顔を合わせずに離婚する方法はある?離婚を弁護士に依頼するメリット
早く離婚したいけど、もう夫の顔は見たくない。離婚を切り出したら暴力を振るわれるかもしれない。こういった理由で、相手と顔を合わせずに離婚をしたいと考える方は多いです。
相手と直接会わずに離婚をすることは可能です。今回は、離婚の一般的な流れである「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の順に、相手と顔を合わせずに離婚をする方法を解説します。
目次
相手に会わずに離婚する方法は?
離婚をしたいと考えた際、その方法は3つあります。「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」です。原則的に、協議→調停→裁判の順番に行うことになっており、それぞれの段階で、顔を合わせないようにする方法があります。
メールや郵便で離婚協議をする
協議離婚とは、夫婦間の話し合い(協議)で離婚を決定する方法です。
直接会って話し合わなければいけないのではないかと思われるかもしれませんが、メールや電話、郵便などを使ってやりとりを行い、離婚届を郵送してサインしてもらうことで離婚をすることも可能です。
しかし、メールや郵便での離婚協議は時間がかかってしまったり、連絡を無視されてしまう可能性もあります。
弁護士に依頼する
協議離婚をする際に、弁護士に依頼すると、依頼人の代理で話し合いをしてもらうことができます。弁護士は、直接会っての交渉だけでなく、相手との連絡も代わりに行ってくれるため、自分が相手と関わる必要はなくなります。
もし双方が弁護士をつけた場合は、弁護士同士での話し合いになります。
離婚調停を申し立てる
話し合いが決裂したり、そもそも話し合えないような状況の場合は、離婚調停を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
離婚調停の流れ
- 家庭裁判所に離婚調停申立書を提出する
- 双方が調停期日に家庭裁判所に呼び出される
- 1人ずつ調停室に呼び出され、調停委員から事情聴取を受ける
- これを繰り返して意見の調整を行い、双方が同意すれば離婚が成立する
離婚調停では、裁判官と男女1名ずつの調停委員からなる調停委員会を介して話し合いを行うため、基本的に夫婦が同席することはありません。
夫婦が主に話をするのは調停委員の2人です。事情聴取は別々に行われますし、控え室や廊下で相手と鉢合わせをしないように、配慮がされています。
ただし、離婚調停の中で夫婦が顔を合わせる場面が2つあります。1つ目は第1回の調停の冒頭です。裁判所にもよりますが、この時は2人が同席して調停の流れなどの説明を受けることが多いです。2つ目は、調停が成立する時です。この場面では、意思確認のために夫婦が同席する必要があります。これらの場面では、原則的に同席を拒むことはできませんが、相手と会話をする必要はありません。
なお、DV被害などの事情があって、同席することにより心身に危険が及ぶと判断された場合には、これらの手続きを別々に行えることもありますので、事前に家庭裁判所に相談されることをおすすめします。
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離婚裁判を起こす
調停でも離婚の合意に至らなかった場合、離婚裁判を起こすことができます。離婚裁判の流れは以下のようになっています。
離婚裁判の流れ
- 家庭裁判所に訴状を提出する
- 被告(訴えられた側)に訴状が届き、答弁書を提出する
- 裁判が始まり、口頭弁論や書面のやりとりを重ねて争点を整理する
- 多くの場合、弁論準備手続に移行する
- 本人尋問が行われる
- 判決の言い渡しまたは和解で離婚が成立する
このうち、本人尋問(当事者尋問)のみ、本人が出席して尋問を受けることが必須です。
弁論準備手続とは、法廷ではなく小さな会議室に裁判官、弁護士、当事者が集まり、1つの机を囲んで話し合いを行うという、クローズドな会です。弁論準備手続には本人の代わりに弁護士が出席することができ、そこで裁判の争点や証拠の整理を行います。
弁論準備手続を何回か重ねる中で、裁判官から和解の提案がされることもよくあります。和解を成立させる際には本人の立ち会いが求められますが、相手と会わずに済むように配慮をしてもらえることが多いようです。
和解ができなかったときは、舞台は会議室から法廷へと戻り、本人尋問を行った後、判決へと持ち込みます。本人尋問は、自分と相手がそれぞれの弁護人から尋問を受け、また相手方代理人から反対尋問を受けるという手続きですので、通常は相手と顔を合わせることになります。
しかし、事前に申し立てをして認められれば、相手との間についたてを置く遮蔽措置や、別室からモニターを通じて尋問を行うビデオリンク方式を取ってもらうことで、相手と顔を合わせるのを避けることができます。
そして、判決が下された時点で、離婚は成立または不成立で確定します。
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・離婚裁判の流れと注意点を解説|期間や費用はどのくらいかかる?
離婚で弁護士に依頼するメリットは?
