離婚後の共同親権を拒否できる?単独親権になる条件と手続きを解説

更新日:

離婚後は、事情によっては共同親権ではなく、単独親権になる場合があります。とくにDVや虐待のおそれがある場合には、2026年4月施行の改正民法(第819条7項)により、家庭裁判所は単独親権を定める必要があります。

相手が共同親権を希望していても拒否できる主なケースは2つあります。

ひとつは、子の利益を害するおそれがある場合です。もうひとつは、DVやモラルハラスメントなどにより、父母が協力して親権を行使できない場合です。

これらに当てはまるかどうかは、証拠の有無だけでなく、さまざまな事情を総合的に考慮して裁判所が判断します。

本記事では、単独親権が認められる具体的な条件をはじめ、家庭裁判所への申立ての流れや、すでに離婚している場合の対応について、改正民法の内容に沿って整理します。

離婚後の共同親権とは

親権の意味と改正前の制度

親権とは、未成年の子どもを育てて守り、その財産を管理するための親の権利であり、同時に果たすべき義務でもあります。

2026年4月1日より前は、離婚時に父母のどちらか一方を親権者として決めることが法律上の必須条件でした(改正前民法第819条1項・2項)。そのため、離婚後に父母がともに親権を持つ共同親権は認められていませんでした。

しかし、離婚後も父母がともに子育てに関わることが望ましいという考え方や、海外で共同親権が広く採用されている流れを受けて、民法の見直しが進められました。

関連記事

離婚後の親権の決め方と争いで有利になるポイントを弁護士が解説

共同親権と単独親権の違い

共同親権とは、離婚後も父母の双方が親権を持ち、子どもに関する重要な事項を協力して決めていく制度です。2026年4月1日施行の改正民法(第819条1項)により、離婚後でも父母の話し合いによって共同親権を選べるようになりました。

単独親権との大きな違いは、重要事項の決め方にあります。

単独親権では一人の親が判断できますが、共同親権では進学先の選択や、子どもの心身に大きな影響を与える医療行為などについて、父母が協力して決める必要があります。

ただし、共同親権が自動的に選ばれる仕組みではありません。 父母の協議によって、共同親権にするか単独親権にするかを選択します。

話し合いがまとまらない場合や裁判で離婚する場合には、家庭裁判所が子どもの利益を最優先に考え、適切な親権のあり方を判断します(改正民法第819条2項・5項)。

離婚後の共同親権を拒否できる?

父母の話し合いで単独親権を選ぶ

離婚後に共同親権を望まない場合は、まず父母で話し合い、単独親権とするかどうかを決めます。相手が同意していれば、裁判所を通さずに単独親権で離婚できます。

裁判所が必ず単独親権と定める条件

相手が共同親権を強く望む場合や裁判離婚となる場合には、家庭裁判所が親権のあり方を判断します。

その際、主に次のような場合には、裁判所は必ず父母の一方を親権者(単独親権)と定めなければならないとされています(民法第819条7項)。

  • 子どもの心身に悪影響が及ぶおそれがあるとき
  • DVやモラルハラスメントなどにより、父母が協力して親権を行使できないとき

それぞれの条件の詳細については、次章で解説します。

なお、これらに当てはまらない場合でも、共同親権にすると子どもの利益を損なうと判断されるときには、裁判所は単独親権を選択します(民法第819条7項柱書)。

単独親権になるための具体的な条件

子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合

子どもの心身に悪影響が及ぶおそれがあると認められるときには、裁判所は単独親権を定めます(民法第819条7項1号)。

典型的な例としては、過去に子どもへの虐待があったケースが挙げられます。ただし、判断は過去の事実だけで決まるわけではありません。 将来にわたって悪影響が及ぶ可能性があるかどうかを、さまざまな事情を踏まえて総合的に見極めます。

具体的には、虐待の内容や頻度、期間に加え、その後の生活環境の変化なども考慮されます。

DVやモラルハラスメントがある場合

父母の一方が他方からDVやモラルハラスメントを受けている場合、協力して親権を行使することが難しいと判断され、単独親権となることがあります(民法第819条7項2号)。

