相続税の「按分割合」とは?端数調整を誤ると配偶者控除で損をする!?

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相続税の按分割合

相続税の「按分割合(あんぶんわりあい)」とは、相続税総額を各相続人に振り分ける割合のことです。

計算自体は難しくありませんが、端数調整を誤ると配偶者控除を十分活用できずに損することもあります。

この記事では、計算方法や注意点を具体例も交えて詳しく解説します。

相続税の「按分割合」とは?

相続税の「按分割合」の意味

相続税の按分割合とは、「相続税の総額を、各相続人に振り分けるときに使う割合」のことです。

相続税の計算は、まず相続人全員で納める「相続税の総額」を計算します。その後、実際に財産を取得した割合に応じて、相続税を各相続人に振り分けます。

この「実際に財産を取得した割合」が按分割合です。

たとえば、遺産総額1億円のうち配偶者が6,000万円、子が4,000万円を取得した場合、按分割合は配偶者が0.6(60%)、子が0.4(40%)となります。

相続税計算の全体像の中での位置づけ

按分割合が相続税計算のどの段階で使われるのか、全体の流れを確認しておきましょう。

相続税計算の流れ

ステップ内容
1各相続人の課税価格を計算する
2課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出する
3課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定して、相続税の総額を計算する
4相続税の総額を按分割合で各相続人に振り分ける
5各相続人ごとに税額控除(配偶者の税額軽減など)を適用し、納付税額を確定する

ポイントは、ステップ3では「法定相続分(基準の割合)」、ステップ4では「按分割合(実際の取得割合)」を使うという点です。

相続税の総額は法定相続分で計算しますが、最終的な各人の税額は実際に取得した財産の割合で決まります。

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按分割合の計算方法

按分割合の計算

按分割合の計算は、次の手順で行います。

按分割合の計算の手順

  1. 各相続人の課税価格を確認する
  2. 課税価格の合計額を計算する
  3. 「各人の課税価格 ÷ 合計額」で按分割合を算出する
  4. 按分割合の合計が「1」になるよう端数を調整する

「課税価格」とは、各相続人が取得した財産の評価額から債務や葬式費用を差し引いた金額のことです。いわば、「各相続人が実際に取得した遺産の額」のことです。

端数処理のルール

按分割合を計算すると、ほとんどのケースで割り切れず、小数点以下の数字が続きます。

この場合、相続税法基本通達17-1により、相続人全員の合意のもとで端数を調整し、按分割合の合計が「1」になるようにすることが認められています。

相続税の申告書では、按分割合を小数点以下第10位まで記載できます。実務では、小数点以下第2位〜第10位の間で端数を調整するのが一般的です。

端数処理のポイント

  • 相続税の申告書では、按分割合を小数点以下第10位まで記載できる
  • 実務では、小数点以下第2位〜第10位の間で端数を調整するのが一般的
  • 端数の調整方法に法律上の決まりはないが、合計が必ず「1」になるように調整する必要がある
  • 端数調整には相続人全員の合意が必要

按分割合と相続税額

以下の条件で、按分割合と各人の相続税額を計算してみましょう。

【状況設定】

相続人:配偶者、長男、長女の3人

各人の取得した財産の課税価格:配偶者7,500万円 長男3,500万円 長女3,000万円

課税価格の合計額:1億4000万円

相続の総額(計算済):1310万円

【按分割合の計算】

  • 母  : 7,500万円 ÷ 1億4,000万円 = 0.5357…
  • 長男 : 3,500万円 ÷ 1億4,000万円 = 0.25
  • 次男 : 3,000万円 ÷ 1億4,000万円 = 0.2142…

母と長女の按分割合が割り切れないので、今回は小数点第二位で端数調整(四捨五入)をします。

【各人の相続税の計算】

相続人按分割合相続税の計算各人の相続税額
0.541,310万円 × 0.54707.4万円
長男0.251,310万円 × 0.25327.5万円
次男0.211,310万円 × 0.21275.1万円

この後、配偶者の税額軽減が適用されるため、実際の相続税額は大きく変わります(詳しくは次章で解説)。

※配偶者控除の適用には申告が必須となります。

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按分割合の端数調整と配偶者の税額軽減(配偶者控除)の関係

