医療事故の示談金相場はいくら?示談金の内訳や示談交渉の流れを解説 | 事故慰謝料解決ナビ

医療事故の示談金相場はいくら?示談金の内訳や示談交渉の流れを解説

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医療事故の解決には様々な方法があり、示談金を受けとることで争いをやめることも、医療事故の解決方法のひとつです。示談での解決には、訴訟を起こすよりも早く解決できることや、互いの合意をもとに解決することで納得感を持ちやすいといったメリットがあります。

ただし、示談は一度成立した後の変更や破棄は原則できません。そのため適正な示談金額で示談をしないと、わだかまりが残ってしまいます。

適正な示談金額を得るための一歩として、示談金の内訳をたしかめ、ひとつずつ算定することが必要です。

そこで、この記事は示談金の主な内訳である慰謝料、治療費、逸失利益などの相場と計算方法を紹介していきます。医療事故発生から示談金獲得までの流れや訴訟へ進んだあとの話も説明しますので、より良い解決にお役立てください。

医療事故における示談金内訳と相場・計算方法

医療事故の示談金を請求したいけれど、妥当な金額はどれくらいなのでしょうか。
あるいは病院側から示談金を提示されたとき、いくらならば受け入れて示談するべきなのでしょうか。

示談金の相場や計算方法がわかれば、こういった不安の解消につながります。示談金の内訳は医療事故によってさまざまです。ここからは医療事故の示談金内訳として代表的な慰謝料治療費逸失利益休業損害などの項目を中心にみていきましょう。

内訳(1)精神的苦痛は慰謝料として請求

医療事故によって患者が負った精神的苦痛は、慰謝料として請求可能です。慰謝料の代表例としては、入通院慰謝料後遺障害慰謝料死亡慰謝料があげられます。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、医療事故で負った損害の治療のために入院や通院を余儀なくされた、という精神的苦痛に対して支払われる金銭です。入通院慰謝料の計算には、入院・通院期間を指標とする下表の相場が用いられます。

入通院慰謝料の相場表

入院なし1月3月
通院なし0万円53万円145万円
1月28万円77万円162万円
3月73万円115万円188万円

※横軸は入院・縦軸は通院を示す/1月は30日単位
※軽傷時は下表よりも低額になる

入通院慰謝料は、通院期間が長期にわたるときにはさらに高額になる可能性があります。あるいは、生死が危うい状態がつづいたり、何度も手術を繰り返すといった苦痛を受けた場合にも増額の余地があるでしょう。

一方で、症状が軽度の場合にはもう少し低い金額が相場になります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、医療事故によって治る見込みのない後遺症が残ったときに請求すべき慰謝料です。後遺障害慰謝料の相場は110万円~2,800万円で、後遺障害等級に応じておおよその相場があります。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級相場
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

後遺障害等級とは、後遺症を部位や症状に応じて分類したものです。第1級が最も重篤で、第14級は比較的軽度とされています。どんな後遺症が何級に該当するのかは厚生労働省の障害等級表を参考にしてください。

なお、患者に既往症など「医療事故と関係のない疾病や障害」がある場合、病院側はそのことを理由に後遺障害慰謝料を相場から減額して提示してくる可能性があります。病院側の主張をうのみにして示談をしてしまう前に、弁護士にも見解をたずねてみることをおすすめします。

たとえば交通事故の取り扱い実績が多い弁護士は後遺障害等級認定のサポート経験が豊富です。どの後遺障害等級に該当しうるのか、弁護士にアドバイスをもらうことも大切です。

死亡慰謝料

医療事故を原因として死亡した場合に請求すべき金銭が、死亡慰謝料です。

死亡慰謝料は、患者の家庭内での役割に応じた相場があります。一家の支柱として経済的に支えていた方の死亡慰謝料相場は2,800万円、母親や配偶者ならば2,500万円、独身男女・子どもなら2,000万円から2,500万円が相場です。

