贈与税の基礎控除は年間110万円まで非課税?いつからいつまでか申告の要否も解説

生前贈与を検討するとき、多くの方が最初に気になるのが「年間いくらまでなら贈与税がかからないのか」という点ではないでしょうか。
贈与税には基礎控除(年間110万円)という非課税枠があり、これを上手に活用することが生前贈与の基本となります。ただし、「いつからいつまでの1年間なのか」「110万円を超えたらどうなるのか」「申告は必要なのか」など、実際に動こうとすると疑問が出てくるものです。
この記事では、贈与税の基礎控除の仕組みや上限、課税期間、申告の要否、基礎控除以外の特例などについて詳しく解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
贈与税の基礎控除とは?年間いくらまで非課税?
贈与税の基礎控除は年間110万円
贈与をする場合、特に手続きしなければ基本的には「暦年課税」という課税制度が適用されます。
暦年課税の基礎控除は、年間110万円です。
つまり、1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
なお、贈与税は贈与をした人(贈与者)ではなく、贈与を受けた人(受贈者)に課されるものです。
複数人から贈与を受けても非課税限度額は同じ
贈与税(暦年課税)の基礎控除である年間110万円は、受贈者1人あたりの金額です。
贈与者が何人いても、その受贈者が使える非課税限度額(基礎控除)は変わりません。
例えば子が父1人から贈与を受けても、父と母それぞれから贈与を受けても、その子が使える非課税限度額は年間110万円です。
一方、贈与者側から見れば、複数の受贈者に贈与をすればその分非課税で渡せる財産が増えます。
例えば1年の間に500万円を贈与したい場合、1人の子に贈与するとそのうち110万円までしか非課税になりません。
しかし、2人の子に分けて贈与すればそれぞれに基礎控除が適用されて合計220万円まで、3人の子に分けて贈与すれば同様の仕組みで合計330万円までを非課税で贈与できるのです。
贈与税の非課税枠はいつからいつまで適用される?
贈与税(暦年課税)の課税期間は、毎年1月1日から12月31日までの1年間です。これはつまり、年をまたぐと再び110万円の基礎控除を利用できるということです。
たとえば、2026年12月に100万円、2027年1月に100万円の贈与があった場合、12月分は2026年分の基礎控除、1月分は2027年分の基礎控除をそれぞれ適用できます。
そのため、毎年基礎控除内に収まる範囲で少しずつ贈与をすると、最終的に多額の財産を贈与税の負担なく移転できる場合があります。
ただし、税務上、当初から総額について贈与契約が成立していたと認定されると、定期贈与と判断され、契約した年に一括して贈与税が課される可能性があります。
定期贈与と判断されないための対策は、本記事内で後ほど解説します。
関連記事
暦年贈与(暦年課税)とは?わかりやすく仕組み・やり方・注意点を解説
110万円以下の贈与は原則として申告不要
暦年課税での贈与では、贈与額が年間110万円の基礎控除内であれば、原則として贈与税の申告は不要です。
なお、年間の贈与額が基礎控除の110万円を超えたけれど、他の特例を適用することで結果的に贈与税が0円になったというケースもあります。
贈与税が0円という点は、贈与が基礎控除内に収まった場合と同じですが、別の特例を使う場合は申告が必要な場合があります。
贈与の際に使える特例については、本記事内で後ほど解説します。
なお、「申告不要=贈与の証拠を残さなくてよい」というわけではありません。贈与の事実を証明するために、贈与契約書を作成しておくことが実務上は重要です。
関連記事
基礎控除の上限を超えたら贈与税はいくらかかる?
