ケース別・ゴルフ会員権の相続税評価方法|時価の調べ方や売却も解説

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ゴルフ会員権の相続

「親がゴルフ好きで生前にゴルフ会員権を買った話を聞いたことがある」
「遺産整理をしていたら、ゴルフ会員権の証書があった」
「ゴルフ会員権は相場が落ちているから、価値なんてない?」

相続税の申告にあたり、ゴルフ会員権の扱いに疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、ゴルフ会員権の相続税評価方法やゴルフ会員権にかかる費用、相続にあたってどのように対処するのが適切か解説します。

ゴルフ会員権にも相続税はかかる

ゴルフに縁のない方は、ゴルフ会員権がどういったものかわからないのではないでしょうか。まずは、簡単にゴルフ会員権がどういったものか説明します。

そもそもゴルフ会員権とは

ゴルフ会員権とは、会員制のゴルフ場を利用できる権利(利用権)のことを指します。

ゴルフ会員権を所有している方は、プレーの際に会員料金として割引を受けたり、クラブ主催の競技会に参加できたりするなどのメリットがあります。

被相続人の方がゴルフ会員権を持っていたかは、以下の方法で確認してみましょう。

  • 遺品の中にゴルフ会員権の証書がないか探す
  • 預金通帳に年会費の引き落としがあるか見てみる
  • 郵便物やメールでゴルフ場から競技会の案内が来ているか確認する
  • 該当のゴルフ場に問い合わせをして確認する

ゴルフ会員権には相続税がかかる|例外もあり

ゴルフ会員権は、以下の場合を除き原則として相続税の課税対象です。

  • 該当のゴルフ場が倒産している場合
  • 取引相場がなく預託金の返還もない場合

そのため、相続する財産の中にゴルフ会員権がある場合には基本的に、相続税評価を行ったうえで相続税額を確認する必要があります。

バブル期には高いものですと1億円を超えることもあったゴルフ会員権ですが、今ではだいぶ値下がりしています。

それでも相続税の申告時にゴルフ会員権を漏らしていると、後からペナルティを受ける可能性があるので注意しましょう。

ゴルフ会員権の相続税評価方法は?図で簡単チェック

ゴルフ会員権の相続税を確認するには、まずその相続税評価方法を知る必要があります。相続税は、相続税評価額に対して課されるからです。

ゴルフ会員権の場合、相続税評価方法は「取引相場の有無」と「会員制の形態」、「預託金の返還の有無」によって決まります。

具体的な相続税評価方法は後ほど詳しく解説しますが、簡単に図にまとめると以下のとおりです。
取引相場や会員制の形態などについては、図の下で簡単に解説します。

ゴルフ会員権 相続税評価

取引相場とは

ゴルフ会員権は、売主と買主の間で売買取引されるケースがあります。この時の相場を、取引相場といいます。

ただし、ゴルフ場が取引を禁止しているなどの事情で取引ができないゴルフ会員権もあります。この場合、取引相場はありません。

会員制の形態とは

ゴルフ会員には、株主会員制と預託金制があります。

  • 株主会員制
    ゴルフ会員が優先プレー権だけでなく、ゴルフ場の株主総会や会員総会での議決権も持つ形態
  • 預託金制
    ゴルフ会員が優先プレー権だけを持つ形態

預託金の返還

預託金とは、ゴルフ会員になる際にゴルフ場に預けるお金です。このお金はゴルフ場の運営などに使われます。

一定期間後にゴルフ会員に「預託金返還請求権」が付与されることもあります。

取引相場のあるゴルフ会員権の相続税評価

まずは、取引相場のあるゴルフ会員権の相続税評価の方法を見ていきましょう。

基本は取引価格×70%|預託金がある場合は?

取引相場のあるゴルフ会員権の相続税評価方法は、次のとおりです。

相続税評価額=通常の取引価格×70%

ただし、取引価格に含まれない預託金がある場合は次のとおり。

預託金は通常、取引価格に含まれています。取引の際、預託金相当額を償還してもらう権利も一緒に取引されるからです。

ただし、預託金の中でも「入会預託金」は、売買のたびにゴルフ場から売主に返還され、新たな買主がゴルフ場に支払います。

よって、入会預託金がある場合は「取引相場に含まれない預託金がある」として相続税評価額を計算しましょう。

取引価格(時価)の調べ方は?いつの価格を使う?

