離婚時の年金分割手続きとは?必要書類は?共働き・拒否した場合も解説

離婚時の年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦で分け合い、分割を受けた側の将来の年金額を増やす制度です。
厚生労働省の令和6年度統計によると、分割を受けた側の年金月額は平均約3.3万円増加します。対象となる方は、将来の年金収入を確保するために必ず手続きを検討してください。
分割割合は最大50%まで認められています。また、専業主婦(主夫)として加入していた期間のうち、2008年4月以降の期間については、相手の合意なしで手続きできる3号分割もあります。
請求期限は、2026年4月1日以降の離婚は離婚の翌日から5年以内、2026年3月31日以前の離婚は離婚の翌日から2年以内です。
本記事では、年金分割の仕組みや割合の決め方、具体的な手続き手順など、損をしないために知っておくべきポイントをまとめています。
目次
離婚時の年金分割とは?
年金分割は、離婚後の生活設計に直結する重要な制度です。仕組みや対象範囲、手続きの方法を正しく理解した上で、損のない選択をしてください。
離婚時の年金分割制度とは?
年金分割とは、婚姻期間中に納めた厚生年金・共済年金の保険料記録を夫婦間で分割し、分割を受けた側の将来の年金額を増やす制度です。将来受け取る年金そのものを分けるのではなく、年金額の計算の基礎となる保険料納付記録を分割する仕組みです。
厚生労働省の令和6年度統計によると、同年度に年金分割が行われたのは35,755件で、同年度の離婚件数183,840組に対して約19.5%にとどまっています。
夫婦ともに自営業などで制度の対象外となるケースも含まれますが、制度を知らずに手続きを逃している方も少なくないと考えられます。
分割を受ける側(婚姻中の収入が少なかった側など)が請求しないままでいると、将来受け取れるはずの年金収入を逃してしまう可能性があります。
離婚時の年金分割の意義・目的
年金分割制度の目的は、離婚後の生活の安定と公平性を確保することです。
婚姻中であれば、老後になっても、年金の支給額が多い方が受給額の少ない配偶者の生活を支えることで、夫婦ともども生活できます。
しかし離婚した場合、仕事をおさえて家事を優先していた主婦(主夫)などは年金の受給額が少なく、生活が苦しくなりがちです。家庭を支えてきた側が不公平な立場に置かれることになります。
そこで、婚姻期間中の年金を夫婦で分け合う年金分割の制度によって、生活の安定と公平性が確保されています。
年金を分け与える側(多くの場合夫)は、「なぜ働いていない相手に自分が納めた年金を渡さなければならないのか」と感じるかもしれません。
しかし婚姻中の収入は、夫婦の協力のもとで築き上げたものと考えられています。そのため、妻にも夫と同じく年金を受け取る権利があるのです。
離婚時の年金分割の対象は?
年金分割の対象となるのは、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の部分です。結婚前や離婚後の期間は対象になりません。
年金分割の対象となるのは、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の部分です。結婚前や離婚後の期間は対象になりません。
共済年金とは主に公務員が加入していた年金制度ですが、2015年に廃止され、現在は厚生年金に一元化されています。
配偶者が自営業やフリーランスの場合、夫婦ともに国民年金に加入し、それぞれが保険料を納めます。国民年金は支払う保険料も受け取る年金額も夫婦同額のため、年金分割の対象にはなりません。
| 夫婦の組み合わせ | 年金分割の可否 |
|---|---|
| サラリーマンとその配偶者 | ○ |
| 公務員とその配偶者 | ○ |
| 自営業とその配偶者 | ✕ |
| フリーランスとその配偶者 | ✕ |
なお、国民年金のほか、確定給付企業年金・確定拠出年金なども年金分割の対象にはなりません。
| 年金の種類 | 年金分割の可否 |
|---|---|
| 厚生年金 | ○ |
| 共済年金 | ○ |
| 国民年金 | ✕ |
| 国民年金基金 | ✕ |
| 確定給付企業年金(DB) | ✕ |
| 確定拠出年金(DC) | ✕ |
| 個人型年金(iDeCo) | ✕ |
分割を受けた年金はいつから受け取れる?
