会社の休憩中における事故でも労災認定が下りる場合もある!8つの事例研究 | アトム法律事務所弁護士法人

会社の休憩中における事故でも労災認定が下りる場合もある!8つの事例研究

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外出中に車と衝突したり、何らかの不慮の事故に巻き込まれたりと、職場での休憩中に災害に見舞われる場合もあります。休憩中の災害は労災だと認定されるのでしょうか。

結論からいうと、会社での休憩中の災害は、基本的に労災だと認められません。しかし、休憩中の災害でも例外的に労災の認定が下りることもあります

今回は会社の休憩中に発生した事故で、労災が認められたケースとそうでないケースを紹介します。各事例では判断の根拠も解説しているので、労災の認定基準に対する理解を深められるでしょう。

会社の休憩中に生じた事故で労災が認められなかった事例

原則的に休憩中の事故は労災とは認められない

原則として、休憩中に発生した事故は労災だと認められません。社内で休憩を取っている間は、会社の管理下にある状況だといえます。しかし、休憩中だと仕事はしていないので業務上にはあるといえないでしょう。

事業主の管理下であっても、実際に業務をしてはいない間に発生した事故は労災の認定条件を満たさないのです。具体的にどういったケースが考えられるか、事例を見ていきましょう。

労災非該当の事例(1)休憩中のキャッチボール

休憩時間中に同僚とキャッチボールをしており、ボールが顔に当たって負傷した事案です。キャッチボールは当然のことながら、業務外の行為です。キャッチボールをしていた場所が会社の施設内であっても、労災は認められないでしょう。

例外的にこのケースで労災が認められる可能性があるのは、会社の設備に問題があったときです。たとえば、老朽化した屋根が落ちてきて、キャッチボール中の従業員を直撃したことで負傷した場合、労災が認定される余地はあります。

労災非該当の事例(2)昼休みの外出中における事故

昼休み中に同僚と、もしくは1人で食事のために外出にいくことはよくあります。お店へ向かう道すがら、横断歩道を通行中、突っ込んできた車と衝突して怪我を負ったとき、労災は適用になるかという事例です。

昼休みの外出中に発生した事故に関しては、基本的には労災の適用は受けられません。なぜなら、業務とは関係ない私的行為であり、かつ社内の施設で生じた事故でもないためです。

休憩時間中の過ごし方は、労働者個人に委ねられているので、休憩時間内の行為は基本的に私的行為に該当します。

したがって、休憩時間中に生じた災害は、トイレのような社内施設の欠陥が原因でもない限り労災とは認められません。食事ではなく、買い物や散歩中でも労災の可能性は否定されます。

労災非該当の事例(3)休憩中に拾った不審物で遊んでいたら爆発した事例

炭鉱で採掘中、泥にまじっていた不審物(不発弾)を休憩中に針金をつついて遊んでいたら、それが爆発して手の指を負傷した事案です。

休憩中は作業員に自由な行動が認められているため、基本的には何が起きたとしても自己責任となります。不審物を針金でつつくのは明らかに遊んでいるので、業務には関係ない私的行為です。

会社の休憩中に生じた事故で労災が認められた事例

例外的に労災と認められる休憩中の事故もある

先ほど紹介した通り、基本的には休憩中に発生した事故では労災の認定はおりません。しかし、原則には例外がつきものです。

労災の認定でも同様で、ケースによっては会社の休憩中に生じた事故でも労災が認められた事例があります。具体的な事例を5つ紹介します。

労災の認定事例(1)社内設備が原因で生じた事故

休憩時間中に社員食堂へ向かっている最中に、階段から転倒して骨折してしまった事案です。この場合は会社施設内での出来事であり、階段という社内設備が原因で生じた事故なので、労災の条件を満たします

他にも、昼休み中に利用した食堂で食中毒が発生し、体調不良が生じたケースでも労災は認められるでしょう。

労災の認定事例(2)道路わきで休憩中の事故

道路清掃を担当していた日雇い労働者が、昼休憩で道路に面した柵によりかかりながら休んでいたところ、運転操作を誤った乗用車が柵に衝突し、車と策に挟まれ肋骨を骨折した事案です。

このケースは休憩中に生じた事故とはいえ、業務との関係が肯定され、実際に労災だと認定されています。労働者が作業場内の道路に面した箇所で策にもたれつつ休憩する行為は、業務との関連が強いと考えられるためです。

