贈与税の税務調査とは?調査を受けたらどうなる?調査への対応は?

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贈与税の調査とは?

親族間で現金や不動産を贈与された際に、贈与税の申告が必要かどうか迷ったことはないですか。

もし、申告していない場合、映画やドラマで見るような、ある日突然税務署が自宅を訪ねてくるようなことはあるのでしょうか。また、実際に税務調査を受けるとどうなるのでしょうか。

この記事では贈与税の税務調査がどのように行われるのか、そして税務調査を受けた場合はどのように対応すれば良いのかを解説します。

また、無申告や過少申告が発覚したときのペナルティについても併せて紹介していきます。

贈与税の税務調査について不安をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。

贈与税の税務調査はいきなり家に来る?

贈与税や相続税の、無申告や過少申告が疑われたときには税務調査が行われます。

税務調査というと、ある日突然、家に税務署職員が来て家を漁られるといったイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実際には違います。

相当悪質なケースでない限り、ある日突然税務署職員が来るということはなく、一般的には事前に日程調整の連絡が来て、調査を受けることがほとんどです。

贈与税の税務調査とは?

税務調査とは、税務署などにより行われる、納税者が正しく税務申告をしているかを確認するための調査のことです。

贈与税や相続税をはじめとする多くの税金は、納税者自身が税額を計算して申告・納付することになっています。計算を間違えていたり、虚偽の申告をされたりする可能性もあるため、不正を防止し、正しい税額を納めてもらうために税務調査が行われています。

贈与税の税率は贈与した金額に対し10%から55%と高く、驚くほど高い金額の贈与税になることもあります。税金を払うのが嫌だからと申告をしなかったり、本来申告すべき金額より少なく申告してしまう過少申告になったりすると、税務調査を受けて追徴課税を課されるおそれも考えられるでしょう。

贈与税に関連して、税務署は主に『お尋ね』、『税務調査』、『行政指導』を行って正しく税金が納付されるよう務めています。

それぞれどのようなときに行われるのか詳しく見ていきましょう。

贈与税の税務調査①税務署からのお尋ね

まず厳密な意味での税務調査ではないのですが、贈与税の無申告や過少申告の防止のために税務署からお尋ねが届く場合があります。

普段生活をしていて税務署から書面が届くことなどないでしょうから、びっくりするかもしれません。

お尋ねが届くタイミングとしては、まず不動産を購入した場合が挙げられます。

このお尋ねは、不動産を購入した際などに不動産登記簿の情報から新しい所有者に対して贈られてくるものです。

その目的は、所有権の移転事由が売買の場合に購入資金について贈与を受けていないかを確認したり、また移転事由が売買でなく贈与となっている場合には、贈与税の申告を促したりすることにあります。

お尋ねが届くもう一つの代表的なタイミングは、人が亡くなったときです。

市役所に提出された死亡届から、相続税の申告の有無をお尋ねする通知が税務署から送られてくることがあります。

贈与税には相続税の課税逃れを防ぐ役割もあるため、生前に被相続人から贈与を受けていないか確認する目的のものです。

いずれにせよ、税務署は贈与税の納付が必要となりやすいタイミングでお尋ねを送付して、必要な場合には申告をするよう促しているのです。

贈与税の税務調査②贈与税の税務調査

税務署が贈与税の無申告等を疑った場合には、贈与税の税務調査が行われます。

税務調査では、税務署職員が事前に調査を行いたい旨を申し入れて日程調整が行われ、その上で職員が自宅や職場などを直接訪れて調査します。

税務署は贈与税の無申告が疑われる事案については、かなり積極的に税務調査を行っています。

令和3事務年度では2,383件の調査が行われ、そのうち2,225件(93.3%)が申告漏れや過少申告を指摘されています。この実地調査については無申告事案が全体の83.1%を占めています。

調査件数については新型コロナウイルス感染症の影響により、件数が減少していた令和2事務年度より27.6%増加しており、徐々に実地・対面での税務調査に戻りつつあります。

