学校の廊下で事故に遭った場合に知っておくべき3つのポイントを解説 | アトム法律事務所弁護士法人

学校の廊下で事故に遭った場合に知っておくべき3つのポイントを解説

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学校の廊下で事故|知っておくべきポイント3

「廊下を走るな!」と先生に注意を受けた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

学校の廊下は滑りやすいうえ、多くの生徒が行き交う場所でもあるため、廊下を走ると、滑って転倒したり他の生徒と衝突する危険性があります。打ち身程度で済めばまだいいですが、場合によっては大怪我を負い入院や通院を余儀なくされたり、後遺症が残るケースすらあるのです。

このような場合、誰が責任を負うことになるのでしょうか。

今回は、学校の廊下で事故に遭った場合の責任の所在や責任の内容損害賠償、学校事故の被害者が利用できる保険の話を中心に解説します。

学校の廊下における怪我は誰が責任を負う?

元気盛りな子どもが多い学校では、大人では考えられないようなことが原因となって事故につながる可能性があります。

いわゆる「廊下走り」による事故もその例の一つといっていいでしょう。

たとえば、廊下を走っていた生徒が滑って転倒し怪我を負った場合、責任を負うのは誰なのでしょうか。

学校で生徒が怪我を負った場合の責任の所在は、以下のように学校が公立学校か私立学校かで異なります。

公立学校の場合

公立学校において生徒が廊下で転倒し怪我を負った場合、責任を負う可能性があるのは、学校を設置している国、または、地方公共団体である都道府県や市区町村です。

公立学校の教職員は、生徒が安全に生活できるように配慮しなければならないという義務を負っています。このような配慮のことを「安全配慮義務」といいます。

安全配慮義務があるにもかかわらず、廊下で滑ることがないよう安全性を確保するための措置を取っていなかったために生徒が転倒して怪我を負った場合、学校を設置している国や地方公共団体は生徒に対して損害賠償責任を負うことになるのです。

また、学校の施設の一部でもある廊下について、通常、有すべき安全性を欠いていたために生徒が転倒し怪我を負った場合にも、国や地方公共団体は生徒に対して損害賠償責任を負うことになります。

私立学校の場合

私立学校において生徒が廊下で転倒し怪我を負った場合、責任を負う可能性があるのは学校です。

私立学校の場合も公立学校の場合と同様に、教職員は生徒に対して安全配慮義務を負っています。

そのため、滑りやすくなっていた廊下の状態を放置していた、または、過去にも廊下で転倒した生徒がいたにもかかわらず必要な措置を講じていなかったような場合には、教職員に安全配慮義務違反が認められる可能性が高いです。

この場合、教職員を使用している学校が生徒に対し損害賠償責任を負うことになります。これを「使用者責任」といいます。

公立学校と私立学校の違い

公立学校の場合、たとえ教職員に安全配慮義務違反が認められたとしても、直接教職員に対し損害賠償を請求することはできません。

この場合、「国家賠償法」により解決が図られるため、教職員に代わって国や地方公共団体が責任を負うこととされているのです。

一方で、私立学校の場合は、公立学校の場合とは異なり「民法」で解決が図られるため、教職員に直接、損害賠償を請求できます。

また、学校の種別を問わず、廊下での事故が他の生徒の過失・故意によるものであった場合は、他の生徒やその両親に損害賠償請求可能です。

学校が公立学校であっても私立学校であっても、安全配慮義務は学校側に事故の責任を問えるのかを左右する一つのポイントといえます。関連記事では、安全配慮義務とは何かを掘り下げて解説していますので、あわせてお読みください。

判例|廊下が滑りやすく安全性に問題があった

公立中学校の生徒は、校舎内の廊下で同級生に手を引っ張られて転倒し負傷しました。福岡高等裁判所は、学校の廊下が非常に滑りやすい状態であったことなど、学校施設として安全性に欠けていたことを指摘し、学校側の損害賠償責任が認められたのです。

この学校の廊下は結露が相当にひどく、極めて滑りやすいことが教職員の間でも話題に上がっていたことなどが理由の一つにあげられました。(福岡高等裁判所 平成25年(ネ)第527号 損害賠償請求控訴事件 平成25年12月5日)

このように、学校の設備が本来備えるべき安全性を有していない状態を「瑕疵がある」といい、学校側に営造物責任や工作物責任などを問えます。
関連記事は学校の老朽化に焦点を当て、損害賠償請求の可否を解説した記事です。学校の老朽化も事故の発生原因となりえますので、あわせてお読みください。

学校の廊下で事故に遭った場合の損害賠償

学校の廊下で事故に遭い怪我を負ったような場合、一定の条件を満たしていれば、国や地方公共団体、教職員や加害者の生徒などに損害賠償を請求することが可能です。

ここでいう「損害」は、主に慰謝料とそれ以外の損害に分けることができます。

学校の廊下における事故で請求できる慰謝料

学校事故により怪我を負った学生やその両親は、精神的苦痛を受けることが通常です。
そのため、被害者側は精神的苦痛による慰謝料を請求できます。

ここでいう「慰謝料」には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つの種類があります。
それぞれの慰謝料が請求できるケースとは以下の通りです。

  • 入通院慰謝料
    治療のために必要となった入院や通院が必要となった場合に請求できる
  • 後遺障害慰謝料
    怪我が完治せずに残った後遺症の症状が後遺障害に該当する場合、後遺障害の程度に応じて請求できる
  • 死亡慰謝料
    被害者が死亡した場合に請求できる
    被害者の家族も固有の慰謝料請求が可能

