相続税額をシミュレーションできる計算方法を解説!
- 相続税の申告が必要かどうか知りたい
- 相続税額をシミュレーションしたい
- 大まかな相続税額をすぐに知りたい
そのような方に向け、この記事では、申告の必要性や相続税額をシミュレーションできる計算方法を解説します。相続税額が一目でわかる早見表もご紹介します。
より正確な相続税額が知りたい方は、ぜひ税理士へご相談ください。専門家に早期に相談しておけば、効果的な節税対策にも役立ちます。
目次
まずは相続税を申告する必要があるか確認!
課税価格が基礎控除額以下なら申告は不要
相続税はすべての方にかかるわけではありません。
課税価格の合計額が基礎控除額以下なら、相続税の申告・納税は不要です。
具体的には、預貯金や土地建物、その他の相続財産の課税価格の合計が3,600万円以下の場合、相続税はかかりません。
以下では、相続税を申告する必要があるかどうか確認する計算方法を4つの手順に分けてご説明します。
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その1:法定相続人の人数を確定する
まずは、以下の①②に従って、法定相続人の人数を確定しましょう。
①被相続人(故人)の配偶者は、常に法定相続人になります。
②配偶者以外の人は、次の相続順位に従って法定相続人になります。
相続順位 | 法定相続人 | 備考 |
---|---|---|
第1順位 | 子 | 養子は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人に算入できます。 子がすでに死亡した場合、孫が代襲相続人になります。 |
第2順位 | 直系尊属(父母、祖父母など) | 子や孫がいない場合、直系尊属が相続人になります。 |
第3順位 | 兄弟姉妹 | 子、孫、直系尊属がすべていない場合、兄弟姉妹が相続人になります。 兄弟姉妹がすでに死亡した場合、甥・姪が代襲相続人になります。 |
【注意事項】
相続放棄をした者がいる場合、基礎控除額を計算する際は、相続の放棄をしなかったものとして法定相続人の数に含めます。
その2:相続税の基礎控除額を算出する
基礎控除額は、すべての方に適用される非課税枠です。
課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた後の金額が0円またはマイナスなら、相続税はかかりません。課税価格について、詳しくはその3で解説します。
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
上記計算式の「法定相続人の人数」に「その1」で求めた数字を当てはめてみましょう。
例えば、法定相続人が妻と2人の子供の場合、基礎控除額は、3,000万円+(600万円×3)=4,800万円です。
その3:課税価格の合計額を求める
課税価格の合計額は、以下の①~⑦の金額が分かれば算出できます。
まずは、以下の①から⑦の項目にそって大まかな金額を算定してみましょう。
①プラスの財産
- 現金
- 預貯金
- 有価証券
- 土地建物(※小規模宅地等の特例を適用する場合、土地の評価額は最大80%減額可能)
など
②みなし相続財産
- 死亡保険金
- 死亡退職金
③相続時精算課税を適用した贈与額
- 贈与の時期に関係なく加算する
④相続開始前3年以内の贈与財産
⑤マイナスの財産
- 借金
- 未払いの税金
など
⑥葬式費用
- 通常、葬式に伴うと認められるもの
- 香典返し費用などは含まれない
⑦非課税財産
- 墓地や仏壇等の日常礼拝しているもの
- 死亡保険金や死亡退職金のうち、「500万円×法定相続人の数」に達するまでの額
など
次に、以下の計算式に従って、課税価格の合計額を算出します。
課税価格の合計額=①+②+③+④ー⑤ー⑥ー⑦
その4:課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く
最後に、課税価格の合計額(その3)から基礎控除額(その2)を差し引きます。この計算により算出される金額を「課税遺産総額」といいます。
課税遺産総額=課税価格の合計額ー基礎控除額
課税遺産総額が0円かマイナスなら相続税はかかりません。この場合、申告も不要です。
【注意事項】
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などを適用した結果、納税額が0円になる場合は申告が必要です。
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相続税額をシミュレーションしてみよう!
