離婚の代理人は親族でもなれる?弁護士以外では難しいケースを解説
「弁護士費用の節約のため、離婚調停の代理人として親族を選びたい。可能なのか」
「相手から調停日を決められたが、その日は予定がある。代わりに親戚に行ってもらうことはできるのか」
離婚の手続きを進めるときに、代理人を依頼したいと考える方は多いのではないでしょうか。
自分の気持ちを理解してくれそうな親族など、弁護士以外の人に代理人を頼みたいと思う方もいるでしょう。
結論から言えば、手続き上は可能ですが、弁護士以外の人に代理人を頼むことは基本的にできません。
今回は、離婚で代理人を頼むときの注意点について解説します。
目次
離婚調停では弁護士以外が代理人になることはできる
離婚調停は、夫婦間の話し合いでは離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会のもとで話し合いをおこなう離婚の方法です。
離婚調停の場合は、手続き上は弁護士以外の人に代理人を依頼することができます。しかし、弁護士以外の人に代理人を頼むことは基本的にできません。
手続き上は可能だが一般的にはできない
手続き上、離婚調停の場合は、家庭裁判所の許可があれば、親族など弁護士以外の人でも代理人になることができます(家事事件手続法22条1項)。
離婚調停の代理人として、弁護士以外の人を選びたい場合は、家庭裁判所に対して「代理人許可申請書」を提出し、許可をもらう必要があります。
ただし、離婚調停で夫婦の親など弁護士以外の人が許可代理人になることは基本的にできません。
また、司法書士や行政書士といった、弁護士とは違う専門資格をもっている人に調停の代理人を依頼することもできない点に注意しておきましょう。
裁判所の許可は取り消されることもある点に注意
仮に弁護士以外の人を代理人に選び、家庭裁判所に許可されたとしても、家庭裁判所の判断によっては取り消される場合があることに注意が必要です(家事事件手続法22条2項)。
代理人のみで調停を進めるのは難しい
離婚調停のとき、親族などに代理人を頼むことは手続き上は可能です。ただし、代理人のみで調停を進めていくことは基本的にできません。
というのも、家事審判や家事調停をするときは、原則として本人が出席しなければならないからです(本人出頭主義)。
調停は、裁判所で当事者本人から直接聞き取りをして問題を把握したり、身分行為(婚姻や養子縁組など、人の身分を変化させる法律行為)であったりという性質をもちます。そのため、代理人をつけていても本人自らの意思決定の確認が必要とされています。
離婚を成立させるまでに長い期間を要してしまうおそれもあるため、代理人にすべての対応を任せることは、基本的にできないとお考え下さい。
ただし、「代理人ではないが親族に調停の待合室で一緒にいてもらう」といったことはできるので、精神的にストレスを感じているときは遠慮せずに親族に頼んでみましょう。
協議離婚や離婚裁判のときの代理人は?
協議離婚の代理人は弁護士がおすすめ
協議離婚は、夫婦が互いに離婚に合意し、条件を話し合って決める離婚方法です。
協議離婚で代理人を選ぶときは、弁護士に依頼することをおすすめします。
代理人については、親族や友人を選ぶことも可能です。ただし、非弁行為(弁護士でないにもかかわらず、報酬目的で弁護士活動をおこなうこと)のリスクがあります。
慰謝料請求や交渉などを代理してほしい場合は、非弁行為のリスクを考えると、弁護士に依頼するのがよいでしょう。
なお、慰謝料請求が140万円以下の場合は、認定司法書士に請求処理の代理を依頼することも可能です。
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離婚裁判の代理人は弁護士のみ
協議離婚が難しい場合や調停での合意が困難なとき、相手方と話し合いができない状況では、裁判離婚を検討することになるでしょう。
離婚裁判では、代理人として認められるのは弁護士のみとなっています(民事訴訟法54条1項)。そのため、親族や、行政書士などのほかの専門業の人が代理人になることはできません。
弁護士に依頼せず、代理人を立てずに自分一人で離婚裁判をおこなうことは制度上可能です。しかし、実際には弁護士なしの離婚裁判はかなり難しいといえます。
弁護士なしで離婚裁判をおこなうことが難しい理由について知りたい方は、『離婚するときに弁護士は必要?弁護士なしでは難しいケースを解説』をご覧ください。
離婚調停で弁護士に依頼するメリット
離婚調停においては、親族など弁護士以外の人に代理人を依頼できます。しかし、離婚調停で誰かに代理人を頼むときは、弁護士に依頼することをおすすめします。
