がんを見落としされたら賠償金はもらえる?裁判での損害賠償請求の結果もご紹介 | アトム法律事務所弁護士法人

がんを見落としされたら賠償金はもらえる?裁判での損害賠償請求の結果もご紹介

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がん見落としで賠償金はもらえるか

「医師にがんを見落としされていた…」
「医師ががんを見落としていなければ、死亡した父はまだ生きていたのではないか…」

自分や家族が医師にがんを見落としされるという誤診を受けた場合、医療機関側の責任を追及したいと考える方も多いかと思います。

しかし、がんの見落としが医療ミス(医療過誤)であるとして、賠償金請求を認めてもらうには、患者側で一定の要件を主張・立証することが必要です。

本記事では、がんの見落としについて賠償金請求が認められるための要件は何かを確認していきましょう。また、賠償金請求の流れや実際の裁判例で、賠償金請求が認められたかどうかや認められた場合の損害賠償額についても紹介していきます。

がんの見落としに対する賠償金請求が認められるための要件

医師ががんを見落としたとき、患者側の医師や病院に対する損害賠償請求権の法的根拠は、民法上の債務不履行(民法415条)、不法行為(民法709条)または使用者責任(民法715条1項)となります。

そして、医療過誤訴訟では、患者側が損害賠償請求権の要件事実を主張・立証しなければなりません。具体的には、以下の3つの事実を主張・立証する必要があります

医療過誤訴訟の損害賠償請求権の要件事実

  1. 医師や病院に過失が認められること
  2. 患者に損害が生じていること
  3. 医師や病院の過失と患者の損害との間に因果関係が認められること

ここからは、各要件について詳しくお伝えしていきます。

1.医師や病院に過失が認められること

結果的に医師ががんの見落としをしていたとしても、すべてのケースで医師や医療機関に責任を追及できるわけではありません。

医療訴訟で医師や病院に責任を追及するには、医師に過失があったと認定される必要があります。

過失は注意義務違反とも呼ばれ、その内容は、損害発生の予見可能性と回避可能性に裏づけられた結果回避義務違反となります。

注意義務違反とは?

注意義務の基準は、その人の職業や社会的地位等から通常(合理的に)要求される程度の注意(善良な管理者の注意)です。

医療過誤訴訟では、具体的には「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」とされています(最高裁昭和57年3月30日判決)。

ただし、がんの見落としの事案では、見落としをした検査の状況によって注意義務の程度が異なる可能性があります。

たとえば、「定期健康診断は…多数の者を対象にして異常の有無を確認するために実施されるものであり…大量のレントゲン写真を短時間に読影するものであることを考慮すれば、その中から異常の有無を識別するために医師に課せられる注意義務の程度にはおのずと限界がある」と述べた裁判例があります(東京高裁平成10年2月26日判決)。

2.患者に損害が生じていること

医師のがんの見落としに過失があったとしても、患者に損害が生じていなければ、医師や病院に賠償金を請求することはできません。

がんの見落としで患者に生じる損害として具体的には、死亡してしまうことやがんのステージが進行してしまい、手術ができなくなることなどが考えられます。

また、後ほど紹介する裁判例の事案のように、見落としによる5年生存率の低下により、死への不安や恐怖が増加したという精神的苦痛が損害となることもあります。 

3.過失と損害の間に因果関係が認められること

がんの見落としでは、この因果関係の要件が争われるケースが多いです。

仮にがんの見落としをせずに発見できていたとしても、がんにはなっている以上、見落としという過失の有無にかかわらず、死亡という結果(損害)は発生していたと医療機関側が主張してくる可能性があります。

もっとも、最高裁平成11年2月25日判決では次のような判断がなされています。

最高裁平成11年2月25日判決

医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係は、医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば肯定される

そして、がんの見落とし事案では、見落とし期間の長さが裁判所の因果関係の判断に大きく影響していると考えられます。

がんは早期発見が重要とされ、より早期に発見できるほど有効かつ適切な治療を受けられる可能性が高まります。

そのため、見落とし期間が長いほど(より早期に発見できていたといえるほど)、適切な治療を受けて、死亡の時点においてなお生存していた可能性が高いと判断されやすいからです。

