遭難被害は損害賠償請求可能?山岳事故の法的責任や請求相手を弁護士解説 | アトム法律事務所弁護士法人

遭難被害は損害賠償請求可能?山岳事故の法的責任や請求相手を弁護士解説

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遭難被害は損害賠償請求可能?山岳事故の法的責任や請求相手を弁護士解説

登山ツアーの主催者や引率者が注意を怠ったために、山で遭難してしまう場合があります。遭難によって骨折や凍傷など身体にダメージを負った時は、治療費や入院費の補償を受けたいと感じるでしょう。

結論からいうと、遭難事故では損害賠償を獲得できる可能性があります。

今回は遭難の法的責任や賠償の相手方、損害賠償の請求方法や救助費用の自己負担を抑えるための対策を紹介します。

遭難時の損害賠償に関連する法的根拠

遭難に限らず、損害賠償を請求するには相手方の違法行為を立証しなくてはなりません。遭難事故の場合、遭難者を監督していた者の安全配慮義務違反が問題になることが多いです。

また、救助時にケガした時は、救助隊に対して賠償金を請求できる可能性もあります。この場合に問題になるのが民法における事務管理の規定です。

遭難で損害賠償を請求する際の法的根拠について詳しく確認しましょう。

安全配慮義務

登山ツアーの主催者や引率者、指導者などの安全配慮義務が問われる場合があります。安全配慮義務とは、ある法律や契約を根拠に特別な関係が生じた当事者間において、当事者の一方、もしくは双方が負うべき信義則上の義務です。

たとえば、学校や教師は、生徒の安全を守る一般的な義務や、契約上の安全配慮義務を負っています。

契約にもとづき安全配慮義務が発生しているならば、債務不履行が問題になります。特段契約を交わしてはおらず、一般的な義務として安全配慮義務が課されているのなら、不法行為責任が問われるでしょう。

旅行業者は旅行法の制約を受けており、ツアー登山は旅行契約にもとづいて開催されます。一般的にツアー登山の主催者や引率者は、旅行客に対して安全配慮義務が課されます

ガイド登山の場合は旅行法の適用は受けません。旅行契約とは別の法律関係が形成されます。しかし、ツアー登山と同様、ガイドにも一般的な義務として安全配慮義務が課されるのです。

遭難でガイドの安全配慮義務が問題になった事例

札幌地方裁判所平成16年3月17日判決は、引率のガイドが旅行客に対する安全配慮義務を怠ったと認定した事例です。事故当日は以下の通り、遭難の可能性が高い状況でした。

  • 台風の直後で暴風、大雨警報などが出ていたこと
  • 参加者は50~70代の高齢者であったこと
  • 山頂付近には風速15mの風が吹いていたこと
  • 遭難した客2人が途中から集団を離れ出していたこと

裁判所はツアーガイドが結果回避義務を果たしていないと断じています。安全配慮義務違反の認定では、結果回避義務と予見可能性の2つが争点になります。結果回避義務とは、想定される事故の発生を防ぐために、適切な処置や対応を取っていたかということです。

本事例では遭難を防ぐために、遅れた2人が追いつくまで全員待機させる、山頂付近で2人を捜索するなどの対応が必要であったとしています。

安全配慮義務違反の認定については、事故の発生を予期できる状況であったかという予見可能性も重要な論点です。事故の可能性を認識しているからこそ、安全に配慮する必要性が生じます。

引率登山の場合、予見可能性の有無が損害賠償認定の可否を左右する場合があります。

事務管理

自分で救助を呼んでいなくても、周囲の通報や救助隊自らの判断で助けに来てくれることがあります。警察や消防団など公的機関が実施する場合、救助費用は発生しません。

一方、民間に救助を依頼した場合、遭難者が費用を負担する必要があります。遭難者の意思とは関係なく、民間の会社による救助を受ければ、費用を負担する必要に迫られます。

望んだわけでもないのに費用を徴収されるのは、理不尽に思われるかもしれません。しかし、これには法的な根拠が存在しており、具体的には民法上の事務管理という規定の適用を受けます。

事務管理とは、義務がないにも関わらず、他人のために事務を処理する行為です。事務とは生活に必要な一切の仕事を差し、法律で債権債務関係の成立が認められるものです。遭難者を義務なく救助する行為も事務に該当します。

事務を行う管理者が、本人の有益になることを目的に軽費を負担した場合、後に本人へ対してその費用を請求できます。遭難者を救助する行為が本人にとって有益でないはずがないため、救助に要した費用を本人に対して請求してもOKです。

