相続税の未成年者控除とは?いくら控除される?計算方法・適用要件を解説

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相続人の中に未成年の子どもや孫がいる場合、相続税の「未成年者控除」を活用することで税負担を軽減できる可能性があります。

未成年者控除とは、相続によって財産を取得した未成年の法定相続人について、成人するまでの年数に応じた金額を相続税額から差し引ける制度です。

ただし、適用要件や計算方法、控除しきれなかった場合の取り扱いなど、事前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。

この記事では、相続税の未成年者控除について、制度の仕組みから計算方法、具体例、扶養義務者への控除、申告手続きまでわかりやすく解説します。相続税の申告を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の情報は2025年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

目次

相続税の未成年者控除とは?いくら減税される制度?

未成年者控除の概要

未成年者控除とは、相続によって財産を取得した未成年の相続人について、成年に達するまでの年数に応じた金額を相続税額から差し引ける制度です(相続税法第19条の3)。

たとえば、相続開始時点で10歳の相続人であれば、18歳になるまでの年数に応じて一定額を相続税から控除できます。

未成年者は、社会的・経済的に自立していないため、将来の生活費や教育費などの支出が見込まれます。こうした事情を考慮し、成年に達するまでの期間を「経済的な準備が必要な年数」とみなして、税負担を軽減する趣旨で設けられています。

令和4年改正で対象年齢が20歳→18歳に変更

2022年(令和4年)4月1日、民法改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

これに伴い、未成年者控除の計算に用いる上限年齢も20歳から18歳に変更されています。

令和4年4月1日以降に発生した相続では、相続開始時点で18歳未満の相続人が未成年者控除の対象です。

なお、インターネット上には改正前の「20歳」を前提とした情報も残っているため、古い情報と混同しないよう注意しましょう。

ポイント

  • 令和4年3月31日以前に相続開始
    • 上限:20歳未満
    • 控除額:(20歳 − 相続時の年齢)×10万円
  • 令和4年4月1日以降に相続開始
    • 上限:18歳未満
    • 控除額:(18歳 − 相続時の年齢)×10万円

未成年者控除の計算方法

未成年者控除の控除額の計算式

未成年者控除の金額は、以下の計算式で求めます。

計算式

(18歳 − 相続開始時の年齢)×10万円

「相続開始時の年齢」は、1歳未満の端数を切り捨てた年齢(満年齢)を使用します。たとえば、相続開始時に「7歳3か月」であれば「7歳」として計算します。

年齢ごとの未成年者控除額の目安は、次のとおりです。

相続開始時の年齢未成年者控除額
0歳(1歳未満)180万円
3歳150万円
5歳130万円
10歳80万円
15歳30万円
17歳10万円

控除額の具体的な計算例

未成年者控除の計算方法を、具体例で見てみましょう。

【例1】相続開始時に5歳の子どもの場合
(18歳 − 5歳)×10万円 = 130万円

【例2】相続開始時に12歳の子どもの場合
(18歳 − 12歳)×10万円 = 60万円

【例3】相続開始時に17歳9か月の子どもの場合(端数切捨て)
年齢は「17歳」として計算します。
(18歳 − 17歳)×10万円 = 10万円

【例4】相続開始時に0歳(生後6か月)の子どもの場合
年齢は「0歳」として計算します。
(18歳 − 0歳)×10万円 = 180万円

【注意点】控除額は「相続税額」が上限

未成年者控除額は、その未成年者本人に課された相続税額が上限となります。

そのため、計算上の控除額が相続税額を上回る場合、すべてを本人の税額から差し引くことはできません。

控除しきれない金額が生じた場合は、後述する「扶養義務者への控除」ルールが適用されます。

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未成年者控除の適用要件

未成年者控除を受けるためには、次の要件をすべて満たす必要があります。

(1)相続または遺贈で財産を取得している

未成年者控除は、相続や遺贈によって財産を取得した者が対象です。(原則として相続放棄した場合を除く)

