相続税申告の疑問は税務署で無料相談|相談できることや相談方法を解説
税務署では、相続税の申告に関する無料相談を電話または窓口で受け付けています。
ただし、税務署で相談できるのは、相続税申告書の書き方や申告方法など、一般的な内容に限ります。
節税や相続人同士のトラブルに関する相談がしたい場合には、税理士や弁護士などの専門家に依頼しましょう。
この記事では、相続税申告に関して税務署に相談できることとできないこと、相談するまでの手順を解説します。
税務署への相談を決めた方に、事前に知っておいてもらいたい注意点も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
目次
税務署に相談できること
まずは相続税申告に関して、税務署で相談できる内容を紹介します。以下の内容で悩んでいる方は、一度税務署への無料相談を検討してみてください。
相続税申告書の書き方
税務署では相続税申告書の書き方を教えてもらうことができます。
ご自身で相続税申告書を作成しており、各項目の意味や記入方法がわからず困っている方は、税務署への相談で解決するかもしれません。
なお、書き方を聞くことはできますが、代わりに相続税申告書を作成してもらうことや、申告書に記入する金額の計算をしてもらうことはできないため注意しましょう。
必要書類の書き方・集め方
相続税申告には、相続税申告書以外にも必要な書類が多くあります。
税務署では、相続税申告にどんな書類が必要か、どこで入手できるかなどを聞くことができます。
相続した土地の路線価の調べ方
税務署では、相続した土地の路線価を調べることができます。
路線価とは国税庁が定めた、道路に接する標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことで、相続した土地の相続税評価額を算出するときに使用します。
路線価は国税庁のホームページにある路線価図から調べられますが、「路線価の調べ方がわからない、調べてみたが自信がない」という相談が税務署には多く寄せられるそうです。
税務署には地番で住居表示を調べられる「ブルーマップ」という地図があり、相談者はブルーマップを使って相続する土地の路線価を調べられます。
控除制度の解説
税務署では基礎控除や配偶者の税額軽減など、各控除制度の解説や適用要件を聞くことができます。
ただし、相談者の状況で適用できるかどうか教えてもらうことはできず、相談者が適用することで税負担を軽減できる制度があっても、積極的に提案してもらえるわけではありません。
その他一般的な質問
前述した内容以外にも、相続税の計算方法や申告の流れなど、一般的な相続税のルールや基礎知識を聞くことができます。
ただし、相続税を計算してもらうことや、申告手続きを手伝ってもらうことはできません。
あくまでも、やり方を聞くことができるだけで、代わりにやってもらうことはできないのです。もし相続税申告を依頼したい場合は、相続税に強い税理士への相談をおすすめします。
税務署に相談できないこと
次に、相続税申告に関して、税務署では相談できないことを紹介します。もしも以下の内容について不安がある場合には、税理士などほかの専門家への相談を検討しましょう。
相続税対策・節税について
税務署では、相続税対策や節税に関する相談をすることはできません。
税務署の役割は、税金の適正な申告のサポートであって、節税に関するアドバイスは本来の業務ではないからです。
遺産分割協議に関する内容
税務署では相続税が安く抑えられる遺産分割方法や、遺産分割で揉めてしまったときの解決方法に関するアドバイスを受けることはできません。
税務署が遺産分割や相続争いに関して、法的な判断や見解を示すことはありません。
税務署への相談方法は2種類ある|手順を解説
相続税申告について税務署に相談する方法には、電話相談と窓口相談があります。
よくある一般的な税金の疑問については、国税庁ホームページ『タックスアンサー』で調べられます。タックスアンサーで解決することもあるので、ご相談の前に一度確認してみてください。
以下で、電話相談と窓口相談それぞれの方法について詳しく解説します。
電話で相談する方法
国税に関する一般的な相談は、「国税局電話相談センター」に電話をかければ、国税局の職員が回答してくれます。
相談は無料で何度でも、匿名で利用できます。
【電話相談の流れ】
- 所轄の税務署(※)に電話をかける
- 自動音声案内に従い「1」を選択する
- 相続税の相談をする場合は「3」を選択すると、国税局の職員につながる
※「所轄の税務署」とは、被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署です。
所轄の税務署の電話番号は、国税ホームページの『税務署の所在地などを知りたい方』から調べられます。
電話相談は、制度や法令の適用など一般的な相談をする場合に適しています。
ただし電話でのやりとりなので、書類を示しながら個別具体的な相談をしたいというケースには不向きでしょう。
税務署の窓口で相談する方法
相続税申告について、より具体的な相談をしたい方は、税務署の窓口相談がおすすめです。
窓口相談では、税務署職員と対面で相談ができます。
窓口相談も無料で何度でも利用できます。ただし、窓口相談の利用には予約が必要ですので、以下で予約方法を解説します。
【窓口相談予約の流れ】
- 所轄の税務署(※)に電話をかける
- 自動音声案内に従い「2」を選択する
- その後、税務署につながったら、相談の予約がしたい旨、氏名・住所・相談内容等を伝える
※「所轄の税務署」とは、被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署です。
所轄の税務署の電話番号は、国税ホームページの『税務署の所在地などを知りたい方』から調べられます。
原則は所轄の税務署で相談を行いますが、相続人が遠方に居住している場合は、最寄りの税務署での相談も可能です。
窓口相談では、自分で作成した相続税申告書の中で分からない箇所を質問するなど、個別具体的な相談ができます。
