国債の相続税評価|個人向け国債など種類別の計算方法と非課税の有無

国債は相続税の課税対象です。ただし、国債に適用される非課税枠はありません。
国債には主に「個人向け国債」「利付国債」「割引国債」があり、それぞれ相続税評価の方法が異なります。
この記事では、国債の種類ごとの相続税評価額の計算方法を具体的な例を交えて解説します。相続税の申告手続きの概要についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
国債にも相続税はかかる
国債は、相続財産として相続税の課税対象になります。
現金や預金、不動産と同様に、国債も「金銭的価値のある資産」として扱われるため、相続財産に含める必要があるのです。
まずは「相続税は評価額から計算する」「国債には主に3つの種類がある」ということを解説していきます。
相続税は「評価額」から計算する
相続税の計算は、各財産の「評価額(相続税評価額)」をもとに行います。
相続税評価額とは、「その財産をいくらとして相続税を計算するか」を示したものです。
相続税評価額は、必ずしも「その財産を購入した際の価格」や「相続が発生した時点でのその財産の市場価格」になるとは限りません。
財産ごとに相続税評価額の算定方法が決められています。
国債についても同様で、必ずしも「国債を購入した時の価格」「相続開始時の国債の価格」が相続税評価額になるとは限らないため、注意が必要です。
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国債は主に3種類|評価額の算定方法も違う
国債と一口にいっても、実際にはいくつかの種類があり、それぞれ仕組みや利息の付き方が異なります。
代表的なものとしては、以下の3種類が挙げられます。
- 個人向け国債
- 利付国債
- 割引国債
それぞれの特徴は次のとおりです。
個人向け国債
個人投資家向けに発行される国債で、変動金利型(10年)や固定金利型(5年・3年)などの種類があります。
半年ごとに利息が支払われ、10年・5年・3年の満期を迎えると、国から元本が償還されます。個人向け国債は金融商品取引所に上場されていないため、市場で売買することはできず、換金する場合は原則として中途換金制度を利用します。
なお、中途換金は原則として発行から1年が経過すれば可能ですが、相続の場合は例外として1年未満でも中途換金できます。
利付国債
あらかじめ定められた利率に基づき、半年ごとに利息(クーポン)が支払われる国債です。
市場で売買されるため価格は日々変動しますが、相続税評価では財産評価基本通達に基づき、相続開始時の価格や既経過利息などをもとに評価します。
利付国債は市場で売買できる国債であり、個人向け国債とは相続税評価の方法が異なります。
割引国債
利息の支払いがない代わりに、額面よりも低い価格で発行され、満期時に額面金額で償還される国債です。購入時と償還時の差額が実質的な利息にあたります。
このような仕組みのため、相続時の評価においても利付国債とは異なる計算方法が用いられます。
国債の相続税評価の計算方法
国債の相続税評価額は、その種類によって計算方法が異なります。
いずれの場合も、評価の根拠となるのは国税庁が定める「財産評価基本通達」です。国債は金融資産として、この通達に基づいた評価ルールに従って相続税評価額を算出します。
ここでは、代表的な3種類の国債について、それぞれの評価方法を見ていきましょう。
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個人向け国債の評価方法
個人向け国債の相続税評価額は、相続開始日に中途換金した場合の受取額をもとに算出します。
計算式は以下のとおりです。
個人向け国債の評価額
評価額=額面金額+経過利子相当額−中途換金調整額
各項目の意味は以下のとおりです。
- 額面金額:保有している元本
- 経過利子相当額:直近の利払日から相続開始日までに発生した利息
- 中途換金調整額:中途換金時に差し引かれる調整額
なお、中途換金調整額は、発行から1年以上経過しているかどうかなどによって計算方法が異なります。
利付国債の評価方法
利付国債は、課税時期における最終価格等と既経過利息を基に評価します。
利付国債の評価額
評価額=(課税時期における最終価格+源泉所得税控除後の既経過利息)×券面額÷100
※売買参考統計値が公表されている上場銘柄は、最終価格と平均値のうち低い方を用います。
各用語の意味は以下のとおりです。
- 課税時期における最終価格:相続開始日における国債の価格(額面100円当たり)
- 既経過利息:前回の利払日から相続開始日までに発生した利息
- 源泉所得税控除後:既経過利息から税金を差し引いた後の金額
割引国債の評価方法
割引国債は、利息の支払いがない代わりに、額面より低い価格で発行され、満期時に額面金額で償還される国債です。
既経過利息がないため、相続税評価では課税時期の最終価格を基に評価します。なお、差益金額に係る源泉所得税相当額がある場合は、源泉所得税相当額を控除します。
課税時期の最終価格は額面100円当たりの単価で表示されるため、国債全体の評価額を算出する際は「最終価格×券面額÷100」で計算します。
割引国債の評価額
評価額=課税時期の最終価格×券面額÷100
※なお、差益金額に係る源泉所得税相当額がある場合はこれを控除する
価格の確認は、証券会社や金融機関から、相続手続用の残高証明書や評価額が確認できる資料を取得するのが一般的です。
国債に相続税の非課税はある?