基本的に贈与税の申告をしなかった場合にはほぼ確実に調査を受けることになり、無申告であるという事実が把握されてしまいます。

贈与税の税務調査③相続税の税務調査

相続税を申告した後、相続税の申告漏れが疑われる場合には、相続税の実地調査が行われます。

相続税の調査では、被相続人の方が亡くなる前にどのようにお金を動かしていたかが確認がされます。そのため、生前に現金や預貯金を贈与していた場合にはその事実がバレることになります。

相続税の実地調査は令和3事務年度では6,317件、そのうち相続税が過少であるとして修正申告などを求められた件数は5,532件(87.6%)と高い割合になっています。

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贈与税の税務調査④相続税についての行政指導

税の納付にあたって事務処理上のミスが生じたときなどには、行政指導が行われます。

あまり馴染みのない行政指導という言葉ですが、これは、税務署が提出された申告書などをチェックし、税金の計算方法や記入ミスがあった場合に修正を求める指導などを指します。

文書や電話による連絡、税務署への呼び出しなどによって実施され、令和3事務年度では14,730件、そのうち相続税額が過少であるケースは3,638件(24.6%)と事務的な確認に留まることも多くなっています。

行政指導については単純な事務処理上のミスにあたることが多いため、あまり心配はいらないケースがほとんどです。

その指導に従って修正申告などをすれば法律上は税務調査には該当しないため、自主申告扱いとされ、税金のペナルティが軽減されます。

贈与税のお尋ねはどうやって対応するのか

贈与税の無申告について調査されるのかどうかお悩みであれば、税務署による『お尋ね』と『税務調査』についてしっかりと把握するようにしましょう。

まず、実際に贈与税に関する税務署からのお尋ねが来た場合、どのように対応すれば良いのかを解説します。

不動産の購入についての税務署のお尋ねの内容

先述の通り、『お尋ね』は不動産を購入したり、人が亡くなったりした場合によく送られてきます。

不動産の購入時には、「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」というタイトルの書面が送られてきます。

このタイトルからすると、税務署はその不動産を買った金額を知りたいのではないかと思ってしまいそうですが、実際には違います。

実際はその不動産を購入する資金の出所などを知りたいのです。

税務署は、不動産を購入するために親族からいくら援助を受けたのかや、そもそも親族から贈与により不動産を譲り受けていないかを確認します。

援助を受けた金銭や不動産の評価額が年間110万円を超える場合には、贈与税の申告が必要です。

死亡時の税務署からのお尋ねの内容

人が亡くなったときには、「相続についてのお尋ね」というタイトルの書面が送られてきます。

このお尋ねは、亡くなった方の財産額を記載しその相続人の方々が相続税の申告が必要なのかどうか判定するためのチェックシートとなっています。

その中に生前亡くなった方から贈与を受けていないか記載する箇所があり、税務署が贈与の申告漏れがないか確認する基礎資料となります。

お尋ねで申告漏れに気づいた場合

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日までとなっています。

期限前に気づいたのであれば、期限までに贈与税の申告を行いましょう。

期限を超過しており、期限後申告となる場合であっても、延滞税などのペナルティが生じるため早急に申告をしましょう。

そのため、いずれの税務署のお尋ねについても安易に回答せず、税理士に相談して回答する方が無難です。

贈与税の無申告はなぜバレる?

なぜ贈与税の無申告がバレるのか

税務署は様々な方法で贈与税の申告漏れを把握します。

特に法定調書と呼ばれる基礎資料をきっかけに申告漏れがバレることが多いです。

法定調書は、会社や個人事業主が個人に対して金銭の支払いをした際に、その金額の内容について記された記録です。

会社や個人事業主は、給与や報酬の支払い、満期保険金の支払い、不動産の購入、金プラチナの売却など、個人に対して金銭の支払いをした際には、税務署に対してその内容を届け出ることが義務付けられているのです。

税務署はこれらの金銭の動きなどを確認して、贈与にあたる行為がないか、常に確認しているのです。

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相続税の調査で贈与税の申告漏れがバレる

相続税の調査は実は贈与税の調査も兼ねています。

税務署は、相続税の調査の際に亡くなった方の銀行口座の動きを確認しています。そのため、生前に親族に対して金銭を贈与していないかも併せて確認することができるのです。

例えば、子供が自宅を購入する際に両親からの資金援助があったような場合、一般的には子供宛に振り込みでお金を渡していることが多く、銀行口座の調査で贈与があったと認定されることになります。この場合には追加で相続税を納めたり、贈与税の期限後申告をすることになります。

