相続税と所得税はどう違う?相続したお金に所得税はかかるのか

更新日:

遺産を受け取ったとき、「相続税だけでなく、所得税や住民税もかかるのでは?」と心配になる方は少なくありません。

結論からいうと、相続で受け取った財産そのものには、原則として所得税はかかりません。

ただし、例外となるケースもあるため、状況に応じた理解が必要です。

この記事では、相続税と所得税の違いを整理したうえで、「どのケースで何の税がかかるのか」をわかりやすく解説します。

生命保険金や死亡退職金の課税判定、相続後の収益への課税、住民税の扱いまで網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

相続したお金・財産に所得税はかかるのか

原則:相続で受け取った財産に所得税はかからない

現金・預貯金・不動産・株式・投資信託など、遺産として引き継いだ財産そのものには所得税はかかりません。

相続税は「受け取った財産の価値」に対してかかる税、所得税は「新たに稼いだ利益・収入」に対してかかる税です。

遺産の受け取りは「労働や運用によって生み出した利益」ではなく「財産の移転」とみなされるため、相続・遺贈により取得した財産そのものは所得税の課税対象となる「所得」に当たらず、原則として所得税は課されません(所得税法9条1項17号)。

相続税所得税
課税対象亡くなった人から引き継いだ財産(遺産)個人が1年間に得た収入・利益
課税のタイミング相続が発生したとき収入・利益が生じたとき
納税義務者財産を受け取った相続人・受遺者収入・利益を得た個人
申告期限相続開始を知った日の翌日から10か月以内翌年2月16日〜3月15日(確定申告)

相続税とはどのような税金なのかを知りたい方は『相続税とは何か仕組みをわかりやすく解説!なぜあるのか理由もわかる』の記事をご覧ください。

例外:所得税がかかるケース5つ

ただし、以下のような場面では所得税の課税が生じます。

① 相続した不動産・株式などを売却したとき

相続で取得した財産を後に売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税がかかります。

相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していると、「取得費加算の特例」という節税制度を利用し、相続税として支払った金額の一部を「取得費」に上乗せすることが可能です(詳しくは後述)。

② 相続した財産から生じる収益(家賃・配当・利息など)

相続後に受け取る家賃収入・株式の配当・預貯金の利息は、財産そのものではなく「その財産を運用して新たに得た収益」です。

そのため、相続発生後に生じた分については、相続人の所得として所得税・住民税の課税対象となります。

③ 死亡保険金を受け取った場合

死亡保険の被保険者が亡くなり、受取人自身が保険料を負担していた場合は、受取人が一時所得を得たこととなり、所得税が課される可能性があります。

④ 準確定申告が必要な場合

被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告(準確定申告)を行う必要があります。

これは被相続人の所得税の申告であり、相続財産への課税とは別の手続きです。

そのため、正確には被相続人が支払うはずであった所得税を、相続人が負担するといえます。

⑤未支給年金を受け取った場合

公的年金の未支給年金を受け取った際は、所得税がかかる可能性があります。

亡くなった方の未支給年金(公的年金)は、受け取った遺族の一時所得と判断されるためです。

なお、個人年金保険など私的年金の未支給分については、受給権の相続とみなされ相続税の対象となる場合もあるため、年金の種類に応じて課税関係が異なります。

所得税だけでなく住民税の課税も注意

所得税の課税対象となる収益には、連動して住民税もかかります。

住民税は前年の所得をもとに翌年6月から課税されるため、相続後に新たな収益が生じた場合は翌年以降の住民税の増加にも注意が必要です。

なお、相続で受け取った財産そのものに対して住民税(所得割)が課されることは通常ありませんが、相続後の収益や譲渡益が生じれば、翌年度以降の住民税(所得割)に反映されます。

相続した不動産や株式を売却する際の税負担

相続した不動産や株式を売却したとき、かかる主な税金は以下の通りです。

税金の種類概要
譲渡所得税売却益(譲渡所得)にかかる国税
住民税売却益にかかる地方税(翌年課税)
復興特別所得税譲渡所得に係る所得税額に2.1%を乗じて課税
印紙税売買契約書にかかる税金
登録免許税不動産登記にかかる税金(不動産売却時)

特に重要となる譲渡所得税の計算方法や、所得税の負担を抑える方法について解説を行います。

売却の際に生じる譲渡所得税とは|計算方法

不動産や株式など相続した財産を売却した場合には、売却益(譲渡所得)が所得税の対象となるため、確定申告が必要です。

譲渡所得は、次の計算式で求めます。

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

  • 売却価格:売却代金
  • 取得費:購入したときの価格(不明な場合は売却価格の5%とみなす)
  • 譲渡費用:仲介手数料・測量費・印紙税など売却に直接要した費用(※目的・経緯によっては譲渡費用として認められない場合もあります)

取得費が不明な場合、売却価格の5%しか差し引けないため、税負担が重くなります。後述する取得費加算の特例を活用することで、この負担を軽減できます。

マイホームの売却や、被相続人の空き家を売却した場合など、一定の要件を満たすとここからさらに最高3,000万円の『特別控除』を差し引くことができる特例もあります。

相続財産の売却による所得税の負担を減らす特例

相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していると、「取得費加算の特例」という節税制度を利用できます。

