未支給年金に相続税はかかる?申告の必要性や請求方法などを解説

年金受給者が亡くなった時点でまだ支払われていない公的年金がある場合、一定の遺族は「未支給年金」として請求ができます。
公的年金の未支給年金は、亡くなった方の相続財産ではないため、相続税はかかりません。ただし、受け取った遺族の一時所得となり、金額やほかの所得によっては所得税・住民税がかかります。
また、未支給年金は自動的に振り込まれるものではなく、年金事務所などで請求手続きをしなければなりません。死亡後の月分まで誤って振り込まれた年金は、未支給年金ではなく返還が必要な過払い年金となる点にも注意が必要です。
この記事では、公的年金の未支給年金にかかる税金や確定申告の要否、請求手続きについて解説します。個人年金や企業年金の未支給分、死亡保険金・死亡退職金との違いもあわせて確認していきましょう。
目次
未支給年金(公的年金)に相続税はかかる?
公的年金(国民年金・厚生年金)は、偶数月(2・4・6・8・10・12月)にまとめて、前2か月分が振り込まれる仕組みになっています。
たとえば、4月に振り込まれる年金は「2月分・3月分」です。
そのため、年金受給者が奇数月や偶数月の振込日以外の日に亡くなった場合、すでに受け取るべき権利が発生していながらまだ支払われていない年金が残ります。これが未支給年金です。
こうした未支給年金を相続人が受け取る場合、相続税はかかるのか見ていきましょう。
未支給年金(公的年金)は相続税の対象外
未支給年金(公的年金)には相続税はかかりません。
相続税は、相続や遺贈などで亡くなった方の財産を取得した場合に課税されます。しかし、未支給年金は亡くなった方から引き継ぐ財産ではなく、一定の遺族が自ら請求することで初めて受け取れる給付です。
そのため、未支給年金請求権は相続税の課税対象にならず、遺産分割の対象にもなりません。
なお、未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた3親等内の親族(配偶者・子・父母など)で、その中でもさらに以下のような優先順位があります。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他の3親等内の親族
相続放棄をした人でも、受給要件を満たしていれば請求可能です。また、同居していなくても生活費の仕送りや経済的な援助関係があれば認められることがあります。
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一時所得として所得税・住民税の対象になる
未支給年金(公的年金)は相続税ではなく、受け取った人の一時所得として所得税・住民税の対象になります。
ただし、受け取った金額すべてに税金がかかるわけではありません。一時所得には年間50万円の特別控除があり、さらに控除後の金額の2分の1のみが課税所得として扱われます。
一時所得の金額は、以下の式で計算します。
一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
なお、一時所得の課税対象となる金額は、「一時所得の金額÷2」です。
【注意】振り込まれた年金が死亡後分なら返還する
日本年金機構への死亡届の提出が遅れた場合などに、亡くなった後の月分まで年金が振り込まれてしまうことがあります。
この場合、本来受け取る権利のない年金を受け取ったことになります。
こうした過払い分は「不当利得」となり、日本年金機構への返還が必要です。
| 項目 | 未支給年金 | 死亡後の過払い年金 |
|---|---|---|
| 発生タイミング | 死亡日以前に受給権が確定していたが未払いだった分 | 死亡日の翌月分以降の年金として受け取ってしまった分 |
| 受け取る権利 | 遺族に受給権あり(請求が必要) | 受給権なし(返還が必要) |
| 税務上の扱い | 受給した遺族の一時所得 | 課税対象にならない(返還すべき金額) |
| 手続き | 未支給年金請求書の提出 | 日本年金機構への返還手続き |
未支給年金(公的年金)の受給請求手続きの流れや注意点
未支給年金は、自動的に支払われるものではありません。遺族が自ら請求手続きを行う必要があります。
未支給年金を受給する流れ
未支給年金を受給できる遺族がいる場合、「年金受給権者死亡届 兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を提出します。
この書面を提出することで年金の支給が停止され、未支給年金を請求できます。
停止手続きを行わず、死亡後も年金の支給を受けていると過払い分の返還が必要になることがあるので注意しましょう。
年金事務所・市区町村窓口で入手したり、ダウンロードで入手したりできます。
必要書類
最寄りの年金事務所に対して、請求書に加えて以下のような書類を郵送または窓口で提出してください。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 亡くなった方の年金証書 | 紛失した場合は請求書にその旨を記入 |
| 亡くなった方との続柄がわかる書類 | 亡くなった方の戸籍謄(抄)本など |
| 請求者のマイナンバーがわかる書類 | マイナンバーカードなど |
| 生計が同一であることを証する書類 | 亡くなった方の住民票の除票 請求者の住民票の写し 生計同一関係に関する申立書(別住所の場合)など |
| 振込先の口座番号等が確認できる書類 | 通帳等の写し |
※戸籍謄(抄)本や住民票は亡くなった日より後に交付されたものが必要
- 請求者のマイナンバーがわかる書類は、郵送する場合は両面のコピーを添付、窓口で提出する場合は原本を提示。
- 請求者が配偶者または子の場合、マイナンバーの記入により「戸籍謄本」が省略可能。
- マイナンバーの記入により、請求者の「世帯全員の住民票の写し」が省略可能。
- 公金受取口座を利用する場合、「通帳の写し」が省略可能。
- 亡くなった方のマイナンバーが機構に収録されている場合、「亡くなった方の住民票の除票」が省略可能。
必要書類は個別の状況によって異なる場合があります。事前に窓口へ確認することをお勧めします。
手続きの期限(時効)は5年
未支給年金の請求権は、原則として、受給権者の年金支払日の翌月初日から5年で時効となります。
また、繰下げ待機中に亡くなった場合は、65歳時点の年金額を基に未支給年金が計算されますが、請求時点から5年以上前の年金分は時効により受け取れないことがあります。
未支給年金(公的年金)が一時所得なら、確定申告は必要?