乗用車の衝突によって労働者が負傷したことは、想定される危険が顕在化したものと捉えられ、労災が認められています。業務との関係が肯定されるかどうかは、ケースバイケースで判断されます。

労災の認定事例(3)休憩中に業務用の車両内で発生した事故

海に近い事業所において、タンクローリーで油を運搬する業務に従事していた被災者の事案です。作業途中で昼の休憩タイムが訪れ、タンクローリー内の運転席後部で休憩していたところ、突然車両が動き出し、そのまま海に転落してしまったケースです。

停車中のタンクローリーにはサイドブレーキがかかっておらず、歯止めも置かれていませんでした。逸走防止対策が講じられていない状態で、傾斜があった等、何らかの事情により車両が動き出したと考えられています。

車両の管理体制に問題があるケースなので、労災だと判断されています。

労災の認定事例(4)休憩中に足場を移動中に発生した事故

工事用吊り足場の解体作業中に発生した事案です。橋梁の塗装工事終了後、作業に用いた足場を解体するという流れで、塗装工事は完了し、前日に墜落防止用の網が撤去されていました。

災害発生の当日は、被災者は上長の指示の元、足場上で、一人で目印となる布の取り外し作業を行っていました。休憩時間になったため、足場上で休んでいたところ、川へ転落してしまったようです。

川に落ちる瞬間を直接見た人はいませんが、他の作業員が被災者に対してこちらに来るよう伝えたあとに、何かが水に落ちるような音が聞こえたとのことです。

労災の認定事例(5)作業開始前の時間で暖を取っていた時の事故

戸外での作業が開始する前に、ドラム缶に薪をくべて暖を取っているときに生じた事案です。燃えが良くないため、若い同僚が作業場においてあった石油を運んできて、薪にかけて燃やした際に、当該労働者のズボンに引火して負傷したケースです。

作業前の時間は休憩中と同様、労働者には自由な行動が認められています。このため、作業前の時間に生じた災害は、事業場施設や管理の不具合が原因ではない限り、労災だと認められません。

他方、この事例は作業開始前に発生したものであっても、事業場施設の一種である暖房装置が原因となっています。以上のことから業務との関連性が強いと判断され、労災だと認められています。

最終的に労災か判断するのは労基署

今まで具体例をあげて、労災か労災ではないか解説してきました。覚えてほしいのは、最終的に労災を誰が決めるかというと、労働基準監督署だということです。

自分では明らかに労災だと判断していても、労働基準監督署が認めなければ労災保険の給付金を受け取れません。労働基準監督署が重視する労災の判断基準について紹介します。

業務遂行性と業務起因性の有無で労災か決まる

労働基準監督署は、業務遂行性と業務起因性の2つから、労災に該当するか判断しています。

業務遂行性とは端的にいえば、事業主の支配下・管理下にあるといえる状況です。休憩中でも、事業場内で活動していれば、業務遂行性は認められます。

業務起因性とは、災害による怪我や病気が業務に起因するといえる状態です。休憩中の行為は業務とは関係ないときの行動なので、私的行為と判断され、基本的には業務起因性が否定されます。

ベースとなるのは業務遂行性と業務起因性ですが、該当するかの判断は個別具体的な状況が考慮されます。

業務遂行性と業務起因性は、労災の種類のなかでも「業務災害」に該当する要件です。業務災害については、関連記事『業務災害にあってしまったら|複雑な労災保険制度を弁護士が解説』で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

会社から休憩中の事故は労災ではないといわれた

繰り返しになりますが、労災かどうか判断するのは会社ではありません。労災か判断するのは労基署です。休憩中の事故は労災に該当しないのが原則ですが、だからといって何もせず諦めるのは早いです。

会社側が勝手に判断して、労災申請に協力的でない場合もあるでしょう。労災申請の手続きに必要な申請書類には、会社側が記入する欄もありますが、労基署に会社側が記入に協力的でない点を伝えれば、ご自身で労災申請の手続きを進めることも可能です。

安全配慮義務違反が認められるなら損害賠償請求が可能

事故の内容によっては、会社側に安全配慮義務違反が認められ、労災保険では補償されない範囲の損害や慰謝料に関する損害賠償請求が可能な場合もあるでしょう。損害賠償請求が可能なケースかも弁護士に相談することで判明することもあります。

安全配慮義務違反が認められるような労災事故で大きな障害が残ったり、ご家族が亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。無料相談の予約受付は、24時間いつでも対応しています。気軽にお問い合わせください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了