相続税における家財一式(家庭用財産)はいくら?評価方法を解説

親や配偶者が亡くなった後、自宅に残された家具・家電・衣類などの家財道具を相続税申告でどう扱えばよいか、迷っている方は多いのではないでしょうか。
家具・家電・衣類などの一般的な家庭用動産も相続税の対象であり、原則として1個または1組ごとに評価します。
ただし、1個または1組の価額が5万円以下のものは、世帯ごとに「家財一式」として一括評価することが可能です。一方、5万円を超えるものや、書画・骨董品など別の評価方法が定められている財産は、個別に評価する必要があります。
相続発生時点の売却価格や、専門家による鑑定額などが評価額となるでしょう。
この記事では家財一式の相続税評価の基本から、相続税の申告の際に必要な家庭用財産の一覧表の書き方まで、実務的な視点でわかりやすく解説します。
目次
家財一式は相続税の課税対象になるのか
家財一式とは、家にある一般的な財産の総称です。家財道具や家庭用財産ということもあります。
結論からいえば、家財一式は相続税の課税対象となります。
家財一式は「動産」として課税される|一覧表
相続税法では、相続または遺贈により取得した財産は、原則としてすべて相続税の課税対象となります(相続税法2条1項・2項)。
家具・家電・衣類・食器・寝具といった家財一式は、法律上「動産」(土地やその定着物である建物などの不動産以外の物)に分類され、相続財産として申告書に計上する必要があります。
家財一式に該当するものとしては、以下のようなものが考えられるでしょう。
| 家財の種類 | 主な品目 |
|---|---|
| 家具 | 机、タンス、ベッド |
| 家電 | テレビ、冷蔵庫、洗濯機 |
| 趣味の品物 | カメラ、ゲーム機、スポーツ用品 |
| 衣類・装飾品 | スーツ、着物、時計 |
申告実務上、現金・預貯金・株式等とは別の区分となり、家財道具は「第11表の付表4(相続税がかかる財産の明細書(事業(農業)用財産・家庭用財産・その他の財産用)」という専用の書類に記載します。
非課税財産であれば相続税の課税対象ではない
「非課税財産」に該当する財産であれば、相続税の課税対象とはなりません。
非課税財産として扱われるものとしては、以下のようなものがあります(相続税法12条)。
- 仏壇・仏具・神棚
日常礼拝に使用している物として非課税(ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや、商品として所有しているものは課税) - 墓地・墓石
法律において非課税財産と扱われている
ソファやテレビ、衣類などの一般的な家財はこの非課税財産には該当しないため、注意が必要です。
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家財一式の相続税評価方法
相続税では、家財は原則として相続開始時点の時価で評価します(相続税法22条)。
ただし、一般家庭には家具や家電、衣類など数多くの家財があるため、すべてを一点ずつ評価する必要はありません。
家具・家電・衣類などの一般的な家庭用動産については、1個または1組の評価額が5万円以下かどうかを基準として、「一括評価」と「個別評価」を使い分けます。
ただし、書画・骨董品など別の評価方法が定められている財産には、この5万円基準をそのまま適用できません。
5万円以下の家財は一括評価|相場額はいくら?
