離婚後に忘れてはいけない手続き一覧

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離婚後の手続き

相手との話し合いが終わり、やっと離婚届を提出できたと思っても、今度は多数の手続きに追われることになります。

特に、苗字が変わる方、引っ越しをする方、子どもがいる方は、手続きが煩雑で時間がかかります。

しかし、手続きを忘れていると、もらえるはずの手当などが受け取れなかったり、過料が科されてしまうなどの不利益を被る恐れがあります。

この記事では、離婚後に必要な手続きを解説します。自分にはどんな手続きが必要なのかを確認し、忘れずに手続きをしておきましょう。

なお、自治体や企業によって手続きに必要な書類などが異なりますので、事前にホームページなどで確認されることをおすすめします。

離婚後の手続きの優先順位

離婚後の手続きは、おおまかに以下のような順番で行うと良いでしょう。

Point

  1. 住民票や運転免許証など、身分証明書に関する手続き
  2. 苗字や転校など、子どもに関する手続き
  3. 健康保険や年金、各種手当など、公的な手続き
  4. 各種サービスの名義変更の手続き

各種手続きでは身分証明書が必要になることが多いので、まずは役所などで身分証明書の変更手続きを行いましょう。また、子どもがいる方は、子どもを取り巻く環境を安定させるためにも、子どもに関する手続きも優先的に行う必要があります。

次に、健康保険や年金、各種手当など、公的な手続きを行うのが良いでしょう。一部の手続きには期限がありますし、手当の申請が遅れれば受給の開始も遅くなりますので、早めに手続きを済ませましょう。

その後は、銀行や水道、ガス、電話など、様々なサービスの名義変更を行いましょう。住所や氏名の変更を忘れていると、前の住所に郵便物等が届いてしまう可能性がありますので注意が必要です。

この記事では、それぞれの手続きの優先度を★3つで示しています。

身分証明書の変更手続き

住民票や運転免許証は、今後の手続きで必ず必要になります。離婚届の提出や引っ越しが済んだら、まず最初に手続きをしましょう。

住民票の移動

優先度:★★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:住所が変わる人

離婚に伴い引っ越しをする場合、役場にて転出・転入・転居届を提出する必要があります。

同じ市区町村内で引っ越す場合は転居届を提出すれば足ります。市区町村をまたいで引っ越す場合は、まず旧居のある市区町村で転出届を、その後新居のある市区町村で転入届を提出することで、住民票を移すことができます。

転出・転居・転入の届出には期限があり、引っ越しの日の前後14日以内に届出をしなければ、5万円以下の過料が科されてしまう可能性があります。

また、新しい住所が記載された住民票がなければ他の手続きができないので、最優先で手続きを行いましょう。

役所へ出向いた際には、戸籍謄本を併せて取得しておくことをおすすめします。今後の手続きに必要になりますので、何通か取得しておきましょう。

なお、離婚届を提出しても、戸籍に反映されるまでには数日〜1週間程度かかることが多いため、離婚届を提出してすぐに戸籍謄本を受け取れるわけではありません。住民票上の住所の移動は戸籍とは関係がないため、反映を待つ必要はありません。

世帯主の変更

優先度:★★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:世帯主が変わる人

離婚によって夫婦の双方または一方が家を出る場合、世帯主が変わりますので世帯主変更届の提出が必要です。

また、離婚後も元夫婦が同じ住所に住み続ける場合は、世帯分離の手続き(世帯変更届)が必要です。

これらの手続きは、変更があった日から14日以内に行う必要があります。

印鑑登録の変更

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:氏名・住所が変わる人

離婚によって氏名や住所が変わった方は、印鑑登録の変更が必要な場合があります。

登録してある印鑑の印影と住民票の氏名が異なる場合、印鑑登録は自動的に廃止になってしまいます。この場合は、離婚後に新しい苗字の印鑑または下の名前のみの印鑑を登録し直す必要があります。