ここでいうDVは身体的な暴力に限らず、以下のような行為も含まれます。

  • 継続的な暴言や人格否定などの精神的DV
  • 生活費を渡さないなどの経済的DV
  • 性的な強要などの性的DV

こうした事情により父母間の話し合いが成り立たない状態にあるときや、相手から深刻な誹謗中傷を受け続けており、共同で意思決定を行うことが現実的に難しい状況にあるときも、この条件に当てはまる可能性があります。

証拠がなくても単独親権は認められる

DVや虐待を裏付ける診断書や録音などの客観的な証拠がなくても、単独親権が認められる可能性はあります。

裁判所は証拠の有無だけで結論を出すのではなく、当事者の説明や子どもの状況など、さまざまな事情を踏まえて総合的に判断します。

もっとも、証拠がそろっている場合に比べると、状況を十分に伝えるのが難しくなる面もあります。

そのため、日記やメモに記録を残す、医療機関を受診した履歴を保管する、相談機関に寄せた相談内容を記録しておくなど、後から確認できる形で情報を積み重ねておくことが重要です。

単独親権にするための手続きの流れ

協議離婚で単独親権にする方法

協議離婚で単独親権を選ぶ場合は、離婚届に必要事項を記入して市区町村の窓口に提出します。

2026年4月以降、未成年の子どもがいる場合は、新しい様式の離婚届を使用するか、従来の様式に指定の別紙を添えて提出します。自治体によっては、旧様式の「その他」欄に必要事項を追記する方法で受け付けていることもあります。詳しくは、提出予定の市区町村役場にご確認ください。

協議離婚で単独親権を選ぶ場合、離婚届の未成年の子の氏名欄にある「父(夫)が親権を行う子」または「母(妻)が親権を行う子」の該当する欄に子どもの名前を記入します。

あわせて、共同親権または単独親権の意味を理解したうえで合意したことを示すチェックも必要です。

離婚届(新様式)の未成年の子の氏名の記入例

また、離婚届には、親子交流(面会交流)や養育費について取り決めがあるかどうかを記入する欄があります。記入の前に、親権だけでなく子どもの養育方針についても十分に話し合っておくことが重要です。

合意した内容は、公正証書として残しておくと、後のトラブルに備えやすくなります。

話し合いがまとまらない場合の調停・審判

話し合いで合意できないときは、家庭裁判所に調停を申し立てます。状況に応じて、利用する手続きは2つに分かれます。

離婚自体には合意しているものの、親権について折り合いがつかないときは、親権者指定調停を利用します。調停では、調停委員が双方の意見を聞きながら調整を進めます。ここでも結論が出ない場合は審判に移り、裁判官が子どもの利益を最優先に考えて親権者を決めます。

一方、離婚そのものに争いがあるときは、夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てます。この調停が不成立となった場合、審判には進まず、離婚訴訟を提起して裁判で結論を出す流れになります。

いずれの手続きでも、単独親権が適切といえる理由を具体的に示すことが重要です。 子どもの心身への悪影響のおそれや、DV・モラルハラスメントの有無などが主な判断材料となります。

裁判離婚となった場合は、離婚訴訟の中で裁判所が親権者を定めます(民法第819条2項)。判断にあたっては、DVや虐待の有無に加え、これまでの養育状況や子どもとの関係性なども含めて総合的に検討されます。

単独親権から共同親権への変更を拒否するには?

改正法の施行によって自動的に共同親権へ切り替わることはありません。単独親権から共同親権へ変更するには、家庭裁判所への申立てが必要です。

相手から共同親権への変更を求められた場合でも、個別の事情によっては変更が認められないケースがあります。

裁判所は、親権者の変更が子どもの利益にかなうかどうかを判断する際、主に次の事情を考慮します(民法第819条8項)。

  • 親権者を決めたときの話し合いの経緯(DVの有無、調停や公正証書の有無など)
  • その後に生じた事情の変化

これらを踏まえるのは、DVなどの影響で対等な立場で合意できず、不適切な過程で親権が定められたケースを見直すためです。離婚時の話し合いにDVがあったと認められると、単独親権への変更が認められる方向に働きます。