1個または1組の評価額が5万円以下の家財は、「家財一式」としてまとめて評価できます(財産評価基本通達128)。
128 動産(略)の価額は、原則として、1個又は1組ごとに評価する。ただし、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる。(平20課評2-5外改正)
財産評価基本通達128
一般家庭で使用している家具・家電・衣類・食器・寝具などは、購入から年数が経過すると価値が下がるため、5万円以下となるケースがほとんどです。そのため、一点ずつ評価するのではなく、世帯ごとにまとめて評価して差し支えありません。
ただし、「一括評価できる=0円でよい」という意味ではありません。
中古市場での価格や購入時期、使用状況などを踏まえ、家財全体の価値を合理的に見積もって評価します。
一括評価した家財の評価額の相場
家財一式として評価する場合、一般家庭では10万円~50万円程度で申告されることが多いでしょう。
もっとも、この金額はあくまで実務上の目安です。
家財の量や品質、生活状況によって適切な評価額は異なるため、高級家具や高額な家電が多い場合には、それらを考慮して評価する必要があります。
5万円を超える家財は個別の評価
家具・家電・衣類などの一般的な家庭用動産のうち、1個または1組の評価額が5万円を超えるものは、「家財一式」に含めず個別に評価します。
また、書画・骨董品など別の評価方法が定められている財産も、家財一式とは分けて評価します。
- 自動車
- 貴金属・宝石
- 高級腕時計
- 絵画・骨董品
- ブランドバッグなど高額な動産
なお、絵画・骨董品などが書画・骨董品に該当する場合は、5万円を超えるかどうかではなく、売買実例価額や専門家の意見価格などを参考に個別に評価します。
個別評価では、相続開始時点の時価を基準とします。
評価額は、売買実例価額(中古市場での売買価格)や、買取業者・鑑定士などによる査定額(精通者意見価格)を参考に算定します。
中古市場での価格が分からない場合は、同種・同規格の新品価格から、経過年数などによる価値の減少分を差し引いて評価します(財産評価基本通達129)。
償却費は、耐用年数省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)別表第一に規定する耐用年数により、定率法で計算します(財産評価基本通達130)。
129 一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平20課評2-5外改正)
財産評価基本通達129
130 前項のただし書の償却費の額を計算する場合における耐用年数等については、次に掲げるところによる。(昭41直資3-19・平20課評2-5外改正)
(1) 耐用年数
耐用年数は、耐用年数省令に規定する耐用年数による。(2) 償却方法
財産評価基本通達130
償却方法は、定率法による。
なお、査定額を取得する場合は、相続財産を適切に評価できる専門業者へ依頼すると安心です。
家財の中で個別評価すべき品目と評価方法
家財の中で価値の高さから個別の評価を行うべき品目と、評価方法について解説します。
家具・家電・衣類
これらは、減価償却により購入から期間が経過すると価値が下がっていくため、5万円以下と評価されることが多いでしょう。
しかし、相続発生直前に購入している高価な家具や家電、高級ブランドの衣類については、個別に評価が必要となる可能性があります。
個別の評価を行う際には、業者の買取価格などを参考にしてください。
自動車
自動車は5万円を超える価値を有することが多いため、相続開始時点における以下のような価格から評価されます。
- 相続開始後間もない時期に実際に売却した場合の売却価格
- 中古車買い取り業者の査定価格(オンライン査定も可)
- 車種や走行距離などが類似している売り出し中の中古車価格
上記が不明の場合、その車同等の新品価格から減価償却を行った価格となるでしょう。
貴金属・宝石
高額になり得る貴金属や宝石については、相続開始時点における、以下の価格などを参考に個別に評価します。
- 相続開始後間もない時期に実際に売却した場合の売却価格
- 質屋や買取業者の査定価格
重量や純度が重要となってくる点に注意してください。
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絵画・骨董品
高額になり得る絵画や骨董品は、相続開始時点の以下の時価で評価してください。
- 相続開始後間もない時期に実際に売却した場合の売却価格
- 買い取り業者の査定価格
- 美術商などに依頼して得られた鑑定額
鑑定を行う際には、専門家に依頼をしましょう。
著名作家の作品の鑑定は、複数の専門家に依頼するなど慎重に行うことをおすすめします。
被相続人が販売業者であった場合には、「たな卸商品等の評価」と同様となります。
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骨董品や美術品(書画骨董)の相続税評価方法|申告時の注意点や納税猶予も解説
電話加入権
