学校における事故で失明した場合の責任は?後遺障害等級とともに解説 | アトム法律事務所弁護士法人

学校における事故で失明した場合の責任は?後遺障害等級とともに解説

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学校事故で失明。責任の追求先

学校事故により生徒が失明をしてしまった事例は実際にあります。

本人にとってはもちろんのこと、その家族にとっても失明という事態は大変ショッキングな出来事です。

このようなケースでは、生徒側が学校を相手取って裁判を起こすことも少なくありませんが、生徒側はどのような場合に学校側の責任を追及することができるのでしょうか。

今回は、学校事故により失明をしてしまった場合、生徒側が学校側に対しどのような責任を追及できるかについて解説します。

学校事故における学校側の責任

学校の管理下で起きた事故のことを「学校事故」といいます。

学校事故により生徒が受傷した場合、学校側はどのような責任を負うことになるのでしょうか。

公立学校は直接、責任を負わない

公立学校において学校事故が発生した場合は、国家賠償法が適用されることになります。国家賠償法にもとづき、公立学校の場合の学校事故では、学校を設置した国または自治体が責任を負うことになります。

そのため、受傷した生徒に対して公立学校や教師が直接、責任を負うということはありません。
学校事故が学校側の故意や過失にもとづくものであるなら、国や自治体が責任を負うことになるのです。

学校事故により学校側が直接、責任を負う可能性があるのは、学校が「私立学校」の場合になります。

私立学校と損害賠償責任

学校は、生徒に対して「安全配慮義務」を負っています。

「安全配慮義務」とは、生徒が安全かつ健康に学校で生活を送ることができるように配慮しなければならないというものです。

安全配慮義務に違反したのであれば学校側に過失があったといえます。
そのため、安全配慮義務違反が原因で学校事故が発生して生徒が怪我を負った場合、学校側は生徒に対して損害賠償責任を負うのです。

安全配慮義務違反の有無は、主に以下の2点から判断され、裁判でも争点となることが多いでしょう。

  1. 事故が発生することを予見できたか
  2. 予見できた場合に事故の発生を回避できたか

たとえば、学校事故の発生原因が生徒の不注意によるものであっても、これだけで学校側に安全配慮義務違反がなかったとは言い切れません。

生徒が以前から危険な行動を取っていたのであれば、学校側としては事故の発生を回避するための措置を講ずる必要があります。

事故の発生を回避するための措置とは、注意や指導、事故を招く危険性があることなどを生徒に説明することがあげられます。

このような措置を講ずることなく、生徒の危険な行動により学校事故が発生した場合、学校側に安全配慮義務違反が認められる可能性があるのです。

また、教師に不法行為責任が生じた場合(次項参照)、学校は「使用者責任(民法715条)」により損害賠償責任を負う可能性があります。

教師と損害賠償責任

教師についても、学校と同様、生徒に対して安全配慮義務を負っています。

そのため、教師が安全配慮義務に違反した結果、学校事故が発生して生徒が怪我を負った場合、教師は生徒に対し損害賠償責任を負う可能性があるのです。

また、教師が故意・過失により生徒に怪我をさせた場合、不法行為責任(民法709条)により損害賠償責任を負う可能性があります。

学校事故で失明した場合の損害賠償

学校事故で失明した場合において、学校側に安全配慮義務違反や不法行為が認められるときは、生徒側は学校側に対し損害賠償を請求することが可能です。

具体的には、以下の損害を受けたとして、学校側に損害賠償請求をすることになります。

(1)治療費・入通院交通費等

失明をした場合、一定の治療や入通院が必要となります。

これらに要する費用は、学校事故のために生徒側が負担を余儀なくされた費用であり、「積極損害」といいます。

そのため、治療費をはじめ入院費、通院に要した交通費を損害として請求することが可能です。

(2)逸失利益・休業損害

逸失利益

「逸失利益」とは、失明をしたことにより、本来得られるはずであった利益が得られなくなったという損害をいいます。

逸失利益は、将来的に得られるはずであった利益を損害として算定します。そのため、被害者の年齢が若ければ若いほど、逸失利益は高額になる傾向にあります。

逸失利益が認められるためには、失明により後遺障害が生じたことを明らかにする必要があることに注意してください。

休業損害

これに対し、「休業損害」とは、失明をしたことにより働くことができなくなり、その分だけ減ってしまった収入のことです。

学生であってもアルバイトをしていれば収入が存在するので、一定の条件を満たしていれば、休業損害を請求することができます。

(3)慰謝料

学校事故により生徒が失明した場合、本人やその両親が受ける精神的苦痛は計り知れません。

この場合、本人やその両親は精神的苦痛を受けたとして、学校側に慰謝料を請求することが可能です。

ここでいう慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、そして死亡慰謝料の3つの種類に分かれています。
学校事故で失明をした場合に請求できる慰謝料は、このうち「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」です。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、治療のために入通院を余儀なくされたことにより被った精神的苦痛への慰謝料のことをいいます。