住所が変わった場合は、同じ市区町村内であれば転居届を提出すれば自動的に印鑑登録の住所も変更されるので手続きは不要です。

他の市区町村に引っ越した場合は、転出届を提出すると自動的に印鑑登録が廃止になるので、転入先で新しく印鑑登録申請をします。

印鑑登録は、特に使う予定がなければ変更しておかなくてもあまり困らないため、失効したままにしておくことも可能です。

しかし、不動産や自動車などの名義変更を行う際は、印鑑登録証明書が必要になりますので、使用する見込みがある場合は印鑑登録をし直しておきましょう。

運転免許証の氏名・住所の変更

優先度:★★★

手続きする場所:警察署、運転免許更新センター、運転免許試験場

この手続きが必要な人:氏名・住所が変わる人

離婚に伴い氏名や住所が変わった場合は、運転免許証の氏名・住所の変更手続きを行う必要があります。

住民票と免許証の記載事項が異なる場合、免許証を身分証として使用できない可能性もあるので、忘れずに手続きを行いましょう。

マイナンバーカードの氏名・住所の変更

優先度:★★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:氏名・住所が変わる人

離婚によって氏名や住所が変わったら、マイナンバーカードの記載事項変更手続きが必要です。必ずマイナンバーカードを持って市区町村役場に行きましょう。

氏名や住所に変更のあった日から14日を過ぎるか、転出届に記入した異動予定日から30日を過ぎてしまうと、マイナンバーカードが失効して再発行の手続きが必要になってしまうので注意してください。転出・転入・転居届の提出と同時に行うことをおすすめします。

なお、署名用電子証明書を利用している場合、記載事項変更手続きをすると電子証明書が失効してしまうため、新たに電子証明書の発行手続きが必要です。

マイナンバーカードの継続利用

優先度:★★★

手続きする場所:新居のある市区町村役場

この手続きが必要な人:市区町村をまたいで引っ越しする人

市区町村をまたいで転入したときは、マイナンバーカードの継続利用手続きが必要です。

転入届を提出した日から90日を過ぎるか、転出届に記入した異動予定日から30日が過ぎると、マイナンバーカードが失効して再発行の手続きが必要になってしまいます。転入届の提出と同時に手続きを行うとスムーズです。

パスポートの氏名・本籍地の変更

優先度:★

手続きする場所:住民登録か居所がある県のパスポートセンター、旅券窓口

この手続きが必要な人:氏名・本籍地が変わる人

離婚によって氏名や本籍地のある都道府県に変更があった場合は、パスポートの記載事項変更手続きをする必要があります。

元のパスポートの有効期限を引き継いだパスポートを受け取ることもできますし、新たに有効期間10年か5年のパスポートを作成することもできます。

パスポートの氏名・本籍地の変更には期限はありません。変更までの間、旧姓のパスポートで渡航することもできるのですが、航空券とパスポートの苗字が違うと渡航できないため、旧姓で予約した航空券がある場合は、帰国してからパスポートを変更するようにしましょう。

なお、氏名や本籍地の都道府県は変わらず、単に都道府県内で引っ越しをしただけなら、パスポートを変更する手続きは必要ありません

子どもに関する手続き

子どもがいる場合、環境の変化を最小限にするためにも、迅速な手続きが必要です。

子の氏の変更許可申立

優先度:★★★

手続きする場所:子どもの住所地を管轄する家庭裁判所

この手続きが必要な人:子どもの苗字を変えたい人

離婚によって苗字が変わる方(多くの場合は妻)が親権者になっても、子どもの苗字は自動的に変わるわけではありません。そして、子どもの戸籍も夫の戸籍に残ります。

子どもを自分と同じ戸籍に入れたい場合、まずは子どもの苗字を変更し、その後自分の戸籍に入れる手続きが必要です。

その手続きの第一段階として、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立を行いましょう。申し立てが認められれば、子どもの苗字を自分のものに変更することができます。

子の氏の変更許可申立書は、裁判所ホームページでダウンロード可能です。

申立人となるのは、子どもが15歳未満のときは法定代理人(親)、15歳以上の場合は子ども本人です。子ども1人につき800円分の収入印紙と切手代が必要なほか、父母の戸籍謄本と、子どもの戸籍謄本を提出する必要があります。

子の氏の変更許可申立に期限はありませんが、苗字を変更することができなければ住民票や身分証明書も変更することができませんので、最優先で行うべき手続きのひとつであるといえます。