なお、国税庁や国税局の庁舎には、対面で相談できる窓口はないので注意してください。
税務署へ相続税申告の相談をするときの注意点
相続税申告の手続きを代行してもらうことはできない
前述したように、税務署での相談はあくまでもやり方や知識を教えてもらう場です。
相続税申告書を作成してもらったり、申告手続きを代行してもらったりすることはできません。
相談できるのは平日の昼間のみ
税務署や国税局電話相談センターの受付時間は平日の昼間のみです。
具体的には、受付時間が平日の8時30分~17時00分となっており、土日祝日および12月29日~1月3日は対応していません。
そのため、平日の昼間は仕事で時間が取れない場合などは、相談のタイミングが合わない可能性があります。
1~3月は相談の予約が取りにくい
1〜3月は確定申告のシーズンなので、電話相談がつながりにくかったり、窓口相談の予約が取りづらかったりするおそれがあります。
相続税の申告期限が1〜3月で、確定申告のシーズンと重なる場合は、なるべく早めに相談しておきましょう。
なお、相続税の申告期限は、相続開始を知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月後です。
関連記事
相続税の申告期限が過ぎたらどうなる?間に合わないときの対応を解説
税務署の回答が間違っていることがある
税務署への相談の担当者は、税務署または国税庁の職員です。税理士資格を持っているわけでも、相続税申告の実務経験が豊富なわけでもありません。
そのため、相談に対する回答に誤りがある可能性も考えられます。
また、相談内容をもとにおこなった相続税申告にミスがあったとしても税務署は責任を取ってくれません。したがって、相続する財産が高額になる場合や、判断が難しい内容を相談したい場合は、税理士に依頼することをおすすめします。
相続税申告の相談ができる専門家
税務署以外で、相続税申告の相談ができる専門家は以下のとおりです。
【相続税申告の相談ができる専門家】
- 税理士|申告の代行、節税の相談等
- 弁護士|相続人同士のトラブル等
- 司法書士|土地の名義変更手続き等
- 行政書士|申告に必要な書類作成等
以下でそれぞれの専門家に相談・依頼できる内容を紹介します。
税理士に相談・依頼できる内容
- 相続税の申告手続きの代行
- 相続税の節税に関する相談
- 生前贈与を活用した節税の相談
- 税務調査への対応・立ち合い
- 相続税の還付請求(更正の請求)
- 相続人、相続財産の調査
弁護士に相談・依頼できる内容
- 遺産分割・遺言書のトラブルの代理人
- 相続人の遺産隠しの調査
- 相続放棄の手続き代行
- 相続人、相続財産の調査
司法書士に相談・依頼できる内容
- 不動産の名義変更、登記手続きの代行
- 預貯金の解約や株式の名義変更の代行
- 家族信託に関する相談
- 相続放棄の書類作成
- 相続人、相続財産の調査
行政書士に相談・依頼できる内容
- 遺産分割協議書の作成
- 戸籍の取り寄せ
- 自動車の名義変更の代行
- 預貯金の解約
- 相続人、相続財産の調査
相続税申告の悩みをどの専門家に相談するか迷っている場合は、関連記事『相続税の専門家と依頼できる内容を紹介|誰に相談すべきか一目でわかる』もあわせてお読みください。相談・依頼にかかる費用も踏まえて、各専門家に依頼すべきケースを解説しています。
相続税申告の相談先についてよくある質問にお答え
税務署への相談は危険って本当?デメリットはある?
インターネット上では「相続税申告の相談を税務署にするのは危ない」という文言をよく見かけます。
しかし結論からいうと、税務署への相談自体に危険性はまったくありません。
税務署に騙されて相続税を多くとられてしまうことや、相談することで税務調査の対象として目を付けられることは一切ないのでご安心ください。
ではなぜ税務署への相談は危険だと思われているのでしょうか。
それは、前述したように相続税の節税に関する相談ができないことや、専門知識を有していない担当者が相談にあたることから、専門的なアドバイスを受けられないことが原因だと思われます。
「税理士に相談すれば適用できた控除を、税務署に相談したばかりに適用できず、相続税を多く払ってしまった=税務署へ相談すると損をしてしまう」というロジックがはたらいているのでしょう。
相続税申告の基礎知識や、事務的な手続きについての相談は税務署へ、相続税を安く抑えるための相続税対策の相談は税理士へと、それぞれを適材適所で利用すれば問題ありません。
どのくらいの人が税理士に相談している?
令和4年度の相続税の税理士関与割合は85.9%となっています。(財務省『令和4事務年度国税庁実績評価書』より)。
すなわち、相続税申告した人の約85%が税理士に依頼していることがわかります。
相続税申告は難易度が高く、税理士に依頼する人が非常に多いですが、裏を返せば約15%の人は自分で相続税申告をしていることになります。
相続する財産の評価が複雑ではなく、時間に余裕のあれば、税務署の無料相談を利用しながらご自身で相続税申告を行うことは十分可能です。
自分で相続税申告ができるかどうか、判断材料を知りたいという方は、関連記事『相続税申告の手引き|申告の要否、申告の流れを税理士が解説』をお読みください。自分で相続税申告ができるかどうかの判断基準を4つ紹介しています。
相続税申告に関する相談先は内容によって決める
相続税申告に関する相談先は、相談したい内容によって決めましょう。
相続税が発生しないか、発生しても少額にとどまると予想されるケースでは、まず税務署の無料相談を活用することをおすすめします。
一方で相続税額が多額になってしまい、節税が必要な方は、きめ細やかなサポートが受けられる相続税に強い税理士に相談するのがおすすめです。
また、相続税申告にあてる時間がない方や、自分で申告手続きを行うことに不安がある方も、ぜひ税理士にご依頼ください。
監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士