弓道部での学校事故|被害回復までの流れと法的責任を解説 | アトム法律事務所弁護士法人

弓道部での学校事故|被害回復までの流れと法的責任を解説

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学校事故|弓道部の事故。被害回復までの流れ

弓道部がある学校は全国に多数存在しています。
弓道では武器として使用されていた弓を使うことから、練習中の事故により生徒が負傷することも珍しくありません。

そのため、学校において弓道の事故が発生した場合には、誰にどのような責任が生じ、どのような請求が可能となるのかを知っておく必要があるでしょう。

今回は、そんな弓道に関して学校事故が起こった場合の法的な責任や、被害回復までの流れについて解説していきます。

弓道に関する学校事故

弓道に関する学校事故の可能性について具体的に検討していきます。

元来武器であったことによる危険性

「弓道」とは、剣道や柔道と並び日本の伝統武道のひとつです。

的に対して弓を使用して矢を放つという競技ですが、弓矢はもともと武器として使用されていたものです。
したがって、周囲の人間に怪我を負わせる危険性が本質的に高い性質のスポーツであるともいえます。

弓道部で想定される事故

弓道で起こりうる事故について場合分けをして解説していきます。

用具・施設管理に関する事故

弓道に関してはまず用具や施設管理に関連して以下のような事故が発生する可能性が考えられます。

  • 的から外れて矢が飛んだり、安土の脇にある看的所(かんてきじょ)に矢が入ったりすることで第三者に当たり身体に創傷を負わせる
  • 弓の形状に異常があり、腕を打ったり予想外の方向に矢が飛び、人にあたったりして打撲や刺創を負わせる
  • 巻藁の後方が固い壁であったことから、巻藁を外れた矢が壁に当たって跳ね返り、周囲の人に当たって負傷させる

活動全般に関して起こりうる事故

用具や施設管理ではなく弓道の活動内容全般に関連して事故が起こる可能性もあります。

  • 弓を射ようとした手の甲が近くにいた第三者の顔などにあたり打撲等の怪我を負わせる 
  • 弓を張るときに、弓張り板から弓の上端の末弭(うらはず)が外れてしまい、周囲にいた他人にあたり打撲を負わせる

弓道の学校事故における法的責任

事故の責任があるのは誰か

まず、事故の直接の原因となる行為を行っていた弓道部の「生徒」個人です。

また、部活を管理・監督する責任のある「顧問や指導者」等です。顧問や指導者に直接請求することもできますが、基本的には雇用している学校に対する請求を行うことになるでしょう。

学校側が負う不法行為・債務不履行責任

不法行為責任とは、故意や過失によって生徒の権利・法律上保護された利益を侵害した場合に、この侵害した者に損害を賠償する責任が発生するというものです。(民法709条)

債務不履行責任とは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき等について、これによって生じた損害については債務者に損害を賠償する責任が発生するというものです。(民法415条1項)

学校事故について、故意の行為によって生徒児童が負傷するような不法行為は、体罰や危険行為の強制などを除きケースとしては少ないでしょう。

不法行為では「行為者の過失の有無」、債務不履行では「債務者の帰責事由の有無」が問題になります。(民法415条1項但し書き参照)

この過失や帰責事由については、実質的には管理・監督者の注意義務違反の有無によって判断されることになります。

注意義務違反の判断方法

学校事故の発生防止についての第一義的責任は学校側にあります。

そして、生徒児童を監督すべき担当教員は、「安全配慮義務」という注意義務を負っています。
「安全配慮義務」とは、児童生徒の生命や健康などを危険から保護するように配慮すべき義務をいい、一般的にある法律関係にもとづいて特別な社会的接触の関係に入った当事者において、当該法律関係の付随義務として信義則上負う義務です。

具体的に部活動などで弓道を実施させる場合には、安全配慮義務の内容として、以下のような対策を行う必要があるとされます。

  • 事故が起きないように生徒に対して適切な指導を行う
  • 事故が起きないように施設管理を行う
  • 事故が発生した場合に適切な対処を行えるように準備する

指導段階では生徒の能力や技能に応じて、危険を回避するために適切な指導を行う必要があります。弓道を指導する教員は、弓道が有する本質的な危険性を生徒に理解させておく必要があるでしょう。

施設管理については、防矢ネットを隙間がないように設置したり、観覧席の前には防矢板を設置したり、距離をとって立入禁止にしたりするなどの管理体制が考えられます。

事故が発生した際には、生徒の受傷状況に応じて適切な対応をとるために、病院や保護者との連携がとれるような連絡体制をあらかじめ構築しておくことなどが必要なるでしょう。

