあるでしょう。
ときには普段使っているアカウント(本垢)ではなく複数のアカウントを作成して、執拗にコンタクトをとってくる可能性もあります。
SNSアカウントの監視
SNSのフォロー・フォロワーへの接触も考えられるでしょう。ターゲットとなった特定の人物のリアルな知り合いであるアカウントを探して、ターゲットの個人情報を入手しようとするケースもあります。
あるいはターゲットのなりすましアカウントを作成してフォロー・フォロワーへ接触をし、情報を抜き取ろうとするケースや攻撃的な言動をとるケースも考えられるでしょう。
個人情報や誹謗中傷をネット上に公開する
誹謗中傷を目的としたブログやウェブサイトを立ち上げ、ネット上に罵詈雑言を並べ立てるケースがあります。あるいは匿名掲示板で個人情報を晒すケースも有り得るでしょう。
相手の行動監視
相手の行動をGPS追跡アプリなどで監視したり、ネットの情報から特定した自宅や勤務先に押し掛けるケースもあるでしょう。
SNS上にアップロードされた写真に映り込んだ背景や服装などの周辺情報、もしくは投稿内容から、本人特定につながる情報を見抜く手口です。
【コラム】ネットストーカーは厳罰化の傾向
ネットストーカーの行為を規制する「ストーカー規制法」は平成12年に施行され、以後、様々な改正が加わりながらより厳しい処分へと変化しています。
施行当初はなかった「電子メールの連続送信」や「ブログ・SNSでのメッセージ連続送信」なども、悲惨な事件がきっかけとなって追加されてきました。
令和3年では位置情報を知らせる「GPS機能」を相手の車に取り付けたり、スマホにインストールしたアプリから位置情報を無断で取得したりといった行為も規制の対象となっています。
相手に追い詰められている立場の方は、なかなか正常な判断ができないものです。ネット上で執拗なつきまといを受けている場合、まずは一人で悩まずに警察・弁護士・その他窓口へ相談しましょう。
つづいて代表的な相談先を紹介します。
ネットストーカーの相談先
ネットストーカーの相談先として、警察、弁護士、そのほかの窓口を紹介します。主に、次のような目的ごとに相談窓口を検討しましょう。
ネットストーカーの相談先
- 警察:身体の危機や犯罪被害の実態を相談したい
- 弁護士:法的措置を検討したい、加害者対応を任せたい
- その他:辛い気持ち・悩みごとを聞いてほしい
警察|身に危険を感じたり、犯罪被害の実態を相談したいとき
ネットストーカーの言動により、ご自身に危険が迫っていると感じた場合はまず警察に相談してください。具体的には、最寄りの警察署、サイバー犯罪対策課、警察相談専用電話、性犯罪被害相談電話(警察)などです。
相談窓口 | 連絡先 |
---|---|
最寄りの警察署 | 都道府県警察本部リンク |
サイバー犯罪対策課 | サイバー犯罪相談窓口一覧 |
警察相談専用電話 | #9110 |
性犯罪被害相談電話 | #8103 |
警察相談窓口を利用する際には、ストーカー行為の始まった時期やストーカーの内容、相手に対して知っていることなどをしっかり話す必要があります。なぜなら、ネットストーカーの言動が「ストーカー規制法」の処罰対象となるかが重要だからです。
弁護士|法的措置を検討したい、加害者対応を任せたいとき
ネットストーカーの内容によっては、相手に対して法的責任を問ってもらう必要があります。そうした法的対処について、弁護士は専門家の立場でアドバイスとサポートが可能です。
弁護士への相談を検討している方は、まず「法律相談」を受けてみましょう。とくにネットストーカー被害の無料相談や電話相談をおこなう法律事務所を選んでおくと、費用負担が軽減されます。
弁護士による具体的なサポート例については、本記事内「弁護士がサポートできるネットストーカーへの法的対処」にてくわしく解説するので、続けてお読みください。
そのほかの相談窓口|つらい気持ちを聞いてほしいとき
ネットストーカーの言動によりつらい気持ちを抱えているとき、相談相手となってくれる窓口として、みんなの人権110番、女性の人権ホットラインを紹介します。
相談窓口 | 概要 |
---|---|
みんなの人権110番 | 差別や虐待、ハラスメントなどに関して、法務局職員や人権擁護委員が相談を聞いてくれる。 |
女性の人権110番 | 夫・パートナーからの暴力、職場いじめやセクハラ、ストーカーなど、法務局職員や人権擁護委員が相談を聞いてくれる。 |
関連記事『ネットトラブルや嫌がらせの相談窓口はどこ?無料相談や電話相談先を紹介』でも、ネットトラブル全般の無料相談・電話相談機関を紹介しているので参考にしてみてください。
弁護士がサポートできるネットストーカーへの法的対処
ネットストーカー被害の対処を弁護士に任せると、民事・刑事の両面で心強いサポートが受けられます。
民事面とはいわゆる慰謝料請求のことで、ネットストーカーの身元を特定して賠償請求をおこなっていくことになります。
刑事面とは刑事処分を求めることで、ネットストーカーの行為しだいでは警察の捜査により何らかの刑罰を受けさせることが可能です。弁護士に依頼すれば、警察への告訴や加害者対応を任せられます。
ネットストーカーの特定と慰謝料請求
匿名のネットストーカーであっても、しかるべき手段によって特定し、慰謝料請求が可能です。その方法は「発信者情報開示請求」という裁判所の手続きになります。
発信者情報開示請求とは、ネット上の投稿をもとにして、投稿者の住所・氏名・メールアドレスなどの個人情報の開示を求める手続きです。
ネットストーカーがどこのだれかを特定しないと損害賠償請求はできません。また、後述する警察への被害届提出や告訴においても、「相手を特定できていること」は非常に有力です。
発信者情報開示請求の流れや手続きについては関連記事をご覧ください。
警察への被害届提出や刑事告訴のサポート
ネットストーカーの行為を受けて、警察に被害届や刑事告訴も可能です。弁護士に依頼すれば、そうした警察署への同行、告訴時の告訴状作成、加害者対応など幅広く任せることができます。
基本的にはストーカー行為は非親告罪なので、刑事告訴せずとも、被害届を出せばよいとされています。
ただしストーカー行為の内容によっては刑事告訴も必要になるので、法的判断は弁護士に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。
被害届と告訴のちがい
犯罪の中には「親告罪」といって、被害者の告訴がないと裁判を始められないものがあります。
具体的には、名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪なので、ネットストーカーによるそれらの行為について刑事処分を求めるときは告訴が必要です。
刑事告訴について知りたい方は、関連記事『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』も参考にしてください。
ネットストーカーへの刑事罰は?
