熟年離婚のメリット・デメリット|後悔しないためのポイントは?
一般的に、20年以上結婚していた夫婦の離婚を熟年離婚といいます。
長年の結婚生活で我慢を重ねてきた方にとって、離婚して自由になれるのは大きなメリットです。
一方で、熟年離婚には見過ごせないリスクもあり、熟年離婚したことを後悔する人も少なくありません。
この記事では、熟年離婚を考えている女性に向けて、熟年離婚のメリットやデメリット、熟年離婚で後悔しないための準備について解説します。
熟年離婚にはどんな特徴がある?
熟年離婚とは?
一般的に、20年以上連れ添った夫婦の離婚を熟年離婚といいます。
令和4年の調査では、離婚した夫婦の約20%が20年以上の結婚生活の末に離婚しており、熟年離婚は珍しいことではないということが分かります。
熟年夫婦に特有の離婚理由・きっかけ
婚姻年数の短い夫婦と比べると、熟年夫婦には特有の離婚理由や離婚のきっかけがあるようです。
熟年夫婦の離婚理由
- 定年退職して長時間家にいるようになった
- 子どもが独立した
- 長年の我慢が積み重なって離婚を決意した
熟年離婚の特徴
熟年離婚には、このような特徴があります。
熟年離婚の特徴
- 子どもが成人しているため親権争いが起きにくい
- 財産分与の額が大きい傾向にある
- 年金分割が重要になる
- 離婚後の生活が苦しくなるケースが多い
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に分け合うことです。
年金分割とは、婚姻中に納めた厚生年金保険料を分け合い、受け取る年金の額を公平にすることです。
財産分与や年金分割の金額は、婚姻年数が長くなるほど大きくなるのが通常です。そのため熟年離婚は、財産や年金を渡す側(多くの場合は夫)にとっては金銭的なデメリットが大きく、受け取る側(多くの場合妻)にとってはメリットが大きい傾向にあるでしょう。
熟年離婚5つのメリット
1.長年の我慢・ストレスから解放される
夫からのDVやモラハラなど、様々なストレスに耐えてきた方は多いでしょう。長年の我慢やストレスから解放されるのは、熟年離婚の最大のメリットといえます。
夫と喧嘩することがなく、罵られたり無視されたりすることもない生活は、何物にも代えがたいと感じるでしょう。
2.時間を自由に使えるようになる
離婚後は夫の分の家事をしなくてよくなりますし、夫に生活リズムを合わせる必要もなくなるため、自由に時間を使うことができます。
空いた時間を自分の趣味や友人との交流に使ったり、好きなように仕事をしたりと、自分らしい生き方ができるでしょう。
3.自立した生活を送れる
今まで夫の収入に頼り、夫に合わせて生活してきたという女性にとっては、自分のことを自分で決められるというのは大きな喜びです。
「夫のお金で生活させてもらっているから・・・」と、引け目を感じている専業主婦の方も少なくないのではないでしょうか。
離婚後は今よりも生活が楽ではなくなるかもしれませんが、お金の使い方を自分で決められる、自分の力で生活できるという充実感が手に入ります。
4.夫や義両親の介護から解放される
離婚すれば、夫や義両親の介護を免れることができます。
この先、自分の親だけでなく、夫やその親の面倒まで見るのかと不安に感じている方も多いでしょう。
離婚をすることで、そのような負担から解放され、自分自身の老後を安心して過ごすことができます。
5.夫の親族との関係を断ち切れる
嫁姑問題や義理の兄弟姉妹との不仲など、夫の親族との関係が原因で結婚生活に苦しんでいる方は少なくありません。離婚すれば、夫の親族と関わる必要はなくなります。
熟年離婚5つのデメリット・リスク
1.経済的に苦しくなる
熟年離婚をした女性は、経済的に苦境に立たされるリスクが非常に高いため、注意が必要です。
特に、離婚前は専業主婦だった方や、パート・アルバイトで働いていた方にとっては、すぐに十分な収入を得て経済的に自立するのは簡単ではありません。
また、自分の方が夫より収入や財産が多かった場合は、財産分与で財産が減ったり、年金分割によってもらえる年金が少なくなってしまうというデメリットがあります。
経済的なリスクへの備えについては、この記事の中でさらに詳しく解説します。
2.子どもに迷惑がかかる
熟年離婚の場合、子どもが既に独立していることも多いですが、それでも離婚は子どもに影響を与えます。
親の年齢が高い時期の離婚となると、ゆくゆくは金銭面や生活面で子どもを頼ることになってしまいます。
夫婦が一緒に暮らしていれば互いに看病や介護ができますが、別々に暮らすとなると、子どもが父母それぞれの看病や介護を担うことになるかもしれません。2か所で親の面倒を見るのですから、かなりの負担です。
