サービス残業は違法!具体的な事例と対処法を徹底解説!

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サービス残業

「サービス残業は違法?」
「サービス残業をさせられている場合の対処法は?」

サービス残業とは、残業をしているにもかかわらず、残業代が支払われていない状態のことを言います。

サービス残業は違法ですが、当たり前のように残業させられる会社にお勤めの方もいるでしょう。

この記事では、働いても給料が出ないという事態を防ぐため、サービス残業が違法である理由、違法なサービス残業への対処法を解説します。

サービス残業とは

サービス残業とは「賃金不払い残業」とも呼ばれ、残業をしているにもかかわらず、残業代が支払われていない状態のことを言います。

サービス残業と聞くと定時後の残業をイメージする方が多いかもしれません。

しかし、早出出勤して働いたのに残業代が支払われない、休日に働いたのに残業代が支払われないといったケースもサービス残業となります。

サービス残業はなぜ違法?

サービス残業は、労働基準法37条に違反する違法行為です。

労働基準法37条において、時間外労働や深夜労働(22時~5時)、法定休日の労働に対して、使用者は残業時間数や時間帯に応じた割増賃金を支払う義務があると定められているためです。

そもそも、労働時間は原則として「1日に8時間、週40時間まで」と決められています(労働基準法32条)。

この時間を法定労働時間と呼び、法定労働時間を超える労働については時間外労働として割増賃金が支払われなければなりません。

そのため、賃金が発生しないサービス残業は、明確な違法行為であるといえます。

労働基準法で定められている以上、会社は労働者に割増賃金を支払わなければならないため、労働者がサービス残業の残業代を請求することは正当な権利です。

サービス残業で労働基準法に違反した会社が受ける罰則は?

労働基準法37条に違反した会社は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰に科せられる可能性があります。

実際にはいきなり刑事罰の対象となることはありませんが、労働基準監督官による指導・是正勧告を無視し続けると、刑事罰が科せられることがあるのです。

労働者の立場から考えると、サービス残業は会社に刑事罰が科される可能性があるほどの違法行為だととらえることができます。

サービス残業させられているときの対処法

サービス残業は拒否してもよい

労働者は賃金の出ない労働を断ることができます。サービス残業を引き受ける必要はありません。

サービス残業を断ったり、定時に帰宅したりすることは勇気がいるかもしれませんが、違法なことをしているのは会社側なので、自信をもって断ってよいのです。

サービス残業を断ったことを理由に、労働条件を不利益に取り扱うことも違法です。

賃金の減額や降格などの不利益変更を心配している方は『労働条件が不利益に変更(賃金の減額など)されたら?相談窓口を解説!』の記事をご覧ください。

労働基準監督署に申告する

会社の風土や人手不足、繁忙期などが原因でサービス残業が行われている場合、拒否しづらい事情もあるでしょう。

その場合には、労働基準監督署に申告する方法があります。

労働基準監督署は、会社が労働基準法を遵守しているかを管理・監督し、法令に違反している会社に対し指導や勧告を行う機関です。

労働基準監督に相談することで、会社の法律違反に対して指導や勧告を行ってもらえる可能性があります。

指導や勧告が入ることで、残業代が適切に支払われるようになることはあるでしょう。

ただし、労働基準監督署に申告したとしても、申告した従業員個人のこれまでの残業代を回収してくれるわけではありません。

労働基準監督署に申告・通報することで、会社にバレることを心配している方は『労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる?』の記事をご覧ください。

弁護士に相談する

サービス残業でお悩みの方は、弁護士に相談することがおすすめです。

サービス残業を弁護士に相談するメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

  • 残業代の金銭回収の可能性が上がる
  • 残業代請求後のトラブルを防ぐことができる
  • サービス残業の証拠が収集しやすい

法律の専門家である弁護士ならば、会社との交渉や書類の作成など、複雑な手続きを一任できます。

証拠の収集や計算、会社との交渉などは、ご自身では難しいことも多いです。また、立場的に残業代を請求しても、取り合ってもらえないこともあります。

一方で弁護士は、証拠がない場合には会社に証拠の開示請求を求めたり、法的な観点から会社に直接請求したりすることが可能です。

証拠の開示請求や未払い残業代の支払いは、弁護士を通じて行ったほうが会社側も応じる可能性が高くなります。

弁護士に相談するメリットの詳細については『サービス残業は弁護士に相談!弁護士に相談するメリットを解説!』をご覧ください。

なお、今後の就職や転職でサービス残業などの労働問題に巻き込まれる不安がある方は、トラブルに事前に備える手段として、弁護士保険をご検討ください。

違法なサービス残業が生じるのはどんなとき?

