ラグビー事故で負傷|学校に補償を請求できる?重傷・死亡事故も起こりうる
更新日:
ラグビーは学校の部活動でも盛んにおこなわれており、近年では特に盛り上がりを見せているスポーツのひとつでしょう。
しかし、選手同士の接触機会が多く、走る、投げる、タックルを受けるなどの様々な動作を伴うことから怪我がつきものです。
もし子供が学校で負傷してしまったら、どのような補償を受けられるのか、事故の内容によって親御さんが取るべき対応は異なります。
この記事を読めば、学校で起こったラグビー事故の事例や、学校や教諭に対して損害賠償請求ができるケース、弁護士に依頼・相談すべき理由がわかります。
また、損害賠償請求まではいかなくても、学校の管理下で起こった事故を補償してくれる災害共済給付についても解説しますので、お役立てください。
目次
学校におけるラグビー事故の発生事例
ラグビーは選手同士の接触頻度が極めて高く、全身を使った激しいスポーツであるため、事故がおこると重大な結果をむかえるリスクがあります。
また、屋外競技のため気候も影響しやすく、部活や授業がおこなわれる環境にも注意が必要です。
ラグビー事故によって重篤な後遺障害が残ったり、死亡に至る事例も多数あります。ここからは学校で実際に起こったラグビー事故の事例をみていきましょう。
事例(1)試合中にスクラムでもみ合い、頚髄損傷の重傷を負った
公立高校のラグビー部に入部した一年生が、試合中に他の選手等とスクラムを組んでいた際にもみ合いになり、第五頚椎脱臼骨折、頚髄損傷という傷害を負いました。結果として、四肢体幹麻痺という極めて重篤な後遺障害が残ってしまったのです。
事故にあった学生がラグビーを始めたてであったこと、スクラムが危険な状況に達していたことを看過してしまったことなどから指導教諭の安全配慮義務違反があると判断され、学校側に損害賠償義務が認められました。(大阪地方裁判所 平成3年(ワ)第5839号 損害賠償請求事件 平成5年12月3日)
事例(2)ラグビーの練習中に熱中症となり、後に死亡した
市立中学校のラグビー部に所属していた生徒が、練習中に熱中症の症状を呈し、救急センターに搬送されたものの死亡してしまいました。
顧問教諭は、生徒に熱中症を疑うべき症状が見られたにもかかわらず適切な対応を取りませんでした。また、ぐったりしている生徒に対して思慮に欠ける軽率な言動もみられたのです。判決では教諭に対して安全配慮義務違反の過失が認められました。(神戸地方裁判所 平成13年(ワ)第2175号 損害賠償請求事件 平成15年6月30日)
学校でのラグビー事故は災害共済給付を申請しよう
学校の授業や部活動でラグビーをしていて怪我をした場合、独立行政法人日本スポーツ振興センターから「災害共済給付」を受けられる可能性があります。
災害共済給付は、生徒の保護者と学校で共済掛金を支払うことで、突発的・不測の事故に対して補償が受けられる仕組みです。
加入に際しては入学時に同意書提出などが求められており、すべての学校が災害共済給付の加入校とは限りません。まずは学校が災害共済給付に加入しているのかについて確かめてください。
災害共済給付の申請方法
災害共済給付の申請は、学校を通して行います。
まずは学校から請求用紙を受け取り、医療機関に提出してください。なお医療機関の証明は月ごとに必要となるため、長期の治療を要する場合には注意が必要です。
医療機関の証明を受けたら、用紙を学校に提出しましょう。請求が認められた場合には、3ヶ月後を目安として給付金が支払われます。
ポイント
- 災害共済給付の加入状況は学校ごとに異なる
- 災害共済給付の申請用紙は学校から受けとる
- 医療機関の証明は月ごとに必要
災害共済給付が全てを補償してくれる?
