裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ?

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残業代の裁判

「残業代未払いを訴えたい
「残業代請求の裁判の期間はどれくらい?」

未払い残業代を会社に請求する方法として、裁判が思い浮かぶ方は多いと思います。

しかし、裁判について「手続きが複雑で難しそう」「費用や期間がかかる」と不安になる要素が多く、なかなか行動を起こせない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、残業代で訴訟を起こすか迷っている方に向けて、残業代請求の裁判のメリット・デメリットや裁判の期間、裁判を行う場合のポイントを詳しく解説していきます。

裁判で残業代請求を行うメリット

残業代請求の主な方法として、裁判のほかにも交渉や労働審判など、いくつかの手段があります。

その中から、裁判を選ぶことで得られるメリットは、以下の3つが挙げられます。

裁判で残業代請求を行うメリット

  • 問題の是非を明確に決定できる
  • 相手を強制的に巻き込むことができる
  • 請求を認める判決を得れば最終的な解決まで見込める

問題の是非を明確に決定できる

裁判は、裁判所が法律を使ってトラブルを解決する手続きです。法律的な強制力により、問題の是非を明確に決められることが裁判を利用するメリットの一つと言えます。

裁判では、法律を厳格に適用することで、争われている問題の白黒をはっきりさせることが可能です。

残業代請求においては、請求した金額に対して支払われる金額を明確にすることができるでしょう。

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訴訟相手を強制的に巻き込むことができる

訴訟を起こせば、相手を強制的に巻き込むことができます。

残業代請求の裁判では、訴える側である原告が「未払いの残業代を○○円請求します」という旨の訴状を裁判所に提出することからスタートします。

訴状は裁判所から訴えられた相手である会社(被告)に送られますが、被告は「裁判に応じない」ということが原則としてできません。

送られてきた訴状を被告が無視して裁判に参加しなかったとしても、裁判所は原告の訴えを認める内容の判決を下すことができるからです。

この仕組みにより、トラブルを強制的に解決できるため、交渉での進展が見込めなかったり、そもそも交渉に応じてもらえない事件にも対処することができます

残業代請求においては、会社と労働者の立場上、労働者が会社に交渉しても、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、解決に至らない場合があります。

裁判を起こすことで、相手を強制的に巻き込むことができ、最終的な解決につなげることができます。

請求を認める判決を得れば最終的な解決まで見込める

裁判で下される判決には、非常に強い強制力があります。

原告の請求を一部でも認める判決が出た場合、被告がその内容に従わなかったとしても強制的に判決の内容を実現することが可能です。

たとえば、残業代請求のように金銭の支払いを求める場合、最終的には被告の財産を強制的に売却し、原告はその売却代金から支払いを受けることができます。

これを強制執行といいます。

さらに、同じ事件でいったん判決が確定した場合、再度同じ事件について裁判をすることは原則として許されません。

そのため、判決が確定した後で、会社が「出し忘れていた証拠があった」「事情が違っていた」と主張しても、再度争い(裁判)になることはありません。

判決が持っているこれらの力によって、トラブルを最終的に解決できる点も、裁判を選ぶメリットになるでしょう。

裁判で残業代請求を行うデメリット|労働審判との比較

このように、残業代請求を裁判で行うことにはメリットがあります。

しかし、残業代請求を裁判で行うデメリットもあります。

裁判以外の残業代請求の手段

裁判で残業代請求を行うデメリットは、裁判以外で残業代請求を行う方法と比較すると分かりやすいです。

裁判以外で残業代請求を行う方法としては、以下の3つが挙げられます。

裁判以外の残業代請求方法

  • 会社に直接請求する
  • 労働基準監督署に申告する
  • 労働審判

裁判はこれらの手段に比べ、一般的に期間と費用がかかるとされています。

もっとも、会社に直接請求しても、会社が未払い残業代の支払いを拒めばいつまでも解決しません。

また、労働基準監督署への申告は、あくまで「残業代の未払いという法律違反の是正」が目的であるため、未払い残業代全額が支払われることについてはあまり期待できません。

相談にあたって費用はかかりませんが、最終的に得られる金額はむしろ裁判よりも低くなってしまうことも考えられます。

ここでは、裁判と同じく裁判所の関与のもと進められる、労働審判との比較を中心に解説していきます。

残業代請求を裁判で行うことのデメリット①期間が長くなる

残業代請求を裁判で行うことのデメリットの1つ目は、解決までの期間が長くなる可能性がある点です。

残業代請求の裁判は、期日の回数制限がありません。「期日」は、当事者が自身の主張を行なったり、証拠を整理したりする場のことです。

そのため、残業代未払いの裁判にかかる期間は、解決まで1年以上になることも多くあります。

実際に、裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は、17.2か月と1年を超える長期間となっています。

