相続税はおかしい?理不尽に感じる5つの理由と対処法

「所得税を払い続けて築いた財産に、さらに課税されるのはおかしい」「意味がわからない」と、相続税に疑問を感じる方は多いでしょう。
相続税の課税対象者は年々増加しており、国税庁「令和6年分相続税の申告事績の概要」によると、2024年の課税割合は10.4%に達しています。亡くなった方およそ10人に1人の割合で、遺族に相続税が課税されている計算です。
課税価格の総額・申告税額の総額はいずれも、2015年の基礎控除引き下げ以降で過去最高を更新しました。
この記事では、相続税に疑問を感じる背景にある5つの論点を整理したうえで、相続税が課税される法的根拠と目的を解説します。税務調査のリスクについても取り上げますので、ぜひ参考にしてください。
目次
相続税の意味わからん!おかしいと言われる背景
相続税が「おかしい」と言われる背景には、主に以下の5つの理由があります。
所得税を払った財産にさらに課税される
相続税を理不尽と感じる理由として最もよく聞かれるのが、所得税との二重負担感です。
被相続人は生前、働いて得た収入に所得税を納めてきました。その残った財産を家族が受け継ぐ際にさらに相続税が課税されるため、「同じ財産に二度も税金がかかるのはおかしい」と感じるのは、ごく自然な感覚といえます。
ただし、所得税との直接的な二重課税については、法律上の手当てがあります。所得税法の規定により、相続や遺贈で取得した財産には所得税を課さないこととされているため、相続人に所得税と相続税が二重にかかる事態は回避される仕組みです。
とはいえ、「納得しにくい」という感覚が完全に否定されるわけではありません。
相続した財産を売却した際に生じる譲渡所得課税との関係では、相続税との二重負担が生じかねないとして、負担を和らげる特例措置(租税特別措置法39条)が設けられています。
相続税と贈与税の一体化など、税制改正の議論が継続している背景にも、こうした納税者の感覚が反映されています。
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生活の基盤となる財産にも課税される
相続税の課税対象は、被相続人が相続開始時点で所有していた、経済的価値を持つ財産すべてです。現預金や株式だけでなく、家族が長年住み続けている自宅不動産も対象に含まれます。
「親から実家を受け継いだだけなのに、相続税を払うために家を売らなければならない」というケースもあり、生活の基盤となる財産への課税を理不尽と感じる方も多いでしょう。
一定の要件を満たす場合は「小規模宅地等の特例」が適用され、自宅の敷地(特定居住用宅地等)は330㎡までの部分について評価額を最大80%減額できます(租税特別措置法第69条の4)。
ただし、減額の対象となるのは土地部分のみで、建物は含まれません。自宅を相続する場合は、この特例の適用可否を必ず確認することをおすすめします。
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税率が最大55%と高い
相続税は、金額が大きいほど税率が高くなる超過累進課税が採用されており、最高税率は55%です(法定相続分に応ずる取得金額が6億円を超える部分)。
日本の相続税の最高税率は国際的にも高い水準にあります。ただし、各国の基礎控除・特例制度・対象財産の範囲が異なるため、最高税率だけで実質的な負担を比較することはできません。
なお、相続税の計算は各人の課税価格に直接税率をかけるのではなく、まず法定相続分をもとに相続税の総額を算出し、それを実際の取得割合で按分する仕組みです。さらに、配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除などの税額控除を差し引いて最終的な納税額が決まります。
適用できる控除・特例を正確に把握することが、適正な納税額の算出につながります。
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基礎控除の引き下げで課税対象者が急増
かつて相続税の基礎控除は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)」でしたが、2015年(平成27年)1月1日以降の相続から「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」に引き下げられました。
この改正により、それまで相続税と無縁だった層にも課税対象が広がりました。
法定相続人が1人の場合の基礎控除額は3,600万円、2人の場合は4,200万円です。都市部では自宅不動産だけでこの金額を超えるケースも多く、「突然、相続税の対象になった」と感じる方が増えています。
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節税しようとすると贈与税が課税される
相続税の負担を減らそうと生前贈与を活用しようとすると、今度は贈与税が課税されます。贈与税の基礎控除は年間110万円であり、これを超える贈与には原則として贈与税がかかります(相続税法第21条の5)。
2024年(令和6年)1月1日以降の贈与からは、相続や遺贈で財産を取得した人について、生前贈与を相続財産に加算する期間が、従来の3年から最長7年に延長されました。
ただし、完全に7年が適用されるのは2031年(令和13年)1月1日以後に開始した相続からです。それまでは段階的に延長期間が拡大されるため、相続が発生した方は、相続開始日がどの区分に当たるか確認しましょう。
なお、延長された3年超〜7年以内の贈与は、合計額から100万円までは相続財産への加算対象外となります。また、生前贈与加算の対象になるのは、相続や遺贈により財産を取得した人に限られます。
節税目的の生前贈与には一定の効果がある一方、計画的に実行しなければ期待した節税効果が得られないケースもあります。
生前贈与を活用する場合は、名義預金とみなされないよう、贈与契約書の作成や受贈者による通帳・印鑑の管理など、贈与の事実を客観的に証明できる形で進めることが重要です。
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相続税は理不尽?課税の根拠と目的
相続税に疑問を感じる一方で、課税には法的な根拠と目的があります。以下に3つの観点から整理します。
富の再分配による経済格差の是正
「富の再分配」とは、特定の人に集中した財産を国が徴収し、社会全体の役に立つ形で活用することで、経済的な格差を是正していこうとする考え方です。
相続税には超過累進課税が適用されており、相続財産の価値が大きいほど税率が高くなります。これは、財産の集中による格差の固定化を防ぎ、経済的な機会均等を図る機能を持っています。
相続税には、資産を再分配する機能があります。また、相続した財産が大きいほど相続税額は大きくなるので、生まれた家庭の経済状況による差を縮小させ、格差の固定化を防止する機能もあります。
財務省「相続税について教えてください。」
所得税の清算という考え方
「所得税の清算」とは、被相続人の生前に課税されなかった所得税相当分を、相続税の形で清算するという考え方です。
被相続人が生前に蓄積した財産の中には、非課税所得や免税所得など国が設けた税制上の特典によって所得税の負担が軽減され、手元に残ったものが含まれています。
相続税は、こうした生前に課税されなかった所得等を相続のタイミングで清算する役割を持っています。
相続税を廃止するとどうなる?