なお、他の要件を満たせば、死因贈与でも未成年者控除の対象となります。死因贈与は相続税法上「遺贈」に含まれるからです。

一方、生前贈与によって財産を取得した場合は、この控除の対象外となります。

(2)相続税の納税義務者である

未成年者控除は、相続税が課される納税義務者であることが前提となります。

相続税の納税義務の有無は、相続人の国内住所の有無、日本国籍、過去の居住歴などの組み合わせによって判定されます。

原則として国内に住所を有している相続人が対象ですが、国外に住所がある場合でも納税義務が生じる類型では控除の適用余地があります(いわゆる「国際相続」のケース)。

この点については、後述の「養子・胎児・海外在住でも未成年者控除は使える?」で解説します。

(3)法定相続人である

未成年者控除は、民法上の法定相続人に限られます。

法定相続人とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者、子、父母、兄弟姉妹など、法律上当然に相続権を持つ人のことです。

相続放棄をしても、遺贈で財産を取得したなら適用できる可能性があります。

遺言によって財産を受け取った場合でも、その人が法定相続人でない場合や相続放棄をした場合は、未成年者控除は適用されません。

相続税 法定相続人

(4)相続開始時に18歳未満

令和4年4月1日以降に開始した相続では、相続開始時点で18歳未満であることが条件です。

なお、年齢の計算は、誕生日の前日に1歳加算されるという民法の規定(民法第143条)に基づきます。
たとえば、誕生日が4月1日の人は、3月31日時点で1歳年齢が加算されます。

余った控除額は扶養義務者の相続税から控除

余った控除額は扶養義務者の税額から控除できる

未成年者控除は、未成年者本人の相続税額から差し引く制度です。

ただし、未成年者控除額は、その未成年者本人に課された相続税額が上限となります。

そのため、未成年者控除額が相続税額を上回る場合には、本人だけでは控除しきれない金額が生じることがあります。

このように控除しきれない金額が生じた場合、その残額を扶養義務者の相続税額から差し引くことができます(相続税法第19条の3第2項)。

扶養義務者とは?

扶養義務者とは、民法上その未成年者を扶養する義務を負っている人を指します。具体的には、次のような親族が該当します。

  • 父母、祖父母などの直系尊属
  • 兄弟姉妹
  • 家庭裁判所の審判によって扶養義務者とされた三親等内の親族

未成年者控除額が余った場合の具体例前提

例えば7歳の子どもの未成年者控除額は110万円です。

この子どもの相続税額が30万円だった場合、未成年者控除額は30万円が上限なので、80万円(110万円 − 30万円 = 80万円)が余ります。

この80万円は、扶養義務者(たとえば母親)の相続税額から差し引くことができます。

ポイント

  • 扶養義務者が複数いる場合は、各人の相続税額の比率などに応じて振り分けます
  • 扶養義務者の相続税額からも引ききれない場合は、その残額は切り捨てとなり、還付などはありません

扶養義務者も申告が必要

扶養義務者が未成年者控除の振替を受ける場合、申告書に必要事項を記載したうえで申告する必要があります。

自動的に控除されるわけではないため、申告漏れに注意しましょう。

未成年者控除と他の控除・特例は併用できる?

基礎控除との併用

未成年者控除と基礎控除は、要件を満たせば併用することができます。

相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は、相続財産全体から差し引く「遺産総額に対する控除」です。