入院期間や通院期間に応じて請求できる金額が決まります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は後遺障害が残ったことにより被った精神的苦痛への慰謝料です。
失明という後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害に該当すると認められた場合に請求が可能です。

慰謝料の金額は、後遺障害の等級の程度により異なります。

目の後遺症について確認すべきこと

後遺症の症状と後遺障害等級を確認しよう

学校事故により目を怪我した場合、後遺症としてその症状が残ってしまうことが少なくありません。

後遺症が残った場合において一定の条件を満たしていれば、生徒側は学校側に対し、後遺障害慰謝料を請求することができます。
しかし、請求するためには後遺症の症状が後遺障害に該当することを明らかにしなければなりません。

目に関する後遺症には以下で説明するような種類があり、後遺症の程度に応じておよその後遺障害等級を判断することが可能です。

視力に関する後遺症

学校事故により視力低下、失明といった症状が残ることが「視力に関する後遺症」の例です。

学校事故により失明してしまった場合、失明したのが両眼か片眼かで等級が異なります。

両眼を失明してしまった場合の後遺障害等級は、等級の中でも最も重い「第1級」です。

これに対し、片眼を失明してしまった場合の後遺障害等級は「第8級」とされています。
また、失明しなかった眼についても事故の影響で視力が低下した場合、「第2級~第7級」といったように症状に応じて等級が変動します。

調節機能に関する後遺症

調節機能とは、遠点から近点までの距離的範囲をレンズ(水晶体)で調節する機能のことをいいます。

事故により両眼に著しい調節機能障害が残った場合の後遺障害等級は「第11級」とされています。片眼にのみ著しい調節機能障害が残った場合の後遺障害等級は「第12級」です。

視野に関する後遺症

視野とは、眼の前の1点を見た時に同時に見える外界の広さのことです。

事故で従来より視野が狭くなった場合、視野に関する後遺症として認定されます。

具体的には、両眼において視野が狭くなった場合の後遺障害等級は「第9級」とされています。片眼において視野が狭くなった場合の後遺障害等級は「第13級」です。

後遺障害等級認定を受けよう

目に後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害に該当するものであるなら、後遺障害等級の認定を受けましょう。
後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することが可能となります。

学校事故の場合には、治療を行った医師に証明してもらったり、独立行政法人日本スポーツ振興センターからの認定を受けることが必要です。

後遺障害等級認定の方法や、認定を受けた際に請求できる内容について詳しく知りたい方は『学校の怪我で後遺症|慰謝料や逸失利益の計算と相場は?相手への請求方法も解説』の記事をご覧ください。

学校事故による失明は弁護士に相談

学校側の安全配慮義務違反によって失明してしまった場合、教師や学校に損害賠償請求が可能です。

学校事故は、災害共済給付を利用できれば一定の補償を受けられます。しかし失明という大きな怪我が生じていることから、請求できる金額は高額になりやすいため、正確な損害額の計算が欠かせません。

失明であれば「後遺障害等級認定」を受けることになるので、後遺障害に関する損害賠償金も適正に見積もる必要があります。

弁護士に相談して適切な損害賠償請求へ近づけよう

学校事故において失明した場合には、専門家である弁護士に相談を行うべきでしょう。

弁護士は損害の算定をしたうえで、学校側への損害賠償請求をするべきか、損害賠償請求はどのように行うべきか、損害賠償金はいくらになるかといった、今後の対応についてアドバイス可能です。

弁護士に正式に依頼した場合は学校側との交渉を一任できるので、ご家族はお子さんの付き添いに専念しやすくなるでしょう。

このように弁護士に相談する具体的なメリットは多数あります。関連記事『学校事故に遭ったら弁護士に相談しよう|メリットや無料法律相談を紹介』でも弁護士に相談・依頼するメリットを紹介していますので、併せてお読みください。

まずは無料相談を受ける

弁護士に相談するのであれば、無料の法律相談を受けることをおすすめします。
金銭的な負担もなく、今後行うべきこと、問題点の確認、依頼の必要性などを知ることが可能です。

学校事故で、失明という大きな後遺障害をお子さまが負ってしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。

法律相談の予約受付は24時間体制で行っているので、一度気軽にご連絡ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了