未支給年金は一時所得に該当するため、一定の条件を超える場合は確定申告が必要です。
確定申告が必要なケース
以下の条件に該当する場合は、確定申告が必要になります。
- 給与所得者(会社員など)の場合:給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるとき(未支給年金による一時所得も含めて判断)
- 自営業者・年金受給者など(確定申告をもとから行う方)の場合:一時所得がある場合は申告に含める
未支給年金を含む給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合は、給与所得者である会社員であっても、翌年2月16日~3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
確定申告が不要なケース
- 給与所得者の場合、給与所得・退職所得以外の所得(未支給年金による一時所得を含む)の合計が20万円以下のとき
- 課税所得全体が基礎控除などの範囲内に収まっている場合
なお、一時所得は「特別控除50万円を差し引いた残額の1/2」が課税所得となります。
たとえば他に一時所得や雑所得などが一切ない給与所得者の場合、未支給年金の受給額が90万円以下であれば、課税対象となる所得(一時所得の金額の2分の1)が20万円以下となるため、確定申告は不要です。
ただし、住民税は所得税とは異なる基準で計算されるため、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要になる場合があります。
実際の申告要否は他の所得の状況や各種控除によって異なりますので、不明な点は税務署や税理士に確認することをお勧めします。
個人年金・企業年金の未支給分には相続税はかかる?
被相続人が亡くなった時点ですでに個人年金や企業年金の受給が始まっていた場合、受給期間が残っていることがあります。
まだ支払われていない、残りの受給期間分の年金について、どのような税金がかかるのか見ていきましょう。
なお、個人年金や企業年金では、死亡保険金(個人年金)や死亡退職金(企業年金)が支払われることもあります。
これらについても合わせて解説していきます。
個人年金の未支給分
被相続人の死亡時点で、まだ残っている受給期間分の年金
個人年金の受給が始まり、まだ受給期間が残っているときに被相続人が亡くなった場合、相続人は残りの期間の年金受給権を引き継ぎます。
この受給権に対しては、相続税が発生します。
ただし、これは契約者(保険料負担者)と被保険者が同じで、受取人が違う場合です。契約形態によっては所得税や贈与税の対象となることもあります。
また、その後実際に相続人が年金を受け取るときには、その年金に対して所得税がかかります。
しかし、すでに相続税の課税対象となった権利評価額に相当する部分には所得税はかからず(二重課税防止)、その後に受け取る年金については、毎年の年金収入を非課税部分と課税部分に振り分けたうえで、雑所得を計算します。
なお、個人年金のなかでも保証期間のない有期年金や終身年金は、被相続人の死亡をもって給付が終わります。残りの受給期間はないため、受給権の相続およびそれにかかる相続税は発生しません。
死亡保険金
未支給年金とは性質が異なりますが、個人年金保険では、年金の受給開始前に被保険者が亡くなった場合、契約内容によっては死亡保険金が支払われます。
死亡保険金にかかる税金は、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組み合わせによって異なりますが、契約者(保険料負担者)と被保険者が同じで、相続人が死亡保険金を受け取る場合は、みなし相続財産として相続税の対象となります。
この場合、死亡保険金には以下の非課税限度額が適用されます。
非課税枠
500万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 普通養子については、実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで法定相続人の数に含められます
例えば、法定相続人が3人であれば、500万円 × 3人 = 1,500万円までの死亡保険金には相続税がかかりません。
なお、この非課税限度額が適用されるのは、死亡保険金を受け取る人が相続人である場合に限られます。
遺言によって財産を受け取る受遺者や相続放棄した人が死亡保険金を受け取った場合は、死亡保険金自体は相続税の対象となるものの、この非課税限度額は適用されません。
企業年金の未支給分
被相続人の死亡時点で、まだ残っている受給期間分の年金
企業年金の受給開始後に被相続人が亡くなり、まだ受給期間が残っている場合、相続人が受給権を相続します。この年金受給権は、原則として相続税の対象です。