令和3年(2021年)1月1日以後に相続等により取得した場合は、売買実例価額などを参考に評価し、申告の際には家財一式に含めて評価して差し支えないとされています。
電話加入権は、令和2年(2020年)12月31日以前に相続等により取得した場合、取引相場のあるものは通常の取引価額、それ以外は電話取扱局ごとに国税局長が定める標準価額で評価していましたが、現在は家財一式に含めることができるのです。
家庭用財産の一覧表の書き方・記載例
相続税の申告書には、家財の内容を記載する欄があります。
ここでは、その書き方を具体的に解説します。
相続税申告書第11表の付表4に評価額を記載
相続税の申告書「第11表の付表4(相続税がかかる財産の明細書(事業(農業)用財産・家庭用財産・その他の財産用)」では、家庭用財産(動産のうち家財)を記載する欄が設けられています。
以下は記載の基本項目の目安です。
| 記載項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 細目コード | 61 |
| 細目 | 家庭用財産 |
| 特例 | 「特例番号表」参照 ※特例を適用する場合のみ |
| 国外 | 財産が国外にある場合は「1」と記入 |
| 財産の名称等 | 家財一式 など |
| 財産の所在場所等 | 自宅住所 など |
| 数量 | 空欄 |
| 価額 | ○○○,○○○円 |
| 財産を取得した人の番号 | 第11表に記載した項番 |
| 取得財産の価額 | 各人が取得した価額 |
※一式で評価する場合は「数量・単価・倍数」は空欄(または『一式』)で差し支えありません
第11表の付表4の記入例や取得した財産の細目等の記載要領、特例番号表は、国税庁による様式一覧にある記入例にて確認可能です。
相続税申告書第11表の付表4については「国税庁のホームページ」でダウンロードすることができます。
家財一式の価格を低くしすぎないように注意
家財一式の価格を低くしすぎると、税務調査の可能性が生じるため注意が必要です。
例えば、家財一式のほかに高額な相続財産を有している場合に、家財一式の金額が数万円と記載していると、他の財産との釣り合いが取れず、税務署に不自然だと判断される恐れがあります。
被相続人の資産状況から家財一式の金額をどの程度とすべきなのかは、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
「財産目録」と「家庭用財産の一覧表」の違い
混同しやすい2つの書類の違いを整理しておきます。
| 財産目録 | 家庭用財産の一覧表 | |
|---|---|---|
| 性質 | 相続財産全体をリストアップした一覧表 | 相続税申告書(第11表の付表4)の記載欄 |
| 目的 | 遺産分割協議や相続人間の情報共有などのために作成 | 税務署へ提出する申告書の一部として作成 |
財産目録は必ずしも法律で定められた書式があるわけではありませんが、申告書の「家庭用財産」欄は税務申告のための公式書類です。
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家財評価の実務的な進め方
自分で評価する場合のステップ
家財の評価を自分で行う場合は、以下の手順で進めましょう。
STEP1:家財の棚卸し(リストアップ)
自宅内にある家財をすべてリストアップします。部屋ごとに分類すると作業しやすくなります。
STEP2:別途評価が必要な品目を分類する
貴金属や高級腕時計など、5万円を超える価値がある可能性のある品目を一般家財から切り分けます。また、書画・骨董品に該当する可能性のある美術品や骨董品は、5万円以下であっても別途評価を検討します。
STEP3:一般家財の評価額を算出する
一般家財は、中古市場での取引価格(売買実例価額)や買取業者の査定額を参考に評価します。
これらが分からない場合は、同種・同規格の新品の現在の小売価格から、使用年数に応じた償却費を差し引いて算出します。
購入時のレシートや家電の保証書は、品名・型番や使用年数を確認する資料として役立ちます。
STEP4:別途評価品目の評価額を算出する
相続開始後間もない時期の実際の売却価格や、査定・鑑定の価格などを参考に、5万円を超える価格であるのかや、超える場合の具体的な金額などを算出します。
STEP5:申告書(第11表の付表4)に記載する
算出した評価額を相続税申告書の第11表の付表4に記載します。
税理士に依頼すべきケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、税理士への相談をおすすめします。
- 自宅に高級美術品・骨董品・貴金属が多数ある
- 相続財産全体の金額が大きく、家財の評価が申告額に影響する可能性がある
- 相続人が複数おり、家財の分け方について意見が分かれている
- 自分で評価額を算出する自信がない
税理士に相談すると、相続税申告書の作成だけでなく、評価方法の選択についてもアドバイスを受けることができます。
家財一式に関するよくある疑問
Q.家財の評価額が少額でも申告は必要ですか?
