飛行機事故の賠償責任の決め方と弁護士に依頼すべきメリット | アトム法律事務所弁護士法人

飛行機事故の賠償責任の決め方と弁護士に依頼すべきメリット

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飛行機事故の賠償責任の決め方|弁護士に依頼すべきメリット

航空機の事故といわれると、多くの方が凄惨な墜落現場を思い起こすのではないでしょうか。

また、近年では小型機が住宅に墜落して住民が死亡したり、飛行機の部品が落下して走行中の車に直撃するといった問題も発生しており、乗客でなくとも被害に見舞われる可能性もあります。

飛行機に関する事故で、乗客や地上にいる人が死傷するという結果が発生してしまった場合、賠償額はどのように決定されるのでしょうか。

本記事では、飛行機にまつわる事故において、慰謝料などの賠償金がどのように決められるのか解説していきます。

飛行機事故における損害賠償の金額の決め方

飛行機事故の賠償責任のルールについては、適用される条例や法律などによって変わってきます。国際線と国内線にわけてみていきましょう。

国際線での損害賠償責任の決め方

国際線の飛行機事故で死亡した場合には、「モントリオール条約」の適用の可否によって損害賠償金額の考え方が変わります。 

モントリオール条約とは?

モントリオール条約の正式名称は、「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」です。この条約は1929年に採択された「ワルソー条約」の問題とされた規定を修正したもので、1999年にICAO加盟国外交会議で採択されており、日本では2000年に締結されました。

モントリオール条約は、国際航空運送における航空運送人の法的な責任や損害賠償の範囲について規定されています。2019年11月末時点で136か国が批准しています。

モントリオール条約は、「旅客の死亡・傷害」事故について従来の規定を引き上げました。ワルソー条約では旅客の死亡・傷害の際には賠償限度額を約280万円で責任の原則も過失推定とされていました。

しかし、モントリオール条約ではその賠償限度を無制限に引き上げ無過失責任を盛り込む等の大幅な見直しがなされています。

旅客の死亡・傷害、貨物・手荷物に係る損害、旅客の延着の賠償限度額については物価変動に応じて5年に一度、賠償限度額を見直すことになっています。そして、2019年には10年ぶりに同条約による損害賠償限度額が改正がなされました。

旅客の死亡または傷害について、賠償限度額が約1590万円(11万3100SDR)であったものが、2019年12月28日以降は約1940万円(12万8821SDR)とされています。

また、11万3100SDRまでは無過失責任とされ、航空会社の過失の有無にかかわらず被害者の遺族に対して損害賠償の支払い義務が発生します。

それ以上の賠償額の場合には、過失推定とされ航空会社の反証が認められると賠償金が受け取れないという可能性もあるでしょう。

モントリオール条約の適用範囲について

モントリオール条約の適用範囲については、出発国と到着国が同条約の締約国である必要があります。旅客や利用エアラインの国籍や、予定寄港地が非締約国であるかは関係ありません。

出発国が締約国・到着国が非締約国の場合、「往路のみ」または「復路のみ」なら同条約は適用されません。しかし、往復運送の場合には適用があります。

国内線での損害賠償責任の決め方

国内線での飛行機事故の場合には国同士の合意である条約は適用されませんので、モントリオール条約の適用もありません。

飛行機事故が日本国内で発生した場合には、民法の規定や航空会社と利用者の間で締結された約款の規定が適用されます。

旅客運送約款の中には、旅客の死亡や傷害の場合に発生する損害について、損害の原因となった事故が航空機内の事故や乗降作業中に生じたものであれば、航空会社が損害賠償責任を負うと規定しているものもあります。

ただし、その損害を防止するために「必要な措置をとったこと」または必要な措置をとることができなかったことを証明した場合、会社は賠償の責任を負わないと過失責任の規定を定めていることが一般的でしょう。

コラム|自宅に墜落したり飛来物が落下したらどうなる?