ゴルフ会員権の取引価格は「ゴルフ会員権_相場」などと検索すると、ゴルフ会員権の取引業者のホームページなどで確認できます。

ゴルフ会員権の取引価格を調べる際のポイントとして、以下について詳しく見ておきましょう。

  • 売相場と買相場のいずれを使うか
  • いつ時点の相場を使うか
  • どの業者の相場を使うか

売相場と買相場のいずれを使うか

ゴルフ会員権の相続税評価額の計算では、仲値といわれる売相場と買相場の平均を、通常の取引価格として使用します。

たとえば、売相場が100万円で買相場が90万円である場合、平均となる95万円が通常の取引価格となります。

いつ時点の相場を使うか

ゴルフ会員権の取引相場は、原則として被相続人が亡くなった日(相続開始日)の相場とします。

しかし、ゴルフ会員権は上場株式のように日々の相場があるものではないですから、相続開始日時点の相場が不明な場合もあります。その場合には、相続開始日前後で最も近い日の相場により評価するのが妥当です。

どの業者の相場を使うか

ゴルフ会員権は業者によって相場の金額が異なります。この場合、任意に一番低い金額の業者の相場を用いることができます。

ただし、一部の業者の相場だけ著しく低いような場合、通常の取引価格と認められない可能性もあります。そのような場合には、他の業者の相場も加味した平均額で評価を行う方が良いでしょう。

取引相場のないゴルフ会員権の相続税評価

続いて、取引相場のないゴルフ会員権の相続税評価について、株主会員制の場合と預託金制の場合に分けて解説します。

株主会員制のゴルフ会員権

取引相場がない株主会員制のゴルフ会員権の評価方法は、以下の算式により計算します。

相続税評価額=株式価値+預託金の現在の価値

預託金がない場合には、「預託金の現在の価値」を加算する必要がないため、ゴルフ場の株式がそのままゴルフ会員権の価値となります。すなわち、ゴルフ場の株式の相続税評価額が、ゴルフ会員権の相続税評価額です。

なお、ゴルフ場の株式の評価方法は非上場株式と同じ考え方になります。

非上場株式の相続税評価額の調べ方について詳しく知りたい方は、関連記事『株式の相続税評価額はいくら?上場株式・非上場株式の調べ方と計算方法』をお読みください。

預託金制のゴルフ会員権

取引相場がない預託金制(返還あり)のゴルフ会員権の評価額は、以下の算式により計算します。

相続税評価額=預託金の現在の価値

算式を見てわかる通り、取引相場がなく預託金の返還がある会員権の場合は、返還される預託金の現在の価値がそのまま相続税評価額になります。

なお、先述のとおり取引相場がなく、株式も預託金の返還もない場合には、相続税評価は不要です。相続税は課税されず、相続税申告時にも計上する必要はありません。

プレー権のみのゴルフ会員権も、相続財産としての価値はないため、相続税の課税対象ではありません。

相続税の相続税の無料相談

ゴルフ会員権の相続税評価についてよくある質問

ゴルフ場会員権の相続税評価について、以下の点についてもお答えしていきます。

  • ゴルフ会員権の相続で発生する相続税以外のコストは?
  • 名義書換料は相続財産から控除できる?
  • 経営破綻したゴルフ場の会員権の相続税評価額は?

ゴルフ会員権の相続で発生する相続税以外のコストは?

ゴルフ会員権は、購入時に入会金などを支払うほか、保有しているだけでもかかる費用や名義変更の際にかかる費用があります。

ゴルフ会員権を相続後、保持し続けるかどうかは、こうしたコストも考慮して検討してみてください。

年会費

購入時の会員権代金とは別に毎年年会費がかかります。相続により会員が亡くなった場合でも、以下の名義変更の手続きをしなければ故人の名前のまま年会費の請求が届きます。

平均で2万円〜5万円程度ですが、高いと年間20万円以上かかるゴルフ場もあります。

名義書換料

相続により会員が亡くなった場合や、売買により名義人が変更になった場合に名義変更のためにゴルフ場に支払う手数料です。

通常10万円〜100万円程度かかることがあります。

取引手数料

ゴルフ会員権の取引業者を通じてゴルフ会員権を売却する場合にかかる手数料です。ゴルフ会員権の売買を仲介する業者に支払いますが、取引金額に応じて手数料も高くなるのが一般的です。

最低でも数万円はかかることが多いです。

名義変更でかかる名義書換料は、相続財産から控除できる?

名義書換料を相続税評価額から控除することはできません。

「名義書換料」とは、ゴルフ会員権の名義を被相続人から相続人に変更する際にかかる手数料です。

例えば名義書換料が100万円かかったとすると、名義書換料の分、会員権の売却金額は目減りします。しかし、名義書換料を相続税評価額から控除することはできないのです。

経営破綻したゴルフ場の会員権の相続税評価額は?

