ブラック企業を訴えたい!訴えることができるケースや相談窓口を解説
「ブラック企業を訴えたい」
「ブラック企業について相談したい」
ブラック企業で日々精神的につらい状況にあるという方のなかには、そういった気持ちを抱いている方も多いのではないでしょうか。
「自分の置かれている状況で訴えることはできるのか」「相談先はどこなのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
ブラック企業を訴えたいという方は、まず弁護士をはじめとした相談窓口に相談することをおすすめします。
今回は、ブラック企業を訴えることができるケースや、ブラック企業の無料相談窓口、そして実際に訴えるときの流れを解説します。
目次
ブラック企業を訴えることができるケース
会社を訴えるには、会社が違法行為をしていると証明する必要があります。
法律違反の状況であると立証できなければ、訴えを起こしても裁判で勝つことは難しいでしょう。
ここでは、ブラック企業を訴えることができるケースについて解説します。
長時間労働・残業代が未払いである
残業代が未払いであるという場合は、ブラック企業を訴えることができます。
労働基準法は、1日および1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」といいます)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。
この法定労働時間を超える労働については、割増賃金を支払う義務が生じます(労働基準法37条1項)。
したがって、「法定労働時間を大幅に超えて残業している」「残業代が割増になっていない」という場合は法律違反となり、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。
未払いの残業代の支払いを請求することが可能といえるでしょう。
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有給休暇を与えない・自由に消化させない
企業は労働者が「入社から6か月継続して勤務をしている」「規定労働日の8割以上出勤している」ことを満たす場合、原則として10日の有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条)。
また、有給休暇の申請を拒否することは、原則として違法行為にあたります。
したがって、「有給休暇をもらえない」「自由に有給休暇を消化できない」という場合は、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。
例えば、有休を利用して休んだところ、休んだ日の給与の支払いがない場合には、未払い給与があるとして支払いの請求をすることが可能といえるのです。
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各種ハラスメントを受けている
パワハラやセクハラなど、ハラスメント行為を受けているという場合も、ブラック企業を訴えることができます。
労働契約法では、使用者が、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するという「安全配慮義務」について定めています(労働契約法5条)。
「安全配慮義務」の内容として、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整 える義務があるとされています。
そのため、ハラスメント行為を受けているという場合も、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。
職場におけるいじめやハラスメントに会社が適切に対応しなかったために、うつ病になったといった損害が発生したとして、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求を行うことなどが考えられるでしょう。
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不当に解雇や降格させられた
不当に解雇させられたり、懲戒させられたりしてしまったという場合も、ブラック企業を訴えることができます。
労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当だと認められなければ、解雇や懲戒処分は不当であると定められています(労働契約法15・16条)。
そのため、「不当解雇があった」「不当に懲戒させられた」という場合は、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。
解雇が不当であるため、現在も労働者の地位にあるとして、未払いの給与の支払いを請求するといったものが考えられるでしょう。
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違法な退職勧奨を受けた
退職勧奨とは、会社が従業員に対して退職を勧めることをいいます。
「退職するよう執拗に圧力をかけてきた」「退職するよう暴言を吐かれた」などという場合は、違法となる可能性があります。
この場合、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。
違法な退職勧奨により精神的に追い詰められたためにうつ病などの病気となってしまったとして、損害賠償を求めるといったものが考えられるでしょう。
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ブラック企業の相談窓口と特徴
「ブラック企業について相談したい」という方は、以下のような相談窓口への相談をおすすめします。
ブラック企業の相談窓口
- 労働基準監督署
- 労働局
- 労働条件相談ほっとライン
- 総合労働相談コーナー
- 労働組合
- 弁護士
労働基準監督署
労働基準監督署とは、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をおこなったりする機関です。
無料で相談できるほか、労働基準法違反等が発覚すれば、是正指導・勧告をおこなってくれるところがメリットです。
しかし、証拠がないと動いてくれない可能性があったり、労働基準法等に違反していない労働トラブルへの対応が難しいというところがデメリットです。
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労働局
労働局(都道府県労働局)とは、労働基準監督署の上部組織にあたる、厚生労働省所管の機関です。
