スポーツ事故の裁判手続きと流れ|有利な判決を得るポイントを裁判例から考察 | アトム法律事務所弁護士法人

スポーツ事故の裁判手続きと流れ|有利な判決を得るポイントを裁判例から考察

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スポーツ事故の裁判手続きと流れ|有利な判決を得るポイントを裁判例から考察

裁判は、相手に対して刑事責任、民事責任、行政責任といった法的責任を問う手段です。簡単にいうと、刑事責任は懲役などの刑罰を問うもの、民事責任は損害の金銭的補償を問うもの、行政責任は行政機関や公務員が問われる懲戒処分などです。

この3つの法的責任のうち、被害者が主体となって進めるものは民事責任を問う「民事裁判」です。

この記事では、スポーツ事故に関する民事裁判を起こす手続きと流れ、裁判例を解説します。また、裁判を起こすには弁護士への依頼が欠かせない理由もお伝えします。

スポーツ事故の裁判で問う法的責任

損害賠償請求は、相手が何らかの法的責任を負っており、その責任を果たしていないことを根拠にしています。そこで、スポーツ事故で裁判を起こすときに着目したい法的責任をみていきましょう。

スポーツ事故に関する法的責任

スポーツはある程度怪我のリスクを持っており、スポーツをする以上はその点を理解していることでしょう。
ここでいうスポーツ事故とは、通常考えられる範囲を超えた行為によって誰かに負傷させられたりスポーツをする環境が安全でなかったために怪我をさせられたケースが該当します。

スポーツ事故の民事責任を裁判で問ううえでポイントになるものは以下の通りです。

  • 不法行為責任
  • 使用者責任
  • 土地工作物責任
  • 営造物責任

スポーツ事故の原因ごとに損害賠償請求先が異なり、誰に損害賠償請求するかで問うべき法的根拠も異なります。スポーツ事故に関する賠償責任が誰にあるのか、どういった法的責任に問えるのかは関連記事で詳しく解説中です。

スポーツ事故の裁判を起こす手続きと流れ

スポーツ事故で裁判を起こすときには、次のような手順のとおりです。

(1)裁判所に訴状を提出

民事裁判の手続きは、訴える側(原告)が裁判所に訴状を提出するところから始まります。
なお裁判所が訴状を審理した結果、訴状に不備があると修正を求められます。

訴状に問題がなければ、裁判所から被告に対して訴状が届けられる流れです。

どこの裁判所に訴状を提出するの?

最初は地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出します。
損害賠償請求額が140万円以下の請求については簡易裁判所、それ以外の民事事件については地方裁判所が第一審裁判所です。

第一審裁判所というのは、日本が三審制を採っていることによります。第一審、第二審、第三審とすすむにつれてより上級の裁判所で審理されることになるのです。

また、裁判所にも管轄地域が存在します。原則として被告の居住地を管轄する裁判所に訴状などを提出することになりますが、特例もあります。たとえば、不法行為に関する訴えについては、不法行為があった場所を管轄する裁判所でも対応可能です。

訴状の他には何が必要?

裁判所には、訴状、申立手数料、郵便切手代、添付書類などの提出が必要です。
添付書類には、訴状の副本(被告の人数分)、当事者が未成年の場合は親権者を証明する戸籍謄本などがあげられます。

各裁判所ごとに運用が異なる場合もあるので、事前に確かめておくと良いでしょう。

(2)口頭弁論期日が決まる

裁判所から、原告と被告それぞれに口頭弁論期日の通知が届きます。

口頭弁論とは、公開された法廷で裁判をおこなう手続きのことです。
被告には答弁書の提出が求められており、提出された答弁書は原告も受けとります。

(3)法廷での口頭弁論で双方が主張を述べる

口頭弁論では、訴状の内容確認から始まります。
そして、答弁書や証拠をもとに被告や原告が自身の主張を述べていきます。

弁護士に依頼していれば本人は出廷しなくていい

口頭弁論には、本人または代理人が出席しなくてはなりません。

口頭弁論は複数回行われることもあります。その度に裁判所に出廷するのは、被害者にとって大きな負担になるでしょう。弁護士に依頼すれば弁護士が代理人として出廷してくれるので、ご本人が出廷する必要はありません。

(4)判決の言い渡しまたは和解

裁判所側が判決を確定できると判断した場合には、口頭弁論は終了となります。

判決を受けて納得がいかない場合には、原告・被告ともに上訴可能です。どちらかが上訴した場合は、より上級の裁判所にてもう一度審理がなされるため、争いは長期化します。

もっとも、裁判所から和解勧告を受けて和解が成立することもあります。和解が成立すればその時点で争いごとは終了するため、裁判所による判決を受けるよりも、早期解決が見込める点がメリットといえるでしょう。

スポーツ事故の裁判例|被害者の主張が認められるケースとは?

