残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は?
「残業を証明できる証拠はどのようなものがある?」
「残業代未払いを請求したいけど、証拠がない」
残業代が支払われていない場合、残業代を請求するのは労働者の権利です。
ただし、残業代を請求するためには、労働者側が残業の実態を証明する証拠を揃える必要があります。
残業代の証拠には、タイムカードや勤怠管理システムの記録、上司の承認がある業務日報などがあげられます。
証拠がない場合の対処法も紹介するので、証拠がないとお悩みの方も、ぜひ最後までご覧ください。
目次
残業代請求で必要となる証拠
残業代請求で必要となる証拠は、主に以下の3つに分類することができます。
- 実際の残業時間を明らかにするもの
- 残業に関する労働条件が記載されているもの
- 支給された残業代を明らかにするもの
実際の残業時間を明らかにするもの
実際の残業時間を明らかにするもの
- タイムカード
- 勤怠管理システムの記録
- パソコンのログイン・ログオフ時間の記録
- タコグラフ
- 上司の承認がある業務日報
残業代を請求するためには、実際の残業時間を明らかにする証拠を収集することが必要です。
実際の残業時間が明らかになれば、請求できる残業代を計算することができます。
「タイムカード」や「勤怠管理システムの記録」は、実際に残業を行ったことを明らかにする有力な証拠になります。
これらは、労働者の出勤および退勤を管理するものであるため、労働者の残業時間を証明することが可能です。
しかし、違法なサービス残業をさせられているケースでは、定時にタイムカードを打刻したり、自宅に仕事を持ち帰らせて残業したりすることもあるでしょう。
タイムカードに実態が残らない残業している場合には、タイムカードや勤怠管理システムだけでは十分な証拠とは言えません。
その場合には、実際に残業をしていることを証明できる証拠を収集する必要があります。
具体的には、「パソコンのログイン・ログオフ時間の記録」や上司の許可を得た業務日報などがあげられます。運送業の方は、「タコグラフ」も証拠になります。
関連記事
・タイムカードがなくても残業代の請求は可能!収集すべき証拠とは?
残業に関する労働条件が記載されているもの
労働条件が記載されているもの
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 就業規則
残業に関する労働条件を記した「雇用契約書」や「労働条件通知書」などは、残業代請求の権利や、残業代の計算方法を確認する上で有効です。
また、労働基準法89条では、就業規則に「賃金の決定、計算・支払い方法」を定めるよう会社に義務付けています。
雇用契約書が見当たらない場合は、就業規則をみれば「残業に関する労働条件」がわかるため、就業規則も未払い残業代を明らかにする証拠となります。
支給された残業代を明らかにするもの
支給された残業代を明らかにするもの
- 給料明細
- 銀行口座の写し
「給与明細」や「銀行口座の写し」は、実際の給与額を示す上で有効です。
給与明細が手元にあれば給与明細で十分ですが、給与明細がない場合には、給料の振り込みが確認できる銀行口座の写しや領収書などを収集しましょう。
残業代請求の証拠集めのポイント
残業代請求で必要となる証拠を収集しましたが、残業代請求の証拠集めのポイントを解説します。
早めに証拠を集める
残業代請求の時効は3年です。3年が経過すると、請求しても残業代が支払われない可能性が高くなります。
できる限り早めに証拠を集め、請求準備を進めることが重要です。
また、退職して時間が経てば経つほど、証拠の収集が難しくなります。在職中は証拠を収集しやすいため、できる限り在職中に証拠を収集することがおすすめです。
関連記事
・残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説
複数の証拠を集める
一つの証拠だけでは、残業の実態を十分に証明できない場合があります。そのため、複数の証拠を集めて、残業の実態を裏付けることが重要です。
残業代請求の証拠は多ければ多いほどいいです。できる限り証拠を収集しましょう。
「実際の残業時間を明らかにするもの」で挙げた以外に、収集しておくと役立つ証拠には、以下のようなものがあります。
残業をしていたことを示す証拠
- 自身で記録した残業時間のメモ
- 家族へのLINE・メールによる日常的な連絡
- 業務で使用したメールの送受信履歴
これらは、単体で残業していたことを証明する証拠としては弱いですが、タイムカードなどの残業時間を補完する証拠として役立ちます。
「自身で記録した残業時間のメモ」や「家族へのLINE・メールによる日常的な連絡」は、たまにではなく、毎日メモ・連絡をしているほうが残業を補完する資料として認められやすくなります。
同様に「業務で使用したメールの送受信履歴」も証拠を補完するものとして有効です。
企業が定めた所定労働時間を超えた時間に上司から仕事を追加されていたり、他社とやり取りをしていたりする場合には、残業をしていた証拠になります。
残業の証拠がない場合の対処法
開示請求を行う
タイムカードや勤怠管理システムなどの証拠がない場合でも、弁護士に依頼して会社に開示請求を行うことで、証拠を収集できる可能性があります。
開示請求は個人で行うこともできます。しかし、会社と労働者の立場上、個人で開示請求をしても会社側が真剣に取り扱ってくれない可能性もあるでしょう。
弁護士から開示請求を行うことで、会社側も真剣な態度をみせ、開示請求に応じてくれる可能性が高まります。弁護士からの請求を断ると、それ以上の手段(調停・訴訟等)に発展し、強制的に証拠開示となるおそれがあるためです。
証拠保全の手続きを行う
また、民事訴訟法の証拠保全の手続き(民事訴訟法132条)を活用するという方法もあります。
証拠保全の手続きとは、訴訟を行う前に、裁判で必要となる証拠をあらかじめ確保しておく手続きです。
証拠が消滅・改ざんされるおそれがある場合や、証拠を保全しておかないと裁判で証拠として提出ができない場合に取ることが多いです。
強制力のある手続きではありませんが、裁判所からの命令であるため、会社側も応じてくれる可能性が高いでしょう。
証拠保全の手続きは、裁判所に申し立てを行います。申し立てには、証拠保全の必要性や、保全の対象となる証拠の内容などを記載した申立書を提出する必要があります。
申立書に記載すべき証拠が分からない場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
残業代の証拠でお悩みの方は弁護士に相談!
残業代の証拠でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。
残業代請求は証拠が重要であり、労働者側が証拠を収集する必要あります。
残業代の証拠を収集して、労働者の権利として残業代を請求しましょう。
弁護士から開示請求を行えば、会社側も開示請求に応じてくれる可能性が高まります。
残業代の請求は、訴訟を背景とした交渉で解決することもあります。無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
関連記事
・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了