学校の管理下でラグビーをしていて負傷したり、後遺障害が残ってしまったり、死亡してしまった場合には、災害共済給付からの給付金を受けとることができます。
災害共済給付金として受けとれる金額は次の通りです。
給付金額 | |
---|---|
医療費 | 治療費用の40% |
障害見舞金 | 4,000万円~88万円 |
死亡見舞金 | 3,000万円 |
※初診から治癒にいたる費用総額が5,000円以上(3割負担で1,500円以上)であること
医療費や障害・死亡の見舞金が支払われることで、受けた損害の全てを補償してもらえるようにみえますが、実際には不足している場合があります。災害共済給付を受け取るだけでは十分な補償とは言えない可能性があるのです。
災害共済給付金に含まれず争点となりやすい損害に「逸失利益」があります。
逸失利益
後遺障害が残ったこと、または死亡により、将来的に得られたはずの収入が失われたという損害
次のように考えると逸失利益についてイメージしやすいでしょう。
- ラグビー事故で寝たきりになってしまい就労不能になった
- 後遺障害が残ったことで就ける仕事が制限された
- 生命を絶たれてしまい、一切の収入がなくなった
学生はラグビー事故が起こった時点では収入を得ていないのが通常ですが、基本的に将来は仕事について収入を得るはずであったといえるため、逸失利益が生じたと判断されるのです。
そのため、学校側にラグビー事故の原因が認められれば、逸失利益など災害共済給付に含まれない損害に関しても請求できます。逸失利益の金額は高額になることが多いので、災害共済給付とは別個に請求することを検討するべきでしょう。
なお逸失利益の金額には個々の状況を反映する必要があるため、請求額の算定は弁護士への相談・依頼がおすすめです。
逸失利益の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご確認ください。
学校・教諭への損害賠償請求
子どもが学校の部活動や体育の授業中に怪我をしてしまい、学校や教諭個人への損害賠償請求を検討している人もいるでしょう。これまでの事例からも、ラグビー事故に関する損害賠償請求が認められる可能性があります。
ただし、どんな請求でも認められるというわけではありません。損害賠償請求の認否を分けるポイントは、学校や教諭に事故の責任があるのかという点です。
学校の責任と教諭の責任の視点から考えていきましょう。
ラグビー事故の責任を学校に問えるのか
学校に対してラグビー事故の責任を問えるかどうかは、事故原因が「教諭の故意や過失があるケース」と「学校管理の施設や設備に瑕疵があるケース」に該当するかを見極ねばなりません。
教諭の故意・過失とは何か
学校に対して責任を問えるかのポイントとして重要な「教諭の故意」と「教諭の過失」を考えていきましょう。
教諭の故意とは、学生に対する度を超えた指導(体罰を含む指導など)が該当します。
次に、教諭の過失とは安全配慮義務違反を指します。
安全配慮義務とは、学生が危険にさらされたり、怪我をすることなく、安全な環境で過ごせるように注意するものです。教諭の安全配慮義務違反が認められた場合、教諭に過失があったと判断されます。
ラグビー事故の発生を予見しえたにもかかわらず、適切な対策をとらずに回避しなかった場合には、教諭に安全配慮義務違反があったと判断されるので、過失が認められるでしょう。
このように、教諭個人による故意や過失が事故原因であると認められた場合には、教諭の雇用者である学校にも責任を問えます。
学校管理の施設や設備の瑕疵とは何か
施設や設備に瑕疵がある状態とは、本来備えているべき安全性に欠けている状態を指します。
施設や設備の瑕疵が原因となってラグビー事故が生じた場合には、学校に対して事故の責任を問うことができます。
ラグビー事故の責任を教諭個人に問えるのか
教諭個人に対して事故の責任を問えるかどうかは、教諭の故意や過失によって事故が起きたと認められるかによります。
安全配慮義務を怠るなど教諭に過失があったと認められた場合には、教諭個人に対して責任を問えるでしょう。
ただし、学校が公立である場合は、設置主体である国・地方公共団体が損害賠償責任を負うため、教諭個人への損害賠償請求は認められません。公立学校と私立学校では、教諭個人に対する損害賠償請求の可否が異なるのです。
教諭への損害賠償請求 | |
---|---|
公立学校 | できない (国・地方公共団体への請求) |
私立学校 | できる |
損害賠償請求権にもとづいてどのような請求が可能であるのかについては『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』の記事をご覧ください。
学校でのラグビー事故は弁護士に相談すべき
学校や教諭個人に対する損害賠償請求を視野に入れている方は、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士への相談・依頼で得られるメリット
学校で起こった事故の場合、まずは学校関係者との話し合いから始まるケースがほとんどです。お子さんの入院・通院付き添いや治療経過のことで頭がいっぱいになるなか、親御さんが冷静な対応をすることは困難でしょう。
弁護士に相談・依頼するメリットは千差万別ですが、その一例を示します。
- 請求すべき損害賠償額がわかる
- 損害賠償請求にかかる書類や証拠収集などを任せられる
- 学校側との示談交渉や裁判を任せられる
弁護士への相談・依頼をすることで、適切なサポートを受けられ、ご家族の精神的・肉体的な負担を和らげることにつながります。
しかし、弁護士にどんなことを相談すればいいのかわからずに躊躇ってしまう方は多いのではないでしょうか。関連記事では、弁護士相談のメリットや、学校を訴えたい方に向けた基本情報を解説しています。学校事故の被害について相談先を検討している方は併せてご覧ください。
ラグビー事故に関する無料相談はこちら
学校で生じたラグビー事故によって、お子さまに大きな後遺障害が残ってしまったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。相談にかかる費用が心配で弁護士への法律相談に踏み切れない方も、安心してご利用ください。
法律相談と弁護士への依頼は全くの別物です。法律相談を通じてご本人やご家族にどんなメリットがあるのか、今の悩みや不安が解消できるのかを十分検討したうえで依頼するかどうかを判断してください。実際に依頼する場合にはどれくらいの弁護士費用がかかるのかも、しっかりと説明します。
無料の法律相談を利用する方は、下記フォームから予約をお取りください。予約は専属スタッフが24時間365日体制で対応して受け付けています。
無料法律相談ご希望される方はこちら
アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了