課税対象は「110万円を超えた部分」
贈与税は、1年間に受け取った贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引いた残りの金額(課税価格)に対して課税されます。
重要
贈与税額 =(贈与の合計額 - 110万円)× 税率 - 控除額
たとえば、年間200万円の贈与を受けた場合、課税価格は90万円(200万円-110万円)となります。
税率は課税価格によって異なる(速算表)
贈与税の税率は、課税価格の大きさによって段階的に変わる超過累進税率が採用されています。また、贈与者と受贈者の関係(特例税率・一般税率)によっても税率が異なります。
- 特例税率:直系尊属(父母・祖父母など)から贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与
- 一般税率:特例税率以外の場合

税率の詳細や計算例については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事
贈与税の特別控除と基礎控除以外の非課税枠の種類
相続時精算課税は贈与税の控除枠が大きい
贈与には、ここまで解説してきた「暦年課税」のほかに、「相続時精算課税」という課税制度もあります。
相続時精算課税制度の特徴は以下の通りです。
- 贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母から、贈与年の1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与で適用可能
- 年間110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除までは贈与税がかからない
※基礎控除は2024年1月1日以降の贈与から適用 - 相続時精算課税制度で贈与した財産は、贈与者の死亡時に相続税の対象になる
※基礎控除分は除く
相続時精算課税制度を活用すれば、暦年課税よりも大きな非課税枠を利用できます。
贈与額を毎年110万円に抑えなくても贈与税を負担することなく贈与できるため、分割しての贈与が難しい場合や、早く贈与を完了させたい場合に検討するとよいでしょう。
なお、複数の贈与者から相続時精算課税による贈与を受ける場合、110万円の基礎控除は年間合計110万円となり、各贈与額に応じて按分されます。
ただし、一度相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与については暦年課税には戻せません(相続税法21条の9第6項)。それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、慎重に検討しましょう。
適用初年は基礎控除以下でも手続きが必要
相続時精算課税制度では、一度選択の手続きを済ませれば、その後は年間の贈与額が110万円以下である限り、原則として贈与税の申告は不要です。
ただし、制度を初めて利用する年は、贈与額にかかわらず「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です(国税庁「相続時精算課税の選択」)。
贈与額が110万円以下で贈与税の申告が不要な場合でも、この届出書は提出しなければなりません。最初の贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、所轄税務署へ提出しましょう。
関連記事
相続時精算課税制度をわかりやすく解説!改正の変更点などもわかる
そのほかの非課税特例
暦年課税の基礎控除や相続時精算課税制度のほかにも、特定の目的の贈与に使える非課税特例があります。
- 住宅取得等資金の非課税特例(2026年12月31日まで)
住宅取得・リフォーム資金の贈与について、省エネ等住宅は1,000万円、一般住宅は500万円まで非課税になる特例。 - 結婚・子育て資金の一括贈与(2027年3月31日まで)
父母・祖父母などから、子や孫へ結婚・出産・育児費用に充てる資金を贈与する場合、最大1,000万円が非課税になる特例(うち結婚資金は300万円まで)。
受贈者側は、結婚・子育て資金管理契約を締結する日において18歳以上50歳未満であることが要件。 - 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産を贈与する場合は、基礎控除とあわせて最大2,110万円まで非課税となる特例。
上記の特例はいずれも、適用によって贈与税が0円になる場合でも申告が必要です。
結婚・子育て資金の一括贈与については、適用終了前に信託契約などを結んで拠出された資金口座は、終了後も引き続き残額を非課税で使い続けることができます。ただし、贈与者が亡くなった時点で残金があれば相続税の対象となる可能性があります。
どの特例にもより細かい適用要件や注意点があるので、詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
関連記事
生前贈与による相続税対策とは?相続税の負担を減らす方法と注意点
【注意】基礎控除内の贈与でも将来相続税がかかることがある
死亡前3~7年の贈与(暦年課税)は相続税の対象
被相続人(贈与者)の死亡前3年以内に贈与された財産は、相続財産に持ち戻されて相続税の対象になります(生前贈与加算)。
なお、2027年以降の相続については、段階的に対象期間が最長7年へ延長されます。
| 被相続人の死亡日 | 遡る期間 |
|---|---|