企業年金は、加入していた制度や規約によって税務上の扱いが異なります。例えば、確定給付企業年金法に基づいて遺族に支給される年金などは、年金受給権が相続税の対象となる一方、毎年受け取る年金には所得税が課税されません。
死亡退職金
残りの受給期間分の年金を一括で受け取る場合や、被相続人が年金受給開始前に亡くなった場合などは、死亡退職金が支給されることがあります。
死亡退職金を相続人が受け取る場合は、死亡保険金と同様にみなし相続財産として相続税の対象となり、受取人が相続人(相続放棄した人を除く)であれば以下の非課税枠を利用できます。
非課税枠
500万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 普通養子については、実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで法定相続人の数に含められます
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未支給年金の相続・税金についてよくある質問
Q. 被相続人の未支給年金は誰でも請求できる?
未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた3親等内の親族に限られます。
法律上の優先順位は以下のとおりです(国民年金法第19条・厚生年金保険法第37条)。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他の3親等内の親族
「生計を同じくしていた」とは、必ずしも同居していなかった場合でも、生活費の仕送りや経済的な援助関係があれば認められることがあります。
この未支給年金は、上述した受給権者である親族が相続放棄を行っていても受け取ることが可能です。
なお、未支給年金は相続財産ではなく、受給権者固有の権利であるため、相続放棄をしても請求することができます。
Q. 被相続人が生前受給した年金の確定申告はどうする?
確定申告とは別に、被相続人の収入に関して準確定申告を行う必要があるかどうかを確認しておきましょう。
準確定申告は被相続人の収入を対象とする手続きであるため、確定申告が不要なケースであっても申告が必要な場合があります。
申告期限も「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」と長くはないので、相続開始後なるべく早期に確認や手続きを行いましょう。
準確定申告が必要となる場面や手続きについて知りたい方は『準確定申告とは?期限・必要な人・誰がどこでやるかをわかりやすく解説』の記事をご覧ください。
Q. 公的年金の繰り下げ受給待機中でも、未支給年金はもらえる?
被相続人が繰り下げ受給を選択したために、65歳以降公的年金を受給していなかった場合でも、未支給年金を請求することができます。
繰下げ受給の待機中に亡くなった場合、一定の遺族は、65歳時点の年金額を基に計算された過去分を未支給年金として請求できます。ただし、請求時点から5年以上前の年金は、時効により受け取れません。
また、この場合、請求できる金額に繰り下げによる増額は適用されません。
Q. 未支給年金(公的年金)は死亡後に自動的に振り込まれる?
なにも手続きをしないまま、未支給年金が自動で振り込まれることはありません。
未支給年金を受け取るには、受給権者が年金事務所などで「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を提出する必要があります。
なお、死亡の届出が遅れたことで、死亡後の年金が従来の口座へ振り込まれることがあります。しかし、これは未支給年金ではなく、本来受け取る権利のない過払い年金です。
過払い年金は日本年金機構へ返還しなければならないため、そのまま使用しないよう注意しましょう。
まとめ|未支給年金は相続税ではなく所得税に注意
公的年金の未支給年金には相続税はかかりませんが、受け取った人の一時所得として所得税・住民税の対象になります。
ただし、実際に確定申告が必要かどうかは、未支給年金の金額だけでなく、給与や年金などほかの所得も含めて判断しなければなりません。また、未支給年金は自動的に振り込まれるものではないため、受給要件を満たす遺族が請求手続きを行う必要があります。
特に注意したいのが、公的年金と個人年金・企業年金を同じように扱わないことです。個人年金や企業年金では、残りの年金受給権や死亡保険金・死亡退職金に相続税がかかるケースがあります。
まずは、受け取る年金が公的年金・個人年金・企業年金のどれに当たるのかを確認し、そのうえで請求手続きと税務上の扱いを整理しましょう。判断が難しい場合は、年金事務所や税理士へ早めに相談することをおすすめします。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士