取得費加算の特例とは、相続税として支払った金額の一部を、「取得費」に上乗せできる制度です。

取得費が増えると課税対象となる譲渡所得が減るため、結果的に税負担が軽くなります。

  • 加算できる相続税額の計算式
    加算できる相続税額 = その者の相続税額 × (譲渡した財産の相続税評価額 ÷ その者の相続税の課税価格)

実際の計算は、相続税申告書における各相続人の課税価格(債務控除前の金額(課税価格+債務控除額)の価額)を基礎に按分して算出します。

債務控除・非課税財産・相続人ごとの按分など考慮すべき要素が多いため、実務上は税理士に確認してもらうべきでしょう。

つまり、相続税を多く払っていれば払っているほど、加算できる金額も大きくなり、節税効果が高まります。

譲渡所得税を含めた売却時の税金の内容や、特例による減額の程度について詳しく知りたいかたは『相続した土地を売却したときの税金|計算方法・特例・確定申告を解説』の記事をご覧ください。

譲渡所得税や住民税などの税率は所有期間で変わる

相続した不動産を売却した場合、その不動産を取得した時期(被相続人が購入した時期)から売却時点までの保有期間によって税率が変わります。

項目5年以下5年超
所得の区分短期譲渡所得長期譲渡所得
所得税率30%15%
住民税率9%5%
復興特別所得税0.63%0.315%
合計約39.63%約20.315%

相続の場合、保有期間は被相続人(亡くなった方)が取得した日からカウントし、相続人が土地を売った年の1月1日までとなります。

相続後の収益に対する所得税の内容

相続財産から生じる収益に対して課される所得税について解説を行います。

家賃収入(不動産所得)

相続した不動産を賃貸している場合、相続発生後に受け取る家賃は不動産所得として所得税・住民税の課税対象となります。

不動産所得の金額は「総収入金額-必要経費」という計算式により算出されます。

なお、相続が発生した年については、以下のような確定申告が必要です。

  • 1月1日から被相続人が亡くなる日までの所得:準確定申告
  • 被相続人の死亡日の翌日から、遺産分割協議が成立する前日までの所得:相続人全員がそれぞれ確定申告
  • 遺産分割協議の成立日から12月31日までの所得:遺産分割で不動産を取得した人による確定申告

税務上、遺産分割が整うまでに相続財産から生じた収入については、各相続人に法定相続分の割合で帰属するため、相続開始から遺産分割協議が完了するまでは相続人全員が所得を得たとなるためです。

青色申告を行いたい場合の注意点

被相続人が青色申告をしていた場合、相続人が青色申告で所得税申告を行いたいのであれば、相続人も青色申告承認申請書を提出する必要がある点に注意しましょう。

なお、青色申告承認申請書の提出期限は、被相続人が死亡した日によって、次のとおりとなります。

  • 被相続人が亡くなったのが1月1日から8月31日の場合:死亡日から4ヶ月以内
  • 被相続人が亡くなったのが9月1日から10月31日の場合:その年の12月31日まで
  • 被相続人が亡くなったのが11月1日から12月31日の場合:翌年の2月15日まで

株式の配当・投資信託の分配金(配当所得)

相続した株式や投資信託から受け取る配当・分配金は配当所得として課税されます。

源泉徴収されている場合でも、確定申告によって税負担を最適化できることがあります。

預貯金の利息(利子所得)

預貯金の利息は利子所得として源泉分離課税が適用され、原則20.315%(所得税等15.315%+住民税5%)が源泉徴収され、通常は確定申告不要で受け取り時点で課税関係が完結します。

なお、このうち復興特別所得税(0.315%相当)は2037年末までの時限措置です。

生命保険金は「相続税」と「一時所得」のどっちか?

「相続税と一時所得のどっちがかかるのか?」という疑問は、生命保険金や死亡退職金を受け取った際に多く生じます。判定の基準を整理しましょう。

判定のポイント:誰が保険料を負担したか

生命保険金への課税は、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組み合わせによって異なります。

保険料負担者被保険者受取人かかる税
被相続人(夫)被相続人(夫)相続人(妻・子)相続税
相続人(妻)被相続人(夫)相続人(妻)所得税(一時所得)
相続人(子)被相続人(夫)別の相続人(妻)贈与税

亡くなった人が保険料を負担していた場合は相続税、受取人自身が保険料を負担していた場合は所得税(一時所得)、第三者が保険料を負担していた場合は贈与税となります。

死亡保険を年金として受け取る場合は、一時所得ではなく、雑所得として計算を行う必要があります。

一時所得と、雑所得の金額を計算する方法は、それぞれ以下の通りです。

  • 一時所得:総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)※
  • 雑所得:総収入金額-必要経費

※一時所得の場合、上記の計算式で算出した金額をさらに『1/2』にした金額が、他の所得と合算されて課税されます。

死亡退職金の取り扱い

死亡により支給される死亡退職金は、被相続人の死亡を原因として受け取るものであるため、みなし相続財産として相続税の課税対象となります(所得税は課税されません)。

ただし、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定したものに限られます(実際の支払時期は問いません)。