では、現金手渡しならわからないのではないかと考える方がいらっしゃいますが、財産を形成する過程で、例えばお給料や不動産収入は銀行口座に振り込まれることが多いです。このお金を親族に贈与する場合に、銀行預金からそのお金を引き出した時の履歴が残っていますので、税務署はこの引き出しを何に使ったのか確認するわけです。

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お尋ねや税務調査で申告漏れ、過少申告が発覚した場合のペナルティ

税務署からのお尋ねに回答した結果、贈与税の申告漏れが発覚した場合や、相続税などの税務調査で贈与税の過少申告が発覚した場合に、どのようなペナルティがあるのか解説いたします。

申告漏れの場合

贈与税の申告期限である翌年3月15日までに申告をしなかった場合、本来の贈与税額の5%~20%の無申告加算税が課されます。

ただし、申告期限から1月以内に申告及び納税をした場合には、無申告加算税は免除されます。

贈与税の無申告加算税について詳しくは、関連記事『贈与税の申告忘れると【無申告課算税】の対象|追徴課税と注意点を解説』をお読みください。

過少申告の場合

贈与税について当初に申告したけれども、税務調査により過少申告が発覚した場合、追加で納税することになる贈与税額の5%~15%の過少申告加算税が課されます。

悪質な無申告、過少申告の場合

無申告や過少申告が悪質であると税務署に判断されると、重加算税の対象となります。

この重加算税は、先の無申告加算税や過少申告加算税に代えて徴収されます。

悪質な過少申告の場合、追加で納税することになる贈与税額の35%が加算されます。

悪質な無申告の場合、本来の贈与税額の40%が加算されます。

いずれにせよ、悪質な無申告、過少申告だと判断された場合のペナルティは非常に厳しいものとなっています。

加算税の他に延滞税もある

加算税だけでも大変ですが、さらに税金の納付が遅れたことによる、いわゆる利子にあたる延滞税が、加算税と併せて課されることになります。

相続税にかかる延滞税については、関連記事『相続税の延滞税とは|税額・計算方法と追加ペナルティを解説』で詳しく解説しています。

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贈与税の申告が必要な場合とは

ここまで贈与税におけるお尋ねや税務調査について見てきました。

そもそも贈与税の申告が必要になるのはどのような場合なのでしょうか。

まず、親子や夫婦の間であっても現金などを贈与すると原則として贈与税の対象となります。しかし、すべての贈与が贈与税の対象となるわけではありません。

贈与税の申告がいらない贈与

贈与の内容が下記3点に当てはまる場合、贈与税の申告は必要ありません。

・もらう人一人あたり年間110万円(基礎控除額といいます)以下の金品の贈与

・扶養している親族に対する生活費、教育費
 ※贈与した金額を使い残した場合は課税対象となることがあります。

・お祝い金、お香典、お見舞い金など社交上の必要によるもので一般的な金額

そのため、離婚した後の配偶者に対する養育費や孫のためにランドセルを買ってあげるような贈与については、贈与税の申告が必要ありません。

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贈与税の申告が必要な贈与

上記に該当しない贈与については贈与税の対象となり、贈与税の申告が必要になります。

そのため、住宅を購入する際に両親から資金援助を受けたり、本来は自身が負担すべき保険料などの支出を肩代わりしてもらった場合は贈与税の申告が必要です。

また、自身がお金を支出しても、本来の価格より安く不動産などの財産を譲り受けた場合などには、その行為によって本来の価格と支出した金額の差額分利益を受けていることになりますので、贈与税の申告が必要になります。

贈与税について不安があるなら税理士へ

親族から贈与を受けたけれども、申告が必要なのかどうか判断できない、税務署からのお尋ねにどう回答したらいいかわからない。

そのようなお悩みをお持ちの方はぜひ税理士にご相談下さい。

自己判断で無申告や過少申告になるとペナルティが課されますので、無駄な税金を払うことになりかねません。

事前にご相談いただければ、税理士から支払うべき贈与税を減らす方法などもご提案出来る場合があります。

お気軽にご相談下さい。

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