相続時精算課税で孫に贈与すると相続税が2割加算|計算方法も解説

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孫への贈与で税加算

「相続時精算課税制度」を使って、早いうちから孫に財産を贈与したいとお考えの方もいらっしゃると思います。

そのような方に向けて、この記事では、相続時精算課税制度を使って孫に贈与する場合の注意点を解説します。

相続税対策にもなる贈与の特例についてもご紹介します。

相続時精算課税制度で孫に贈与するときの注意点

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度とは、累計2,500万円の非課税枠(特別控除)があり、この枠内の贈与であれば、贈与税が課されない制度です。

ただし、2,500万円を超える部分には、一律で20%の贈与税がかかります。

相続時精算課税制度の利用を検討している方に必ず知っておいていただきたい注意点があります。

従来であれば、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産の価額は、すべて相続財産に加算されていました。そのため、相続時精算課税制度は、一度に多くの財産を贈与したい方には向いていますが、原則として相続税の節税にはならなかったのです。

しかし、令和6年(2024年)1月1日以降、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除枠が新設されたことで、従来よりも高い節税効果が期待できるようになりました。

詳しくは、関連記事をご覧ください。

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相続時精算課税制度の適用対象者

相続時精算課税制度を利用するには、贈与者と受贈者がいずれも以下の要件を満たす必要があります。

【贈与者】

60歳以上の父母または祖父母

【受贈者】

18歳以上の子または孫(贈与が2022年4月1日以降の場合)

※相続時精算課税制度は、贈与時に子が生存している場合でも、孫に適用することができます。

孫に相続時精算課税制度を適用すると相続税2割加算

通常、相続人でない孫は相続税の納税義務者になりません。

しかし、相続時精算課税制度を使って孫に贈与すると、孫も相続税の納税義務者になります。

しかも、子どもが生存している場合、その孫の相続税額は2割加算されてしまうのです。

その理由は、相続または遺贈によって財産を取得した者が、以下に掲げる者以外の場合、相続税額が2割加算されると法律上決まっているからです。

①被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む※)

②被相続人の配偶者

※孫が代襲相続人になる場合とは?

【具体例】

被相続人

  • 配偶者
  • 長男(すでに死亡)
  • 長男の子(被相続人の孫)
  • 長女

代襲相続は、被相続人より先に相続人が死亡した場合、その相続人の子が代わりに相続人になる制度です。

【具体例】のケースでは、被相続人の死亡時に、相続人である長男がすでに死亡しています。この場合、孫が代襲相続人になります。

相続税の2割加算の対象になる人・ならない人

相続税の2割加算の対象になる人

  • 代襲相続人ではない孫
  • 代襲相続人ではない孫養子(※)
  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 被相続人のおいやめい
  • 遺贈を受けた第三者

※孫養子とは?

【具体例】

被相続人

  • 配偶者
  • 長男
  • 長男の子(被相続人の孫)

【具体例】にある相続関係で、被相続人の孫を養子にすることを孫養子と言います。

この場合、長男は生存しており、孫は代襲相続人ではありません。したがって、孫養子は2割加算の対象になります。

なぜわざわざ孫と養子縁組をするのでしょう?

その理由は、孫を養子にすると、法定相続人の数が増えるため、基礎控除額や死亡保険金・死亡退職金の非課税枠が増えるからです。

つまり、相続税対策になる面があるのです。

【具体例】の場合、孫を養子にする前だと、法定相続人は配偶者と長男の2人です。

一方、孫を養子にした後、法定相続人は、配偶者、長男、孫養子の3人になります。

ただし、法定相続人の数に算入できる養子の数には以下の制限があります。

①被相続人に実子がいる場合は1人まで
②被相続人に実子がいない場合は2人まで
注意点:相続税の負担を不当に減少させる目的の養子の数は、上記①②の養子の数に含めることはできません。

孫養子の税制上のメリット・デメリットは具体的な事情により異なります。詳しくは、税理士など専門家への相談をおすすめします。

相続税の2割加算の対象にならない人

  • 配偶者
  • 実子
  • 被相続人の父母
  • 代襲相続人である孫
  • 養子(被相続人の養子は、一親等の法定血族に当たるため)

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孫が相続時精算課税制度を利用したときの相続税額は?

ここでは、孫に相続時精算課税制度を使って贈与した場合、相続税額がいくらになるか具体的に計算してみましょう。

相続税額の詳しい計算方法については、関連記事をご覧ください。

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孫の相続税額の計算例

【具体例】

被相続人甲

  • 配偶者乙
  • 長男A
  • 長女B
  • 孫C(長男Aの子)

・甲は、相続開始前年に、孫Cに対し、相続時精算課税制度を利用して4,000万円を贈与しました。孫Cは、特別控除2,500万円を超える1,500万円について20%の贈与税を課され、300万円を納税しました。

・甲の相続財産は、8,000万円です。

・配偶者乙、長男A、長女Bは、法定相続分どおりに相続しました。

このケースで、各人の相続税額はいくらになるでしょうか。

STEP1 課税遺産総額を計算する

課税価格の合計額=相続財産8,000万円+相続時精算課税に係る贈与財産4,000万円

             =1億2,000万円

法定相続人は、配偶者乙、長男A、長女Bの3人なので、

基礎控除額=3,000万円+(600万円×3)