結論からいうと、国債そのものを非課税とする特別な制度はありません。
ただし、相続税には国債に限らず適用できる一般的な控除・特例があるため、それらを適用することで相続税がかからなかったり、少なくなったりすることがあります。
代表的なものとしては「基礎控除」があり、国債を含む相続財産の課税対象額が基礎控除以内であれば相続税はかかりません。
相続税の基礎控除
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 養子がいる場合、実子がいれば1人まで、いなければ2人まで法定相続人の数に含められます
他にも相続税の控除・特例には様々なものがあり、例を挙げると以下の通りです。
- 配偶者の税額軽減
相続財産の課税対象額が1億6,000万円または法定相続分の高いほうまで相続税がかからない - 未成年者控除
相続開始時から18歳に達するまでの年数(1年未満切上げ)×10万円が相続税額から控除され、控除しきれなかった金額は扶養義務者の相続税額から控除できる - 障害者控除
相続開始時から85歳に達するまでの年数に応じた額(一般障害者:10万円、特別障害者:20万円)が相続税額から控除され、控除しきれなかった金額は扶養義務者の相続税額から控除できる
なお、相続税がかからない場合でも、申告が必要になるケースがある点には留意が必要です。
たとえば、配偶者の税額軽減を適用する場合は、税額がゼロであっても申告が必要になります。
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国債の相続税申告の方法・手続き
国債の相続方法は主に2つ
国債は、基本的には名義変更か中途解約といった形で相続します。
なお、どちらを選んでも相続税評価額の算定方法は同じなので、相続後に売却したかどうかは相続税額には影響しません。
名義変更(相続人がそのまま保有する)
国債を国債のまま相続する場合には、相続人名義に変更して引き継ぎます。引き続き利息を受け取りながら保有を続けられる点がメリットです。
名義変更をする際には、証券会社や金融機関で相続手続きを行い、口座の名義変更(移管)を行います。
中途解約(換金して現金化する)
相続した国債を解約し、現金として受け取る方法です。
ただし、個人向け国債の場合は、中途解約で換金する際に「中途換金調整額」が差し引かれます。
そのため、名義変更をして満期まで保有する場合とどちらが良いのかは慎重に判断しましょう。
申告に必要な書類・情報
国債の相続税申告にあたっては、主に以下の書類・情報を準備します。
- 被相続人が保有していた国債の内容がわかる書類(残高証明書など)
- 課税時期(相続開始日)における評価額の証明書類(価格・既経過利息・中途換金価格などを含む)
これらの書類は、国債を保有していた証券会社や金融機関に依頼することで取得できます。
特に重要なのが評価証明書類で、相続開始日時点の価格や経過利息などが記載されており、そのまま申告書に反映できるため、実務上も重要な資料です。
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申告期限
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。通常は死亡日の翌日から10か月以内と考えて差し支えありません。
期限を過ぎると、延滞税や加算税などのペナルティが発生する可能性があるため、国債を含む金融資産についても早めに残高確認や証明書の取得を進めることが重要です。
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国債の相続税評価についてよくある質問
Q. 国債の相続税評価はどこで確認できる?
国債の相続税評価額は、口座のある証券会社や金融機関に確認できます。個人向け国債は、財務省の中途換金シミュレーションでも概算を試算できます。
Q. 国債は名義変更と中途換金どちらがお得?
どちらを選んでも相続税評価額は変わりません。
個人向け国債を中途換金する場合は中途換金調整額が差し引かれるため、資金が必要か、保有を続けるかなどを踏まえて判断するとよいでしょう。
Q. 相続した国債はいつまでに手続きすればいい?
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。
国債の名義変更や中途換金の手続きも、この期限を意識して進めるとよいでしょう。
まとめ|国債の相続税は評価方法と申告手続きの理解が重要
国債は預貯金や株式と同様に相続税の課税対象となり、相続開始時点の評価額をもとに申告します。
評価方法は「個人向け国債」「利付国債」「割引国債」で異なり、それぞれ中途換金価格や時価、既経過利息などを考慮して算出する必要があります。
なお、国債自体に非課税制度はありませんが、基礎控除や配偶者の税額軽減などにより、相続税がかからないケースもあります。
実務では金融機関の評価証明を活用し、早めに必要書類を準備して申告期限に遅れないよう進めることが重要です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
