仏壇・仏具の相続税は原則非課税|課税されるケースと節税目的の購入時の注意点

仏壇・仏具は、日常礼拝の用に供していれば、金のおりんなど金製や高価なものでも、原則として相続税がかからない非課税財産です。
非課税かどうかは、価格や素材ではなく、日常礼拝に使っているか、骨董品・投資の対象・商品として所有していないかで判断されます。反対に、骨董品として価値がある仏像、資産として保管している金製の仏具、仏具店の在庫、礼拝の実態がない仏壇・仏具は、課税対象になることがあります。課税対象になる場合は、相続開始時点の時価で評価し、課税価格に含めて申告します。
また、節税を目的に生前に購入しても、礼拝に使わず資産として持っているとみなされる場合は、非課税になりません。なお、生前に購入した非課税の仏壇・仏具の、ローンなど未払い分は、債務控除の対象にならない点に注意が必要です。
この記事では、非課税の根拠、非課税になる仏壇・仏具と課税対象になる仏壇・仏具の違い、金のおりん・金の仏具の判断基準と評価方法、生前に購入するときの注意点、申告実務までを解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
仏壇・仏具は相続税が原則かからない非課税財産
仏壇・仏具が非課税となる根拠|相続税法基本通達12-2
仏壇や仏具など祖先を祭るための財産は、相続税の非課税財産の対象とされています。
具体的には、以下のように記されています。
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
相続税法第12条1項2号
(省略)
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
また、「これらに準ずるもの」は、仏壇・位牌・仏像・仏具など日常礼拝の用に供しているものが該当し、商品・骨董品・投資の対象として所有するものは含まれません(相続税法基本通達12-2)。
仏壇・位牌・仏像・おりんなどの仏具は、この通達にいう仏具に当たるため、国税庁でも「相続税のかからない財産」として挙げられています。
仏壇・仏具に相続税がかからない理由
仏壇・仏具が非課税とされているのは、これらが宗教的・精神的な意義を持つ財産であるためです。
先祖を祀り、日常的に礼拝の用に供するものを金銭的に評価して課税することは、国民感情や宗教的慣習に馴染まないという考え方が背景にあります。
このように、非課税とされるのは「日常礼拝の用に供されるもの」であることが大前提です。
この前提が崩れると課税対象になることがあるので、すべての仏壇・仏具が必ずしも非課税財産となるわけではない点に注意が必要です。
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高価な仏壇・仏具でも非課税になる?
価格が高い仏壇・仏具でも、日常礼拝の用に供していれば、原則として相続税は非課税になります。
非課税になるかどうかは、価格ではなく使い方と所有の目的で判断されるためです。
ただし、骨董品・投資の対象・商品として所有しているものは課税されることがあります。詳しくは後述します。
仏壇・仏具の購入代金に関する注意点|未払代金は債務控除できない
相続税の計算において債務控除の対象となるのは、原則として「被相続人が亡くなったときに現に存在した確実な債務」に限られます。ただし、確実な債務であっても、非課税財産に関する未払金は控除の対象外となります。
日常礼拝の用に供している仏壇や仏具は、相続税法上「非課税財産」に該当します。そのため、これらの購入代金が未払いであっても非課税財産に関する債務とみなされ、債務控除として遺産総額から差し引くことはできません(国税庁タックスアンサーNo.4126)。
たとえば、被相続人が生前に仏壇を分割払いで購入し、相続開始時に代金が残っていたとしても、その残額を遺産総額からマイナスすることはできません。なお、墓地や墓石などのお墓に関する未払代金についても同様の扱いとなります。
購入時期による扱いの違い
| 購入時期 | 相続税の取扱い | 未払代金の債務控除 |
