サービス残業の残業代を請求する方法!請求の手順を解説
残業したのに残業代が出ない、いわゆる「サービス残業」は違法です。
しかし、実際は会社の風土に従うしかない、仕事への責任感といったことから、サービス残業が横行している職場で働いている方も多いと思います。
この記事では、サービス残業の残業代を適切に請求したい方に向けて、未払い残業代の請求方法や証拠について詳しく解説します。
目次
サービス残業とは
サービス残業が発生するのはなぜか
そもそもサービス残業とは、残業をしているにもかかわらず、残業代が支払われていない状態のことを言います。
サービス残業が発生する主な原因は、以下のようなことが考えられます。
サービス残業が発生する主な原因
- 会社が残業を黙認している
- 定時にタイムカードを打刻させて残業を強いている
- 自宅に持ち帰らせて残業させる
- みなし残業制度を悪用する
みなし残業とは、給与に一定の残業代を含めて支払う制度で、あらかじめ固定の残業代の時間数と金額が決められています。
固定の残業代に割り当てられた時間数を超えて残業すれば、超過分の賃金が支給されなければなりません。しかし、会社側から「給料に残業代は含まれている」と主張され、支払われないこともあります。
サービス残業は違法
サービス残業は賃金を支払わずに労働者を働かせるものであり、違法行為です。
労働基準法は、1日及び1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」と言います)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。
この法定労働時間を超える労働は「時間外労働」と呼ばれます。
時間外労働や深夜労働(22時~5時)、法定休日の労働に対して、会社は残業時間数や時間帯に応じた割増賃金を支払う義務があります(労働基準法37条)。
労働基準法で定められている以上、会社は労働者に割増賃金を支払わなければならないため、労働者がサービス残業の残業代を請求することは正当な権利です。
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サービス残業の残業代を請求する手順
サービス残業の残業代を請求する手順
- 証拠の収集、残業代の計算をする
- 会社と直接交渉する
- 内容証明郵便を郵送
- 労働審判
- 訴訟
なお、必ずしも、上記の順番で進行するとは限りません。会社との交渉後、労働審判を経ずに訴訟することなども可能です。
弁護士に相談すれば、労働者が置かれている状況を踏まえて、証拠の収集方法や労働審判と訴訟のどちらが適しているかなどの相談が可能です。
労働審判や訴訟の手続きは客観的な証拠に基づく主張などが必要になるため、法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせません。残業代請求でお悩みの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
証拠の収集、残業代の計算をする
残業代を請求するためには、タイムカードなどの客観的な証拠を収集しなければなりません。
ただし、サービス残業の場合は、タイムカードなどの勤怠記録に証拠が残っていないことも多いです。
その場合は、法定労働時間を超えて働いたことがわかる証拠を収集しましょう。
具体的には、業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録やビジネスチャットやメールの送信履歴などがあげられます。
また、退職後などで証拠が手元にない場合には、会社側に証拠の開示を求めることもあります。
証拠が収集できたら、収集した証拠をもとに残業代を計算します。残業代計算の方法は複雑ですが、目安として残業代を計算したい方は「残業代計算ツール」をご利用ください。
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会社と直接交渉する
証拠を収集し、請求できる残業代を計算したら、会社に直接サービス残業の残業代を請求することになります。
「サービス残業は会社が悪いことをやっているのだから、請求しても払うはずがない」と思われるかもしれません。
しかし、会社が残業時間を正確に把握していないことがサービス残業の原因となっている可能性もあります。
サービス残業の実態を会社に把握してもらうことにより、残業代が支払われる場合もあります。
内容証明郵便を郵送
会社と直接交渉しても残業代を支払ってもらえなければ、証拠を残すために内容証明郵便を使って残業代を請求しましょう。
残業代の時効は3年ですが、内容証明郵便を利用して請求すると、時効の完成を一時的に阻止する効果があります。
参考:日本郵便「内容証明」
労働審判
会社との交渉がうまくいかなかった場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討しましょう。
労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。
原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で結論が出ることが多くなっています。
また、当事者の話し合いによる解決を基本とするため、柔軟な解決も期待できます。もちろん、話し合いがまとまらない場合には労働審判委員会が判断を下します。
ただ、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。
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訴訟
訴訟とは、裁判所に訴えて権利を争うことです。訴訟を行うためには、証拠を集めて訴状を作成しなければなりません。
訴状とは、裁判を始める際に訴える側(原告)が裁判所に提出する書面で、請求の内容やその根拠が記載されます。
訴状は訴えられた側(被告)である会社に送られ、会社はその内容を見て反論等を検討します。
反論は答弁書という書面で裁判所に提出され、原告側は答弁書に対してさらに反論していくという流れで進みます。
このように、訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。
労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。
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・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ?
サービス残業の残業代請求は弁護士に相談
サービス残業でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。
法律の専門家である弁護士ならば、会社との交渉や書類の作成など、複雑な手続きを一任できます。
証拠の収集や計算、会社との交渉などは、ご自身では難しいことも多いです。また、立場的に残業代を請求しても、取り合ってもらえないこともあります。
一方で弁護士は、証拠がない場合には会社に証拠の開示請求を求めたり、法的な観点から会社に直接請求したりすることが可能です。
証拠の開示請求や残業代の支払いは、弁護士を通じて行ったほうが会社側も応じる可能性が高くなります。
残業代請求の相談は、無料で実施している弁護士事務所も多いため、お近くの事務所を探してみるといいでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了