死亡慰謝料の相場

死亡者の属性相場
一家の支柱2,800万円
母親、配偶者2,500万円
その他2,000万円~2,500万円

※その他とは独身の男女、子ども、幼児などをいう

医療事故が起こらなくても死亡に至る可能性があった場合や、病院側に医療ミスがないと主張を受けた場合には、病院側と争いになる可能性があります。

たとえば交通事故で重傷を負っていて病院に運ばれ、適切な治療を尽くしても死亡してしまった場合には、病院側に慰謝料の請求はできません。

一方で、病院側の対応に落ち度があって、その落ち度がなければ存命であったとき、死亡慰謝料の請求が認められる可能性があります。

内訳(2)治療費・入院費は実費が原則

原則として、治療費や入院費は実際にかかった実費請求となります。

医療事故によって治療が必要になった分の治療費や、入院が長引いた場合の入院費用のほかにも、ご家族が付き添った場合には付き添い費用も請求すべき損害です。

ただし、医療事故と関係のない請求は認められません。たとえば、医療事故の被害者は患者であることから、もともとの疾病や既往症を持っている可能性が高いです。このような「医療事故と因果関係のない治療費」については、病院側に賠償責任は生じません。

内訳(3)逸失利益は算定方法がポイント

逸失利益は「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」に大別され、計算方法が異なります。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、本来67歳まで得られるはずだった経済的利益が減ったり、完全に失われてしまったという損害と考えてください。後遺障害逸失利益の計算には、基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数を用います。

後遺障害逸失利益の計算方法

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

基礎収入は、原則医療事故が発生する前の年収を用います。

労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて5%~100%に分かれます。後遺障害14級であれば労働能力喪失率5%、後遺障害1級~3級の場合には労働能力喪失率100%を基本として算定されます。

労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から67歳を差し引いた年数のことをいい、その年数に応じたライプニッツ係数を計算に用います。

このように、逸失利益の計算式が複雑なこと、民法改正などの最新情報に照らした算定など高度な知識が求められること、患者の既往症などにより算定が難しい面もあります。弁護士に算定と請求を一任することをおすすめします

後遺障害逸失利益は高額になる可能性があること、就労していない子どもや金銭収入を得ていない主婦も請求できることなど、決して軽視できない損害項目です。

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、本来67歳まで得られるはずだった経済的利益が死亡により失われたという損害と考えてください。死亡逸失利益の計算には、基礎収入、生活費控除率、67歳までのライプニッツ係数を用います。

死亡逸失利益の計算方法

基礎収入×(1-生活費控除率)×67歳までのライプニッツ係数

基礎収入は、原則医療事故が発生する前の年収を用います。

生活費控除率は、存命であればかかる生活費を損害から差し引く考え方で、30%~50%程度が見込まれます。誰かを扶養する立場であったり、女性と比べて男性は生活費控除率が上がる傾向にあります。

立場・性別・扶養人数に応じた死亡慰謝料の生活費控除率

死亡者の属性生活費控除率
一家の支柱で被扶養者1名40%
一家の支柱で被扶養者2名30%
女性30%
男性50%

また、高齢者は給与がなくても年金を受給していることが多いでしょう。その場合は、平均余命まで年金が受給できたはずなのに失われてしまった、として損害請求が認められる可能性があります。ただし、生活費控除率が通常よりも高く計算される傾向にあるので注意が必要です。

内訳(4)休業損害も認められる可能性がある

休業損害は、医療事故で負った損害の治療のために仕事を休まざるを得ない場合に請求できる損害です。医療事故前3ヶ月分の給与と出勤日数から1日あたりの収入を算定し、その収入が休業日数分だけ失われたという計算になります。

休業損害の計算方法

(医療事故前3ヶ月分の給与額÷出勤日数)×休業日数

もっとも、医療事故にあう前から他の疾病により収入を得られていない状態だったならば、医療事故によって休業損害を被ったと認められない可能性があります。

一方で、医療事故によって入院・通院などの治療期間が余計に長引いたことなどを証明することで、休業損害の請求が認められる場合もあるでしょう。

休業損害の算定についても、医療事故との因果関係が極めて重要です。病院側から「休業損害は払えない」と言われたり、根拠の不明な金額提示を受けている場合もありますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