経営破綻によりゴルフ会員権の売買やプレーができず、預託金の返還を受けられない場合であれば、ゴルフ会員権の相続税評価額は「0」になります。

しかし、ゴルフ場が経営破綻した際に他の運営会社が引き継いでいる場合は、新たな運営会社から預託金の返還を受けられることがあります。

もし後日、預託金が返還されることになった場合には、相続税の修正申告が必要です。

本当に預託金が戻らないのか、詳しいところはゴルフ場やその運営会社に直接確認したほうが確実です。

ゴルフ会員権を相続したあとにすること

ゴルフ会員権を相続した後に取るべき行動は、相続人がゴルフ会員権を所有して引き続き利用する場合と、売却して現金化する場合とで異なります。

相続人が引き続き会員権を利用する場合|名義変更をする

相続人が相続したゴルフ会員権を利用するためには、「名義書換手続き」を行う必要があります。

名義書換手続きとは、ゴルフ会員権の名義を被相続人から相続人に変更する手続きのことです。

名義書換手続きには、以下のような書類が必要になります。詳細は、ゴルフクラブにお問い合わせください。

  • ゴルフクラブが指定する名義書換申請書
  • ゴルフ会員権(ゴルフクラブの会員証)
  • 戸籍謄本または除籍謄本(相続人全員の名前が記載されているもの)
  • ゴルフ会員権の相続人であることがわかる書類(遺産分割協議書や遺言書など)
  • 相続人全員の印鑑登録証明書

必要書類を提出すると、相続人に対するゴルフクラブの入会審査が行われます。

入会審査の基準は年齢や他クラブへの在籍状況、クラブ在籍者からの紹介の有無などが一般的です。なお、ゴルフクラブによっては相続の名義書換手続きの場合、審査が免除されることもあります。

入会審査を無事通過すると、ゴルフクラブに名義書換の手数料として、「名義書換料」を支払う必要があります。名義書換料は高額だと、100万円以上かかることもあるため、引き続き会員権を利用したい場合には、慎重に検討してください。

相続人がゴルフをプレーしない場合|売却をする

相続したゴルフ会員権の売却には、「売却前に一度名義書換手続きが必要なケース」と、「名義書換手続きせずに売却できるケース」があります。

よって、まずは相続したゴルフ会員権を売却する前に、名義書換手続きが必要かどうかゴルフクラブに確認を行いましょう。

なお、ゴルフ会員権の売却で利益が出た場合は、譲渡所得税が課されます。

ただし、相続開始日の翌日3年10か月を経過する日までにゴルフ会員権を売却した場合は、「相続税の取得費加算の特例」の適用が可能です。

これにより、すでに納めた相続税の一部を取得費に加算でき、結果的に譲渡所得税額を軽減させられます。

相続税の取得費加算の特例について詳しく知りたい方は、国税庁『相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』をお読みください。

ゴルフ会員権の売却はタイミングが重要

ゴルフ会員権を売却する際は、市場の相場を必ず確認しましょう。

ゴルフ会員権は相場が頻繁に変動するため、売却のタイミングが重要です。あくまで一般論ですが、ゴルフのトップシーズンである「春と秋」は買い希望が増加し、高値で売れることが多いです。

相場情報は各取引業者の相場表やインターネット上の取引情報で確認できます。

相続人は会員権を利用しないが売却できない場合|償還してもらう

相続人にゴルフ会員権を利用する意思がなく、預託金制のゴルフ会員権の売却が困難な場合、「償還」という選択肢があります。

償還とは、会員権をゴルフ場に返却し、預託金の返還を受ける手続きです。

市場価格が預託金を下回る場合や、市場での売却が難しい状況では、償還を検討してみてください。

ただし、ゴルフ場の経営悪化や償還希望者の増加により、預託金返還を拒否されてしまうこともあります。償還を検討する際は、事前にゴルフ場に返還が可能かどうかを確認することが重要です。

相続税の相続税の無料相談

ゴルフ会員権の相続税評価が難しい場合はどうする?

ご自身でゴルフ会員権の相続税評価を行うのが難しい場合、以下の2つの対処法があります。

  • ゴルフ会員権の時価評価サービスを利用する
  • 相続税に強い税理士に依頼する

ゴルフ会員権の時価評価サービスを利用する

ゴルフ会員権の相続税評価が難しい場合は、「ゴルフ会員権の時価評価サービス」の利用がおすすめです。

ゴルフ会員権の時価評価サービスとは、「日本ゴルフ同友会」などがおこなっている、ゴルフ会員権の時価(相続税評価額)を調査し、評価証明書を発行してくれるサービスです。

なお、サービスの利用(評価証明書の発行)には手数料がかかります。日本ゴルフ同友会の場合は、以下の金額が必要です。

対象項目手数料
評価証明書発行(リストファイル付き) 1枚5,500円(税込)
評価証明書発行(リストファイルなし) 1枚3,300円(税込)
評価算定リストファイルのみ 1枚3,300円(税込)
日本ゴルフ同友会HPより引用

相続税に強い税理士に依頼する

相続税に強い税理士に依頼することも一つの選択肢です。

税理士には、財産の相続税評価を正しい評価のみではなく、相続税申告そのものを丸ごと依頼することも可能です。

相続税評価だけではなく相続税申告全体に不安がある方や、効果的な相続税対策が知りたい方は、ぜひ一度、相続税に強い税理士にご相談ください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

全国/電話相談可能

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