なお、3年を超えて支給が確定した死亡退職金は、みなし相続財産には該当せず、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象となります。

一方、死亡時点で既に支給が確定していた未払給与等については、被相続人の所得として準確定申告の対象になり得る点にも注意が必要です。

なお、生命保険金・死亡退職金にはそれぞれ非課税枠(法定相続人の数×500万円)が設けられており、全額に相続税がかかるわけではありません。

関連記事

準確定申告とは?所得税の申告が必要になるケース

被相続人が亡くなった年の所得については、相続人が代わりに確定申告や納税を行うことがあります。これを準確定申告といいます。

準確定申告が必要になる主なケース

被相続人に確定申告の義務があった場合には、準確定申告が必要となることが多いでしょう。

具体的には、以下のようなケースです。

  • 被相続人が事業所得・不動産所得を得ていた
  • 不動産や株式を売却し、譲渡所得が発生していた
  • 被相続人の給与収入が2,000万円を超えていた場合、または2か所以上から給与を受け取り年末調整されなかった場合など、確定申告義務が生じる事情があった(所得税法121条参照)
  • 公的年金等の収入が400万円を超えていた
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円を超えていた
  • 医療費控除などを適用して還付を受けられる場合

申告期限

準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

基本的には、死亡日が相続の開始を知った日となるでしょう。

通常の確定申告(翌年3月15日)とは期限が異なるため注意が必要です。

申告期限までに、相続人や包括受遺者らによる申告を行いましょう。

準確定申告で判明した税額の取り扱い

準確定申告の結果、追加の所得税が生じた場合はその税額が相続税の債務控除の対象となります。

相続財産の総額から差し引くことができるので、相続税の負担軽減となるのです。

逆に還付金が生じた場合は、相続財産に加算されて相続税の課税対象となります。

関連記事

相続税や所得税に関する疑問

Q.所得税の確定申告はどのように行う?

所得税の確定申告は、翌年の2月16日から3月15日までに、以下の3つの方法で行うことができます。

  • e-Tax(オンライン申告)
  • 税務署窓口での提出
  • 郵送での提出

確定申告書や本人確認書類(マイナンバー等)と、所得額を証する書類(売買契約書、賃貸借契約書等)などが必要となります。

Q.確定申告・準確定申告が遅れた場合にペナルティがある?

期限までに申告および納税をしないと、ペナルティとして「延滞税」と「無申告加算税」が本税に加算して課税されます。

延滞税とは、税金が定められた期限までに納付されない場合に課される追加の税金です。

原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。

無申告加算税とは、確定申告の期限内に申告しなかった場合に追加で加算される税金です。

課される金額は、申告が税務調査の事前通知の後であったり、実際に税務調査を受けた後であると高額になっていくため、速やかな申告を行いましょう。

Q.相続税を減額する制度はどのようなものがある?

相続税そのものを軽減する制度として、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など複数の特例が設けられています。

具体的には、以下のような制度を適切に活用することで、相続税の負担を抑えることができます。

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者の税額減税
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 贈与税額控除
  • 相次相続控除

関連記事

特例や控除制度について詳しく知りたい方は『相続税の控除・特例一覧表|控除の金額や対象をわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

相続税・所得税・住民税のどれがかかるか一覧

以下の表で、代表的なケースごとに課税関係を整理します。

ケース相続税所得税住民税
現金・預貯金を相続した○(課税対象)××
不動産を相続した○(課税対象)××
相続した不動産を売却した×(相続時に課税関係が確定)○(譲渡所得)
相続後の家賃収入を受け取った×○(不動産所得)
被相続人が保険料を負担した生命保険金を受け取った○(みなし相続財産)××
自分が保険料を負担した生命保険金を受け取った×○(一時所得)
死亡退職金を受け取った○(みなし相続財産)××
被相続人の所得税還付金を受け取った○(相続財産に加算)××
相続後の株式配当を受け取った×○(配当所得)

※上記は一般的な目安です。個別の事情により課税関係が異なる場合があります。

相続税の申告方法について知りたい方は『相続税申告のやり方・申告方法を解説|手続きの流れや期限を網羅』の記事をご覧ください。

相続税や所得税で不安な部分は税理士に相談を

相続の際に相続税や所得税は発生しているのか、発生している場合には何をすべきなのかという点が不安な方は、専門家である税理士に相談しましょう。

特に、以下のような事情がある場合には、税理士への相談をおすすめします。

  • 相続した不動産の売却を検討している
  • 生命保険金と遺産の両方を受け取った
  • 被相続人が事業や不動産賃貸を行っていた
  • 相続税の申告期限が迫っているが所得税の扱いも不安
  • 相続後に収益が発生し、確定申告が必要かどうかわからない

課税の判断は、財産の種類・受取方法・その後の活用方法によって異なります。

「自分の場合はどうなるのか」を正確に把握するためには、専門家である税理士に相談しましょう。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

相続税に強い税理士を探す

エリアを選ぶ

選択項目:

なし

相談内容を選ぶ

こだわり条件を選ぶ

相続税に強い税理士を検索する