医療事故発生から示談成立までの流れ

医療事故の発生から示談成立までの流れを、特に重要な4つの段階に分けて解説します。

病院側の過失を検討する

まずは医療事故について、病院側に過失があるかどうかを検討しましょう。なぜなら、病院側に過失がない場合には、損害賠償請求をしても十分な補償が見込めないためです。

医療行為の過失のうち、問診義務違反、検索義務違反、治療義務違反について例を交えて説明します。

問診義務違反

医師が問診すべきことを問診しなかったために、患者に損害が生じた場合には、問診義務違反による損害賠償請求が認められる可能性があります。

たとえば、アレルギーの有無を問診しなかったために投薬によるアナフィラキシーを起こした場合なども、問診義務違反の一例といえるでしょう。

検査義務違反

医師が検査すべき事柄を実施せずに手遅れになってしまった場合や、手術前の検査が不十分で損害が出た場合、健診での疾病見落としによる損害などは、検査義務違反として損害賠償請求できる可能性があります。

たとえば、検査をしていたのにがんが見落とされていたケースも検査義務違反にあたる可能性があります。

治療義務違反

本来は必要な治療をしなかった場合、選択した治療方法が不適切であった場合、治療の要否判断を誤った場合、治療の手技にミスがあった場合などが、治療義務違反にあたる可能性があります。

ある疾病に対して取るべき第一選択の治療法がとられず、他の方法を選択したために、患者に損害が発生した場合も治療義務違反の一例です。

病院側の過失有無の検討は弁護士に相談をしよう

このほかにも、医療行為の過失には次のようなものがあげられます。

医療行為の過失例

  • 問診義務違反
  • 検査義務違反
  • 診断義務違反
  • 治療義務違反
  • 術後管理義務違反
  • 投薬に関する義務違反
  • 療養指導に関する義務違反
  • 転送義務違反

病院側の過失は、本人やご家族だけで判断が難しい場合があります。それは、医療行為という専門性の高い事柄を判断しなくてはならないこと、判断に必要な資料の入手が難しいことなどが理由です。

そのため、医療事故の対応に詳しい弁護士へ相談することから始めると良いでしょう。病院側の過失調査を弁護士に依頼することで、次に取るべき具体的な方策がみえてきます。

また、過失調査に必要な資料の収集も弁護士に任せることが可能です。資料の収集を患者本人が行うことには、一部のデメリットがあります。つづいて、証拠資料の収集について注意点も併せて説明します。

証拠資料を集める

必要な資料は、病院が保管する診療記録、カルテ、検査データなどが主となるため、病院に開示を求める必要があります。開示を求める方法は複数ありますが、患者が直接開示を求める方法は、病院によるカルテ改ざんの可能性も否定できません。こういったデメリットを避けるために「証拠保全手続き」による資料収集をおすすめします。

証拠保全手続きとは、裁判所を通して資料を入手する方法です。事前の予告なく資料を収集できるメリットがあります。病院側の過失調査や示談交渉の道筋を立てるためには、改ざんのない元々の資料が必要不可欠です。

弁護士に相談・依頼することで、病院側の過失調査や証拠保全手続きを任せることができます。

病院側と示談交渉をする

病院側との示談交渉では、病院側のミスによって損害が生じたことを明らかにしながら、妥当な示談金額に近づけるための交渉をおこないます。

示談とは、双方が一定程度の譲歩をしながら、お互いに納得できる内容を決めて、争いをやめることをいいます。示談が成立した場合には、示談金を受けとることができます。

その一方で意見が真っ向から対立していたり、譲歩できない部分がある場合には、示談での解決は難しいでしょう。ただし一度成立した示談の一方的な破棄ややりなおしは原則できませんので、納得がいかない状態のまま示談を成立させることは避けるべきです。