相談に対しての情報提供や、労働トラブルが発生した際には助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を無料でおこなってくれます。
ただし、あっせんによって必ず労働トラブルが解決するとは限らない点に注意が必要です。
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労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説』の記事をご覧ください。
労働条件相談ほっとライン
労働条件相談ほっとラインは、長時間労働やサービス残業、賃金未払いなどの問題について専門家に相談することができる窓口です。
全国誰でも、匿名でも電話相談できるところがポイントです。
厚生労働省の総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、あらゆる労働問題について相談できる、厚生労働省所管の窓口です。
予約も不要で、相談料無料で利用可能です。また、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。
さらに労働基準法違反の疑いがある場合は、担当部署に引継ぎ、行政指導もしてくれる場合もあります。
労働組合
労働組合では、さまざまな労働に関するトラブルを相談できます。
昇給や賞与の査定項目などの労働者全員に関する事項はもちろんのこと、解雇・雇い止め、賃金の未払い、ハラスメントといった労働者個人のトラブルも扱ってくれます。
労働組合のポイントとして重要なのは、会社側には団体交渉に応じる法的な義務があるということです。
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弁護士
「ブラック企業を訴えたい」という方は、弁護士への相談をおすすめします。
労働トラブルの種類に関わらず相談できるほか、損害賠償・慰謝料や未払い残業代の請求といった、法的手続きを依頼できます。
弁護士に相談すれば、相談内容の違法性の有無の判断をしてくれるほか、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれます。
また、相手が逆に損害賠償請求を起こしてきた場合など、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応することができるのもポイントです。
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・【労働者側】労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説!
ブラック企業を訴える流れ
いきなり訴訟を起こす前に、まずは交渉からスタートしていくことをおすすめします。
話し合いによる解決が難しい場合は、労働審判、訴訟の提起と順序を踏んでいきましょう。
証拠を集めておく
各種窓口に相談したり、会社と交渉したりする前に、まずは有効的な証拠を集めておきましょう。
有効的な証拠には、以下のようなものがあります。
有効的な証拠
- タイムカードや勤怠管理システムの記録など、実際の労働時間・残業時間がわかるもの
- 音声やメール本文など、ハラスメント行為を受けたことがわかるもの
- 解雇理由証明書や降格理由が書かれた書類など、不当な扱いを受けたことがわかるもの など
証拠を集めるときには、できるだけ長期間にわたってさまざまな種類の証拠を集めておくことがポイントです。
内容証明を送付する
ブラック企業を訴える前に、交渉で労働問題を解決できないかどうかを検討してみましょう。
会社に対して、請求内容や金額、開示を求める資料を記載した通知書を送ることで交渉がスタートします。
このとき、通知書を内容証明郵便で送付すれば、到着日と書面の内容を記録化し、証拠として利用することができます。
会社と交渉する
通知書が会社に届くと、会社からの回答書が返ってくることになりますが、反論を示す内容であることが多いです。
そして、会社との間で、双方の主張を調整し、協議していくことになります。
労働審判を申し立てる
話し合いでの解決が難しい場合は、裁判所を用いた手続きに移行することになります。
労働審判とは、事業主と個々の労働者との間の労働トラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とした裁判所の制度です。
最大3回の期日で審理がされるため、問題の早期解決が見込めます。
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・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説
訴訟を起こす
労働審判を申し立てずに、訴訟(労働裁判)を起こすことも可能です。
労働トラブルにもよりますが、通常の裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は17.2か月と長期間になります。
問題の最終的な解決が見込めるというメリットはありますが、かなりの時間を要してしまうというデメリットがあります。
参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」
ブラック企業は弁護士に相談
「ブラック企業を訴えたい」と考えている方は、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に依頼すれば、相談内容の違法性の有無の判断をしてくれるほか、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれます。
また、労働トラブルの種類に関わらず相談できるほか、損害賠償や残業代の請求といった、法的手続きを依頼できます。
相手が逆に損害賠償請求を起こしてきた場合など、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応することができるのもポイントです。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
なお、ブラック企業に現在勤めており、心身に支障をきたしている場合は、ブラック企業を辞めることも選択肢の一つです。
しかし、退職を受け入れてもらえなかったり、人手不足を理由に退職を拒否されたりすることを心配している方も多いでしょう。
ブラック企業の辞め方については『ブラック企業の辞め方!退職方法とスムーズに退職する方法を解説』の記事で詳しく解説しています。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了