小型機が民家に墜落して住民が死亡する事故や、飛行中の飛行機から部品が落下して乗用車を直撃する事故などが発生しています。
事故によって被害を受けたら、事故の原因となった者に対する損害賠償請求が可能です。

たとえば、小型機が墜落した事故では、小型機を運転していたパイロットや管理会社などに対して損害賠償請求することになるでしょう。

実際に発生した、東京都調布市で小型機が住宅街に墜落して民家にいた女性が死亡した事故では、亡くなった女性の遺族は小型機の管理会社を相手取り損害賠償請求を求めて民事裁判を起こしています。
一審では遺族の請求が認められたものの、2021年に行われた控訴審では遺族の請求が棄却されており、今後の展開が注目されます。

また、飛行中の飛行機から部品などが落下する事故では、航空会社に対して損害賠償請求することになるでしょう。

国土交通省は相次いだ飛来物による事故を受け、すみやかな被害者救済を実現するために「航空機落下物被害者救済制度」や「航空機落下物見舞金制度」といった航空機からの落下物による補償を拡充する取り組みを行っています。(参考:「落下物対策の強化について 国土交通省航空局 平成30年3月」https://www.mlit.go.jp/common/001230573.pdf )

事故がどのようなケースであっても、被害者の損害を十分に補填できるだけの適切な損害賠償金を正しく算定しておく必要があるでしょう。つづいては、損害賠償金のなかでも金銭に換算しにくい慰謝料の算定方法について解説していきます。

飛行機事故での慰謝料について

飛行機事故に遭った結果、被害者に損害が発生した場合には相手方に対して不法行為にもとづく損害賠償請求ができます。

慰謝料とは一体、何なのでしょうか。慰謝料の基本的な意味から算定方法について解説していきます。

基本情報|慰謝料とは?

慰謝料とは「被害者の精神的苦痛を補填するためのもの」で、損害賠償責任に基づき支払われる賠償金のひとつです。

飛行機事故の慰謝料として考えられるものとして、以下の3つをあげることができます。

  • 死亡慰謝料
  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
  • 後遺障害慰謝料

それでは、これら3つの慰謝料相場についてそれぞれ確認していきましょう。

死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料には2種類あります。1つ目が、被害者本人に対する事故で死亡させられたことによる精神的苦痛を補填するために支払われる賠償金です。そして2つ目が、被害者の遺族に対する事故により親族である被害者を失ったことの精神的苦痛を補填するために支払われる賠償金です。

飛行機事故の場合、ひとたび発生すると重大な死亡事故が発生するリスクがあります。

死亡慰謝料の相場については、交通事故の場合に裁判所が認定した相場が参考になります。

死亡した被害者が「一家の支柱」の場合なら2800万円、「母親、配偶者」の場合なら2500万円、「その他」の場合なら2000万円~2500万円が裁判実務上における死亡慰謝料の相場です。

死亡慰謝料の相場表

相場
一家の支柱2800万円
母親、配偶者2500万円
その他※2000~2500万円

※ 独身の男女、子ども、幼児など

なお、この死亡慰謝料は被害者本人に対する慰謝料と遺族の慰謝料があわさった金額として考えられています。

死亡逸失利益の請求も検討

飛行機事故で被害者が死亡してしまった場合、死亡逸失利益を請求できる可能性があります。

死亡逸失利益とは、本来存命であれば得られたはずの収入を、事故によって失ったことへの賠償です。

死亡逸失利益は事故前に金銭収入がない方や高齢者で年金を受け取っていた方も請求が認められる可能性があるので、死亡事故の被害者にとっては非常に重要な賠償費目と言えます。

関連記事『死亡事故の逸失利益|計算方法と職業ごとの具体例、生活費控除とは?』では死亡逸失利益の金額の求め方を解説していますので、あわせてお読みください。

入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料は、事故で負傷したことによって医療機関に入院または通院せざる得なくなった場合、このことに対する精神的苦痛を補填するために支払われる賠償金のことです。入通院慰謝料は、「傷害慰謝料」ともいわれています。

飛行機から飛来物が落ちてきたような事故の場合、たとえ命が助かったとしても大怪我を負うリスクがあるでしょう。

入通院慰謝料の相場については、怪我の治療期間の長さから決まります。

入院月数と通院月数から入通院慰謝料の相場がおおよそわかるので、下表をご覧ください。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