離婚時に年金分割の手続きをしても、すぐに年金を受け取れるわけではありません。
すでに年金の受給が始まっている人が年金分割を受けた場合は、請求の翌月から金額が反映されます。まだ年金を受給していない人の場合は、自身が年金の受給要件を満たしてから受け取れるようになります。
なお、年金を受け取るには保険料の納付期間などによる受給資格期間(原則10年)を満たす必要があります。分割を受けるだけで自動的に年金が支給されるわけではない点に注意してください。
離婚時の年金分割制度のメリット・デメリット
年金分割を受ける側のメリット・デメリット
年金分割を受ける側のメリット
離婚した場合に年金分割を受ける最大のメリットは、将来受け取れる年金の額が増えることです。また、婚姻期間中の家事や育児への貢献が金銭という形で評価されるため、公平感を得られます。
厚生労働省の令和6年度統計によると、年金分割を受けた側(第2号改定者)の年金月額は分割前の平均60,934円から分割後は平均94,509円となり、月額平均で約33,575円増加しています。分割をした側、受けた側の双方を含む女性全体の平均増加額は、月額約8,317円にとどまります。
婚姻期間の長さや夫婦間の収入差が小さいほど増額幅は小さくなります。50歳以上で年金の受給資格期間を満たしている方などは、年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を請求する際に年金見込額の試算も申し込み、実際の増額幅を確認しておくことをおすすめします。
年金分割を受ける側のデメリット
年金分割をすること自体や、どのくらいの割合で分割するかで揉めてしまうと、離婚の話し合いに時間がかかってしまう可能性があります。なお、2008年4月以降の専業主婦(主夫)期間が対象の3号分割であれば、相手の合意は不要で単独で手続きできるため、この点は当てはまりません。
婚姻期間が短いほど年金分割によって受け取れる金額は少なくなります。老後の生活を支えられるほどの十分な金額は期待できない場合もある点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
年金分割をする側のメリット・デメリット
年金分割をする側のメリット
相手がなかなか離婚に同意してくれない場合、年金分割を提案することが交渉の切り札になる可能性があります。
年金分割をする側のデメリット
年金を分け与える側は、将来受け取れる年金が減ります。また、離婚後に元配偶者が亡くなっても、分割した年金記録が戻ってくることはありません。
そのため、みずから積極的に提案するほどの大きなメリットがあるとは言えないのが実情です。
合意分割と3号分割の違いは?共働きや拒否はどうなる?
年金分割の方法には、合意分割と3号分割の2つがあります。どちらの手続きが必要かは、婚姻期間中の職業や扶養状況によって異なります。
まず、以下の比較表で自分に該当する方を確認してください。
| 項目 | 3号分割 | 合意分割 |
|---|---|---|
| 対象となる方 | 夫の扶養に入っていた専業主婦 | 共働き夫婦 |
| 相手の合意 | 不要 | 必要 |
| 按分割合 | 一律50% | 最大50% |
| 対象期間 | 平成20年4月以降の期間 | 婚姻期間中の全厚生年金記録 |
婚姻期間が長く、平成20年3月以前から結婚している専業主婦の場合は、3号分割と合意分割の両方の手続きが必要になります。詳しくは、日本年金機構の「離婚時の年金分割」もあわせて参照してください。
合意分割とは?共働きでも請求可能?
合意分割とは、夫婦間の合意によって年金分割を行う方法です。按分割合は夫婦で話し合って決めることができますが、上限は2分の1です。
夫婦共働きの場合は、合意分割を行うことも多いでしょう。共働きで夫婦どちらも第2号被保険者であった場合は、双方が納めた分の差額だけが分割されます。
合意分割ができるのは、どちらかまたは両方が第2号被保険者である期間があった夫婦です。
| 保険者の種類 | 説明 | 対象者 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 国民年金を自分で納めている人 | 自営業者 |
| 第2号被保険者 | 職場の厚生年金に加入している人 | 会社員・公務員 |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている人 | 専業主婦など |
配偶者が第2号被保険者であれば、請求するのは第1号・第2号・第3号被保険者のいずれからでも可能です。
合意分割のメリットは、夫婦間の合意があれば自由に割合を設定できる点です。公平性が高い反面、話し合いで合意できなければ調停や審判、裁判で争わなければならない点がデメリットです。双方が折れなければ、離婚したくてもできない状態が続いてしまいます。
3号分割とは?共働きでも請求可能?
3号分割とは、婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者である期間があった人が年金分割を請求する方法です。分割割合は一律2分の1です。
3号分割を請求できるのは、専業主婦(主夫)であった方や、配偶者の扶養範囲内で働いていた期間がある方などです。
3号分割の請求期限は、原則として離婚をした日の翌日から起算して5年以内です(令和8年3月31日以前に離婚した場合は2年以内)。
相手の合意がなくても1人で手続きできる点が最大のメリットです。一方、対象となるのが平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間のみである点には注意が必要です。
合意分割と3号分割は両方請求できる?