|---|---|---|
| 生前に購入 (被相続人が購入) | 非課税 ※日常礼拝の用に供するもの | できない |
| 相続後に購入 (相続人が購入) | 購入した仏壇・仏具自体は 相続税の計算に含めない | 対象外 |
相続税の非課税対象になる仏壇・仏具
相続税が非課税になる仏壇・仏具の判断基準
相続税法基本通達12-2に基づき、原則として、以下の2点を満たす仏壇や仏具等が、相続税の非課税対象になります。
- 日常礼拝の用に供している
- 商品・骨董品・投資の対象として所有していない
相続税が非課税になる仏壇・仏具の具体例
具体的には以下のようなものが相続税の非課税対象になります。
- 仏壇
- 位牌
- おりん
- 線香立て・燭台・花立てなどの仏具一式
- 数珠
仏壇・仏具のほか、神棚・神具・庭内神祠なども、日常礼拝の用に供していれば同様に非課税として扱われます(相続税法基本通達12-2)。
なお、仏間については建物の一部であるため、祭祀財産には該当しません。
相続税の課税対象になる仏壇・仏具など
相続税の課税対象になる仏壇・仏具の判断基準
仏壇・仏具であっても、次のようなものは非課税の対象に含まれず、相続税の課税対象になることがあります(相続税法基本通達12-2)。
- 骨董品として所有しているもの
- 投資の対象として所有しているもの
- 商品として所有しているもの
- 日常礼拝の用に供していないもの
判断のポイントは、どのように使い、何の目的で所有しているかです。それぞれ順に見ていきましょう。
相続税の課税対象になる仏壇・仏具の具体例
(1)骨董品として所有しているもの
歴史的・美術的な価値があり、骨董品として取引されるような古い仏像や仏画などは、非課税の対象に含まれません。国税庁のタックスアンサーNo.4108でも、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものには相続税がかかるとされています。
日常礼拝に使っていた場合でも、骨董品や投資の対象として所有していると認められるものは、課税対象になります。
(2)投資の対象として所有している仏具
資産として保有することが目的とみなされる仏具は、投資の対象として所有するものにあたり、非課税の対象になりません。
たとえば、素材そのものに高い資産価値がある純金製の仏具が、礼拝に使われず金庫などに保管されているだけの場合は、投資の対象とみなされるおそれがあります。金製の仏具については、後述します。
(3)商品(事業在庫)として所有している仏具
仏具店や仏壇店などを営んでいた被相続人が、販売するために持っていた仏壇・仏具(在庫)は、「商品」として所有するものにあたり、非課税の対象になりません。
同じ仏壇・仏具でも、自宅で礼拝に使っているものと、店頭の在庫とでは扱いが分かれます。
(4)日常礼拝の実態がない仏壇・仏具
非課税となるには「日常礼拝の用に供している」ことが必要です。そのため、形式的に仏壇を設置しただけの場合や、保管・展示が目的で礼拝に使われていない場合は、非課税として扱われないおそれがあります。
礼拝の実態については、購入や支払いの状況などから確認されることがあります。
仏壇・仏具に相続税がかかる場合の評価方法
課税対象になる仏壇・仏具は、相続開始時点の時価で評価します(相続税法22条)。評価方法は、仏壇・仏具の区分によって次のように異なります。
骨董品として価値がある仏像や仏画などは、売買実例価額や精通者意見価格などを参酌して評価します(財産評価基本通達135)。必要に応じて査定や鑑定を受ける場合もあります。
仏具店などが商品として持つ在庫は、たな卸商品等として評価します(財産評価基本通達133)。
投資の対象として所有している仏具や日常礼拝の実態がない仏壇・仏具などは、一般動産として、売買実例価額や精通者意見価格などを参酌して評価します(財産評価基本通達129)。
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金の仏具(おりん等)に相続税はかかる?