ネットストーカーについては、ストーカー規制法の罰則の対象となる可能性があります。ネットストーカーへの刑罰は一年以下の懲役または百万円以下の罰金です。
あるいは禁止命令に違反した場合やGPSを利用したストーカー行為のように、より悪質と判断された場合には二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金となります。
名誉毀損罪や侮辱罪については関連記事の解説をお読みください。
ストーカー対策へのアドバイス
ネットストーカーは「被害者意識」を持っていたり、強い執着心を持っていたりするので、一つひとつの対応を慎重に検討しなくてはなりません。
- しつこいレスやDM、メールなどにどう対処するべきか
- 相手の行為が犯罪になりうるのか
- ネット上に誹謗中傷を書かれたことへの対処法はあるのか
とくにインターネットトラブルにくわしい弁護士であれば、ネットストーカーへの対処法にもくわしいです。相手の特性に合わせた対応策を考えていきましょう。
下記バナーからは弁護士選びのポイントをまとめた解説記事をご覧いただけます。弁護士選びの参考にしてください。
ネットストーカーの被害に関するよくある質問
ネットストーカーの被害に関してよくある質問にお答えします。
ネットストーカーとして訴えるべきか分からないときは?
あなたが受けている嫌がらせがネットストーカーといえるのかどうか、まずは弁護士に相談してみましょう。
被害を受けている立場で客観的な判断は難しいものです。「この程度、誰にでもあるかもしれない」と静観することが、かえって相手をエスカレートさせる可能性だってあります。
とくに次のようなケースではストーカー規制法に該当しうる悪質な行為であるでしょう。
- ネット上に個人情報を晒された
- 「犯罪者」「不貞行為」など、あなたの評判を下げることを投稿された(真偽は関係なし)
- やめてほしいと伝えても、DMやメールがしつこく送られてくる
- 身体に危害を加える予告や金銭の要求などの脅迫行為を受けている
まずは弁護士に相談をして対処法を考えていきましょう。一般的な対応方法については以下の関連記事も参考にしてください。
元恋人から性的な画像を拡散されそうな時は?
元恋人の行為はストーカー行為にあたる可能性があり、いわゆる「リベンジポルノ」と呼ばれるものに該当する可能性があります。
相手の行為は犯罪にあたる可能性が高いです。当時は同意して撮影した写真だからと気後れしたり、自分を責めたりする必要はありません。
脅迫や危害を加える旨の予告を受けている場合はもちろん、そうした画像拡散をほのめかされているときには、早急に警察に相談してください。相談窓口を探したい方は以下の関連記事も参考になります。
ネットストーカーが作ったなりすましアカウントは削除できる?
なりすましアカウントは削除できる可能性があります。
あなたになりすまして友人に接触して、個人情報を得ようとしたり、根も葉もない嘘を言ってあなたの評判を下げてくる可能性があるでしょう。
まずはそのアカウントがなりすましであることを周囲に伝えたうえで、削除申請、なりすまし犯の特定などの行動を検討してください。
ネットストーカーの被害はしかるべき相談窓口に!
インターネットは若い方からお年寄りまで生活の一部になっています。そのため、インターネット上のトラブルに巻き込まれるリスクは誰にでもあるのです。
しつこいつきまといに悩んでいる方は、その相手に決して応じてはいけません。また静観しておけば大丈夫と放置することがかえって相手をエスカレートさせる可能性だってあります。
また、ネットストーカーが誰なのか分からないといった恐怖もおありでしょう。そのため、周囲の友人ですら警戒してしまうという方もおられます。警察や弁護士といったしかるべき相談窓口を頼るようにしてください。
ネットストーカーへの対応まとめ
- 危害を加えることをほのめかしたり、金品を要求したり、何らかの脅迫を受けている場合は警察に相談してください。
- 相手に刑事処分を負わせたい、しかるべき損害賠償請求をおこないたいなどの法的相談は弁護士を頼ってください。無料相談をしている法律事務所もあります。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了