「相続税は廃止すべき」という意見は根強くありますが、廃止した場合のリスクも存在します。
相続税が廃止されると、世代をまたいだ資産の集中が進み、富裕層の財産が世代を超えてそのまま引き継がれやすくなります。
一方で、廃止論の根拠として「相続税の税収は国税全体の数%程度にとどまる」「相続税の回避を目的とした非効率な資産形成が生じている」といった指摘もあり、制度のあり方については継続的な議論があります。
現時点で、政府による相続税廃止に向けた具体的な法案提出は確認されていません。むしろ「資産移転の時期の選択に中立的な税制」の構築に向けた見直しが進められています。
相続税は高すぎる?課税状況の実態
ここでは、国税庁「令和6年分相続税の申告事績の概要」をもとに課税状況を確認します。
課税割合はおよそ10人に1人
2024年(令和6年)の相続税の課税割合は10.4%です。亡くなった方およそ10人に1人の割合で、遺族に相続税が課税されている計算になります。
2015年(平成27年)の基礎控除引き下げ前の課税割合は約4%でした。改正前と比べると課税対象となる割合は2倍以上に拡大しており、都市部を中心に、一般的な住宅所有世帯でも相続税の検討が必要となるケースが増えています。
課税価格と税額は過去最高を更新
令和6年分の課税価格の総額は23兆3,846億円(前年比108.1%)、申告税額の総額は3兆2,446億円(前年比108.0%)で、いずれも2015年の改正以降で過去最高を更新しました。
亡くなった方1人あたりに換算すると、課税価格の平均は約1億4,025万円、税額の平均は約1,946万円です。
同資料の「課税価格階級別の被相続人の数」をみると、1億円以下の層が全体の約60%を占めており、5,000万円以下の層も約10%います。相続税は、決して一部の富裕層だけの話ではありません。
相続税の税務調査を受けやすいケース
「相続税はおかしい」と思う余り、資産隠しや間違った節税対策をすると、税務調査の対象になる可能性が非常に高くなります。さらに、税務調査で申告漏れなどが発覚すると、ペナルティとして追徴課税が課されます。
以下では、税務調査の現状、税務調査の対象になりやすいケース、そして申告漏れ等が判明した場合のペナルティについて解説します。
相続税の税務調査の現状
一般的に、相続税の税務調査は申告から約2年後に行われることが多いとされています。
そのため、令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)に実施された税務調査の対象は、主に令和4年分の相続税の申告であると考えられます。
令和6事務年度における調査件数と令和4年分の申告件数をまとめると、以下のとおりです。
令和6事務年度における相続税の調査等の実施件数
- 実地調査 9,512件
- 簡易な接触 21,969件
- 合計 31,481件
令和4年分における相続税の申告書の提出に係る被相続人数
- 税額のある申告 150,858人
- 税額のない(0円の)申告 38,280人
- 合計 189,138人
(引用元:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」、「令和4年分相続税の申告実績の概要」)
実地調査と簡易な接触を合わせた税務調査等の実施率は約16.6%です。単純な比較ではありますが、およそ6人に1人が税務署からの調査や接触の対象になっている計算になります。
思っている以上に、相続税の税務調査の確率は高いと感じる方が多いのではないでしょうか。
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相続税の税務調査の対象になりやすいケース
相続税の場合、税務調査の対象になる可能性が高いのは以下のケースです。
- 富裕層
- 無申告
- 海外関連
- 名義預金の疑いがあるケース
- 相続開始直前に不自然な資金移動があるケース
- 相続人が自分で申告書を作成しているケース
特に名義預金は要注意です。
名義預金とは、預金の原資を拠出した人と名義人が異なるケースを言います。
被相続人が節税対策として生前贈与を行ったつもりでいたところ、実は名義預金に当たり、相続税がかかってしまうケースが少なくありません。
例えば、被相続人が妻名義で預貯金口座を開設し、その口座に資金を移動させるケースが典型です。
被相続人としては、相続財産を減らせば節税になると考え、生前贈与のつもりで資金を移動させます。
しかし、贈与が成立するには、相手方(受贈者)との間で贈与の合意が必要なのです。
したがって、節税につなげるには、贈与者と受贈者との間で贈与の合意をし、贈与契約を有効に成立させる必要があります。