示談が難しいなら裁判での判決や和解

示談とは、当事者同士が裁判外で話し合うことで解決する方法です。
示談での解決が難しい場合には、訴訟を起こして裁判による解決も視野に入れなくてはなりません。

ここで、医療訴訟の着地に「判決」と「和解」の2つがあることを知っておきましょう。

裁判での判決

判決とは、裁判所が医療事故について損害賠償金を確定させることをいいます。裁判所の判断にもとづいて下された判決の結果、いっさいの主張が認められない可能性もあり、被害者は損害賠償金を全く受け取れない可能性もあります。

日本は三審制を採っているので、判決内容に不服があれば控訴可能です。患者側が判決内容に納得がいかないときに控訴できるという点はメリットですが、解決まで時間がかかる点や、患者側の主張が認められる判決が出たときに病院側も控訴できる点はデメリットといえるでしょう。

裁判での和解

和解とは、裁判官に間に入ってもらい、双方で協議を行って金銭補償額(和解金)を決めることです。裁判官から和解を勧められることもあれば、当事者から和解を申し入れることで協議を始めることもあります。

たとえば、病院側が医療ミスの一部を認めているものの金額面で折り合いがつかずに示談がうまくいかなかった場合、裁判での和解解決を目指す場合もあります。和解は判決よりも早く解決できたり、お互いの主張を一定程度反映した解決が図れるメリットがあります。

訴訟を起こして判決を求めるべきなのか、和解での解決を試みるべきなのかはケースバイケースです。弁護士に依頼して、より良い解決のための選択をすべきでしょう。

医療訴訟の流れをもっと詳しく知りたい方は、関連記事も併せて参考にしてください。

医療事故の示談金交渉は弁護士に任せよう

医療事故の示談交渉で弁護士ができること

医療事故の示談金額は、患者と病院側との交渉次第です。弁護士は以下の事柄に長けているため、医療事故の示談交渉を弁護士に任せるメリットは大きいといえます。

  • 適正な示談金額を見積もること
  • 法的根拠に基づき粘り強く交渉すること
  • 示談交渉から裁判まで対応できること

患者本人やそのご家族だけでは、本来請求できるはずの損害を見落としてしまったり、不当に低い金額に気づかず示談してしまうリスクがあります。

また、病院側は示談交渉に弁護士を立ててくる可能性が高いです。交渉では慣れない専門的な言葉を使われたり、書面でのやり取りに戸惑いを感じることも多いでしょう。

弁護士に示談交渉を任せることで、患者やその家族が矢面に立つ機会を大幅に減らせて、治療や社会復帰に専念できます。また、示談での解決が難しい場合には裁判の対応まで任せることができることもポイントです。

医療事故の示談交渉にかかる弁護士費用

弁護士費用は、法律事務所や弁護士によって設定が自由で一律に決まった金額はありません。
一般的には次のような費用が発生します。

医療事故の弁護士費用内訳と概要

内訳概要
相談料時間単位で費用発生/無料相談の事務所もあり
着手金過失調査、証拠保全、調停、訴訟など各段階で必要な場合あり
報酬金病院からの示談金の一定割合
日当裁判所への出廷などの出張費用
諸費郵便切手代やカルテの開示費用などの諸諸費

弁護士費用の具体的な金額は法律事務所や案件により異なりますが、次の金額を一つの目安にしてください。

弁護士費用の金額目安

内訳金額
相談料1時間1.1万円~/初回無料の場合もあり
着手金 11万円~55万円※
報酬金示談金の11%~22%程度
日当裁判所への出廷:1回1.1万円~
諸費実費

※過失調査、証拠保全、調停、訴訟など各段階で異なる

弁護士費用のうちの着手金は、結果に関わらず発生します。仮に途中で弁護士を変えたり、交渉をとりやめた場合でも着手金は原則戻ってこないものです。

弁護士費用は案件ごとに設定されることも多いので、法律相談を利用して弁護士費用の目安を確かめておきましょう。

まとめ

  • 医療事故の示談金は治療費、慰謝料、逸失利益、休業損害などで成り立ち、医療事故との因果関係が重要である
  • 病院側から提示される示談金額が相場通りとは限らない
  • 医療事故の発生から示談成立までには、病院の過失調査、証拠の収集、示談交渉といった流れになる

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点