がんの見落としに対する賠償金請求の流れ

がんの見落としをされた患者側(患者本人や遺族)が医師や病院に対して賠償金請求をする際には、医療調査からはじまり示談交渉、示談交渉がうまくいかないときには裁判という流れをたどるケースが多いです。

ここからは、それぞれの手続きについて詳しく解説していきます。

(1)医療調査

医師ががんを見落としていたとしても、常に医師や病院の過失が認められるわけではありません。

そのため、医師や病院へ賠償金請求をする前に、「医療調査」として医師の過失が認められそうかどうか見通しを立てるため、様々な医学的資料を収集し、確認・検討します。

具体的には、患者のカルテから医師が適切な対応をとっていたかどうか、CTやレントゲン画像などを確認して、がんの疑いを持てたか(異常陰影を発見できたか)を検討するのです。

なお、患者のカルテや画像は通常医療機関側が保管していますが、医療機関が提出を拒んだり、改ざんしたりするおそれがある場合、裁判所を通し、証拠保全という手続きを実施して、資料を収集する必要があります。

これらの医療調査や証拠保全などの手続きは、現実的には医師や弁護士など専門家の協力がなければ実施は困難です。

関連記事では、医療調査とはどういったものかをよりくわしく解説しています。医療調査を弁護士に依頼するメリットや費用相場も説明しているので、あわせてお読みください。

(2)示談交渉

医療調査の結果、がんの見落としについて医師に過失が認められそうと判断できれば、医師や病院との間で賠償金についての示談交渉に入ります。

示談交渉の際には、医療調査の結果を示し、賠償金額を提示して、その支払いを求めていく流れです。

病院側が医療ミス(医師の過失)を認め、請求金額にも大きな争いがない場合には、裁判には至らず和解で解決するケースもあります。

実際にはこんな事案あり

2020年には、医師がCT検査の画像確認を怠って肺がんを見落としたことが原因で、治療開始が遅れてがんが脳に転移し、手術ができなくなった患者に対し、1500万円の解決金を支払うことで和解したという事案もあります。

なお、示談交渉が上手くいかなかった場合、裁判手続に移行するケースが多いです。

あるいは裁判の前に、裁判所で調停委員に間に入ってもらって、話し合いでの解決を目指す調停という手続きをとるケースもあります。

関連記事では、医療事故で弁護士に相談や依頼をするメリットを詳しく解説していますので、弁護士への相談や依頼を検討している方は関連記事もお役立てください。

(3)裁判

示談交渉の結果、患者側と医療機関側との主張の開きが大きく、示談が成立しない場合には、裁判所に損害賠償請求を提起することになります。

医療訴訟では、原告となる患者側が、医師・医療機関側の過失を立証するために医学的な専門知識が必要となってくるケースが多いです。

そのため、医療訴訟で勝訴を目指すには、一般的な民事訴訟以上に綿密な準備が必要となります。

また、医療訴訟では、過失の有無の判断が難しく、一般的な民事訴訟以上に判決が出るまでの期間も長くなることから、和解による早期の解決を図るケースも多いです。

なお、医療訴訟の流れについて詳しく知りたい方は、下記の関連記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

がんの見落としに対する賠償金請求を認めた裁判例

ここからは、実際の裁判でがんの見落としについて賠償金請求が認められた理由や認められた賠償金の金額・内訳などについて解説していきます。

肺がんの見落としと死亡との間の因果関係を認め、5,400万円の賠償請求を認めた裁判例

概要と争点

本件は、亡Aが被告の経営する医療機関で毎年健康診断を受けていたのに肺がんで死亡したのは、同医療機関の医師が健康診断時に異常陰影を見落とした過失が原因であるとして、亡Aの遺族である原告らが、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案です(奈良地裁平成15年9月26日判決)。