学校が公立高校の場合は請求相手が異なる

学校側が負うことになる法的責任については、私立高校と公立高校で請求相手が異なります。

私立高校の場合は、上記したように教師の故意や注意義務違反を原因として学校へ請求することになります。

一方、公立高校の場合は教師が公務員であることから、民法ではなく国家賠償法にもとづいて、学校の設置者である国や地方公共団体に対して請求を行う必要があるのです。

国家賠償法に基づく請求であっても、民法の場合と同様に、教師の故意や注意義務違反を主張する点は変わりません。

加害生徒が負う損害賠償責任

他の児童・生徒の不法行為によって子どもが怪我を負った場合には、加害行為を行った生徒に対して不法行為に基づき損害賠償請求できる可能性があります。

この場合にも行為者の過失も問題になりますが、過失が認められたとしても一般的に加害生徒には資力がないため、その保護者に対しても請求することになります。

加害生徒が責任能力を有しない場合には、監督義務者である保護者に対して損害賠償請求が可能です(民法714条)。責任能力とは、「その行為の責任を弁識するに足るべき知能」をいい、12歳程度で認められます。

一方、加害生徒が責任能力を有する場合、その加害生徒の保護者が当然に賠償責任を負うことにはなりません。

判例によれば、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果の間に相当因果関係が認められれば、監督義務者について不法行為責任が成立するとされています。(最高裁昭和49年3月22日判決)

普段の言動から加害生徒が事故を起こす可能性があることを予見できるにもかかわらず、問題のある言動を行うことを黙認していたといった事情があれば、監督義務者である保護者に注意義務違反が認められるでしょう。

弓道の学校事故で賠償を受けるまでの流れ

被害者が具体的に被害回復できるまでの流れについて解説していきます。

学校や加害生徒と示談交渉

弁護士を介して相手方に対して内容証明郵便等で損害賠償請求を行い、任意による支払いで解決を図ります。

まずは、学校や加害生徒と話合いを行い、示談で賠償が実現できるように交渉を行っていきます。

公立学校等との交渉の場合には、決裁が必要になるので交渉に時間がかかる場合がありますが、弁護士に依頼しておけば適切に締切りを設定して、時間ばかりかかって手続が全然進まないといったことも防止することができるでしょう。

損害賠償請求権にもとづいてどのような請求が可能であるのかについては『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』の記事をご覧ください。

当事者だけでは解決できない場合には第三者機関を利用

もし、当事者間での話合いが不調に終わった場合には第三者を介した手続を利用して解決を図ることができます。

まず、紛争処理センターのあっせん人を介在させて和解を目指す方法があります。(学校問題ADR:裁判外紛争解決手続)

この手続は弁護士会で申し立てることによって利用することができます。

あっせん人は学校問題について専門的な知見を有する弁護士や専門家が選任されていますので、客観的な視点を入れて話合いを進めていくことができるでしょう。

また、裁判所を利用した「民事調停」手続を利用することもできます。民事調停は簡易裁判所に申し立てることができ、調停委員会が当事者双方の間に入って話合いで解決を目指します。

話し合いで解決できない場合には裁判手続を利用

当事者間での話し合いでは解決することができない場合、民事訴訟を提起します。

民事訴訟はこの中で最も厳格な手続です。当事者の主張は証拠に基づき裁判所によって認定されますので、証拠のない事実は基本的に認められません。

裁判所に出廷して当事者双方が主張と反論を展開し、裁判所が心証を形成し、判決によって結論が示されるのです。

「判決」という形で被害者側の主張が確定した場合には、たとえ相手方が納得していなくとも、強制力をもって被害者の権利を実現することができるのです。

もちろん裁判手続中であっても当事者は、和解の可能性を探ることができますので、双方が納得する金額や内容で和解して解決できる場合もあります。

保険制度も利用しよう

被害生徒の保護者が災害共済給付制度に加入している場合には、学校の管理下で発生した弓道事故による損害について補償を受けることが可能です。

学校に対して必要な書類を提出することで、医療費用や見舞金を受け取ることができます。

学校や加害生徒への請求がスムーズにいかない場合は、災害共済給付制度により補償を得ることで賠償金の一部を早期に得ることができるため、災害共済給付制度に加入しているのかを確認しましょう。

災害共済給付制度の内容については『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事で詳しく知ることができます。

学校で起こった弓道事故は弁護士に相談しよう

まずは無料の法律相談から始める

学校事故に関しては、まず示談交渉で解決を図ることが多いです。そして、示談交渉での解決が難しい場合には、第三者を介しての話し合いへ、それでも解決できない場合には裁判所に判断してもらう流れになります。

  1. 示談交渉での任意の話し合い
  2. 第三者を介しての話し合い
  3. 裁判所に判断してもらう

第三者を介しての話し合いや裁判へ進むにしたがって、手続が厳格になっていきます。

裁判になった時点で事故についての証拠を集めようとしても時間が経過していて困難です。したがって、手続の当初から専門家である弁護士に依頼しておくことで、証拠が散逸してしまうことを防止しながら、のちの裁判を見越して話し合いを行うことができます。

もっとも、弁護士に依頼したほうが良いと分かっていても、弁護士費用が気になってしまう方は多いものです。

そこで、まず無料の法律相談の活用を検討してみましょう。相談費用を気にせず、弁護士に依頼するべきかどうかや、依頼した場合にかかる費用について確認可能です。

アトム法律事務所の無料相談

学校で起こった弓道事故によって、お子さまが大きな後遺症を負ってしまったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了