| ~2026年12月31日 | 死亡日前3年間 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与 |
| 2031年1月1日~ | 死亡日前7年間 |
ただし、相続開始の日が2027年1月2日以後の場合、延長された4年間(亡くなる3~7年前)の贈与については、その4年間に行われた贈与額の合計から100万円を差し引いた残額のみが相続財産に加算されます。
また、相続や遺贈で財産を受け取らなかった場合は、生前贈与加算は発生しません。
関連記事
暦年贈与7年ルールとは?廃止されるのはいつから?持ち戻しや経過措置を解説
相続時精算課税での贈与には相続税がかかる
相続時精算課税で贈与した財産は、基礎控除分を除いて相続税の対象になります。
ただし、基礎控除分は対象外であるうえ、相続税は贈与時の評価額をもとに計算されます。
よって、贈与時よりも相続時のほうが評価額が上がっている場合は、通常通り相続するよりも相続時精算課税制度で贈与しておいた方が、相続税が低くなるでしょう。
基礎控除を活用した生前贈与の注意点
(1)贈与契約書を必ず作成する
贈与の際には贈与契約書を作成しましょう。
贈与は原則として口頭でも成立しますが、後から「贈与ではなく貸し付けだった」「本人の意思ではなかった」などとトラブルになるケースがあります。
また、税務調査でも贈与の事実を証明するために書面の確認が求められることがあります。
毎年の贈与ごとに贈与契約書を作成し、双方が署名・押印しておくことを強くおすすめします。
(2)「定期贈与」とみなされないよう注意する
定期贈与とは、「これだけの金額を〇年かけて贈与する」というように、あらかじめ贈与の全体額を決めたうえで、少しずつ贈与することです。
例えば、暦年課税の非課税枠内で贈与をするために、毎年100万円ずつ10年間贈与していた場合、「定期贈与」とみなされることがあります。
この場合、契約時点で10年間にわたり100万円ずつ受け取る権利(定期金に関する権利)の贈与があったものとみなされ、契約時点でその権利全体に対して贈与税が課される可能性があります。
定期贈与と判断されるリスクを低減するためには、贈与のたびに贈与契約書を作成し、その都度贈与契約を結んだことが分かるようにしておきましょう。
(3)名義預金のリスクに注意する
子や孫の名義で口座を作り、そこに贈与したお金を振り込んでいる場合、名義預金とみなされ贈与者の死亡時に相続税の対象となることがあります。
名義預金とは、名義自体は子や孫であっても、管理状況などから実質的には親や祖父母のものとみなされる口座に入っている預金のことです。
実質的に親や祖父母の口座に入っているということは、その預金も実質的には親や祖父母のものとみなされ、贈与は成立していないと判断されることがあります。
よって、親や祖父母が死亡した際には相続財産とされ、相続税がかかる可能性があるのです。
名義預金と判断されないためには、以下の点を意識しましょう。
- 受け取った本人が通帳・印鑑を管理している
- 受取人が贈与を受けたことを認識している
- 受取人名義の口座に振り込むなど、移転の記録が残っている
関連記事
名義預金は贈与税・相続税がかかる?名義預金の認定の回避策も解説
贈与税の基礎控除に関するよくある質問
贈与税の基礎控除110万円は毎年使えますか?
はい、使えます。暦年課税の基礎控除は毎年1月1日にリセットされるため、毎年110万円の非課税枠を利用することが可能です。
ただし、毎年基礎控除内で贈与したい場合は、定期贈与とみなされないように注意が必要です。
夫婦間の贈与にも基礎控除は使えますか?
はい、使えます。夫婦間であっても、年間110万円までは非課税で贈与ができ、それを超える部分には贈与税がかかります。
ただし、婚姻20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合には、基礎控除とあわせて最大2,110万円の配偶者控除(おしどり贈与)が使えます。
贈与税の特別控除とはどの制度のことですか?
相続時精算課税制度の累計2,500万円の特別控除を指します。年間110万円の基礎控除とは別枠で、基礎控除と特別控除を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。
非課税なのに申告したほうがよい場合はありますか?
基礎控除の110万円を下回ることで非課税になるのであれば、通常は申告不要です。
ただし、贈与額が基礎控除を超えるものの、住宅取得等資金の非課税特例や贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)などの特例を適用して非課税となる場合は、適用する特例によって申告が必要です。
まとめ
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、暦年課税では1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。
毎年基礎控除を活用して少しずつ財産を移転することで、相続税対策につながる場合もあります。
ただし、「定期贈与」と判断されるリスクや、死亡前3~7年以内の贈与が相続税の対象となる生前贈与加算など、注意点もあります。また、相続時精算課税制度や住宅取得資金の非課税特例など、ほかの制度との違いも理解しておくことが重要です。
基礎控除を活用した生前贈与を検討する際は、契約書の作成や資金管理を適切に行い、必要に応じて税理士へ相談しましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