入通院慰謝料は、怪我の程度、入院・通院の期間に応じて金額の相場は異なる見込みです。
後遺障害慰謝料は後遺障害等級ごとに相場が異なり、最も多い場合は数千万円に上るでしょう。
死亡慰謝料は、ご家族固有の慰謝料も含めて2,000万円~2,500万円が相場です。

慰謝料の相場や請求先については、関連記事を読むとさらに理解が深まります。併せてご覧ください。

慰謝料以外に請求できるもの

慰謝料とは被害者に生じた精神的苦痛を金銭化したものです。
そのため、被害者が受けた金銭的な損害については慰謝料とは別個に請求することができます。

慰謝料以外に請求できる損害は、「積極損害」と「消極損害」に分類することができるため、それぞれの損害の内容について紹介します。

積極損害|治療費や入通院に要した交通費など

学校事故により怪我を負った場合、その程度によっては病院に通院して治療を受け、または一定期間入院して怪我を治すことが必要になるケースがあります。

治療を受けるためには治療費や通院費が必要になり、入院が必要となった場合には治療費や入院費が必要です。

これらの費用は、学校事故に遭わなければ負担する必要のなかった費用ですので、損害として相手方に請求することができ、このような損害を「積極損害」といいます。

消極損害|休業損害や逸失利益

「休業損害」とは、事故による怪我で一定期間働くことができなくなり、収入が減ることによる損害をいいます。

被害者が幼稚園児や小学生、中学生であれば、休業損害を考慮する必要はありません。ですが、高校生ぐらいになるとアルバイトをしている学生もいます。

そのような場合、一定の条件を満たしていれば、休業損害を請求することが可能です。

また、「逸失利益」とは、本来得られるはずであった利益が事故により得られなくなった利益のことをいいます。

たとえば、学校事故により学生が死亡した場合や、学生に後遺障害が残った場合には、逸失利益として請求可能です。

このように、休業損害や逸失利益はいずれも本来得られるはずであった収入を損害として請求するものであり、このような損害を「消極損害」といいます。

学校事故で利用すべき保険

災害共済給付制度を利用しよう

学校の管理下で怪我や障害等を負った場合、「災害共済給付制度」を利用することが考えられます。

災害共済給付制度とは?

独立行政法人日本スポーツ振興センターが提供する公的給付制度で、同センターが学校の設置者と契約を締結することにより、学校事故に遭った生徒や児童を対象として医療費や見舞金等の給付を行う制度のこと

災害共済給付制度は任意加入の制度であるため、すべての学校が加入しているとは限りませんが、学校事故に遭った場合には同校が災害共済給付制度に加入しているかどうかを確認する必要があります。

学校が災害共済給付制度に加入していれば、被害を受けた生徒やその両親等は、以下の給付金を受け取ることが可能です。入学時に同意書を提出をしているはずですので、学校にも加入状況を確かめてみましょう。

保険により給付される内容

医療費

「医療費」とは、学校事故による怪我を治療するために支出した費用のことをいいます。具体的には、医療費として支出した合計額の4割(自己負担分の3割に治療に伴って要する費用として1割を加算したもの)に相当する金額を給付金として受けとることが可能です。

障害見舞金

「障害見舞金」とは、学校事故による怪我や疾病等が原因となって障害が残った場合に支給される給付金です。  

後遺障害は、障害の重さに応じて等級が第1級から第14級に分かれているため、障害見舞金として具体的に給付される額は等級によって異なります。

死亡見舞金

「死亡見舞金」とは、学校事故により死亡した場合に支給される給付金です。死亡見舞金として具体的に給付される額は、3,000万円となっています。

災害共済給付制度の利用方法については『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事をご覧ください。

学校事故の被害者が知るべきポイント3つと弁護士相談の案内

学校事故の被害者が知るべき重要ポイント

学校事故の被害者が知るべき重要ポイントは、次の3つです。

  1. 学校側に安全配慮義務違反があるとき、損害賠償請求が認められる可能性がある。
    公立学校と私立学校で、損害賠償請求の根拠となる法令や損害賠償請求先が異なる。
  2. 学校事故での損害賠償請求内容は慰謝料、積極損害、消極損害に大別できる。
  3. 学校事故に関しては災害共済給付制度から一定の補償を受けられる可能性がある。

学校で起こった事故については、責任の所在を明らかにすることが大切です。そして、学校側に安全配慮義務違反があるときには、災害共済給付制度以外にも、損害賠償請求によって損害の補てんを受けることができます。

学校側との話し合いや裁判の対応は、弁護士に任せることも有効でしょう。被害者やそのご家族だけで抱えるのではなく、法律の専門家のバックアップを受けることも検討してみてください。

学校の廊下における事故が起きたなら弁護士に相談

学校の廊下で事故が起きたのであれば、学校や加害生徒に対して損害賠償請求を行うことになります。

しかし、具体的に誰にどのような請求が可能であるのかを判断することは簡単ではありません。

また、請求の交渉を自力で行おうとすると、身体的にも精神的にも非常に疲れてしまいます。
特に、交渉がうまくいかず裁判を行う場合には、複雑な裁判手続きを1人で行わなくてはなりません。

そのため、損害賠償請求を検討しているのであれば、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了