     =4,800万円

課税遺産総額=1億2,000万円-4,800万円

       =7,200万円

STEP2 相続税の総額を計算する

①課税遺産総額に相続人各人の法定相続分をかける

配偶者乙 7,200万円×1/2=3,600万円

 

長男A   7,200万円×1/2×1/2=1,800万円

長女B   7,200万円×1/2×1/2=1,800万円

②法定相続分に応じた取得金額に相続税の税率をかけた上、控除額を引く

配偶者乙 3,600万円×20%-200万円=520万円 

長男A   1,800万円×15%-50万円=220万円

長女B   1,800万円×15%-50万円=220万円

③各相続人の算出税額を合計して相続税の総額を算出する

520万円+220万円+220万円=960万円

STEP3 納付税額を計算する

①各相続人の実際の相続割合をかける

配偶者乙 960万円×4,000万円/1億2,000万円=320万円 

長男A   960万円×2,000万円/1億2,000万円=160万円

長女B   960万円×2,000万円/1億2,000万円=160万円

孫C   960万円×4,000万円/1億2,000万円=320万円

②2割加算

孫C     320万円×1.2=384万円

③税額控除

配偶者乙 配偶者の税額軽減により、納付税額は0円

孫C   384万円-300万円(相続時精算課税に係る贈与税額控除)=84万円

④納付税額

配偶者乙 0円 

長男A  160万円

長女B     160万円

孫C    84万円

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相続税対策にもなる!孫への賢い贈与方法

相続時精算課税以外にも、孫へ生前贈与する方法はあります。

ここでは、相続税対策にもなる、賢い贈与の方法を4つご紹介します。

暦年課税を利用した孫への生前贈与

暦年課税とは、1人あたり年間110万円の非課税枠を利用して贈与する方法です。

注意点として、相続開始から3年以内の生前贈与は相続財産に加算されてしまうという点が挙げられます。

なお、令和6年(2024年)1月1日以降は、生前贈与の加算期間が段階的に7年に延長されます。

つまり、せっかく暦年課税で贈与税が無税になっても、結局は相続税がかかり贈与が無駄になってしまう可能性があるのです。

もっとも、暦年課税を利用して孫に贈与すれば、3年以内の贈与加算の対象にはなりません。

なぜなら、3年以内の贈与加算は、「相続又は遺贈により財産を取得した者」が対象だからです。

通常、孫は「相続又は遺贈により財産を取得した者」には含まれません。

父母の財産が子(孫の親)に相続された場合、子が亡くなった際の相続財産となります。しかし、先に孫に贈与することによって、相続税の課税を1回分免れる点もメリットです。

住宅取得等資金の贈与

父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上の子や孫に対し、マイホームの新築、取得または増改築等を行うための資金を贈与する場合、最大1,000万円が非課税になります。

適用期限は、令和5年(2023年)12月31日です。

住宅取得等資金の贈与は、相続時精算課税制度との併用が可能です。

この場合、最大で「1,000万円+2,500万円=3,500万円」まで贈与税がかかりません。

ただし、相続時精算課税での贈与分は、相続財産に加算される点にご注意ください。

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教育資金の一括贈与

父母や祖父母などの直系尊属が、30歳未満の子や孫に対し、教育資金を一括贈与する場合、最大1,500万円が非課税になります。

適用期限は、令和8年(2026年)3月31日です。

受贈者ごとに贈与できるため、多くの子や孫に教育資金を一括贈与すれば、高い節税効果が期待できます。

ただし、贈与者が死亡した場合、残額に相続税がかかります。

孫が受贈者の場合、2割加算の対象です。

もっとも、受贈者が在学中の場合などは、相続税はかかりません。

受贈者が30歳に達するなどの事由により契約が終了した場合は、残額に対し贈与税がかかります。

結婚・子育て資金の一括贈与

父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上50歳未満の子や孫に対し、結婚や子育てで使う資金を贈与する場合、最大1,000万円が非課税になります。

適用期限は、令和7年(2025年)3月31日です。

結婚・子育て資金の一括贈与は、贈与者が死亡すると、その時点で相続税の対象となります。

孫が受贈者の場合、2割加算の対象です。

受贈者が50歳に達し契約が終了した場合は、残額に対し贈与税がかかります。

相続税の相続税の無料相談

相続税や贈与のお悩みは税理士へ

お孫さんへ生前贈与する方法は、相続時精算課税をはじめ、様々な制度が存在します。

どの制度にもメリットとデメリットの両方があります。

最適な生前贈与を実現するには、各制度のメリットとデメリットの具体的な検討が欠かせません。

「結局、どの方法が一番メリットが大きいの?」とお悩みの方は、ぜひ相続税に強い税理士にご相談ください。

税理士は、ご相談者様の個別の事情を丁寧にお聴きしてシミュレーションをした上、最適なプランをご提案いたします。

ご相談者様の豊かな老後と、ご家族への援助の両方を実現できるよう税理士が誠意をもってアドバイスいたします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

全国/電話相談可能

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