端数調整で配偶者の税額軽減をフル活用できるかが決まる

配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは、配偶者が取得した財産のうち、次のいずれか多い金額までは相続税がかからないという制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

今回の具体例では、母の取得額は7,500万円なので、1億6,000万円の枠内に収まっています。つまり、母の相続税は税額軽減により0円になります。

この配偶者控除の枠をフルに活用できるかどうかが、端数処理のポイントになります。

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端数調整による相続税の違い

端数処理を小数点以下第何位で行うかによって、家族全体で納める相続税が変わることがあります。

先ほどの具体例で、小数点以下第2位で処理した場合と、第10位で処理した場合を比較してみましょう。

パターンA:小数点以下第2位で調整した場合

母の按分割合を小数点以下第二位で切り捨て、その分次男の按分割合を切り上げて調整した場合を見ていきます。

このときの各相続人の按分割合は以下の通りです。

相続人按分割合
0.53
長男0.25
次男0.22

各人の相続税額

  • 母 1,310万円 × 0.53 = 694.3万円※配偶者の税額軽減で0円
  • 長男1,310万円 × 0.25 = 327.5万円
  • 次男1,310万円 × 0.22 = 288.2万円

パターンB:小数点以下第10位で調整した場合

按分割合を小数点以下第10位で調整した場合は以下の通りです。

相続人按分割合
0.5357142857
長男0.25
次男0.2142857143

各人の相続税額

  • 母 1,310万円 × 0.5357142857 ≅ 701.7万円※配偶者の税額軽減で0円
  • 長男1,310万円 × 0.25      = 327.5万円
  • 次男1,310万円 × 0.2142857143 ≅ 280.7万円

【比較】端数調整による相続税の違い(税額軽減適用後)

配偶者の税額軽減を適用すると、各人の相続税額は次のようになります。

相続人パターンA
小数点以下第2位で
調整した場合
パターンB
小数点以下第10位で
調整した場合
0円0円
長男327.5万円327.5万円
次男288.2万円280.7万円
合計615.7万円608.2万円

パターンBの方が家族全体の納税額が約7万円少なくなりました。

小数点以下第10位まで使うことで、配偶者の税額軽減の枠をフルに活用でき、結果として家族全体の税負担を減らせます。

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端数調整で誤解しやすいポイント

「配偶者の按分割合を切り上げれば、配偶者控除で相殺出来てお得では?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、本来の割合を超えた分は税額軽減の対象外となるので注意が必要です。

たとえば、母の按分割合を0.54に切り上げた場合を見てみましょう。

相続人按分割合
0.54
長男0.25
次男0.21

この場合、本来の按分割合(0.5357…)を超過した分は税額軽減の対象外となります。

1310万円×(0.54 – 0.5357142857)≅ 5.6万円

より、母はおよそ5.6万円納税することになります。

端数調整で損しないための注意点

端数処理で気をつけたいポイントをまとめます。

  • 配偶者の按分割合を切り上げると、本来の割合を超えた分は税額軽減の対象外となるため、配偶者に納税義務が生じる
  • 端数調整で、桁数を多く使うことで、配偶者控除の枠をフル活用できる
  • 端数調整には相続人全員の合意が必要がある

端数処理の方法で迷った場合や、複雑なケースでは、税理士に確認しておくと安心です。

まとめ

相続税の按分割合について解説しました。

今回のポイントは次の通りです。

  • 按分割合とは、相続税の総額を各相続人に振り分けるための割合
  • 桁数を多く(第10位まで)使うことで、配偶者控除の枠をフル活用できる
  • 配偶者の按分割合を切り上げると、本来の割合を超えた分は税額軽減の対象外になり、配偶者に納税義務が生じる

端数調整を工夫して節税につなげるには、相続税額のシミュレーションが大切です。

「自分で計算するのは難しい」と感じる方は、ぜひ税理士へご相談ください。端数調整だけでなく、各種控除・特例の適用など、節税に有効な遺産分割案をご提案します。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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