ここでは、スポーツ事故に関する裁判の事例を紹介します。スポーツ事故にあった人(原告)の訴えが認められた判例もあれば、訴えが認められなかった判例もあるので、その違いにも着目してみていきましょう。

裁判例(1)水上バイク同士の衝突

二人乗りの水上バイク同士が衝突してしまい、被害者は骨盤骨折や頭部外傷などの重傷を負ってしまいました。
被害者はぶつかった相手方の運転手に対して裁判を起こし、損害賠償を求めたのです。
裁判所は、加害者が無免許であったこと、周囲を確認せずに運転していた点の過失を認めました。一方で、被害者の乗っていた水上バイクの運転手も無免許であり、運転免許の有無を確認しなかった点に落ち度があったものとして、加害者の過失を8割と判断しました。(大阪地方裁判所 平成19年(ワ)第8029号 損害賠償請求事件 平成22年1月27日)

このように、裁判を起こしても被害者の主張が全て通るわけではありません。不当な過失がつかないようにすることが重要になります。

ポイント

  • 裁判所は相手の責任を認めて8割の賠償を命じた
  • 被害者自身にも2割の過失がついた

裁判例(2)熱中症で脳梗塞になった

バドミントン部の部活動中、中学1年生の生徒が頭痛を訴えました。病院で検査を受けたところ、脳梗塞を起こしていることがわかり、そのまま入院することになったのです。結果として、生徒には後遺障害が残ってしまいました。
裁判所は、体育館内に温度計を設置して顧問が気温に応じた対応をとることができるように注意すべき義務を怠ったとして、中学校の校長の過失を認定しました。(大阪地方裁判所 平成25年(ワ)第5530号 損害賠償請求事件 平成28年5月24日)

部活動や体育の授業など学校管理下でスポーツをしているときには、生徒に対して、学校側は安全配慮義務を負っています。この判例では安全配慮義務違反を怠ったと認定されたため、学校側に損害賠償を命じる判決となりました。

ポイント

  • 学校は生徒に対する安全配慮義務を負っている
  • 気温に応じた対応が必要と学校関係者に周知されていた

学校管理下で起こった事故について、損害賠償請求相手と請求内容は関連記事『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』で詳しく解説しています。

裁判例(3)バスケットボールの練習会で怪我

バスケットボールの練習会でパスの練習中にボールを取り損ない、参加者が指の骨を折ってしまいました。参加者は、コーチがパスの投げ方について簡単な説明のみとしていたこと、パスの練習相手の投げ方が不正確なのに個別指導しなかったことなどが、コーチの安全配慮義務違反によるものとして、損害賠償請求を起こしたのです。

裁判所は、相手のボールコントロールの不正確さを裏付ける証拠が無いこと、また、怪我の原因がボールをとらえきれなかったことにあるとして、コーチの安全配慮義務違反を認めませんでした。主張の前提となっていた安全配慮義務違反が認められず、損害賠償請求も通りませんでした。(東京地方裁判所 平成31年(ワ)第3383号 損害賠償請求事件 令和元年12月35日)

裁判を起こす際には、根拠を裏付ける客観的な証拠や資料が重要です。この判例においては、怪我をした参加者の主張を裏付けるものが不足していると判断され、敗訴といえる結果になりました。

ポイント

  • 怪我をした参加者の主張を裏付ける証拠がなかった

裁判以外にスポーツ事故を解決する方法

裁判は相手に対する損害賠償請求方法のひとつです。しかし、いきなり裁判を起こすのではなく、まず示談交渉(話し合い)によって解決を図り、それでも解決できない場合に調停や裁判へと進むケースが多いです。

示談交渉|当事者による話し合い

示談とは、当事者が話し合い、双方の合意をもって争いをやめることをいいます。
示談を成立させるためにはお互いの譲歩が必要です。

示談には、裁判所を介さないぶん事務手続きや諸費用をかけずにすんだり、お互いの合意ができれば早期解決につながるというメリットがあります。

一方で、当事者間で意見が対立していたり、賠償金額に合意できないときには、示談交渉での解決は難しいでしょう。調停や裁判といった手段も検討する必要があります。

調停|裁判所を介しての話し合い

調停とは、裁判所に入ってもらって話し合い、解決を目指す方法のことです。
示談との違いは、裁判所という第三者的な立場が話し合いに介入している点にあります。

示談交渉で折り合いがつかなくても、裁判所に間に入ってもらうことで話し合いが進むことも考えられます。

一方で、お互いの合意が前提にあるため、合意できないときには調停での解決も困難です。裁判を起こすという次の手段も検討しなくてはなりません。

スポーツ事故で裁判などを検討中なら弁護士に相談

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弁護士に相談・依頼するメリットと併せて、相談窓口を紹介します。

スポーツ事故について弁護士に相談・依頼するメリット

スポーツ事故について弁護士に相談・依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 適正額の賠償金獲得を目指せる
    相手方の提示額が適切とは限りません
  • 資料収集や書類作成のサポートしてもらえる
    ご自身だけで全て準備するのは負担が大きいです
  • 裁判の方針を一緒に考えてくれて対応も一任できる
    相手が弁護士を立ててくる可能性が十分あります

裁判となると、相手方が弁護士を立ててくるケースも多くなるため、被害者自身も弁護士を立てることをおすすめします。

無料の法律相談|予約を24時間受け付けています

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スポーツ事故の難しいところは、スポーツと怪我が隣り合わせであることにつきます。
そのため裁判を起こしても、被害者の主張がどこまで認められるのかはケースバイケースです。

ご自身のスポーツ事故について、弁護士に見解を尋ねるところから始めてみませんか。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了