合意分割と3号分割は、両方請求することができます。
例えば、婚姻期間中に厚生年金の被保険者であった期間が5年、第3号被保険者であった期間が3年の場合、合意分割の対象は5年間、3号分割の対象は3年間となります。
合意分割の請求をすれば同時に3号分割の請求もしたとみなされ、第3号被保険者であった3年間については、まず3号分割による分割(2分の1)が行われた上で、さらに婚姻期間全体に対して合意分割も行われます。
離婚で年金分割を拒否された場合は?
年金分割をする側(第1号改定者)は、要件に該当する限り年金分割を拒否することはできません。しかし事実上、合意分割の話し合いが進まず、拒否されたに等しい状態に陥ることもあるでしょう。
年金分割の請求期限は、原則として離婚の日の翌日から5年以内です(令和8年3月31日以前の離婚は2年以内)。
話し合いによる合意が進まない場合は、調停などの手段を検討してください。なお、調停や審判の申立てもこの期限内に行う必要があるため、時間に余裕を持って動くことが重要です。
3号分割では相手方の合意は不要なので、専門家のサポートを得ながら手続きを進めることも選択肢のひとつです。
離婚時の年金分割の手続きは?期限は5年?
離婚時の合意分割の手続きの流れ
合意分割を行うには、話し合いで按分割合を決めて、それを文書にして標準報酬改定請求書などと一緒に年金事務所へ提出する必要があります。具体的な流れは以下のとおりです。
- 年金分割のための情報通知書を取得する
- 按分割合を決める
- 合意書を作成する
- 離婚届を提出する
- 標準報酬改定請求書を提出する
1.年金分割のための情報通知書を取得する
まず、年金分割のための情報通知書を取得します。
日本年金機構の窓口または郵送で請求でき、婚姻期間中の標準報酬月額・標準賞与額などの情報が記載されています。
2.按分割合を決める
当事者間で話し合って按分割合を決めます。按分割合は情報通知書に記載されている範囲内(上限は50%)で定められています。
3.合意書を作成する
年金事務所に年金分割を申し込む際、夫婦が合意したことを証明する文書の提出が必要です。有効な書類には公正証書と認証を受けた私署証書があり、いずれも公証人に依頼して作成します。これらの書類がある場合は、分割を請求する側が単独で手続きできます。
私的に作成した離婚協議書や年金分割の合意書を提出することも可能ですが、その場合は書類提出時に元夫・元妻の2人が揃って年金事務所に出向く必要があります。
4.離婚届を提出する
年金分割の請求(標準報酬改定請求書の提出)は離婚の成立後にしか行えないため、請求前に離婚届を提出する必要があります。なお、按分割合の話し合いや情報通知書の請求は離婚前でも行えます。
離婚後に相手が話し合いに応じる保証はありません。
また、年金分割の請求には離婚した日の翌日から起算して5年以内(令和8年3月31日以前の離婚は2年以内)という期限があります。話し合いを引き延ばされると請求の権利を失ってしまうため、離婚届を提出する前に話し合いを済ませておくのがよいでしょう。
5.標準報酬改定請求書を提出する
最後に「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」などの必要書類を年金事務所に提出します。必要書類の詳細は後ほど説明します。
年金事務所は請求内容に基づいて双方の標準報酬記録を書き換え、改定した記録を標準報酬改定通知書として双方に交付します。
話し合いで按分割合が決まらなかったら?
当事者間の話し合いがまとまらない場合や話し合い自体ができない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停では調停委員が双方から話を聞き、合意を目指します。
調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続に移行し、裁判官が一切の事情を考慮して分割割合を決定します。審判に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告を行うことが可能です。
なお、調停や審判の申立ても請求期限内に行う必要があるため、早めに動くことが重要です。
令和6年度の司法統計によると、年金分割の調停や審判で按分割合が定められたケースのうち、99%以上で按分割合が50%となっています。
揉めたとしても最終的に50%に落ち着くことがほとんどのため、早期解決を優先して50%での合意を検討することも選択肢のひとつです。
離婚時の3号分割の手続きの流れ
3号分割は合意分割と異なり、相手の合意は不要です。必要書類を揃えて年金事務所に提出するだけで手続きは完了します。
ただし、3号分割の対象となるのは2008年(平成20年)4月1日以後の第3号被保険者(専業主婦・主夫等)であった期間のみです。それ以前の婚姻期間や、2008年4月以降であっても共働き等で第3号被保険者でなかった期間については、別途合意分割の手続きが必要になります。
具体的な流れは以下のとおりです。
- 必要書類を準備する
- 年金事務所に提出する
1.必要書類を準備する
3号分割の請求には情報通知書の取得も合意を証明する書類も不要なため、比較的簡単に書類を揃えることができます。必要書類の詳細は後ほど説明します。
2.年金事務所に提出する
「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」などの必要書類を年金事務所に提出します。夫婦が揃って出向く必要はありません。
年金事務所は請求内容に基づいて双方の標準報酬記録を書き換え、改定した記録を標準報酬改定通知書として双方に交付します。
なお、3号分割の請求は離婚の成立後にしか行えないため、離婚届を提出してから手続きを行ってください。請求期限は離婚の翌日から起算して5年以内(令和8年3月31日以前の離婚は2年以内)です。早めに手続きを進めることをおすすめします。
また、分割される側が障害厚生年金を受給しており、対象期間がその年金額の計算基礎となっている場合は、3号分割の請求が認められません。この場合は合意分割による手続きが必要です。
年金分割の請求期限は?