この事案での主な争点は以下のとおりです。

  1. 亡Aの健康診断の際、撮影された胸部レントゲン写真に肺がんなどの疑いがある異常陰影があったのに、医師がこれを見落とし、亡Aに精密検査の受診などを勧めなかったことに過失があるか
  2. 医師の過失と亡Aの死亡との間に因果関係があるか
  3. 死亡したことで生じた亡Aの損害内容と損害額

判決

裁判所は、定期健康診断の際の検査担当医師のレントゲン読影に関する過失とその後の患者の肺がんによる死亡との間の因果関係を認め、病院側に約5,400万円の損害賠償を命じました。

裁判所による判断

裁判所は、検査担当医師は亡Aの胸部レントゲン写真から異常陰影を発見することが可能であり、肺がんの疑いを持つことができたため、直ちに精密検査受診の指示をしなかった点において過失があると判断しました。

そして、定期健康診断の際に存在した肺がんは比較的早期のがんであるとも指摘したのです。

その当時精密検査を受けていればがんを容易に発見することができ、手術をすれば完治あるいは長期生存することが可能であったとして、担当医師の過失と亡Aの死亡との間には因果関係が存在すると判断しました。

裁判所が認定した賠償金額

裁判所は、逸失利益・死亡慰謝料・治療費・葬儀費用・弁護士費用を認めています。裁判所が認定した損害賠償の内訳と賠償金額は、以下のとおりです。

損害の内訳と賠償金額

損害の内訳賠償金額
逸失利益2,675万5,000円
死亡慰謝料2,000万円
治療費150万円
葬儀費用120万円
弁護士費用480万円
合計※5,425万5,000円

※原告3名分の合計額

肺がんの見落としについて400万円の慰謝料を認めた裁判例

概要と争点

本件は、原告が市の開設する医療機関で健康診断を受けたが、担当医師が胸部レントゲン写真の異常陰影を見落としたことが原因で肺がんの発見が遅れ、手術が1年遅れたために肺がんが進行し、手術で腫瘍は摘出したものの1年前に手術を受けた場合と比べて5年生存率が低下したとして、医師に対して民法709条の不法行為、市に対して民法715条の使用者責任あるいは診療契約に基づく債務不履行責任に基づき、損害賠償を求めた事案です(東京地裁平成18年4月26日判決)。

この事案では、病院側も医師に肺の異常陰影を見落とした注意義務違反(過失)があることは認めていました。

この事案での主な争点は以下のとおりです。

  1. 医師のがんの見落としにより原告の5年生存率がどの程度低下したか
  2. 原告の損害の程度

判決

裁判所は、医師のがんの見落としにより原告の5年生存率が30パーセント低下したと判断し、病院側に450万円の損害賠償を命じました。

裁判所による判断

裁判所は、医師の見落としによって原告の肺がんの発見が11か月間遅れ、摘出手術が遅くなったことによる術後5年生存率の低下は、30パーセントと判断しました。

そして、がんの見落としによって原告に生じた損害は、見落としがなく早期にガンが発見され速やかに手術がされた場合に比較して、術後5年生存率が低下してガンの再発による死の危険が高まったことに伴う不安や恐怖の高まりという精神的苦痛であると認定しました。

裁判所が認定した賠償金額

裁判所は、慰謝料・弁護士費用を認めています。裁判所が認定した損害賠償の内訳と賠償金額は、以下のとおりです。

損害の内訳と賠償金額

損害の内訳賠償金額
慰謝料400万円
弁護士費用50万円
合計450万円

胃がんの見落としと死亡との間の因果関係を認め、4100万円の賠償請求を認めた裁判例

概要と争点

本件は、亡Aが被告の開設する医療機関で造影検査を受けた際、胃がんの可能性を指摘されなかったにもかかわらず、その約1年3か月後に胃がんで死亡するに至ったことについて、亡Aの遺族である原告らが、被告には造影検査の結果を踏まえて内視鏡検査を実施するか、内視鏡検査ができる他の医療機関に転院させるべき注意義務を怠った過失があるなどと主張して、被告に対し、診療契約の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案です(名古屋地裁平成19年7月4日判決)。