入籍届

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:子どもを自分の戸籍に入れる人

子の氏の変更許可が下りたら、自分の戸籍に子どもを移す手続きを行います。これは、市区町村役場に入籍届を提出することでできます。

子どもと自分の苗字が違う場合、同じ戸籍に入ることはできないため、事前に裁判所から子の氏の変更許可を得る必要があります。

入籍届とあわせて提出する必要がある書類は、子の氏の変更許可審判書と、子どもおよび入籍させる方の親の戸籍謄本です。

保育園・幼稚園・学校への報告

優先度:★★★

手続きする場所:通っている保育園・幼稚園・学校

この手続きが必要な人:保育園・幼稚園・学校に通っている人

両親が離婚した場合、必要な手続きがあったり、子どもへの配慮が必要になる場合がありますので、通っている保育園・幼稚園・学校の先生に離婚の報告をしましょう。

特に、子どもの苗字が変わる場合は、保育園・幼稚園・学校で名乗る名前も変えるのか、以前の名前を使い続けるのかの相談をした方がよいでしょう。子どもの苗字は変わらないという場合でも、住所や緊急連絡先の変更があれば報告が必要です。

また、給食費等の引き落とし口座が配偶者のものになっている可能性もあるので、確認して変更を行いましょう。

保育園・幼稚園の手続き

優先度:★★★

手続きする場所:保育園・幼稚園、市区町村役場

この手続きが必要な人:子どもを保育園・幼稚園に入園・転園させたい人

保育園の場合

新しい保育園に入園を希望する場合は、まずは役所に相談や申し込みをして、審査に通る必要があります。

手続きは自治体によって異なりますので、まずは転居先の役所に確認をしてください。保育園の入園申し込み期限は、入園を希望する月の前月の10日ごろとなっている自治体が多いようですので、早めに申し込みを行いましょう。

あわせて、在園中の保育園に転園の意思を伝えましょう。

なお、入園申し込みの前に転居の手続きを行うことをおすすめします。自治体によっては、住民票のない地域での入園の審査が不利になることがあるからです。

転居前に保育園を決めておきたい場合は、自治体によってはまだ転居していない人への救済措置が用意されているため、役所に問い合わせをしてみてください。

幼稚園の場合

新しい幼稚園に入園を希望する場合は、入園先の審査に通る必要があります。まずは志望先を決めて、役所またはその幼稚園で願書を受け取り、申し込みを行います。

園によっては入園検査や面接がありますので、対策が必要です。

あわせて、在園中の幼稚園に転園の意思を伝え、在園証明書を受け取ります。在園証明書は、新しい幼稚園での入園手続きに必要になります。転園の意思を伝える時期は、退園の1か月前までが目安です。

小中学校の転校手続き

優先度:★★★

この手続きが必要な人:小中学生の子どもが転校する人

ここでは、公立の小中学校への転校について説明します。

私立の小中学校へ転入学したい場合は、自分で転入学を受け入れている学校を探し、試験を受ける必要がありますので、転入学を希望する学校や都道府県私学協会のホームページ等で手続きをご確認ください。

なお、手続きの順番や内容が自治体によって異なる場合がありますので、まずは学校や役場に確認することをおすすめします。

引っ越し前

手続きする場所:在学中の小中学校

  1. 在学中の学校に転校する旨を伝え、書類を受け取る
  2. 転校先の学校に連絡し、日程を調整する

在学中の学校の担任教師に転校をする旨を伝えると、在学証明書教科書給与証明書を受け取れます。この2つは後で必要になるため、なくさずに保管してください。

書類はすぐに受け取れる訳ではありませんので、早めに申し出るようにしましょう。

次に、転校先の学校に連絡し、転校の日程などを調整します。引っ越し先がどの学校の学区に属するかは、市区町村のホームページで調べられるほか、役場や教育委員会に問い合わせれば教えてもらえます。

引っ越し時

手続きする場所:市区町村役場

  1. 現在の居住地の役場に転居届または転出届を提出する
  2. 引っ越し先の役場に転入届と在学証明書を提出する
  3. 転入学通知書を受け取る

同じ市区町村内で引っ越しをする場合は、引っ越し後14日以内に市区町村役場に転居届を提出します。

市区町村外へ引っ越しをする場合は、現在の居住地の役場にて転出届を提出した後、転居先の役場にて転入届を提出します。

その際に、在学中の学校で受け取った在学証明書もあわせて提示します。転入学通知書が交付されますので、大切に保管しておきましょう。

転入届の提出期限は引っ越し後14日以内ですが、この手続きをしなければ子どもが新しい学校に通えませんので、なるべく早く手続きを行う必要があります。

転校時

手続きする場所:転校先の小中学校

  1. 在学証明書、教科書給与証明書、転入学通知書を提出する

転校前の学校で受け取った在学証明書教科書給与証明書、役場で受け取った転入学通知書を、転校先の学校に提出します。以上で転校手続きは終了です。

高校の転校手続き

優先度:★★★

この手続きが必要な人:高校生の子どもが転校する人

高校は、小中学校と違って義務教育ではないので、転居の手続きをすれば自動的に転校できる訳ではありません。

また、すべての高校が転入学を受け入れている訳でもありません。転入学を受け入れている高校は、都道府県庁や教育委員会、都道府県私学協会のホームページなどで公開されています。その中から志望先を決定し、受験します。