金製の仏具でも日常礼拝に使っていれば原則非課税
金製の仏具(おりん等)も、日常礼拝の用に供していれば、原則として非課税です。
相続税法基本通達12-2は、非課税となる仏具を日常礼拝の用に供しているものとし、商品・骨董品・投資の対象として所有するものを除いています。素材や価格は要件に入っていないため、金製であることだけを理由に課税されるわけではありません。
プラチナなど、金以外の高価な素材の仏具も、同じ基準で判断されます。
ただし、礼拝に使われず資産として保管されている金製の仏具は、投資の対象として所有するものとみなされ、課税対象になることがあります。どのようなケースが該当するかは、次で説明します。
金の仏具(おりん等)が課税対象になるケース
金のおりんや金の仏具が課税対象になりやすいのは、日常礼拝に使われておらず、投資の対象として所有しているとみなされる場合です(相続税法基本通達12-2)。
- 礼拝に使われず、金庫や保管ケースに収納されているだけの場合
- 純金製のおりんなど、素材そのものの資産価値が高く、資産として保有する目的が明らかな場合
判断の目安は、次のとおりです。
| 判断要素 | 非課税寄り | 課税寄り |
|---|---|---|
| 使用の実態 | 日常的に礼拝で使用している | 礼拝に使われていない |
| 保管の状況 | 仏壇の前などに設置されている | 金庫や保管ケースに収納されている |
| 所有の目的 | 礼拝のために所有している | 資産として保有・管理している |
これらはあくまで目安で、個別の事情によって判断が異なります。
相続税がかかる場合の金の仏具(おりん等)の評価方法
課税対象になる金のおりんや金の仏具は、相続開始時点の時価で評価します(相続税法22条)。
仏具のような一般動産は、原則として、売買実例価額や精通者意見価格などを参酌して評価します(財産評価基本通達129)。
金製の仏具の場合は、金の重量や買取業者の査定額、中古市場での取引価格などが目安になります。
これらが分からない場合は、同じ種類の新品の小売価額から、作られてからの年数に応じた減価を差し引いて評価します。
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節税目的で仏壇・仏具を生前に購入するリスクと注意点
生前に購入した仏壇・仏具は原則非課税
本記事で何度か触れたとおり、日常礼拝の用に供する仏壇・仏具なら、生前に購入したものも、原則として非課税です。
被相続人が生前に購入した仏壇・仏具のうち、日常礼拝の用に供しているものは、相続税の非課税財産に当たるため、相続税はかかりません(相続税法12条1項2号)。
一方、相続後に相続人が購入した仏壇・仏具は、そもそも相続財産に含まれないため、相続税の計算には関係しません。
投資目的と判断されると課税されるリスクがある
節税を目的に高額な仏壇・仏具を購入しても、礼拝に使わず資産として持っているとみなされる場合は、非課税になりません。
非課税になるのは、日常礼拝の用に供しているものです。商品・骨董品・投資の対象として所有するものは含まれません(相続税法基本通達12-2)。
たとえば、純金製の仏具を購入しても、礼拝に使われず金庫などに保管されているだけであれば、投資の対象とみなされるおそれがあります。
また、相続の直前に高額な仏具を購入した場合は、購入の経緯や使い方が確認されることがあります。
投資の対象とみなされないためには、日常礼拝に使っているだけでなく、購入の理由や経緯がはっきりしていて、礼拝のために購入したと説明できることが大切です。売却を前提にしている場合や、実際に売却した場合も、投資の対象として所有していたとみなされるおそれがあります。
未払いの購入代金は債務控除できない点に注意
前述のとおり、被相続人が生前に購入した仏壇・仏具でも、非課税財産に当たるものは、ローンや分割払いなどの未払代金を債務控除できません。
つまり、相続開始時に仏壇・仏具の支払いに伴うローンの残りがあっても、その分だけ課税される財産が減ることはありません。
詳しくは、前述の「仏壇・仏具の購入代金に関する注意点|未払代金は債務控除できない」をご覧ください。
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相続税申告実務での仏壇・仏具の取り扱い
非課税の仏壇・仏具は申告書に記載しない
日常礼拝の用に供している仏壇・仏具は非課税財産で、相続税の課税価格に算入しません。
そのため、相続税の申告書には、通常、記載しません。
課税対象の仏壇・仏具は第11表の付表4に記載する
課税対象になる仏壇・仏具(投資の対象として所有している金製の仏具、骨董品として所有している仏像、商品の在庫など)は、相続財産として課税価格に含めます。
相続税の申告義務がある場合は、令和6年1月以降に開始した相続では、第11表の付表4(事業(農業)用財産・家庭用財産・その他の財産用)に記載します。
評価方法の要点は次のとおりです。詳しくは、前述の「仏壇・仏具に相続税がかかる場合の評価方法」をご覧ください。
課税対象となる仏壇・仏具の評価方法
- 骨董品として価値がある仏像・仏画:実際の取引価格や専門家の意見を参考に評価する(財産評価基本通達135)
- 事業在庫としての仏具:商品(在庫)の評価方法で評価する(財産評価基本通達133)
- 投資の対象として所有している仏具、日常礼拝の実態がない仏壇・仏具(資産として保管している金製の仏具など):実際の取引価格や専門家の意見を参考に評価する(財産評価基本通達129)
税務調査に備えて保管しておきたい資料
仏壇や仏具などが非課税財産として扱われるには、日常礼拝の用に供していることが前提になります。税務調査で確認された場合に備えて、礼拝に使っていたことを説明できる資料を保管しておきましょう。
- 購入時の領収書や納品書
- 仏壇に設置している状態の写真
- 法要での使用の記録
これらの資料は、申告後も保管しておきましょう。
専門家に相談するべきケース
「この仏具は申告が必要か?」の判断が難しいケースでは、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
純金製のおりんや高額な仏壇、被相続人が仏具店を営んでいたケースなどは、個別の事情によって判断が異なるため、専門的な知見が欠かせません。
仏壇・仏具の相続に関するよくある疑問
Q.相続後に仏壇・仏具を売却したらどうなる?