ここでは、離婚調停で弁護士に依頼するメリットについて解説します。
書類の作成といった負担を減らすことができる
離婚調停を弁護士に依頼するメリットの1つとして、書類の作成などの負担を減らせるということが挙げられます。
代理人に依頼することなく、自分で離婚調停を申し立てる際には、申立書のほか、事情説明書、子についての事情説明書など、いろいろな書類を作成しなくてはなりません。また、養育費、財産分与、年金分割に関して、複数の資料を用意する必要も生じます。
仕事や家事をこなしながら慣れない書類作成や資料収集をするのは時間がかかりますし、気持ちのうえでもとても負担になるでしょう。
弁護士に依頼すれば、書類作成を任せることができますし、資料を用意するサポートをしてもらうことができ、負担を減らすことができます。
調停委員とのやりとりをサポートしてもらうことができる
弁護士に依頼すれば、調停委員とのやりとりをサポートしてもらえるというメリットがあります。
調停委員にうまく主張を伝えるには、冷静に、論理的に話す必要があります。しかし、自分の言葉で話そうとするとつい感情がこもってしまい、伝えたいことが伝わらないかもしれません。
弁護士に依頼すれば、打ち合わせで考えを整理したうえで調停に臨むことができます。また、弁護士に調停に同席してもらうことができますので、調停委員に対して自分の考えを伝える手助けをしてもらえます。主張し忘れたりつい話が脱線したりしてしまったときにも、フォローしてもらうことができます。
もしも調停委員が高圧的であったり、価値観を押し付けてくるように感じられたりするときでも、弁護士が同席していれば、安心して自分の主張を伝えることができるでしょう。
離婚の条件に対して適切なアドバイスをもらうことができる
弁護士に依頼すると、相手方の提示している離婚条件についてどのように判断するべきか、アドバイスをもらうことができます。
相手方が法外な慰謝料を請求していたり、相手方に有利な財産分与の提案をしていたりしても、提示された条件に同意して調停が成立すれば、結果は覆せなくなってしまいます。
自分が譲歩して相手方の提示を受け入れるべきなのか、それとももっと有利な条件を出して調停で話し合いを続けるのがよいのか、もしくは、これ以上調停で話し合ってもまとまる見込みはないので不成立で終わらせ裁判に移行すべきなのか、そのような判断は弁護士のアドバイス抜きでは難しいといえるでしょう。
相手方とのやりとりの窓口になってもらうことができる
弁護士に依頼すれば、調停で相手とやり取りするとき、窓口になってもらうことができます。
調停期日以外に相手方と連絡をとる必要は少なからず生じます。調停では調停委員を介してやりとりができますが、調停期日以外では、弁護士がいなければ直接やりとりをするしかありません。しかし、感情的に対立している当事者間ではスムーズにやりとりをおこなうことができません。
弁護士を依頼すると、相手方とのやりとりは弁護士を通しておこなうことができます。とくに、DVやモラハラを理由に離婚したいと考えている場合には、直接相手方とやりとりをすることは避けるべきですので、相手方との窓口になってくれる弁護士が必須といえます。
裁判に移行した際もスムーズに対応できる
離婚調停のときに弁護士に依頼していれば、調停がまとまらずに離婚裁判に発展した際もスムーズに対応することができます。
離婚裁判で離婚するには、「法定離婚事由」が必要です。法定離婚事由とは、民法で定められた離婚の理由で、以下の5つのうち少なくとも1つが存在しなければ、離婚は認められません。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
弁護士に依頼すれば、法定離婚事由を的確に主張できます。また、相手の主張に対しても法的な目線で反論することができます。
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離婚手続きの代理人は弁護士に!
離婚調停の場合は、手続き上は弁護士以外の人に代理人を頼むことができますが、基本的に認められることはありません。
代理人を頼むというときは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、書類の作成や、調停委員・相手とのやり取りを円滑に進めるためにさまざまなサポートをしてくれます。
裁判に移行した際も、スムーズに対応することができるでしょう。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了