受験をするための条件も様々で、条件を満たさなければ受験は認められません。詳しい条件や手続きなどは、ホームページで調べたり、在学中の学校を通して志望先の学校に問い合わせをしてください。

高校の転入学手続きは、以下のような流れで行います。

  1. 転入学を受け入れている学校を探し、願書を取り寄せる
  2. 在学中の学校に転校したい旨を伝え、必要書類を受け取る
  3. 志望先の高校に単位照合を依頼する
  4. 志望先の高校に出願する
  5. 転入学試験に合格したら、入学手続きを行う

学童保育の手続き

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場や学童保育施設など

この手続きが必要な人:学童保育を利用したい人

小学生の子どもを放課後も預けて働きたい場合は、学童保育を利用するのも手です。学童保育には公立のものと私立のものがあり、自治体や法人によって申し込み手続き等も異なりますので、お近くの学童保育施設について調べてみてください。

健康保険や年金などの公的な手続き

離婚に伴い住所や氏名、扶養関係が変わった場合は、速やかに健康保険・年金の手続きを行いましょう。

第1号被保険者の場合

優先度:★★

この手続きが必要な人:国民健康保険・国民年金に加入している人

自分自身や配偶者が自営業、農業や漁業の従事者、フリーランスなど(第1号被保険者)の場合は、個別に国民健康保険と国民年金に加入しています。

離婚後も国民健康保険に加入し続ける場合は、世帯主の変更手続きが必要になります。国民健康保険は世帯主が世帯員の分をまとめて支払うため、世帯主を元夫のままにしていると、元夫に保険料が請求され続けます。

国民健康保険上の世帯主の変更手続きは、市区町村役場で行えます。

国民年金の継続には、特別な手続きは必要ありません。マイナンバーと基礎年金番号が紐づいていれば、住所・氏名も自動的に変更されるため手続きは必要ありません。

紐づいていない場合は、市区町村役場に変更届を提出します。

第2号被保険者の場合

優先度:★★

この手続きが必要な人:勤務先の社会保険に加入している人

離婚前から会社員や公務員(第2号被保険者)であった場合は、それぞれが勤務先で厚生年金と健康保険(2つを合わせて社会保険と呼びます)に加入しているため、離婚後に特別な手続きは必要ありません

ただし、住所・氏名の変更手続きは必要になる場合があります。会社へ離婚の報告をすれば、会社が手続きを行ってくれます。

また、配偶者を扶養していた場合は、配偶者が扶養から抜けることを報告する手続きが必要です。「国民年金第3号被保険者関係届」、「健康保険 被扶養者(異動)届」と配偶者の保険証を勤務先に提出します。これらの届出は、離婚の日から5日以内に提出しましょう。

なお、離婚を機に退職する場合は、次の項で社会保険の資格を喪失する場合について解説しますので、そちらをご覧ください。

第3号被保険者の場合

優先度:★★★

この手続きが必要な人:配偶者に扶養されている人

専業主婦(主夫)の方や配偶者の扶養内で働いている方は、配偶者の勤務先の社会保険に加入しています(第3号被保険者)。

この場合、離婚によって自分の社会保険の資格が喪失しますので、年金と健康保険それぞれについて何らかの手続きが必要です。

必要な手続きは、離婚後にどのような職業につくかによって変わりますが、いずれの場合も「国民年金第3号被保険者関係届」と「健康保険 被扶養者(異動)届」を元配偶者の勤務先に提出する必要があります。この2つは、離婚の日から5日以内に提出しましょう。

  1. 就職しない場合
  2. 自営業・フリーランスとして開業する場合
  3. アルバイト・パートで勤務開始する場合
  4. 正社員として勤務開始する場合
  5. 同じ勤務先で引き続き勤務する場合

年金や健康保険に未加入の期間があると、将来受け取れる年金が減ってしまったり、未加入の間は医療費を全額自己負担しなければならないというデメリットがありますので、速やかに手続きを行いましょう。

1.就職しない場合

手続きする場所:市区町村役場

離婚後も就職しない場合は、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。子どもがいる場合、子どもを国民健康保険に加入させる手続きも必要になる場合があります。国民健康保険と国民年金の加入手続きには、離婚から14日間という期限があります。