さらに、贈与契約が成立した事実を、後から第三者(税務署)が見て客観的に分かるようにしておく点も重要です。
具体的には、贈与のたびに贈与契約書を作成し、名義人自身が通帳、印鑑、キャッシュカードを管理することがポイントです。
「相続税はおかしい。少しでも節税したい」と考えても、その方法が間違っていれば、結局は本来の税金に加え、延滞税や加算税等の重い負担がかかってしまいます。
名義預金とみなされないためのポイントについて、さらに詳しく知りたい方は、『名義預金は贈与税・相続税がかかる?名義預金の認定の回避策も解説』もぜひ参考にしてください。
相続税の申告漏れ等に対するペナルティ
相続税の申告漏れ等に対しては、以下のペナルティが科される可能性があります。
無申告加算税
無申告加算税の税率は、申告のタイミングによって3段階に分かれます。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告した場合
- 納付すべき税額×5%
税務調査の事前通知後、調査で更正等を予知する前に期限後申告した場合
- 納付すべき税額×10%(納税額が50万円までの部分)
- 納付すべき税額×15%(納税額が50万円を超え300万円までの部分)
- 納付すべき税額×25%(納税額が300万円を超える部分)
税務調査後に期限後申告した場合
- 納付すべき税額×15%(納税額が50万円までの部分)
- 納付すべき税額×20%(納税額が50万円を超え300万円までの部分)
- 納付すべき税額×30%(納税額が300万円を超える部分)
なお、事前通知後および税務調査後における300万円超の区分は、令和6年1月1日以降に申告期限を迎えるものから適用されます
過少申告加算税
税務署に指摘されて修正申告した場合
- 納付すべき税額×10%
- 追加納税額が、当初の申告税額または50万円を超えているときは、その超えている部分×15%
重加算税
財産を隠ぺい又は仮装し、過少申告した場合
- 納付すべき税額×35%
財産を隠ぺい又は仮装し、申告しなかった場合
- 納付すべき税額×40%
延滞税
法定納期限の翌日から2カ月以内に納付した場合
- 「未納税額に対して年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合(令和8年は2.8%)
法定納期限の翌日から2カ月経過後に納付した場合
- 「未納税額に対して年14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合(令和8年は9.1%)
相続税を節税したいなら相続に強い税理士に相談
特例や税額軽減制度は多岐にわたり、それぞれの要件は複雑です。相続に強い税理士に相談すれば、被相続人の年齢等を考慮して、どの制度をどのタイミングで活用すれば節税になるか、個別具体的なアドバイスを受けることができます。
相続税の節税に関心がある方はまず、関連記事『相続税を節税する方法12選!死後と生前それぞれの相続税対策を解説』をお読みください。
相続税に関するよくある質問
Q. 相続税が理不尽と感じるのはなぜ?
相続税が理不尽と感じる背景には、主に「所得税後の財産への課税」「生活基盤財産への課税」「高い税率」「基礎控除引下げ」「贈与税との関係」といった論点があります。
こうした感覚は多くの納税者が抱くものであり、税制改正の議論でも継続的に取り上げられています。
Q. 相続税は廃止すべきでは?
相続税を廃止すると、世代をまたいだ資産の集中が進み、富裕層の財産が世代を超えてそのまま引き継がれやすくなります。財務省は相続税が格差の固定化を防止する機能を担っていると説明しています。
現時点では廃止の法案は提出されておらず、むしろ生前贈与加算期間の延長(令和6年1月1日施行)など、相続税・贈与税の一体課税に向けた改正が進んでいます。
Q. 高すぎる相続税を払えないときは?
相続税は申告期限(相続開始を知った日の翌日から10カ月以内)までに原則一括で現金納付する必要がありますが、要件を満たす場合は「延納」または「物納」が認められています(相続税法第38条・第41条)。
いずれも申告期限までに申請が必要なため、納税資金が不足する見込みがある場合は早めに対応を検討することが重要です。
Q. 相続税に納得できない…申告しないとどうなる?
相続税を申告しないまま放置すると、税務署による調査の対象となり、本来の税額に加えて無申告加算税(最大30%)や延滞税が課される可能性があります(国税通則法第66条)。
財産の隠ぺいや仮装など悪質と判断された場合は、40%の重加算税が課されることもあります。申告義務がある場合は、必ず期限内に申告・納税することが必要です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
