労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説
会社とのトラブルが起きたときの相談先として、まず思い浮かぶのが労働基準監督署という方も多いと思います。
しかし、労働基準監督署がどういった相談を受け付けているかまではあまり詳しくは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、労働基準監督署に相談できることやできないこと、活用するメリット・デメリットについて解説します。
目次
労働基準監督署はどんな相談ができる?
労働基準監督署とは
労働基準監督署の役割は、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をすることです。
会社が労働基準法等を守っていないことが発覚すれば、是正指導や勧告することができ、また悪質な場合は経営者を逮捕することもできるといった司法警察としての側面もあります。
お近くに管轄署がありますので、労働基準監督署の一覧表から、ぜひ探してみてください。
労働基準監督署は労働基準法に違反しているトラブルを相談できる
前述の通り、労働基準監督署は会社が労働基準法等を違反していないかチェックしている機関です。
そのため、会社が労働基準法に違反している労働トラブルの場合は相談することができます。
具体的には以下のようなケースです。
労働基準監督署に相談できるケース
- 賃金が支払われていない
- 残業代が支払われていない
- 休憩時間をもらえない
- 有給休暇を取得できない
- 過労死ラインを超える残業をさせられている
- 雇用契約の内容と実際の雇用条件が異なる
- 即時解雇されたが解雇予告手当てが支払われなかった
- 労災の事実や申請を認めてくれない
上記の例は、労働基準法等に違反しているケースなので、労働基準監督署に相談することが可能です。
労働基準監督署へ相談する方法として、電話・メール・直接訪問の3つがあげられます。
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労働基準監督に相談できないこと
一方、労働基準法等に違反していない労働トラブルは、労働基準監督署に相談しても対応してもらえない場合が多いです。
例として、パワハラやセクハラ、モラハラなどのハラスメントは労働基準監督署に相談しても対応してもらえない可能性が高いです。
これらのハラスメントは民法上の不法行為(民法第709条)や、使用者の安全配慮義務違反(労働契約法第5条)に該当する可能性が高いですが、労働基準法等に抵触していないからです。
労働契約法と聞くと労働基準法に関連するのではと思われるかもしれませんが、労働契約法は民法の特別法であり労働基準法と違い罰則はありません。
そのため、労働基準監督署の指導対象とはなりません。
このような労働基準法に直接抵触していない労働トラブルは、労働基準監督署ではなく労働局が対応しています(詳しくは後述します)。
労働基準監督署に相談するメリット、デメリット
労働基準監督署に相談できることは、会社が労働基準法等の違反をしている場合であることがわかりました。
では、労働トラブルが労働基準監督署に相談できるケースだったとして、労働基準監督署に相談するメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
労働基準監督署に相談するメリット
労働基準監督署は国の機関であるため、全て無料で相談できることがメリットです。
また、残業代未払いなどの相談をしたときに労働基準法等の違反の可能性があると判断されれば、会社に対して調査を行います。
調査は、会社に事前通知なく強制的に立ち入ることが可能で、帳簿やその他書類を閲覧する権限や関係者に質問することもできます。
その結果、労働基準法違反等が発覚すれば、是正指導・勧告を行うことが可能です。
是正指導・勧告によって、会社が速やかに対応し労働環境改善につながるケースもあります。
労働基準監督署に相談するデメリット
労働基準監督署のデメリットは、証拠がないと動いてくれない可能性がある点です。
そのため、労働基準監督署に相談する前に、労働基準法等の違反があることを明確に示す証拠を揃えた方が良いでしょう。
例えば、残業代未払いのケースでは、タイムカードや給与明細、会社のパソコンを起動、シャットダウンした時間の記録などの証拠があると良いかと思います。
また、全国の労働基準監督署への相談数に比べて、労働基準監督官の数が圧倒的に足りていません。
全国の労働基準監督署と労働局には年間100万件以上の相談が寄せられているのに対して、労働基準監督官は全国に3042人のみです。(令和3年度時点)
そのため、人命に関わるような悪質な労働基準法等の違反に該当する労働トラブルから優先的に対応され、残業代未払いなどの労働トラブルは後回しにされたり動いてもらえない可能性があります。
そして、是正指導・勧告ができるものの命令はできないので、是正指導・勧告を会社にしたものの無視されてしまえば、問題が解決されないままとなってしまうおそれがあります。
労働基準監督署以外の労働トラブルの相談先
労働基準監督署に相談できない労働トラブルはどこに相談すればいいのでしょうか。
また、労働基準監督署に相談できる労働トラブルでも労働基準監督署だけでは解決が難しい場合、別の相談先はどういったところがあるのかを確認しましょう。
労働問題を無料で相談できる窓口について知りたい方は『労働問題の無料相談窓口7選!専門家のサポートを受けたい方へ』の記事もあわせてご覧ください。
ここでは、代表的な窓口を3つご紹介します。
労働局に相談する
労働基準法には直接抵触していない労働トラブルでも労働局へ相談が可能です。
労働局は、労働基準監督署とは異なりさまざまな労働トラブルに関する相談に対応しています。
また、法律違反とは言い切れないグレーゾーンの労働トラブルにも対応していて、「あっせん」といって労働局が会社と労働者の仲介に入って話し合いをする場を設けることも可能です。
ただし、会社はあっせんに応じる義務はないので、無視されてしまう可能性も十分にあります。
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・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説
労働組合に相談する
労働組合も労働基準法に抵触していない労働トラブルの相談が可能です。
社内に労働組合がなかったり、あっても実質機能していない場合はユニオンと呼ばれる社外労働組合に相談することもできます。
労働組合のメリットは、労働トラブルの内容によっては会社に対して団体交渉の申し入れをしてくれる点です。
労働局のあっせんと違い、会社は労働組合から団体交渉を申し入れられたら正当な理由のない限り、拒否することができません。
また、不誠実に応じることも不当労働行為として禁止されています(労働組合法第7条2号)。
ただし、団体交渉をするには組合に加入する必要があるので、組合費の有無はきちんと確認しておきましょう。
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弁護士に相談する
労働トラブルを弁護士に相談することのメリットは、相談内容の違法性の有無の判断や、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれる点です。
労働基準監督署や労働局・労働組合で解決できなかった場合は、初回相談無料の弁護士事務所もありますので相談することも検討してみてはいかがでしょうか。
労働問題は時間が経過すると証拠が散逸し、言った言わないの争いになって解決が難しくなる場合もあります。困ったときは、なるべく早く法的手続きを使える弁護士に相談してみましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了