バスケットボール事故|学校は部活や体育授業中の怪我を補償してくれる? | アトム法律事務所弁護士法人

バスケットボール事故|学校は部活や体育授業中の怪我を補償してくれる?

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学校事故|バスケットボール中の事故で補償は受けられる?

バスケットボールは、学校の部活動や体育の授業でもよくみられるスポーツです。その一方で、他者との接触機会が多いことや運動強度の高さから怪我のリスクが高い球技ともいえます。

お子さんが部活動や体育の授業中に事故にあったら、誰にどのような補償を求めることができるのでしょうか。

もしバスケットボール事故が起こった背景に、学校や指導者の責任が認められれば、被害者が負った損害の請求が可能です。

本記事は、バスケットボール事故で誰に対して、どんな損害賠償を請求できる可能性があるのか、弁護士への法律相談や交渉を依頼するメリットを解説します。

学校で起こった事故の補償が受けられる「災害共済給付」についても併せてお役立てください。

バスケットボール事故|学校で起こった事故の事例

バスケットボール事故は、他人との接触や、ボールで指を突くなどの試合中の事故のほかにも、部活動をおこなう環境が原因となって起こる事故もあります。

学校のどんなシーンで事故が起こりうるのか、実際に起きたバスケットボール事故の事例をみていきましょう。

事例(1)部活中に熱中症状、急性心不全で死亡した

公立高校に通う生徒が、バスケットボールのクラブ活動練習中に熱中症状を起こした後に急性心不全で死亡しました。

本事故発生時、生徒は複数回にわたって倒れており、とくに2回目に倒れた際には意識障害を伴う異常な状態であったと考えられました。この時点において、教諭は救急車の手配や医師の診断を受けさせる注意義務があったとし、その注意義務を怠った過失を認めたのです。(松山地方裁判所西条支部 昭和63年(ワ)第158号 損害賠償請求事件 平成6年4月13日)

事例(2)体育の授業中に顔面を蹴られて後遺障害が残った

体育のバスケットボールの試合中、私立学校に通う生徒が同級生に顔面を蹴り上げられ、脳脊髄液減少症などの傷害を負いました。これにより長時間の起立保持不能、倦怠感、頭痛および記銘力障害が残ったのです。

被害にあった生徒側は、怪我をさせた本人および学校側の監督責任を求めて損害賠償請求を行いました。

判決では、怪我をさせた生徒が故意に被害生徒を蹴ったものとして損害賠償請求を認めた一方、学校側の監督責任までは認めませんでした。(鹿児島地方裁判所 平成20年(ワ)第1280号 損害賠償請求事件 平成23年11月22日)

事例(3)顧問の暴行と生徒の自殺に関連が認められた

高校のバスケットボール部の顧問教諭から、継続的な暴行・威迫的言動を伴う指導を受けていた生徒が自殺してしまった事例です。

顧問教諭の暴行・言動などによって生徒が精神的に追い詰められて自殺に至る危険があることは、教員として予見すべきで、予見できたものと認められました。

その結果、判決では、顧問教諭側の当該行為が不法行為にあたり、生徒の自殺に対して7割の寄与度をもつとされました。(東京地方裁判所 平成25年(ワ)第32577号 損害賠償請求事件 平成28年2月24日)

バスケットボール事故では災害共済給付の申請をする

部活動や体育の授業中など、学校の管理下でバスケットボール事故が起きた場合には「災害共済給付」による補償が受けられる可能性があります。

災害共済給付は、独立行政法人日本スポーツ振興センターから支払われる給付金のことです。掛金は保護者と学校で支払っており、入学時に保護者の同意が求められています。全ての学校が加入しているとは限りませんので、加入状況については確認しておきましょう。

災害共済給付の申請ステップ

災害共済給付は、学校を通して請求する仕組みです。
給付を受けるには治療を受けた医療機関で証明をもらう必要がありますので、まずは請求に必要な書類を学校から受け取り、月ごとの医療機関の証明を学校に提出しましょう。

請求手続きから約3ヶ月程度で給付金が支払われます。

災害共済給付以外にも請求すべき損害がある

災害共済給付金として支払われる金銭は、医療費、障害見舞金、死亡見舞金です。給付金額は以下の通りになります。

災害共済給付金額

給付金額
医療費治療費用の40%
障害見舞金4,000万円~88万円
死亡見舞金3,000万円

※医療費は初診から治癒までの総額が5,000円以上(3割負担で1,500円以上)であること

怪我の治療費や障害が残ったことへの見舞金、死亡時の見舞金が項目として含まれているため、災害共済給付によって損害のすべてがカバーされていると考える人もいるでしょう。

しかし、災害共済給付は被害者が負った損害の全てを補てんするものではありません。たとえば、バスケットボール事故によって後遺障害が残ったり、死亡した場合に請求すべき損害への補償に「逸失利益」があります。

逸失利益とは何か

後遺障害や死亡事故の被害にあい、本来であれば将来にわたって得られたはずの収入が得られなくなったという損害

逸失利益は将来の収入を計算する必要があるため、計算方法が複雑となっています。そのため、正確な請求金額を知るには、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
後遺障害や死亡を原因とする逸失利益の計算方法については、以下の関連記事で確認可能です。