相続税の申告が必要な場合は、少額であっても家財も計上します。
相続財産に家財が含まれる場合、申告が必要なケースでは評価額が少額であっても申告書には記載が必要です。
ただし、小規模宅地等の特例などを適用しない場合の課税価格の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、原則として相続税の申告は不要です(相続税法15条1項)。
申告が必要かどうかは、家財を含めた財産全体について、小規模宅地等の特例などを適用しない場合の課税価格の合計額が基礎控除額を超えるかどうかで判断しましょう。
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Q.家財の評価額の根拠資料は保管しておくべきですか?
保管しておくことをおすすめします。
税務調査では、家財の評価額の根拠を確認されることがあります。
その際に、評価額の算出根拠(中古市場価額の参考資料、同種の新品の現在の小売価格、使用年数、評価の計算過程など)を示せるよう、関連資料は手元に保管しておきましょう。
特に貴金属・美術品などの別途評価品目については、査定書・鑑定書を取得・保管しておくことが重要です。
また、税務調査は相続発生からしばらくたってからなされることもあるので、相続後の処分や形見分けによって実物がなくなることがあります。
このようなケースに備えて、高額な品については写真を撮っておくとよいでしょう。
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Q.仏壇や位牌も家財として申告が必要ですか?
日常礼拝のために使用している仏壇・位牌は、相続税の非課税財産のため、原則として申告不要です。
日常礼拝のために使用している仏壇・位牌・神棚・墓地・墓石などは、相続税法上の非課税財産に該当するため、申告の必要はありません。
ただし、投資目的で購入した高額な仏像や美術品としての価値がある工芸品などは課税対象となる場合があります。
仏壇・仏具が非課税となる条件や、純金製のおりんなどが課税対象となるケースについて詳しくは、関連記事『仏壇・仏具の相続税は原則非課税|課税されるケースと節税目的の購入時の注意点』をご覧ください。
Q.家財の申告が漏れた場合にペナルティがありますか?
追加で納める相続税が発生する場合は、延滞税や過少申告加算税がかかることがあります。ただし、家財の申告漏れがあれば、必ずペナルティが発生するわけではありません。
期限内に相続税申告書を提出していたものの、家財を計上していなかったため税額が不足していた場合は、修正申告を行い、追加の相続税と延滞税を納付します。状況によっては過少申告加算税もかかります。
また、そもそも申告していなかった場合は期限後申告となり、無申告加算税がかかることがあります。
ただし、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合は、原則として過少申告加算税はかかりません。また、家財を追加しても納付すべき相続税額が増えない場合は、通常、その申告漏れによる延滞税や加算税は発生しません。
申告漏れに気付いた場合は、追加税額の有無を確認したうえで、必要に応じて速やかに修正申告を行いましょう。
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相続税における家財一式の計算で不安な点は税理士に相談を
家財一式は、家具や家電、衣類など日常生活で使用していたものであっても、原則として相続税の課税対象となります。
家具・家電・衣類などの一般的な家庭用動産は、1個または1組の評価額が5万円以下であれば、「家財一式」としてまとめて評価できます。
一方、5万円を超える一般家財や、自動車・貴金属などや、書画・骨董品といった別途評価すべき財産は、相続開始時点の価額を基準に個別の評価が必要です。
相続税の申告が必要な場合は、家財についても第11表の付表4に適切に記載する必要があります。家財は少額だからといって申告対象から外れるわけではないため、漏れがないよう確認しましょう。
高額な家財がある場合や評価方法に迷う場合は、査定や鑑定を利用したり、相続税に詳しい税理士へ相談したりすることで、適正な評価額で安心して申告できます。
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監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士