相続後に仏壇・仏具を売却した場合、売却を前提に所有していたと判断され、相続税の非課税が認められないおそれがあります。また、所得税の課税対象になることもあります。
生活に通常必要な動産の譲渡による所得は、所得税法上非課税とされています(国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」)。ただし、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や骨董品等はこの非課税の対象外となるため、純金製仏具や高額な仏像を売却した場合は、譲渡所得として課税される可能性があります。
Q.仏壇・仏具が非課税財産でないと判断されたらどうなる?
仏壇・仏具が課税財産と判断され、追加の納付税額が生じる場合には、延滞税や、状況に応じて過少申告加算税(当初から申告自体をしていなかった場合は無申告加算税)などのペナルティが課される恐れがあります。
すでに申告書を提出している場合は修正申告を、当初申告を行っていなかった場合は期限後申告を行うことになります。いずれの場合も、現在の状況に応じた適切な手続が必要です。
このような事態を回避するためには、申告前に専門家である税理士に相談することをおすすめします。
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Q.仏壇・仏具は誰が承継する?
仏壇・仏具などの祭祀財産は、通常の遺産分割とは異なり、民法897条に基づいて祭祀主宰者が承継します。
地域や家庭ごとに風俗慣習の違いがあるうえ、祭祀を主宰する関係上、祭祀主宰者の単独所有とする方が便利だからです。
誰が祭祀主宰者となるかについては、被相続人が指定することが可能です。
被相続人の指定がない場合には、慣習に従うこととなります。
慣習が不明であれば、家庭裁判所が定めることとなります(民法897条2項)。
なお、実務上はまず相続人間の話し合いで決めるのが一般的です。相続人間での話し合いがまとまらない場合は、弁護士などの専門家に相談することも選択肢のひとつです。
まとめ|仏壇・仏具に相続税がかかるか不安な場合は税理士に相談を
仏壇・仏具と相続税の関係について、重要なポイントをまとめます。
非課税になるケース【原則】
- 日常礼拝の用に供している仏壇・仏具は、相続税の非課税財産(相続税法12条1項2号、相続税法基本通達12-2)
- 価格が高くても、日常礼拝の用に供していれば原則非課税
課税対象になるケース
- 骨董品として価値がある仏像・仏画
- 投資の対象として所有している仏具(資産として保管している金製の仏具など)
- 商品(事業在庫)として所有している仏具
- 日常礼拝の実態がない仏壇・仏具
生前に購入するときの注意点
- 生前に購入したものでも、非課税となる仏壇・仏具のローンなどの未払代金は、債務控除できない
- 節税目的で購入しても、礼拝に使わず資産として持っているとみなされる場合は、非課税にならない
申告実務の基本
- 非課税の仏壇・仏具は、課税価格に含めない
- 課税対象になる仏壇・仏具は、時価で評価して課税価格に含め、第11表の付表4に記載する
- 判断に迷う場合は税理士に相談する
判断のポイントは、日常礼拝の用に供しているか、商品・骨董品・投資の対象として所有していないかの2点です。
仏壇や仏具に相続税がかかるか不安がある場合には、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士