また、子どもたちは、結婚式に両親を呼んでいいのか、両方の家に帰省すべきなのかなどの悩みを抱えることになるでしょう。
3.財産分与や年金分割が問題になりやすい
多くの場合、財産分与や年金分割で分け合う金額は、結婚生活が長くなるにつれ大きくなっていきます。定年退職前後の夫婦は、退職金を財産分与することもあります。
これらのお金には老後の生活を支えるという意義もありますので、年齢の高い夫婦にとっては死活問題であり、財産分与の話し合いがもつれてしまう可能性があります。
4.介護・看護してくれる人がいなくなる
結婚していれば、夫婦どちらかが病気になったり介護が必要な状態になったときは、互いに助け合うことができます。
しかし、離婚をすると自分の介護や看護をしてくれる人がいなくなります。孤独死のリスクも軽視できません。
今は元気でも、将来どうなるか分からない状態では、安心して過ごせないでしょう。
5.1人になってみると寂しい
自分を苦しめてきたといえど、長年連れ添ってきた配偶者ですから、急にいなくなると寂しく感じることもあるでしょう。
元々交友関係が少なかった方は、夫と離婚すると話し相手がいなくなり、孤独な生活を送ることになってしまうかもしれません。
話し相手がいないということは、想像以上に心身に影響を与えます。一人暮らしの高齢者がうつ状態になってしまうケースは多いようです。
熟年離婚で後悔したくない!どんな準備が必要?
離婚後のお金のことを考えておく
熟年離婚で後悔する人が多いのがお金のことです。離婚後の生活設計については、離婚の決断をする前に考えておかなければなりません。
離婚後はどのくらい生活費がかかるか、月にいくらの定期収入があるか、離婚までにいくら貯金が必要かを試算しましょう。
熟年離婚後の支えになるお金
- 自身の給料
- 自身の年金
- 年金分割
- 貯金
- 株式などの配当金
- 配偶者からの財産分与や慰謝料
- 子どもからの仕送り
『女性の熟年離婚|その後の生活が悲惨?』の中では、離婚後の年金や生活費を試算しています。
財産分与の対策を万全に
熟年離婚の場合は、財産分与が離婚後の生活を大きく左右します。
財産分与を最大限に受け取るためには、正しい知識を身に着けるとともに、離婚を切り出す前からの準備が必要不可欠です。
財産分与で最も重要なのは、相手の財産を漏れなく把握することです。
離婚時に相手方の隠し財産を見落としていたら、本来受け取れたはずの財産を受け取れずに離婚することになってしまいます。
財産分与の対象になる財産としては、現金・預貯金や不動産、車などのほか、有価証券や退職金などが挙げられます。
把握している財産に漏れがないかを、弁護士と一緒にチェックするのもよいでしょう。
弁護士は、弁護士会照会という制度を使って金融機関や勤務先などに財産の情報を照会することもできます。
メリットとデメリットを比較する
熟年離婚には様々なメリットがある一方、重大なデメリットも存在します。特に、金銭面のリスクを軽視すると、離婚後に貧困状態に陥ってしまう危険性があります。
熟年離婚で後悔しないためには、メリットとデメリットをよく比較して、慎重に離婚の決断をしましょう。
デメリットがメリットを上回る場合は、離婚以外の選択肢も考えてみましょう。別居や卒婚などの手段で問題が解決できる可能性もあります。
熟年離婚のメリット
- 長年の我慢・ストレスから解放される
- 時間を自由に使えるようになる
- 自立した生活を送れる
- 夫や義両親の介護から解放される
- 夫の親族との関係を断ち切れる
熟年離婚のデメリット
- 経済的に苦しくなる
- 子どもに迷惑がかかる
- 財産分与や年金分割が問題になりやすい
- 介護・看護してくれる人がいなくなる
- 1人になってみると寂しい
熟年離婚は弁護士に相談!
熟年離婚で後悔しないためには、財産分与や慰謝料など、離婚条件にこだわる必要があります。
公平に財産分与をするためには、ひとつひとつ財産をリストアップし、それを計算して分けるという作業が必要です。しかし、これは初心者にとっては簡単なことではありません。弁護士に調査や計算を任せておけば安心です。
また、相手方と離婚について話し合うのは、非常に大きなストレスとなります。弁護士であれば、依頼者の代わりに交渉を行うこともできるため、ご自身が話し合いの場に出る必要はありません。
それだけでなく、弁護士は書類作成や手続きを代理で行うこともできるため、身体的・精神的な負担を抑えつつ離婚の手続きを進めることができます。
熟年離婚という重大な決断において、ご自身の選択を後悔しないためには、弁護士にご相談されることをおすすめします。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了