この事案での主な争点は以下のとおりです。

  1. 内視鏡検査の実施または内視鏡検査の可能な他の医療機関に転院させるべき注意義務違反(過失)の有無
  2. 上記過失と亡Aの死亡との間に因果関係があるか
  3. 死亡したことで生じた亡Aの損害内容と損害額

判決

裁判所は、被告には造影画像読影後速やかに内視鏡検査等を行い得る医療機関を紹介し、精密検査を受けるよう指導すべき義務を怠った過失があり、造影検査後速やかに内視鏡検査が実施されていれば、医療水準に見合う治療が開始され、患者が死亡した時点でなお生存していた高度の蓋然性が認められるとして、病院側に約4,100万円の損害賠償を命じました。

裁判所による判断

裁判所は、亡Aの造影画像から、がんの存在が相当程度強く疑われるところ、亡Aが胃がんの場合にも起こり得る症状を訴えていたこと、亡Aが胃がんの好発年齢と言われる年代であったことなどからすれば、被告には、造影画像読影後、速やかに内視鏡検査等を行い得る医療機関を紹介し、精密検査を受けるよう指導すべき義務を怠った過失があると判断しました。

そして、被告が、内視鏡検査などを行い得る医療機関を紹介し、精密検査を受けるよう指導していれば、亡Aの胃がんは発見され、これに対する切除術などの医療水準に見合う治療がなされることによって、亡Aが死亡した時点でなお生存していた高度の蓋然性が認められるとして、被告の過失と亡Aの死亡との間には因果関係が存在すると判断しました。

裁判所が認定した賠償金額

裁判所は、逸失利益・慰謝料・葬儀費用・弁護士費用を認めています。裁判所が認定した損害賠償の内訳と賠償金額は、以下のとおりです。

損害の内訳と賠償金額

損害の内訳賠償金額
逸失利益1721万9164円
慰謝料1900万円
葬儀費用150万円
弁護士費用360万円
合計※4131万9164円

※原告2名分の合計額

がんの見落としを含む医療訴訟の裁判例について、他の事案も知りたいという方は、下記の関連記事にも解説がありますので参考にしてみてください。

がんの見落としに対する賠償金請求を認めなかった裁判例

一方で、がんの見落としについて裁判所が賠償金請求を認めなかった裁判例も存在するので、その内容を解説していきます。

肺がんの見落としについて賠償金請求を認めなかった裁判例

概要と争点

被告の開設する病院に勤務していたA医師が肺がんで死亡したことにつき、A医師の遺族らが、同病院の呼吸器科医師には、職場における定期健康診断の一環として撮影されたA医師の胸部レントゲン写真の異常陰影を見落とした注意義務違反があり、被告には、健康診断の胸部レントゲン写真の読影に際し二重読影態勢を整備しなかった注意義務違反があるとして、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です(名古屋地裁平成21年1月30日判決)。

この事案での主な争点は以下のとおりです。

  1. 異常陰影を見落とし、精密検査を指示しなかった注意義務違反の有無
  2. 健康診断において二重読影を実施しなかった注意義務違反の有無

判決

裁判所は、集団検診において行われる読影条件の下において、これを行う一般臨床医の水準をもって読影した場合に、異常ありとして指摘すべきかどうかの判断が異なり得るといわざるを得ないから、医師がレントゲン写真の異常陰影を指摘しなかったことが注意義務に反するものということはできないと判断しました。

また、法令上健康診断における二重読影が要求されておらず、同様の労働環境にある職場において、二重読影を実施している病院が3分の1にも満たないという状況などからしても、被告病院における職場健康診断において、胸部レントゲン写真の二重読影を実施すべき義務があったということはできないと判断しました。

上記のとおり、この事案では、病院側に注意義務違反(過失)が認められないとして、賠償金請求が認められませんでした。

胃がんの見落としについて賠償金請求を認めなかった裁判例

概要と争点

亡Aが、被告の経営する病院で健康診断(人間ドック)を受けた際に撮影された胃のレントゲンに異常陰影が認められたにもかかわらず、担当医師が読影を誤って異常陰影を見落とし、胃の精密検査を指示しなかったことにより、亡Aが早期に精密検査を受ける機会を失った結果、胃がんが進行・転移し死亡するに至ったとして、亡Aの遺族である原告らが、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です(東京高裁平成13年3月28日判決)。