救助隊の悪意・重過失によるケガは損害賠償を請求できる場合がある

救助隊の行動が原因で遭難者がケガを負ったり、亡くなったりしたときは損害賠償を請求できる場合があります。

他人の身体や財産に対する危害を避けるために事務管理をした時、悪意や重過失がなければ、管理者は生じた損害を賠償する義務を負いません。

逆に考えると、故意に遭難者にケガをさせる、死亡を誘発したという事実があるなら、管理者に損害賠償を請求可能です。

遭難事故の救助で生じる費用はいくら?負担を和らげる方法も紹介

遭難事故の救助依頼先は、警察や消防などの公的機関と、民間の会社に大分されます。原則として公的機関へ救助を依頼する際は、遭難者が負担すべき費用はありません。

しかし、民間の会社を使う場合、原則は遭難者が費用を負担する必要があります。ここでは救助費用の内訳や、費用の負担を和らげる方法を紹介します。

遭難事故の救出に要する費用の内訳

民間の救助隊を利用する場合、救助隊人数分の手当・食費・宿泊費・交通費・装備品や消耗品費・保険料などがかかります。

空からの捜索が必要な状況では、ヘリコプターの費用も考慮しなくてはなりません。ヘリコプターは1日の稼動だけで、50万円程度の費用が発生する可能性もあります。

海上の遭難事故における救出費用は?

海での遭難の場合、海上保安庁や民間のボランティア団体である日本水難救済会が出動します。海上保安庁や日本水難救済会に対して救助を要請しても、費用は発生しません。

ただし、日本水難救済会が実施する洋上救急制度を活用した場合、船主等負担金や事業協力金がかかります。洋上救急制度は医師や看護師を現場に派遣し、治療のために医師と遭難者を陸上の病院へ搬送するためのものです。

万が一の遭難に備えられるレジャー特化型保険

遭難事故の場合、多額の救助費用が生じる恐れがあります。救助費用は損害ではないため、損害賠償額には含まれない場合が多いです。

救助費用の負担を抑えるにはレジャー特化型の保険に加入したり、旅行傷害保険へ救援者費用等補償特約を付けたりといった対策が有効です。

レジャー保険には24時間単位で加入できる種類や、登山やスキーなどジャンルごとのプランなどがあります。登山が趣味の方から年に一度しか行かない人まで、一人ひとりのニーズに合わせて利用プランを選定できます。

遭難で被った損害に対する賠償金を請求する方法

遭難によって怪我や後遺症を負ったり、死亡した場合、損害賠償請求できる可能性があることはわかりました。では、損害賠償請求はどのようおこなうのでしょうか。

ここでは、賠償金を請求する方法に加えて、弁護士に依頼した方がよい理由もあわせて解説します。

適正な金額の賠償金を算定する

相手方に損害賠償を求めるには、まず損害額を算出しなくてはなりません。過去の判例を確認して根拠のある数字を出さないと、相場や適切な水準とかけ離れる場合があります。

賠償額は事案によりけりなので、自分だけで賠償金を算出しようとすると、非常に骨の折れる作業になるでしょう。賠償金算定の負担を和らげるためにも、弁護士への依頼は有効です。

示談や訴訟によって賠償金を請求する

賠償金を算出した後は、相手方との示談交渉に移ります。仕事の多忙さや相手方への恨みから、自ら示談交渉に応じることができない時もあります。

弁護士は事故の当事者ではないので、相手を前に感情を高ぶらせてしまうこともなく、スムーズに交渉を進められる可能性が高いです。

示談交渉が決裂した場合は、相手方との訴訟などに移ることになるでしょう。訴訟では裁判所が最終的な結論を出してくれますが、自分の主張がすべてかならず認められるとは限らない点に注意しなければなりません。

訴訟はご自身で進めることもできますが、手続きが煩雑です。裁判所の職員が丁寧に教えてくれるとも限らないので、訴訟の手続きに慣れた弁護士に任せてしまえばスムーズに事が進むでしょう。

山岳事故は弁護士に相談しよう

損害賠償を請求する際は、弁護士に依頼をかけた方がよいでしょう。弁護士は適切な賠償額を算出し、示談交渉にも代わりに応じてくれます。損害賠償を請求したい時は弁護士に相談するのが好ましい選択だといえます。

ガイドのミスによって山で遭難して死亡した、後遺障害が残ったといった損害が発生した場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

これからどのような対応をとっていけばいいのかわからないことも多いでしょう。弁護士にご相談いただき、損害賠償請求が可能なケースか聞いてみましょう。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点