相続税額の計算は3手順
相続税が発生すると分かったら、次は相続税額をシミュレーションしてみましょう。
相続税額のシミュレーションは『相続税計算機』もご利用ください。
ここでは、相続税額をご自身でシミュレーションできる計算方法を解説します。
相続税額の計算順序は、大まかに言うと以下の3手順です。
【相続税額の計算順序】
- その1 課税遺産総額を計算する
- その2 相続税の総額を計算する
- その3 納付税額を計算する
早速、下記の【具体例】を使って、それぞれの項目の計算方法を具体的に見ていきましょう。
【具体例】
- 課税価格の合計額は、8,000万円
- 法定相続人は、妻と成人した2人の子
- 法定相続分どおりに相続した
その1 課税遺産総額を計算する
まず、「まずは相続税を申告する必要があるか確認!」の手順1~4に従って、課税遺産総額を算出してみましょう。
【具体例】で考えると以下のとおりです。
法定相続人は、妻と2人の子の合計3人です。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
課税遺産総額=8,000万円ー4,800万円=3,200万円
その2 相続税の総額を計算する
次に、以下の順序で相続税の総額を算出します。
①課税遺産総額に相続人各人の法定相続分をかける
法定相続分は、下記の一覧表をご参照ください。
【法定相続分の一覧表】
法定相続人が複数いる場合、法定相続分を人数分に分けます。
親族構成 | 配偶者あり | 配偶者なし |
---|---|---|
子がいる場合 | 配偶者:1/2 子:1/2 | 子:1 |
子がいない場合 | 配偶者:2/3 直系尊属:1/3 | 直系尊属:1 |
子も直系尊属もいない場合 | 配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4 | 兄弟姉妹:1 |
配偶者のみの場合 | 配偶者:1 | ー |
【具体例】で考えると以下のとおりです。
法定相続分は、妻が1/2、子1人につき1/4です。
したがって、各相続人の法定相続分に応じた取得価格は、妻が3,200万円×1/2=1,600万円、子1人につき3,200万円×1/4=800万円です。
②法定相続分に応じた取得金額に相続税の税率をかけた上、控除額を引く
相続税の税率と控除額は、下記の速算表をご参照ください。
【相続税の速算表】
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【具体例】で考えると以下のとおりです。
妻は1,600万円×15%ー50万円=190万円、子1人につき800万円×10%=80万円です。
③各相続人の算出税額を合計して相続税の総額を算出する
【具体例】で考えると以下のとおりです。
相続税の総額は190万円+80万円×2=350万円
その3 納付税額を計算する
最後に、以下の順序で実際の納付税額を算出します。
①各相続人の実際の相続割合をかける
【具体例】で考えると以下のとおりです。
本件では、法定相続分どおりに相続しているので、妻は350万円×1/2=175万円、子1人につき350万円×1/4=87万5,000円になります。
②必要に応じ、2割加算や税額控除を適用して各相続人の納税額を算出する
【具体例】で考えると以下のとおりです。
妻には配偶者の税額軽減(※)が適用されるため、納税額は0円です。
一方、本件では、子に適用される税額控除はないため、子1人につき納税額は87万5,000円です。
したがって、実際に納税する相続税の総額は、87万5,000円×2=175万円です。
配偶者の税額軽減
配偶者は、「1億6,000万円」または「法定相続分」のうち多い金額までは、相続税がかかりません。
早見表で相続税額が簡単に分かる!
ここでは、大まかな相続税が一目でわかる相続税の早見表をご紹介します。以下の表では、相続人が法定相続分に応じて遺産を取得したことを前提としています。
相続人が配偶者と子の場合
以下の表では、配偶者の税額軽減を適用しています。
課税価格の合計額 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 | 配偶者と子3人 |
---|---|---|---|
5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 0円 |
6,000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 |
7,000万円 | 160万円 | 113万円 | 80万円 |
8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 138万円 |
9,000万円 | 310万円 | 240万円 | 200万円 |
1億円 | 388万円 | 315万円 | 263万円 |
1億5,000万円 | 920万円 | 748万円 | 665万円 |
2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,218万円 |
2億5,000万円 | 2,460万円 | 1,985万円 | 1,800万円 |
3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 |
相続人が子のみの場合
課税価格の合計額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
---|---|---|---|
5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 |
6,000万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 |
7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 |
8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 |
9,000万円 | 920万円 | 620万円 | 480万円 |
1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 |
1億5,000万円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,440万円 |
2億円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 |
2億5,000万円 | 6,930万円 | 4,920万円 | 3,960万円 |
3億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 |
相続人の組み合わせによる相続税の計算は以下の計算シートもご参照ください。
相続税計算シート(配偶者のみor子どものみor父母のみor兄弟のみ)
監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士