離婚をする際に弁護士に依頼するメリットは、直接顔を合わせなくていいという点だけではありません。それぞれのフェーズにおいて、以下のようなメリットがあります。
協議離婚で弁護士に依頼するメリット
協議離婚では、当事者同士が話し合う必要がありますので、議論がヒートアップしてしまったり、反対に話し合いに応じてもらえなかったりといった心配があります。
話し合いの際に弁護士に同席または代理で出席してもらうことで、冷静な議論ができますし、身に危険が及ぶおそれも少なくなります。また、話し合いにまったく応じない配偶者でも、弁護士から連絡が来たとなれば驚いて応じることもあるでしょう。
離婚を考えているときに決めなければいけないのは「離婚をするか否か」だけではありません。慰謝料や親権、養育費、財産分与など多くの問題があり、取りこぼしなく取り決めをしておかなければ、後々トラブルのもとになってしまいます。
また、話し合って決めた条件の中に、自分に不利な内容が含まれていたとしても、それに気づくのは難しいことです。離婚を熟知した弁護士に任せて、しっかりと取り決めをしておきましょう。
調停離婚で弁護士に依頼するメリット
離婚調停を有利に進めるには、調停委員に良い印象を与えて味方についてもらうことが重要です。そのためには、冷静に、論理的に、説得力のある話をしなければなりません。
あらかじめ弁護士と打ち合わせをしたり、弁護士に同席してもらうことで、調停を有利に進められるでしょう。
また、一度調停を成立させてしまうと、たとえこちらに一方的に不利な条件があったとしても、結果を覆すことはできません。ですので、調停の内容についても弁護士によるチェックを受けることをおすすめします。
裁判離婚で弁護士に依頼するメリット
裁判となると、実際に裁判所に出向いておこなう話し合いよりも、書面でのやりとりの比重が大きくなります。離婚裁判を有利に進めるためには、自分の主張をうまく伝えられるような書面を作らなければなりません。裁判の知識がないままこれをやろうとすると、相当な負担となりますので、弁護士に任せてしまうことをおすすめします。
ちなみに、裁判は平日の日中に行われます。仕事などで出廷が難しい場合でも、ほとんどの場面では弁護士が代理で出廷すれば問題ありません。弁護士に依頼することで、仕事と両立しつつスムーズに離婚を進めることができるでしょう。
離婚で弁護士に依頼したら、費用はどのくらい?
もちろん、弁護士に依頼をすれば弁護士費用はかかります。
弁護士費用は、以下のような項目に分かれています。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 日当・実費
相談料
弁護士に依頼をする前に、離婚について相談をすることができます。相談料は1時間5,000円〜1万円が相場となっていますが、無料相談を受け付けている法律事務所もあります。
着手金
着手金は、依頼をする際、はじめに払う費用です。交渉が思い通りの結果にならなかった場合や、途中で弁護士を解任した場合でも、着手金は返ってこないことがほとんどです。
離婚の段階によって着手金の金額が分かれていることが多く、協議離婚の段階で依頼する場合は10万円~20万円、調停離婚では20万円~30万円、裁判離婚の場合は30~40万円程度が相場となっていますが、着手金が無料の法律事務所もあります。
協議離婚の段階で依頼をしていたが、途中で調停・裁判に移行したという場合は、移行する時点で別途の着手金を請求されることが多いようです。
成功報酬
成功報酬は、交渉が成功した場合に支払う費用です。「離婚が成立したら〇万円」などといった、固定の成功報酬が設定されていることが多く、それとは別に、慰謝料などの経済的利益を勝ち取った場合は「獲得額の〇%」といった形で獲得額に応じた成功報酬が設定されていることも良くあります。
成功報酬は、事務所によって料金体系が大きく分かれる部分です。
日当・実費
日当とは、弁護士が交渉の場に出向いた際に、拘束時間に応じて支払う時給のようなものです。1日3万円〜5万円程度が相場といわれています。
実費とは、印紙代や郵送代、弁護士の交通費など、職務の遂行に必要な費用です。実際にかかった費用をそのまま請求されることになります。
これらをすべて合わせたときの相場は以下のようになっています。
離婚の方法 | 着手金+成功報酬 |
---|---|
協議離婚 | 40~80万円 |
調停離婚 | 50~100万円 |
裁判離婚 | 70~120万円 |
この他に、勝ち取った経済的利益に対して10〜20%程度の成功報酬および実費を設定している事務所が多いようです。
また、親権、面会交流、養育費、財産分与など、争点が増えると、追加で費用がかかる事務所もあります。
弁護士に依頼する場合費用はかかりますが、裁判で負けて多額の慰謝料を払わなければいけなくなったり、もらえたはずの慰謝料が少なくなってしまったりというリスクを考えると、弁護士をつけた方が結果的には安く済むということもあります。
離婚調停、離婚裁判へ進めば、その分弁護士費用もかさんでしまいます。当事者間での協議の段階で弁護士に相談して、早期の解決を目指すことをおすすめします。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
いずれの方法を取るにしても、離婚には煩雑な手続きがつきまといます。弁護士はこういった手続きを代わりに行ってくれますので、自身の負担を減らすことができます。