一方、未成年者控除は、各相続人の相続税額から差し引く「税額控除」にあたります。

このように控除の対象や計算の段階が異なるため、両者は独立して適用されます。

相続税の計算では、まず基礎控除などを用いて課税遺産総額を算出し、その後、各相続人の税額を計算します。

未成年者控除は、最終的に算出された各人の税額から差し引く段階で適用されます。

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障害者控除との併用

未成年者控除と障害者控除は、要件を満たせば同時に適用することができます。

障害者控除は、相続人が一定の障害を持つ場合に、85歳までの年数に応じた金額(一般障害者は年10万円、特別障害者は年20万円)を相続税額から控除できる制度です。

未成年かつ障害者である場合には、両方の控除を重ねて適用できます。

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相次相続控除との併用

10年以内に相続が相次いで発生した場合に適用される相次相続控除も、未成年者控除と併用することができます。

いずれも「各相続人の相続税額」から差し引く税額控除であり、それぞれ所定の計算方法に基づいて算定します。申告書では、計算手順に沿って各控除を適用します。

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養子・胎児・海外在住でも未成年者控除は使える?

養子の場合

法的に養子縁組が成立している場合、養子は法定相続人として認められます。そのため、年齢などの要件を満たせば未成年者控除の適用対象になります。

ただし、相続税計算上、養子を法定相続人に含める人数には制限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとされている点に注意が必要です。

孫養子は2割加算に注意

孫を養子にした場合でも、未成年者控除の要件を満たせば控除の適用を受けることができます。

ただし、孫は被相続人の一親等の血族ではないため、相続税法上の「2割加算」の対象となる点に注意が必要です。

つまり、未成年者控除によって税額が減額される一方で、相続税額が2割加算される可能性があり、控除と加算が同時に発生するケースもあります。

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胎児の場合

民法上、胎児は相続についてはすでに生まれたものとみなされます(民法第886条)。そのため、出生前の胎児であっても相続人として扱われます。

実務上は、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに、法定代理人などが胎児を相続人として含めて申告を行うのが一般的です。

出生後に申告内容の修正が必要となった場合は、更正の請求などの手続きで対応します。

なお、未成年者控除の年齢は出生時ではなく相続開始時(被相続人が亡くなった日)を基準として計算します。

非居住者(海外在住)の場合

海外に住んでいる相続人(非居住者)であっても、相続税の納税義務が生じる場合には、未成年者控除が適用される可能性があります。

相続税の納税義務は、相続人と被相続人それぞれの国籍や住所、過去の居住歴などの組み合わせによって判定されます。そのため、海外在住の場合は一律の判断ができず、個別の状況によって取扱いが異なります。

国際相続が関係する場合は制度が複雑になるため、税理士に相談することをおすすめします。

未成年者控除の申告手続き

未成年者控除は、相続税申告書に必要事項を記載することで適用できます。自動的に適用される制度ではないため、申告書への記載漏れがないよう注意が必要です。

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

未成年者控除の申告の流れ

未成年者控除を適用する場合も、基本的な相続税申告の流れは次のとおりです。

申告の基本的な流れ

  1. 相続財産・債務の把握と評価
  2. 法定相続人の確認
  3. 未成年者控除・障害者控除などの適用可否の確認
  4. 相続税申告書の作成(第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」を使用)
  5. 税務署への申告・納税

主な必要書類

未成年者控除を適用する際に必要となる主な書類は次のとおりです。

  • 相続税申告書(第6表)
    未成年者控除額の計算書。相続人の生年月日や相続開始日などを記載します。
  • 被相続人の戸籍謄本
    相続関係を確認するために必要です。
  • 相続人の戸籍謄本
    年齢や続柄を確認するために必要です。
  • 住民票
    国内住所の確認に使用します。
  • 遺産分割協議書(必要に応じて)
    遺産の分割内容を証明する書類です。

なお、扶養義務者への振替を行う場合も、申告書の第6表に振替の内容を記載します。

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【注意】特別代理人が必要になることがある

未成年者が相続人となる場合、遺産分割協議の手続きにも注意が必要です。

未成年者は単独で法律行為を行うことができないため、通常は親権者が代理人として協議に参加します。

ただし、親権者も同じ相続の相続人である場合は、未成年者との間で利益相反が生じるため、そのまま代理人になることはできません。

このような場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任する必要があります。

なお、両親が離婚している場合は、未成年者の親権者が代理人となることができますが、親権者自身が相続人である場合には同様に特別代理人の選任が必要となります。

税理士に相談した方がよいケース

未成年者控除は制度自体は比較的シンプルですが、扶養義務者への振替や他の控除との組み合わせ、特殊な相続状況(養子・非居住者など)が絡む場合は、計算や手続きが複雑になることがあります。