2026年4月1日施行の年金制度改正により、年金分割の請求期限は従来の「2年以内」から「5年以内」に延長されました。
ただし、この5年という期限が適用されるのは2026年4月1日以降に離婚した場合に限られます。2026年3月31日以前に離婚した場合は、離婚の翌日から2年以内の請求が必要です。
離婚した時期によって適用される期限が異なるため、自身の離婚日を必ず確認してください。
なお、請求とは標準報酬改定請求書等を年金事務所に提出する手続きのことです。元配偶者に「年金分割を請求します」と伝えるだけ、または年金分割のための情報通知書を取得しただけでは、請求したことにはなりません。
請求期限内に元配偶者が死亡した場合、事前に按分割合が決まっていたとしても、死亡から1か月以内でなければ年金分割の請求ができません。この点は改正後も変わりませんので注意が必要です。
また、期限が到来する前に家庭裁判所へ審判・調停の申し立てを行えば、審理中に期限を経過してしまっても請求の権利は失われません。審判・調停・判決・和解が成立してから6か月が経過するまでは、年金分割を請求することができます。
離婚時の年金分割の請求に必要な書類まとめ
年金分割のための情報通知書の取得に必要な書類
合意分割を行うには、年金分割のための情報通知書の取得が必要です。3号分割のみを請求する場合は情報通知書の取得はできないため不要です。
情報通知書の取得手続きは離婚前でも離婚後でも可能ですが、離婚前に行うことをおすすめします。以下の書類を年金事務所に提出し、通知書を交付してもらいましょう。
- 年金分割のための情報提供請求書
- マイナンバーカード、基礎年金番号通知書または年金手帳
- 婚姻期間を確認できる戸籍謄本またはそれぞれの戸籍抄本(請求日から6か月以内のもの)
合意分割と3号分割に共通する書類
- 標準報酬改定請求書
- マイナンバーカード、基礎年金番号通知書または年金手帳
- 婚姻期間を証明する書類
請求日から6か月以内に取得した戸籍謄本またはそれぞれの戸籍抄本 - 生存を証明する書類
請求日から1か月以内に取得した戸籍謄抄本または住民票(請求書にマイナンバーを記入した場合は省略可) - 請求者の本人確認書類
合意分割にのみ必要な書類
- 年金分割の割合を明らかにすることができる書類
年金分割の割合を明らかにすることができる書類は、以下のいずれかを用意する必要があります。
- 離婚協議書(年金分割の合意書)
- 公正証書
- 公証人の認証を受けた私署証書
- 裁判所による手続きで定めた場合の書類(調停調書の謄本、審判書や判決書の謄本および確定証明書など)
1.離婚協議書(年金分割の合意書)
夫婦が協議離婚をする際に作成される離婚協議書は、離婚時の取り決めを記した私的な契約書です。
年金分割以外にも、慰謝料や養育費、財産分与などあらゆる事項を記載できます。年金分割についてのみ記した年金分割の合意書も使用できます(書式は日本年金機構のホームページで配布されています)。
ただし、離婚協議書・年金分割の合意書を使用する場合は、当事者2人(またはそれぞれの代理人)が揃って年金事務所に出向く必要があります。
作成に時間や費用がかからない反面、離婚後に2人で年金事務所に行くのが難しい場合は他の方法を検討した方がよいでしょう。
2.公正証書
公正証書とは、公証役場にて公証人に依頼して作成してもらう公文書です。
年金分割だけでなく、慰謝料や養育費、財産分与についても記載できます。金銭の支払いの約束が履行されなかった場合、裁判を経ずに強制執行ができる点がメリットです。
一方、作成にはある程度の時間と費用(目的の金額に応じた公証人手数料。年金分割を記載する場合は別途13,000円が加算)がかかります。
公正証書の謄本があれば、1人で年金事務所に出向いて手続きを完了できます。
作成時の公証役場への出頭については、原則として夫婦が揃って出向く必要がありますが、委任状があれば代理人による対応も可能です。一定の要件を満たせばウェブ会議を利用して公証役場に出向かずに作成することもできます。
3.公証人の認証を受けた私署証書
夫婦が署名捺印した年金分割の合意書(私署証書)が真正であることを公証人が証明する手続きです。
手数料は6,500円程度ですが、法改正等により変更される場合があるため、事前に公証役場で最新の金額を確認してください。公正証書より安価である点がメリットです。