この事案での主な争点は以下のとおりです。

  1. 担当医師が健康診断において撮影された亡Aの胃部レントゲンを読影した結果、疾病につながる異常所見があることを疑い、精密検査を指示すべきであったか否か
  2. 健康診断における亡Aの胃部レントゲン検査につき、不十分なレントゲン撮影しか行わず、かつ、再検査などをすべきであったにもかかわらず、これを怠った過失の有無

判決

裁判所は、鑑定人のような消化器病を専門とする医師ですら、過半数が一致して異常所見を指摘した部分はないほど、正確に読影をして異常所見を指摘することが極めて困難なものであったと判断しました。その上で、通常の医療機関で実施される人間ドックの担当医が亡Aの胃部レントゲンを読影して、亡Aの胃に異常所見があることを指摘することは、その医療水準に照らし著しく困難であったとして、本件健康診断の担当医が亡Aの胃部レントゲンを読影した結果、異常所見があることを指摘しなかったことに過失は認められないと判断しました。

また、5名の鑑定人のうち、レントゲン撮影が不十分であると指摘したのは1名のみであること、指摘した鑑定人も、一部確定診断の結果に沿う鑑定意見を述べていることから、被告病院の行ったレントゲン検査の質が通常の医療機関における医療水準に達せず、人間ドックの目的を達成することができないものであったとまでは認められないと判断しました。したがって、本件では担当医が亡Aに対し、再度のレントゲン検査などの再検査をすべき注意義務は存在しなかったと判断しました。

上記のとおり、この事案では、病院側に注意義務違反(過失)が認められないとして、賠償金請求が認められませんでした。

乳がんの見落としについて賠償金請求を認めなかった裁判例

概要と争点

Aが、被告B病院での健康診断に際し、被告C医師により乳がん検診を受けたが、被告Cが必要な検査を怠った過失により乳がんの発見が遅れたため、抗がん剤治療による苦痛とがんの転移による死への恐怖に苛まれたとして、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。(東京地裁平成18年5月24日判決)。

この事案での主な争点は以下のとおりです。

  1. 健康診断における乳房レントゲン検査(マンモグラフィ)の実施義務の有無
  2. 被告Cによる説明義務違反ないし指示義務違反の有無

判決

裁判所は、健康診断では、問診及び視触診を実施し、その結果以上があると認められた場合に限り乳房レントゲン検査(マンモグラフィ)を実施すれば足り、乳房の痛みがあることのみを端緒として乳房レントゲン検査(マンモグラフィ)を実施すべき注意義務があるとは認められないと判断しました。

その上で、被告Cは乳房の痛みを訴えるAに対して問診及び視触診を実施して、異常がないと判定していることから、注意義務違反をした過失はないと判断しました。

また、Aの検診を担当した被告Cに、乳がんの兆候とは認められない乳房の痛みについて、経過観察などをして外来受診するよう説明ないし指示すべき義務もないと判断しました。

上記のとおり、この事案では、原告が主張する注意義務違反(過失)が被告に認められないとして、賠償金請求が認められませんでした。

本記事のまとめとアトムの無料相談窓口の紹介

がんの見落としに関する賠償金請求について、請求が認められるための要件や、請求の流れ、実際の裁判例などについて解説してきました。最後にポイントをまとめておきます。

  • がんの見落としについて賠償金請求するには、病院側の過失・損害・因果関係の立証が必要
  • 賠償金請求をする際には、医療調査・示談交渉・裁判という流れをたどることが多い
  • 医療調査や医療訴訟の提起を実施するには、弁護士や医師など専門家の協力を得ないと困難

がんの見落としについて賠償金請求を検討されている方は、今後どのような対応をとっていくべきなのか弁護士に相談してみましょう。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了