事故の責任が学校や指導者にあれば損害賠償請求

部活動や授業中にバスケットボールをしていて怪我をした場合、災害共済給付を受けるしか補償はないのでしょうか。

実は、学校や指導者に事故の責任が認められる場合には損害賠償請求が認められる可能性があります。損害賠償請求が認められるケースを、学校と指導者の責任に場合分けして考えていきましょう。

学校にバスケットボール事故の責任を問えるのか

バスケットボール事故で学校に責任を問えるケースは次の通りです。

  1. 指導者の故意・過失が認められる場合
  2. 学校の施設・設備に瑕疵がある場合

それぞれのケースにわけて説明していきます。

指導者の故意や過失が認められるケース

指導者の故意とは、生徒の頭をたたく、ビンタをする、蹴るなど体罰をふくむ行き過ぎた指導を指します。

では、過失とは何を指すでしょうか。故意と比べてやや分かりにくい「過失」について考えていきましょう。

過失とは義務違反があった場合に認められ、指導者は生徒が安全な環境で、危険にさらされないように注意を払う安全配慮義務を負っています。
安全配慮義務違反が認められると指導者側に過失があったと判断され、ひいては、指導者を雇用する学校の責任も問うことができるのです。

安全配慮義務違反については、バスケットボール事故が起こる可能性を予見していたり、予見できたはずなのに、事故発生を避けるための適切な対応をしなかった場合に認められます。

具体的には、以下のような事実が考えられます。

  • 接触プレーの危険性について適切な指導を行っていなかったために練習中に生徒が負傷した
  • 捕球の方法について適切な指導を行っていなかったためにボールが目や耳などにあたり生徒が負傷した
  • 気温が高く熱中症の恐れがあるのに適切な水分補給を行わせなかったために生徒が熱中症となった

重要

バスケットボール事故の発生を予見しえた場合や、予見していたにもかかわらず適切な対応を講じなかった場合に、指導者個人や指導者を雇用する学校に責任を問える

学校が管理する施設や設備に瑕疵があるケース

瑕疵とは、本来もつべき安全性に欠けている状態を指します。

独立行政法人日本スポーツ振興センターの事例報告によると、バスケットゴールのシュート板が外れて児童が怪我をした事例や、体育館に置いてあった衝立を移動させる際に倒れてしまい部活動中の児童が怪我をした事例が報告されています。

また、令和3年4月には北九州市の中学校でバスケットゴールが落下して生徒が怪我をする事故も発生しました。

バスケットボールは専用設備を使う球技であるため、事故の発生と設備管理の関連も極めて重要といえます。

指導者個人にバスケットボール事故の責任を問えるのか

バスケットボール事故の原因について、指導者の故意や過失が認められた場合には、指導者個人に責任を問えます。

具体的には、指導者として安全配慮義務を怠ったことで、予見しえた事故を回避できなかったと認められた場合です。

しかし、学校が公立か私立かによって、指導者個人への損害賠償請求の可否が異なる点に注意しましょう。公立学校の場合は、学校の設置者である国や地方公共団体が損害賠償責任を負うことになり、指導者個人への請求はできません。

指導者個人に対する損害賠償請求の可否

学校損害賠償請求の可否
公立請求できない
私立請求できる

損害賠償請求権にもとづいてどのような請求が可能であるのかについては『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』の記事をご覧ください。

バスケットボール事故が学校で起こったら弁護士に相談

子どもがバスケットボールの部活中や練習中、体育の授業中に怪我をしてしまい、学校や教師個人への損害賠償請求を視野に入れている場合には、まず弁護士への相談を検討してください。

バスケットボール事故|弁護士相談がおすすめな理由

学校で事故が起きた場合、その解決を弁護士に依頼して得られる効果は千差万別です。

  • 損害賠償額の適切な相場がわかる
  • 損害賠償請求に必要な手続き・証拠の収集を任せられる
  • 示談交渉や裁判を任せられる

学校で起こる事故は、保護者がその場に立ち会っていないことも多いものです。

突然「お子さんが怪我をしました」と学校から連絡が入ったり、帰宅した子供の様子がおかしいということで、親御さんとしてどのように対応すべきか不安を抱えることになるでしょう。

まずは事実の確認を含めて学校側と話し合うなど、適切なプロセスを踏む必要があります。弁護士に依頼することで、どのような対応をするべきかという不安を解消できるでしょう。

  • どんなことから相談していいかわからない
  • 弁護士に相談するのは敷居が高そう

弁護士相談のメリットをもっと詳しく知りたい方や、学校を訴えることも視野に入れている方は、関連記事も併せてお読みください。

バスケットボール事故で無料の法律相談を活用

学校で生じたバスケットボール事故によって、お子さまが大きな後遺障害を負ってしまったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。相談費用が不安だという方もお気軽に法律相談をご利用いただけます。

法律相談を利用したからといって、契約を迫ることはありません。

  • 弁護士に依頼するとどんなメリットがあるの?
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  • 具体的にかかる弁護士費用は?

お悩みや不安を解消したうえで依頼を検討してください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了