2.自営業・フリーランスとして開業する場合

手続きする場所:市区町村役場

離婚後に自営業やフリーランスとして開業する場合は、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

子どもがいる場合、子どもを国民健康保険に加入させる手続きも必要になる場合があります。国民健康保険と国民年金の加入手続きには、離婚から14日間という期限があります。

3.アルバイト・パートで勤務開始する場合

手続きする場所:勤務先または市区町村役場

離婚後に新たにアルバイトやパートを始める場合、その勤務先で社会保険に加入することができます。手続きは勤務先で行います。勤務先の社会保険に加入した場合は、子どもを自分の扶養に入れることができます。

ただし、アルバイト・パートの方が社会保険に加入するためには、勤務時間数や勤務期間などの条件があります。また、勤務先が社会保険に対応していない場合もあります。

こういった条件が満たされず勤務先で社会保険に加入しない場合は、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。子どもがいる場合、子どもを国民健康保険に加入させる手続きも必要になる場合があります。

国民健康保険と国民年金の加入手続きには、離婚から14日間という期限があります。

4.正社員として勤務開始する場合

離婚後に新たに正社員になる場合は、勤務先で社会保険に加入します。この場合の手続きは、会社が行ってくれます。子どもがいる場合は、子どもを扶養に入れることができます。

各種手当・貸付金の手続き

離婚によってひとり親や寡婦になった方には、様々な経済的支援が用意されています。ここで紹介したもの以外にも、自治体によって支援制度が設けられている場合もありますので、自治体のホームページ等で調べてみてください。

児童手当の受給者変更

優先度:★★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:配偶者が児童手当を受給している人

離婚後は、住民票上子どもと一緒に暮らしている人児童手当の受給者になりますが、受給者を自分に変更するには手続きが必要です。

児童手当の受給者を変更するためには、離婚日から15日以内に市区町村役場に「受給事由消滅届」と「認定請求書」を提出します。

受給事由消滅届は元の受給者(多くの場合は夫)が提出するので、配偶者が提出し忘れないように注意が必要です。

手続きが遅れると、手当が受けられない月が生じてしまったり、手当を返還しなければならなくなる可能性がありますので、早めに手続きを行いましょう。

児童手当の住所変更

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが必要な人:児童手当の受給者で、市区町村をまたいで引っ越しする人

児童手当を受給している場合は、引っ越しに伴い児童手当の住所変更手続きが必要です。ただし、同一の市区町村内に引っ越しをする場合は、転居届を出せば自動的に住所が変更されますので、特別な手続きは不要です。

しかし、異なる市区町村へ引っ越しをする場合は、引っ越し前の自治体と引っ越し後の自治体の両方で手続きが必要です。

引っ越し前の自治体の役場で「受給事由消滅届」を提出し、引っ越し後の自治体の役場で「認定請求書」を提出します。ただし、自治体によっては、転出届が受給事由消滅届の代わりとなる場合もあります。

この手続きは、引っ越しから15日以内に行わなければ1か月分の手当が受け取れなくなってしまいますので、早めに行いましょう。

児童扶養手当(旧:母子手当)

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが可能な人:ひとり親になる人

児童扶養手当とは、ひとり親家庭の子どもや、障がいのある親を持つ子どもに支給される手当です。児童扶養手当を受給するには、市区町村役場に「児童扶養手当認定請求書」を提出します。

児童扶養手当は、請求の翌月以降の支給になるほか、2か月に一回の支給となりますので、早く受け取るために、速やかに請求することをおすすめします。

児童扶養手当の受給世帯は、他にも優遇措置を受けることができます。そちらはこの記事の最後で紹介します。

なお、所得が一定額を超えている世帯や、公的年金(障害年金や遺族年金など)を受給している世帯は、全部または一部が支給されない場合があります。

各自治体のひとり親家庭支援制度

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場など

この手続きが可能な人:ひとり親になる人

自治体によっては、ひとり親家庭を経済的に支援する独自の制度を用意しています。例えば、東京都であれば児童育成手当という制度がありますので、お住まいの地域の制度を調べてみてください。