参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書

一方、労働審判は、その名の通り労働トラブルだけを扱う制度であり、労働トラブルの迅速な解決が制度の目的として掲げられています(労働審判法1条)。

労働審判は原則として3回以内の期日で結論を出さなければならないと定められています(労働審判法15条2項)。

労働審判の場合は、平均90.3日で解決しています。

参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書

裁判と労働審判の解決までの期間の比較

裁判労働審判
期日の回数無制限原則3回
解決までの期間1年以上かかることも2~4か月程度

残業代請求を裁判で行うことのデメリット②費用がかかる

残業代請求を裁判で行うときにかかる費用は、主に裁判所への費用弁護士費用があります。

もっとも、労働審判と裁判でかかる費用に大きな差が生じることは基本的にないでしょう。

裁判所費用

裁判も労働審判も裁判所が関与する制度であり、利用するためには手数料が必要です。

裁判所費用の内訳として、収入印紙代郵便切手代があげられます。

収入印紙代は、訴状の書類に貼付する裁判の申立手数料です。残業代請求では、会社に請求する金額に応じて金額が変動します。

たとえば、残業代請求において、100万円を相手方会社に請求する場合の手数料は、裁判で1万円、労働審判で5,000円となっています。

参考:手数料額早見表

郵便切手代は、裁判所から被告や関係者に郵便物を送付するための郵便費用です。郵便切手代は、約6,000円程度です。

弁護士費用

裁判を行うことは自力でも可能ですが、専門家である弁護士に依頼すべきでしょう。

そのため、裁判にあたっては手数料額だけでなく弁護士費用もかかるといえます。

弁護士費用は、依頼する弁護士によって異なります。着手金、成功報酬金、実費などから構成されます。

着手金は、弁護士に依頼する際に支払う費用です。成功報酬金は、裁判で一定の成果が得られた場合に支払う費用です。実費は、弁護士の交通費や証拠収集などの費用です。

着手金は、おおよそ10~30万円が相場となります。成功報酬金は相手から回収できた額(慰謝料・損害賠償金など)のうち、おおよそ20~30%が相場となります。

弁護士費用は、慰謝料の請求額によって大きく異なるため、どのくらいの費用がかかるか詳しく知りたい方は、弁護士に相談しましょう。

【まとめ】手段ごとのメリット・デメリットの比較

手段メリットデメリット
会社に直接請求・費用が抑えられる
・労働審判や裁判に比べれば弁護士費用も安い
・会社が和解を拒否する可能性がある
労働基準監督署に申告・費用がかからない・会社の是正が目的であり未払い賃金の支払いは期待できない
労働審判・裁判に比べ解決までの期間が短い
・裁判に比べ手数料等は安い
・弁護士への依頼がほぼ必須になる
・強制力はない
裁判・強制力がある・弁護士への依頼がほぼ必須になる
・解決までの期間が長い

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裁判で残業代請求をする場合のポイント

ここまで、裁判で残業代を請求する場合のメリット・デメリットについてみてきました。

最後に、それを踏まえ、残業代請求をスムーズに進めていくためのポイントを解説します。

残業の証拠を十分に集める

裁判は、法律を厳格に適用してトラブルを最終的に解決する制度です。

したがって、自分の主張は法律的な根拠をもって組み立てなければなりません。

その際に重要となるのが、残業の事実を裁判官に認めてもらうための証拠です。

たとえば、残業代は残業した時間に応じて支払われることになるため、自分が何時間残業したのかという事実を示す必要があります。

その際に重要となるのが残業代請求の証拠です。

証拠は、タイムカード等の勤怠記録や就業規則といった資料のほか、自分が仕事をしていたことを示すことができる資料を幅広く検討します。

残業代に関する事実を整理し、証拠となりそうな資料をできる限り揃えておくことがポイントになります。

残業代請求で集めておくべき証拠

  • 雇用契約書・労働契約書
  • 就業規則に関する書面
  • タイムカード勤怠管理システム
  • 給与明細 など

タイムカードや勤怠システムは、始業や終業の時間がわかるので、証拠として役立ちます。

タイムカードや勤怠システムなどが用意できない場合には、「始業・終業の時間を記した手書きメモ」「上司の承認を得た業務日誌」などを収集しましょう。

また、証拠がない場合でも、証拠の開示請求を行えば、証拠を収集できる可能性が高まります。

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残業代請求に強い弁護士に依頼する

残業代請求を裁判で行うには、多くの時間と手間がかかる複雑な作業が必要であり、法律の知識が乏しい労働者一人で対応するには限界があります。

弁護士に裁判での請求を依頼することで、裁判を一任でき、的確な訴訟対応が望めます。

ただし、記事で解説したように、残業代を裁判で解決することには、期間や費用などのデメリットもあります。

まず自身の状況に訴訟が向いているのかどうかについて判断してもらうためにも、残業代請求の悩みは弁護士に相談することが効果的です。

残業代請求の時効は3年です。退職から年月が経ってしまうと証拠の収集が難しくなり、残業代が請求しにくくなります。できる限り早く弁護士に相談しましょう。

弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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