デイサービスにおける事故の責任は?事故後にやるべき事も解説
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高齢化社会において、デイサービスを利用して、介護を受けている方も多いかと思います。
しかし、デイサービスをはじめとする介護施設における介護事故の件数も多くなっていることも事実です。
この記事では、デイサービスで事故の被害者になってしまった場合、責任の所在は誰にあるのか、どのように対応をするべきかを解説します。本記事がお役に立てば幸いです。
目次
デイサービスにおける事故事例の紹介
デイサービスでは、どういった事故が多いのでしょうか。
まずは、事故類型について説明をします。
デイケアと異なり、デイサービスでは医師が常駐しておりません。
そのため、事故が起こった際に介護施設職員が適切に対処をしなければならない点で、事故前後の介護施設職員の行動が特に重要といえるでしょう。
デイサービスでの事故種類|特に転倒事故が多い
デイサービス内での事故で最も多い事故は、入所者の転倒となっております。その他に起こりうる事故としては、ベッドや椅子などからの転落、飲食時の誤嚥、介護施設職員や利用者同士での衝突事故などが考えられます。
また、デイサービスでの送迎中の交通事故なども厳密には、デイサービス利用中の事故であるといえるでしょう。
デイサービス中の転倒事故とは
デイサービスでは、介護施設内でレクレーションや入浴、体操などを行いますのでその際にも転倒の危険があります。
また、椅子に座って他の利用者とおしゃべりをしているときも椅子からの転倒の可能性はありますし、トイレなどに行く際にも怪我をしてしまう可能性もあります。
転倒事故では骨折などの損害にとどまるケースが多いです。
しかし、最悪の場合、命の危険性もあるような事故につながる可能性があるため、介護施設側は事故防止のために十分な対策をする必要があるといえるでしょう。
介護施設職員は、利用者の筋力低下や認知能力の低下により、思ってもいないところで怪我をしてしまう可能性があるということを頭に入れておく必要があります。後述するように、転倒事故では、介護施設側に過失があったかが争点になります。
デイサービスでは送迎中にも事故が生じる
デイサービスにおいて多くの介護施設では、利用者の送迎を行っておりますが、送迎時にも事故が発生することもあります。
事故の内容としては、交通事故や車の乗り降りの途中によるものなどです。
この原因の一つとして、本来であれば、介護施設はドライバーなどの専門家を外注する必要があるところ、現状では、介護施設職員などが運転をしている点にあることが考えられます。その結果、交通事故が生じるリスクが増加しているのです。
送迎中の事故について損害賠償請求も視野に入れている方は、どんなものを請求できるのか、どういった方法がとれるのかについても知っておきましょう。交通事故の類型しだいでは、損害賠償請求相手がデイサービス側とはかぎらず、事故相手になる場合もあります。
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デイサービスにおける事故の責任は
では、このようなデイサービスにおける事故の責任は、どのようになるのでしょうか。治療費や慰謝料についてどのように判断をされているのか解説します。
介護施設側に過失があれば責任を問える
介護施設側と利用者の間で、介護サービスを目的とする契約が締結されます。この契約にもとづいて、介護施設は利用者の安全に配慮すべき安全配慮義務を負うことになのです。
そして、この安全配慮義務に反したことが原因で事故が起こってしまった場合は、介護施設に過失が認められるため、債務不履行責任や不法行為責任を負います。
そのため、利用者は介護施設に対して民事上の損害賠償請求をすることが出来るのです。
介護施設に安全配慮義務違反があれば責任を問えることになりますが、その判断においては、介護施設側が「事故の発生を予見することが可能であり」、「予見可能な事故を防ぐために必要な対策を行っていたのか」といえるのかが問題になります。
一方で、介護事故というのは予期せぬ事態にも起こりうるものですので、いかなる対策をしても事故を防ぐことが出来なかったという事情があるなら、介護施設側の過失があったとはいえません。このような過失があったといえない場合には、利用者は介護施設に対して責任を問うことは出来ないということになります。
デイサービスに対して骨折の責任を問えるのか
デイサービスでの骨折事故を例に考えてみましょう。
デイサービスの利用者が転んで骨折してしまいました。この利用者の歩行状態には不安があり、以前もデイサービスの利用中に転倒していたとします。あるいは、ご家族から「家でもよくつまづくため、家族が付き添っている」などと情報提供を受けていたとしましょう。こういった場合、デイサービス側はこの事故を予見しえたといえます。
次に、デイサービス側はどのような対策をとっていたかがポイントです。