こちらも申請後すぐに支給が開始されるわけではありませんので、早めに申請を行いましょう。

就学援助制度

優先度:★★

手続きする場所:通学している学校

この手続きが可能な人:世帯の所得が一定以下になる人

生活保護を受けている世帯か、所得が一定以下の世帯で、小・中学生の子どもがいる場合は、学用品や給食、修学旅行などの費用の援助を受けることができます。

就学援助を受けるためには、通学している学校で配られるお知らせを読み、学校へ申請書を提出します。年度の途中でも申請することができます。

就学援助には所得制限がありますが、所得から一定額を控除する制度があるため、制限を超えているようでも、まずは申請してみることをおすすめします。

ひとり親家庭の医療費助成

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが可能な人:ひとり親になる人

18歳以下の子どもを持つひとり親家庭であって、所得が一定以下の場合、医療費の助成を受けることができます。

市区町村役場で申請を行って承認されると、医療証などと呼ばれる書類を受け取ることができます。医療機関を受診する際にこれを提示することで、一部の負担が免除されます。

自治体ごとに助成を受けられる要件や助成の内容が異なりますので、お住まいの地域の制度について調べてみてください。

母子父子寡婦福祉資金貸付金

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場

この手続きが可能な人:ひとり親・寡婦になる人

20歳未満の子どもを扶養している母子家庭や父子家庭、寡婦の経済的自立を支援するために、自治体から資金を貸付する制度を、母子父子寡婦福祉資金貸付金と言います。

事業の開始や就学、転居など、資金の利用目的ごとに条件が分かれています。

貸付には審査があり、審査に通らなければ貸付を受けることはできません。また、貸付金ですので、もちろん将来的には返済する必要があります。

貸付の審査には時間がかかりますので、貸付を希望する場合は市区町村の窓口に早めに相談・申し込みを行いましょう。

ひとり親控除

優先度:★

手続きする場所:確定申告もしくは年末調整

この手続きが可能な人:ひとり親になる人

ひとり親控除とは、ひとり親が受けることのできる所得控除の制度です。

ひとり親控除を受けるには、その年の12月31日時点で次のすべてに当てはまっている必要があります。

  • 婚姻していないまたは配偶者の生死が不明
  • 事実婚の状態にない
  • 生計を一つにする子がいる
  • 合計所得が500万円以下

ひとり親控除を受けるためには、確定申告時もしくは年末調整時に所定の手続きを行う必要があります。

寡婦控除

優先度:★

手続きする場所:確定申告もしくは年末調整

この手続きが可能な人:寡婦になる人

寡婦控除とは、寡婦に当てはまる人が受けることのできる所得控除の制度です。

寡婦控除を受けるには、その年の12月31日時点で次のいずれかに当てはまっている必要があります。

  1. 夫と離婚したあと事実婚の状態になく、扶養親族がおり、合計所得金額が500万円以下
  2. 夫と死別したあと婚姻をしていない、または夫の生死が明らかでなく、合計所得金額が500万円以下

ひとり親控除は一度も結婚をしたことがない親でも対象となりますが、寡婦控除の対象は、夫と離婚または死別したあと再婚していない妻が対象です。

男性は寡婦控除の対象外で、男性のひとり親には、ひとり親控除が適用されます。

なお、ひとり親控除と寡婦控除の併用はできません。

寡婦控除を受けるためには、確定申告時もしくは年末調整時に所定の手続きを行う必要があります。

財産分与に関する手続き

財産分与の取り決めがある場合は、離婚後に名義変更や振り込みなどの手続きを行います。期限のあるものは少ないですが、離婚後に相手が協力してくれなくなってしまう可能性を考えると、早めに手続きをしておいた方が良いでしょう。

不動産の名義変更

優先度:★★

手続きする場所:法務局

この手続きが必要な人:不動産の財産分与をする人

家や土地の名義を変更するには、法務局に所有権移転登記を申請する必要があります。登記の手続きは複雑なため、司法書士に依頼する方も多いようです。司法書士に手続きを委任しない限りは、夫婦が揃って法務局に出向く必要があります。

ただし、調停や裁判で財産分与の取り決めを行った場合は、財産分与を受ける側が1人で手続きを行えます。

なお、不動産の所有権移転登記には、その不動産の固定資産評価額の2%の税金(登録免許税)がかかります。

所有権移転登記は、離婚の成立後に行います。特に期限はありませんが、登記を移すまでの間に、配偶者が勝手に不動産を売却してしまったり譲渡してしまうと、自分の所有権を主張することが難しくなってしまいますので、なるべく早く手続きを行うことをおすすめします。