認証を受けるには原則として2人が公証役場に出向く必要がありますが、認証済みの私署証書があれば1人で年金事務所での手続きを完了できます。
4.裁判所による手続きで定めた場合の書類
調停や審判、裁判によって按分割合が定められた場合は、調停調書の謄本・審判書や判決書の謄本および確定証明書を提出することで、1人で年金事務所での手続きを完了できます。
いずれの場合も、代理人による手続きが認められる場合があります。条件や手続きの詳細は、事前に公証役場や年金事務所に確認してください。
離婚時の年金分割を弁護士に依頼するメリット
相手方との交渉の窓口になってくれる
弁護士は依頼者の代理人として相手方との連絡や交渉を行えるため、相手と顔を合わせずに話し合いを進めることが可能です。
相手が話し合いに応じてくれない場合でも、弁護士から連絡が入ることで、こちらが本気であることが伝わりやすくなります。
手続きをサポートしてくれる
年金分割の手続きには、書類を揃えたり年金事務所に足を運んだりと、煩雑な作業が伴います。
弁護士が代理人として書類の作成や提出を担うことができ、手続きの負担を大きく軽減できます。
年金分割後の見通しがわかる
年金分割を行っても、必ずしも自分の利益になるわけではありません。本当にメリットがあるかどうかを事前に見極めることが重要です。
年金分割の制度は複雑で、ご自身で簡単に計算できるものではありません。年金事務所から取得する情報通知書などのデータをもとに、制度を熟知した弁護士に見通しを相談することをおすすめします。
なお、弁護士費用の負担が心配な方は、日本司法支援センター(法テラス)による費用の立替え制度(民事法律扶助)を利用できる場合があります。
離婚時の年金分割についてよくある質問
Q. 年金分割の請求期限は離婚後何年?
2026年4月1日以降に離婚した場合、年金分割の請求期限は離婚の翌日から5年以内です。なお、2026年3月31日以前に離婚した場合は、経過措置により従来どおり2年以内のままです。
離婚した時期によって期限が異なるため、自身の離婚日を必ず確認してください。
Q. 年金分割を受けると毎月いくら増える?
厚生労働省の令和6年度統計によると、年金分割を受けた側(第2号改定者)の年金月額は、分割前の平均60,934円から分割後は平均94,509円となり、平均で約33,575円増加します。
ただし、増額幅は婚姻期間の長さや収入差によって大きく異なります。
Q. 離婚件数のうち年金分割を実際にした人はどのくらい?
厚生労働省の令和6年度統計によると、同年度の離婚件数約18.6万組に対し、年金分割を行ったのは35,755件で、全体の約19.5%にとどまります(夫婦ともに自営業などで制度の対象外となるケースも含まれます)。
制度を知らずに請求しないまま時効を迎えるケースもあるため、離婚後は早めに手続きを検討することが重要です。
Q. 共働き夫婦が離婚した場合、年金分割はどちらが対象?
共働き夫婦の場合も合意分割の対象になります。婚姻期間中の厚生年金の標準報酬月額の合計が多い側から少ない側へ、合意または裁判で定めた割合(最大50%)で分割されます。
令和6年の司法統計によると、調停・審判で按分割合が定められた事案の99%以上で割合は50%とされており、揉めたとしても最終的に50%に落ち着くことがほとんどです。
まとめ|離婚後の生活では年金分割・財産分与・慰謝料などが大切
年金分割の概要、分割割合、分割手続きなどを解説してきました。
離婚した場合、原則として離婚の翌日から5年以内(2026年3月31日以前に離婚した場合は2年以内)であれば、合意分割や3号分割などの年金分割制度を利用できる可能性があります。なお、2026年4月1日施行の法改正により、財産分与の請求期限も同様に5年以内に延長されています。
離婚後の生活を少しでも安定させるためには、年金分割をはじめとして、財産分与、離婚慰謝料などの話し合いを有利に進めることが重要です。
しかし、ご自身ではうまく対応できない、元配偶者と直接話し合いを行うのが難しいといったケースも少なくありません。年金分割などの離婚問題で悩んだときは、真摯に対応してくれる弁護士を見つけて相談してみましょう。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