※ 単位:万円
※ 横軸は入院月数、縦軸は通院月数を示す
※ ひと月は30日

たとえば、入院3ヶ月、通院3ヶ月の治療を要した場合、入通院慰謝料の相場は188万円です。横軸の「3月」、縦軸の「3月」が交わる箇所をみれば、金額がわかります。

もっとも、ここで紹介した慰謝料の金額はあくまで目安であり、必ずこのような金額になるとは限りません。

生命に危険が及ぶ状態がつづいたり何度も手術を要した場合は増額される可能性があるでしょう。一方、切り傷など軽傷で済んだ場合は低い金額となることが予想されます。

怪我の慰謝料の計算方法の詳細や請求の流れについては、関連記事『怪我の慰謝料はいくらが相場?弁護士基準の金額と請求の流れを紹介』を読むとさらに理解が深まります。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料とは、事故が原因で負傷し治療が終了したあとも後遺障害が残った場合、そのことに対する精神的苦痛を補填するためにその後遺障害の等級認定に応じて支払われる賠償金のことをさします。

飛行機から飛来物が落ちてきたような事故の場合、たとえ命が助かったとしても大怪我を負い、何らかの障害が残るリスクがあるでしょう。

後遺障害慰謝料の相場については、後遺障害等級で決まります。

後遺障害等級とは、治療を受けても残った障害の程度や部位を14段階に分けたものです。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとにあらかじめ金額が決められています。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級相場
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

※ 後遺障害等級は厚生労働省の「障害等級表」による

後遺障害等級の数字が小さいほど障害の程度が重くなるので、後遺障害慰謝料の金額は高くなっています。
たとえば、後遺障害等級14級なら後遺障害慰謝料は110万円が相場であるところ、後遺障害等級1級なら後遺障害慰謝料は2,800万円が相場です。

等級によって後遺障害慰謝料の金額が変わってくるので、どの等級に該当するかが重要になってきます。

逸失利益の請求も検討

後遺障害認定を受けた場合には、後遺障害逸失利益の請求も可能です。後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下してしまい、将来的に得るはずの収入が減ったことへの補償になります。

事故前の収入をベースに計算し、後遺障害が重いほど、年齢が若いほど高額になりやすいです。

関連記事『【後遺症の逸失利益】計算式と早見表で相場がわかる!具体的な計算シミュレーション』では逸失利益の計算方法を具体的に説明しています。計算式は複雑ですが、関連記事を読むとおおよその相場観がつかめるので、参考にしてみてください。

飛行機事故に遭った場合には弁護士に相談すべき

ここでは、飛行機事故に遭った場合には弁護士に相談すべき理由について説明していきましょう。

交渉は弁護士に任せることができる

飛行機事故で死亡・負傷した場合、損害賠償についてまずは相手方との話し合いが先行されます。条約や約款に基づき相手方から示談の申入れがなされますが、被害者やその遺族の方は損害賠償の算定方法やその相場について知識を有していない場合がほとんどでしょう。

そこで、仮に相手方が相場と比較してかなり低額で和解を申し入れてきたとしても、それに気づかず被害者側が和解に応じてしまうというケースも考えられます。

弁護士に交渉を任せることで、不本意な結果に終わる可能性を下げることができるでしょう。

賠償金額に納得できない場合は裁判手続となる

飛行機事故の場合、モントリオール条約の適用範囲であれば、航空会社の過失も有無にかかわらず約1900万円までの損害については賠償金を受け取ることができます。

しかし、限度額以上を請求する場合については航空会社の過失が認定されなければ請求することができません。航空会社から提示される示談金の額に応じられない場合には民事訴訟を提起する必要があります。

同条約が適用される場合の裁判管轄地については、「運送人の住所地」「運送人の主たる営業所の所在地」「運送人が契約を締結した営業所の所在地」「到達地」いずれの裁判所に対して訴訟を提起することができるようになっています。

他方、民法や運送約款が適用される場合にも訴訟ではその適否を争ったり、法的に有利な主張をしたりする必要があるでしょう。

訴訟に発展した時点で弁護士に依頼する場合も多いと思いますが、航空会社から示談の提案が来た段階で弁護士に相談しておくことで遺族らに有利な主張をすることができるでしょう。話し合い自体もスムーズに行え、早期解決につながる可能性も高いです。

飛行機にまつわる事故被害は弁護士に無料相談しよう

事故による被害を被った場合、弁護士に相談することをおすすめします。

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飛行機事故によってご家族を亡くされたり、大きな後遺障害が残ってしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。今後どのような対応をとっていくべきなのか弁護士からアドバイスがもらえるでしょう。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了