会社の労働時間管理がずさん

サービス残業が生じる典型例は、残業していることを会社が把握していないというものです。

会社には、労働者1人1人の労働時間をタイムカード等の客観的な方法で把握する義務があります(労働安全衛生法66条の8の3労働安全衛生規則52条の7の3)。

しかし、労働時間を把握する体制が整っていない会社が存在するのも事実です。

たとえば、労働時間の記録が労働者の自己申告任せで正確かどうかの確認もしていなかったり、タイムカードの打刻を上司がまとめてやっていたりする例があります。

会社が残業を黙認している

会社がサービス残業は違法と認識していながらも、黙認していることがあります。

たとえば、明確な残業指示がないものの、暗黙の了解で残業が常態化しているケースや、残業をした方が評価される風潮があるケースなどが挙げられます。

始業時刻前や持ち帰りの労働を強いる

残業は定時後に行うものという認識が広まっているため、始業前に働いても残業したと考えない方が多いでしょう。

しかし、所定労働時間以外の時間帯に働いたのなら、れっきとした残業です。

また、自宅へ仕事を持ち帰ることを指示され、帰宅後に仕事をした場合も残業にあたります。

ノー残業デーなどの取り組みにより、社内で残業しなくても、帰宅してからの仕事を余儀なくされるケースもあります。

残業代を1分単位で計算しない

本来、残業代は1分単位で計算して支給されなければいけません。

残業代の支払いを少しでも削ろうとする企業では、15分や30分などの単位で区切り、端数を切り捨てるなどということが行われます。

影響が少ないために見過ごされがちですが、残業代の一部を支払わないサービス残業です。

関連記事

残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説

みなし残業(固定残業)制度を悪用する

みなし残業(固定残業)制を適用しつつ、みなし残業時間以上の残業代を支払わないという手口を取る会社があります。

給与に一定の残業代を含めて支払うみなし残業では、あらかじめ固定の残業代の時間数と金額が決められています。

固定の残業代に割り当てられた時間数を超えて残業すれば、超過分の賃金が支給されなければなりません。

たとえば、みなし残業が20時間で月に30時間の残業を行ったと仮定します。この場合、10時間分の残業代を追加でもらえなければ、10時間分はサービス残業です。

なお、故意に超過分の残業代を出さないケースもあれば、会社が制度を理解していない場合も考えられます。いずれにしても、労働に対して賃金を出さないのは違法です。

管理職に残業代を支払っていない

「管理職には残業代を支払わなくていい」という誤解に基づき、管理職がサービス残業をしているケースがあります。

事実として、労働基準法上の「管理監督者」には、労働時間の規制が適用されません(労働基準法41条2号)。

しかし、「管理監督者」にあたるか否かは、職務内容や責任があるかなどの実態から判断されます。課長や部長などの役職であれば残業代が出ないと考えるのは誤りです。

管理職の残業代について詳しく知りたい方は、『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。

自主的なサービス残業も違法となる?

労働者の中には、「自主的にサービス残業を行っている」と考えている方もいるかもしれません。

自主的なサービス残業であっても違法となり、残業代が支払われる可能性があります

そもそも残業は会社から命令されて行うものであり、自主的に行った場合は労働時間に該当しないとする判例があります。

しかし、残業をしている状況から、会社がサービス残業をさせていると判断される可能性もあるのです。

たとえば、実際の残業命令がなくとも、客観的に見て業務が非常に多く命じられており、残業をしなければ仕事を終わらせられない場合などが考えられます。

また、残業している労働者に対して恒常的に夜食の差し入れなどがされていた場合も、黙示的に残業命令されていたとみなされ、残業代が支払われる可能性があります。

サービス残業の未払い残業代を請求する方法

最後に、サービス残業の残業代を請求する方法をご紹介します。

サービス残業の残業代を請求する方法

  • 会社と直接交渉する
  • 労働審判
  • 訴訟

残業代の証拠の収集から計算方法、残業代を請求する方法は『サービス残業の残業代を請求する方法!請求の手順を解説』の記事でより詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。

会社と直接交渉する

残業代未払いの証拠を持参して残業代を支払ってもらうよう、直接交渉する方法があります。

伝える相手は直属上司や人事や総務の担当者などです。

担当者が計算ミスしていて会社がすぐに支払ってくれれば問題は解決です。会社がすぐにミスを認めない場合も、証拠を提示しながらできるだけ穏便に話を進めましょう。

上司などとの人間関係を悪くしないように、客観的事実に基づいて丁寧に説明する姿勢が重要です。

なお、残業代請求の時効は3年です。3年が経過してしまうと時効が完成し、請求しても残業代を受け取れなくなるおそれがあります。

残業代の時効について詳しく知りたい方は『残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説』の記事をご覧ください。

労働審判

会社との交渉がうまくいかなかった場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討しましょう。

労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。

労働審判について詳しく知りたい方は『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

労働審判は、原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で結論が出ることが多くなっています。

また、当事者の話し合いによる解決を基本とするため、柔軟な解決も期待できます。もちろん、話し合いがまとまらない場合には労働審判委員会が判断を下します。

ただ、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。

訴訟

訴訟とは、裁判所に訴えて権利を争うことです。訴訟を行うためには、証拠を集めて訴状を作成しなければなりません。

訴状とは、裁判を始める際に訴える側(原告)が裁判所に提出する書面で、請求の内容やその根拠が記載されます。

訴状は訴えられた側(被告)である会社に送られ、会社はその内容を見て反論等を検討します。

反論は答弁書という書面で裁判所に提出され、原告側は答弁書に対してさらに反論していくという流れで進みます。

このように、訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。

労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。

関連記事

裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ?

まとめ

サービス残業でお悩みの方は弁護士相談することがおすすめです。

弁護士に相談すれば、労働者が置かれている状況を踏まえて、証拠の収集方法や残業代の請求方法の相談が可能です。

労働審判や訴訟の手続きは客観的な証拠に基づく主張などが必要になるため、法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせません。

残業代請求の相談は、無料で実施している弁護士事務所も多いため、お近くの事務所を探してみるといいでしょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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