また、調停の利用や公正証書の有無は、合意の適正さを判断するための一つの材料として扱われます。

一方で、単独親権から共同親権への変更が認められるかどうかは、個別の事情によって異なります。養育費を長期間にわたり正当な理由なく支払っていない場合には、変更は認められにくくなります。

DVや虐待のおそれがあるときや、父母が協力して親権を行使できない状況にあるときには、共同親権への変更は認められません。

共同親権における親権の行使方法

共同親権でも単独で親権を行使できる場合

共同親権では、原則として父母が協力して親権を行使します。ただし、以下の場合には一方の親が単独で対応できます(民法第824条の2第1項・2項)。

  • 他の一方が親権を行うことができないとき
  • 子の利益のため急迫の事情があるとき
  • 監護及び教育に関する日常の行為

「他の一方が親権を行使できないとき」とは、相手が長期間不在であったり、行方不明であったり、病気などで意思表示ができないなど、現実的に共同で判断できない状況を指します。

「急迫の事情があるとき」とは、話し合いや裁判所の手続きを待っていると対応が遅れ、子どもの利益を損なうおそれがある緊急の場面です。

具体的には、DVや虐待から避難するために子どもを連れて転居するケースや、緊急手術など速やかな医療対応が必要なとき、入学手続きの期限が迫っているときなどがこれに当たります。

「監護や教育に関する日常の行為」とは、子どもの心身や将来に重大な影響を及ぼさない日常的な判断を指します。

たとえば、食事や服装の選択、通常のワクチン接種や軽い病気の治療、短期間の旅行、習い事の選択、高校生のアルバイトの許可、修学旅行への参加同意などです。

さらに、取り決めや裁判所の判断によって、単独で対応できる範囲が広がることもあります。

離婚時に一方を「監護者」と定めた場合、その親は日常の行為にとどまらず、子どもの転居や進学先、将来の進路についても単独で決められます。

また、重要な事項で意見が対立したときは、家庭裁判所に申し立てて特定の事項についての「親権行使者」として指定を受けることで、その内容に限り単独で判断できるようになります(民法第824条の2第3項)。

共同で親権を行使すべき場合

共同親権では、日常的な行為に当たらない重要な事項については、父母が協力して決める必要があります。 主な例として、次のようなものが挙げられます。

  • 子どもの転居
  • 子どもの心身に大きな影響を与える医療行為
  • 進学先の選択や入学手続き(私立小中学校への入学、高校進学、長期の海外留学など)
  • 高校に進学せず就職する進路の選択

ただし、「急迫の事情」がある場合は、片方の親が単独で行使することも可能です。

父母の間で意見が一致しないときは、家庭裁判所に申し立てることで、特定の事項についてどちらが判断するかを定めてもらうことができます。

離婚後の共同親権に関するよくある質問

Q. 共同親権を拒否できる?

相手が共同親権を希望していても、父母の協議で単独親権を選ぶことは可能です。合意できない場合は家庭裁判所が判断しますが、DVや虐待のおそれがある場合、または父母が共同して親権を行使することが困難な場合は、裁判所が単独親権を定めます(民法第819条7項)。

Q. DV被害の証拠がなくても単独親権になる?

証拠の有無にかかわらず、裁判所はさまざまな事情を総合的に考慮して判断します。診断書などの客観的証拠がない場合でも、単独親権が認められる可能性はあります。身体的DVだけでなく、精神的DVやモラルハラスメントも考慮の対象です。

Q. 既に離婚して単独親権だが、共同親権への変更を求められたら?

改正法の施行によって自動的に共同親権へ切り替わることはありません。変更には家庭裁判所への申立てが必要です。DVや虐待のおそれがある場合や父母が共同して親権を行使することが困難な場合には、変更は認められにくくなります(民法第819条7項)。

Q. 共同親権になっても一人で決められることはある?

共同親権であっても、食事・服装の選択や通常の通院など「日常の行為」は一方の親が単独で判断できます(民法第824条の2第2項)。DVや虐待からの避難など「急迫の事情」がある場合も、単独で子どもを連れて別居することが認められています。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了