なお、住宅ローンがある場合、金融機関の許可を得ずに不動産登記を変更すると契約違反となり、残りの債務を一括で返済するよう求められたり、団体信用生命保険が適用されなくなってしまう可能性もありますので、勝手に名義を変更することは避けましょう。

住宅ローンの名義変更

優先度:★★

手続きする場所:金融機関

この手続きが必要な人:住宅ローンがある住宅の財産分与をする人

離婚によってローンの名義人だった人が家を出ることになった場合や、返済する人を変えたい場合は、金融機関にて住宅ローンの名義変更手続きが必要です。

ただし、住宅ローンの名義変更はそう簡単には認められません。金融機関は、申し込んだ本人の返済能力を審査した上でローンを貸付しているからです。残債を一括で返済できれば解決するのですが、なかなか難しいことでしょう。

名義変更ができない場合は、ローンの借り換えを検討しましょう。ただし、借り換えも本人に返済能力がなければ認められづらいため、安定した収入がない場合は借り換えることができない可能性があります。

どちらの方法も難しいのであれば、住宅ローンの名義をそのままにできるか、どういった手段をとれるかを金融機関に相談してみましょう。

預貯金の分与

優先度:★

手続きする場所:金融機関

この手続きが必要な人:預貯金の財産分与をする人

預貯金を分与する場合は、財産を分与する方からされる方へ、一括払いや分割払いで振り込みする方法と、手渡しをする方法とがあります。

離婚時の預貯金分与は、振り込みと手渡し、どちらの方法でも非課税です。ただし、振り込みは手続きが簡単で証拠が残りやすい一方、手数料がかかる場合もあります。手渡しは手数料がかからない一方、トラブルのリスクがあります。額が大きい場合やトラブルを避けたい場合は振り込みをおすすめします。

自動車の名義変更

優先度:★★

手続きする場所:運輸支局、軽自動車検査協会

この手続きが必要な人:自動車の財産分与をする人

車(車検証)の名義変更は、正式には移転登録といい、管轄の運輸支局または軽自動車検査協会に書類を提出することで行えます。

名義変更の手続きには、旧所有者が捺印した委任状や譲渡証明書が必要ですので、配偶者にも協力してもらわなければなりません。

名義変更の手続きには、以下の書類が必要です。

  • 申請書
  • それぞれの印鑑証明書
  • 有効期限内の車検証
  • 譲渡証明書(旧所有者が作成)
  • 新使用者の車庫証明書
  • 委任状

なお、名義の変更が生じた日から15日以内に車検証の名義変更を行わなければ、50万円以下の罰金が科されるとされています。実際に罰金が科されるケースは稀ですが、早めに手続きを行いましょう。

ただし、車のローンが残っている場合は、所有者名義がローン会社等になっているため名義の変更ができないことが多く、名義を変更するにはローンを完済する必要があります。

または、所有者の名義はそのままにして、車の使用者を変更するという方法もあります。この手続きを変更登録といい、管轄の運輸支局または軽自動車検査協会で行います。

有価証券の分与

優先度:★

手続きする場所:証券会社、金融機関など

この手続きが必要な人:有価証券の財産分与をする人

国債や株式などの有価証券を財産分与する手段としては、現物を譲渡する方法と、相当する現金を支払う方法とが考えられます。

譲渡の手続きは証券会社や金融機関によって異なりますので、まずは問い合わせてみましょう。

会員権の分与

優先度:★

手続きする場所:各クラブなど

この手続きが必要な人:会員権の財産分与をする人

ゴルフやリゾートクラブ等の会員権を財産分与する手段としては、権利を譲渡する方法と、相当する現金を支払う方法とが考えられます。

権利を譲渡する場合は、各クラブで名義書換の手続きを行いましょう。多くの場合、名義の書き換えには数万~数百万円程度の手数料が掛かります。

保険の分与

優先度:★

手続きする場所:保険会社など

この手続きが必要な人:保険の財産分与をする人

解約返戻金のある生命保険や学資保険等を財産分与する場合は、離婚時点で仮に解約した場合の返戻金の額を分け合うのが一般的です。または、実際に解約して返戻金を分け合うこともできます。

現時点での解約返戻金の額は、保険証券や保険会社のウェブページなどで知ることができます。

年金分割の手続き

優先度:★★

手続きする場所:年金事務所

この手続きが必要な人:年金分割をする人

年金分割を行う場合は、離婚後に年金事務所に行って書類を提出する必要があります。

合意分割であって、公正証書や認証を受けた私署証書を作成していない場合、2人が揃って年金事務所に出向く必要があるので、元配偶者とスケジュールを調整しなければなりません。