申告に不安がある場合は、相続税に詳しい税理士への相談を検討すると安心です。

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未成年者控除のよくある質問

Q. 未成年者控除で相続税がゼロになる場合でも申告は必要?

A. 未成年者控除の適用によって相続税がゼロになる場合でも、申告が必要な場合があります。

たとえば、扶養義務者が未成年者控除の振替を受ける場合、申告書に必要事項を記載したうえで申告する必要があります。

一方、基礎控除の範囲内でそもそも相続税が発生しない場合は、相続税申告自体が不要となるため申告の必要はありません。

Q. 未成年者が相続放棄をした場合はどうなる?

A. 原則として、未成年者控除を受けることはできません。

未成年者控除の適用要件の一つに「相続人であること」があります。相続放棄をした人は、民法上「初めから相続人ではなかったもの」とみなされるため、この要件を満たさなくなります。

たとえ遺言によって財産を受け取った(受遺者となった)としても、相続放棄をしていれば未成年者控除は適用できない点に注意が必要です。

Q. 過去に未成年者控除を受けている場合は?

A. 以前の相続で未成年者控除を受けている場合、今回の相続で適用できる控除額は「今回の年齢で計算した控除額」と「今回の年齢で計算した控除額から過去に控除した額を差し引いた残額」のうち、いずれか少ない方となります(相続税法第19条の3第3項)。

例(1)

今回の計算で控除額が100万円となっても、過去の相続で80万円の控除を受けている場合、今回適用できる控除額は残りの20万円が上限となります。

  • 今回の年齢で計算した控除額:100万円
  • 今回の年齢で計算した控除額から過去に控除した額を差し引いた残額:100万円-80万円=20万円
    →少ないほうの20万円が上限となる。

例(2)

今回の計算で控除額が60万円となっても、過去の相続で100万円の控除を受けている場合、今回適用できる控除額は0円となります。

  • 今回の年齢で計算した控除額:60万円
  • 今回の年齢で計算した控除額から過去に控除した額を差し引いた残額:60万円-100万円=-40万円
    →少ないほうはマイナスになるので、今回の控除額は0円

Q. 障害者控除との適用順序は?

A. どちらを先に適用しても最終的な税額は変わりません。

未成年者控除と障害者控除は、どちらも各相続人の相続税額から差し引く税額控除です。
実務上は、相続税申告書の計算書(第6表)の記載順序に従って計算します。

Q. 未成年者が遺産を取得しない場合でも未成年者控除は使える?

A. 遺産分割の結果として未成年者が財産を取得しなかった場合は、未成年者控除を適用することはできません。

未成年者控除は、相続または遺贈によって財産を取得した場合に適用される制度だからです。

ただし、相続放棄をした場合でも、遺言による遺贈などによって財産を取得している場合は、他の要件を満たせば未成年者控除を適用できる可能性があります。

また、生命保険金などの「みなし相続財産」のみを取得した場合でも、相続税の課税対象となる財産を取得しているため、未成年者控除の対象となることがあります。

まとめ

未成年者控除とは、相続によって財産を取得した未成年の法定相続人について、18歳に達するまでの年数に応じた金額を相続税額から差し引ける制度です。

控除額は「(18歳 − 相続開始時の年齢)×10万円」で計算され、未成年者本人の相続税額から控除します。
控除しきれない場合は、その残額を扶養義務者の相続税額から差し引くことも可能です。

また、基礎控除や障害者控除など、他の控除制度と併用することもできます。

未成年者控除は相続税申告書(第6表)に記載して申告する必要があるため、申告の際は適用漏れがないよう確認しておきましょう。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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