デイサービス側は、利用者の転倒リスクの高さを知りながら、立ち上がりや移動時に介助をしていなかったとします。こうなると、予見可能な事故を防ぐための対策が十分だったとはいえず、骨折事故の責任をデイサービス側に問える可能性があります。
このように、骨折事故は予見可能であったこと、そして予見可能な事故への対策が不十分であった場合には、デイサービス側に安全配慮義務違反を原因とする過失が認められるため、骨折に関する損害賠償請求が可能となるのです。
介護施設職員にも請求できるケースがある
利用者と介護施設職員との間には直接の契約関係はありませんが、当該介護施設職員の悪質な態様により介護事故が起こってしまった場合には、介護施設職員は不法行為責任を負うことになります。
もっとも、介護施設職員に損害賠償請求を行っても、損害賠償金を支払える十分な資力を有していないことが多いため、基本的には介護施設に対して損害賠償請求を行うことになるでしょう。
送迎事故での裁判例を紹介
送迎事故における裁判例を紹介します。東京地裁平成25年5月20日判決の事例では、利用者Aは、事業所Yのデイサービスを受けた後、介護施設に付随する宿泊施設に移動をするために送迎車に乗車しました。Aは、介護施設職員が他の利用者の乗車介助を行っていたときに、自ら車両を降車しようとしたところ、転倒して右大腿骨骨折の損害を負っております。
この裁判例では、介護施設職員が目を離したわずかな間にAが降車をしようとしたことなどから、Yには安全配慮義務違反は無いと判断されました。しかし、すぐに医療措置を受診させるべきところ、医療機関の診察が翌日になったことなどにより精神的な苦痛を被ったとして、慰謝料20万円が認められました。
介護施設は事故報告書の提出義務がある
介護事故が起こった場合、介護施設は、市町村に「事故報告書」を提出する必要があります(介護保険法23条、24条)。行政はその報告書を確認した後、悪質性が認められる場合には、指導などを行います。重大事故の場合は、業務停止や指定取消処分も考えられるところです。
事故報告書には、介護施設に安全配慮義務違反による過失があったかどうかを判断する重要な情報が記載されている可能性が高いといえます。介護施設に損害賠償請求を行う場合には、必ず確認しましょう。
デイサービスで事故が発生したらどうしたらよいか?
デイサービスを利用しているところ、実際に事故に巻き込まれてしまった場合、どのようにすればよいのでしょうか。ここでは、事故後に行うべき対応について解説します。
重大事故を一人で処理しようとすることは避ける
デイサービス利用中にご家族が介護事故の被害者になってしまった場合、介護施設との対応だけではなく、病院への付添いや今後の治療をどうするのか、他の親族への連絡などやるべき事は多々あります。
その中で、介護施設に過失があるような場合は、訴訟も視野に入れた交渉をしていかなければなりません。そういった複数の処理を一人で行うことは多大な精神的、肉体的なストレスが生じてしまいます。一人ですべてを処理しようと考えることは避けるべきです。
弁護士に依頼することで交渉を任せられる
介護事故が生じてしまった場合は、弁護士に介護施設との交渉を任せるのが一番よいといえるでしょう。
弁護士なら、そもそも法律上の請求を行うことが可能であるのか、請求できる場合にはどのような範囲となるのかを理解したうえで交渉を行ってくれます。それだけでなく、請求のために必要となる証拠やその収集方法も知っているため、適切な損害賠償請求を行ってくれるでしょう。
介護施設が真摯に対応をしてくれない場合に、有利に交渉を進めるためには、専門的な知識が欠かせません。専門家からの請求であると、介護施設側の態度が変わってくることもあります。
また、弁護士であれば代理人として利用者に代わって交渉を行ってくれるので、交渉による負担を減らすことが可能です。
以上のことから、弁護士への早期相談を検討するのがよいでしょう。
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交渉による解決が難しければ裁判になることも多い
介護事故では介護施設との交渉を行いますが、介護施設の過失の有無、損害をどこまで賠償してもらえるかなどで折り合いが付かない場合もあります。そのような場合は、裁判所への訴訟提起も考えられるところです。
近年、介護事故における訴訟も増えてきており、一つの方法として選択肢に入れておいたほうがよいでしょう。
裁判における手続きに関しては『介護事故の裁判|介護施設相手に訴訟する方法』の記事をご覧ください。
裁判では証拠の収集や適切な裁判手続きが必要不可欠です。
介護事故は客観的な証拠を収集することが難しいため、弁護士に相談をすることで、証拠の収集や保全などを適切に行うことが出来ます。
また、裁判手続きは複雑であるため、専門家である弁護士に依頼を行い、裁判手続きを任せるべきでしょう。
弁護士に依頼を行うかどうかについては、法律相談を通して判断可能です。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了