公正証書・認証を受けた私署証書を作成している場合や、3号分割を請求する場合は、1人で手続きを行うことができます。

年金分割の手続きには期限がありますので、忘れないうちに手続きをしておきましょう。請求ができるのは、離婚から2年、または元配偶者の死亡から1か月が経過するまでです。

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各種サービスの氏名・住所変更の手続き

優先度:★

この手続きが必要な人:氏名・住所が変わる人

離婚により氏名や住所が変わった場合は、利用中のあらゆるサービスの情報を変更する必要があります。氏名・住所変更の手続きに身分証が必要になることもありますので、住民票や免許証などの手続きが終わってから取り掛かりましょう。

以下は変更が必要なサービスの例です。

  • 水道
  • 電気
  • ガス
  • 固定電話・携帯電話
  • ネット回線
  • 郵便(転居届)
  • 宅配業者
  • 銀行預金・郵便貯金
  • 保険
  • クレジットカード
  • 自動車(車検証)
  • 不動産
  • 賃貸契約
  • 有価証券
  • 会員権
  • 定期券
  • 自転車(防犯登録)
  • 資格・免許状
  • その他、各種契約

夫の苗字を使い続けることもできる

原則として、結婚した時に苗字を変えた方(多くの場合は妻)は、離婚時に旧姓に戻ります。

しかし、仕事で使い続けてきた名前を変えたくない、名義変更の手続きが面倒、子どもの苗字を変えたくないなどの理由で、離婚後も夫の苗字を使い続けたいという方もいるでしょう。

そこで、婚氏続称制度といって、一定の手続きを踏むことで離婚前の苗字を使い続ける制度を利用することができます。

離婚前の苗字を使い続けるために必要な手続きは、「離婚の際に称していた氏を称する届」の提出です。この届は、離婚届の提出と同時または離婚から3か月以内に、本籍地または所在地の役所に提出する必要があります。

この手続きをして離婚前の苗字を使い続ける場合は、離婚に伴う名義変更が不要になります。

ただし、婚氏続称を選んだ人が後から旧姓に戻るためには、家庭裁判所の許可が必要です。許可を得るためには、「やむを得ない事由」が必要ですので、簡単には旧姓に戻れなくなってしまいます

ですので、単に手続きが面倒くさいから苗字を戻さないという風に判断するのではなく、様々なメリットとデメリットを考えて決めるようにしましょう。

児童扶養手当の受給者になったら

児童扶養手当の受給者には、様々な優遇措置が用意されています。忘れずに申請を行い、離婚後の新生活に役立てましょう。

自治体が独自の支援を提供している場合もありますので、お住いの自治体のホームページ等で調べてみてください。

JR通勤定期券割引

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場、駅窓口

この手続きが可能な人:児童扶養手当を受給している人

児童扶養手当受給者と同居世帯の家族は、JRの通勤定期券を3割引きで購入することができます。

割引を受けるためには、まず市区町村役場にて「特定者資格証明書」と「特定者用定期乗車券購入証明書」の交付を受ける必要があります。

次に、この2つの書類を持ってJRの駅の窓口で定期券を購入します。

水道料金基本料金等の免除

優先度:★★

手続きする場所:市区町村役場、水道局など

この手続きが可能な人:児童扶養手当を受給している人

自治体によっては、児童扶養手当の受給者は水道料金・下水道料金のうち基本料金等の免除を受けることができます。免除の詳しい内容や手続きについては、お住いの自治体の窓口または水道局に問い合わせてみてください。

粗大ごみ等収集手数料の免除

優先度:★

手続きする場所:粗大ごみ受付センター

この手続きが可能な人:児童扶養手当を受給している人

児童扶養手当の受給世帯の、粗大ごみ等処理手数料を免除している自治体があります。免除を受けるには、粗大ごみの回収申し込みの際に申し出が必要な場合が多いようです。事前にお住まいの地域の制度について確認しておくことをおすすめします。

ニュー福祉定期貯金・新福祉定期預金

優先度:★

手続きする場所:金融機関

この手続きが可能な人:児童扶養手当を受給している人

障害基礎年金や児童扶養手当等の受給者が利用できる、預入期間1年の定期貯金があります。ゆうちょ銀行ではニュー福祉定期貯金、その他の銀行では新福祉定期預金と呼ばれています。

この2つには、通常の1年ものの金利に比べ、高い利率が適用されます。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了