相続税の端数処理について|端数処理のルールとその節税効果を解説

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相続税の端数処理

「相続税の計算で、どのように端数処理をすればいいのかわからない」

「端数処理によって、どのくらい相続税に影響があるのか知りたい」

相続税の端数処理について、このようにお困りの方もいらっしゃるかと思います。

相続税を申告するには税額を正しく計算する必要がありますので、相続税の端数処理のルールが定められています。また、相続税の場合は遺産の金額が大きいこともあり、端数処理によっては節税につながることもあります。

そこで、この記事では、相続税を計算するときの端数処理について、そのルールと節税の効果などをわかりやすく解説します。

相続税の申告だけでなく、遺産分割においても、役に立つ情報をまとめていますので、ぜひご活用ください。

相続税計算の端数処理のルール

相続税を計算するときの端数処理については、国税庁の法令解釈通達に定められており、相続税の計算の過程において4つのルールがあります。そこで、はじめに相続税の計算の流れを簡単に確認してから、その流れに沿って端数処理のルールを説明していきます。

相続税の計算の流れ

相続税の税額の計算は、次の順序で行います。なお、Stepの括弧内には端数処理のルールがある旨を記載しています。

Step1 各相続人の課税価格を計算する(※端数処理のルール1)

「課税価格=取得した財産の価格-(債務+葬式費用)+生前贈与加算」

なお、生前贈与加算の対象となる贈与であっても、贈与税の配偶者控除や贈与税の非課税の特例の適用を受けた部分は、相続税の課税価格に加算されません。

Step2 課税価格の合計額を計算する

Step3 課税遺産総額を計算する

「課税遺産総額=課税価格の合計額-遺産にかかる基礎控除額」

なお「基礎控除額=3,000万円+600万円×相続税計算上の法定相続人の数」です。

Step4 各法定相続人の取得金額を計算する(※端数処理のルール2)

「各法定相続人の取得金額=課税遺産総額×各人の法定相続分」 

Step5 各法定相続人の税額を計算する

「各法定相続人の税額=各人の取得金額×税率(10%~55%)」

Step6 相続税の総額を計算する(※端数処理のルール3)

Step7 各相続人の相続税額を計算する(※端数処理のルール4)

「各相続人の相続税額=相続税の総額×(各人の課税価格÷課税価格の合計額)」

なお、(各人の課税価格÷課税価格の合計額)を「按分割合」といいます。

Step8 各相続人の納付税額を計算する

「各相続人の納付税額=各人の相続税額+相続税額の2割加算-各種税額控除」

なお、配偶者は、配偶者の税額軽減の適用を受けると、配偶者の法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで財産を取得しても、相続税はかかりません。

このように、相続税の計算においては、各相続人が実際に相続した遺産の額に基づいて相続税額を算出するのではありません。

遺産を実際に相続人の間でどのように分割したかにかかわらず、法定相続人が法定相続分に応じて取得した者と仮定して、相続人が全員で納める相続税の総額を計算したうえで、その相続税の総額に基づいて各相続人が実際に相続した遺産の割合(按分割合)に応じて相続税額を算出することになっています。

そして、後ほどくわしく説明するように、この按分割合の端数処理が、相続税の計算においては重要なものになっています。

それでは、国税庁の法令解釈通達(第16条《相続税の総額》関係および第17条《各相続人等の相続税額》関係)に定められている相続税計算の端数処理のルールを順を追って見ていきましょう。

端数処理のルール1 課税価格は1,000円未満を切り捨て

相続または遺贈によって財産を取得した者の相続税の課税価格を計算するStep1において、その額に1,000円未満の端数があるとき、またはその金額が1,000円未満であるときは、その端数金額またはその金額を切り捨てることとされています。

端数処理のルール2 取得金額は1,000円未満を切り捨て

相続税の総額を計算するにあたり各法定相続人の取得金額を計算するStep4において、各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額に1,000円未満の端数があるとき、またはその金額が1,000円未満であるときは、その端数金額またはその金額を切り捨てることが認められています。

端数処理のルール3 相続税の総額は100円未満を切り捨て

相続税の総額を計算するStep6において、相続税の総額に100円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てることが認められています。

端数処理のルール4 按分割合は小数点以下2位未満を調整

各相続人の相続税額を計算するStep7において、財産を取得した者にかかる相続税の課税価格がその財産を習得したすべての者にかかる課税価格の合計額のうちに占める割合(按分割合)に小数点以下2位未満の端数がある場合、その財産の取得者全員が選択した方法により、各取得者の割合の合計値が1になるようその端数を調整して、各取得者の相続税額を計算することが認められています。

つまり、相続人全員の按分割合の合計値が1.00になるように、相続人全員の合意によって、按分割合の小数点以下第2位未満の端数を調整することができるということです。

この按分割合の端数処理は相続税の計算において重要ですから、くわしく説明します。

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按分割合の端数処理

相続税計算における4つの端数処理のルールのうち、各相続人の相続税額を計算するときに用いる按分割合の端数処理によって、各相続人の相続税額だけでなく、相続人全員で納める相続税の総額にも影響が及ぶことがあります。そのために、按分割合の端数の調整によって節税につなげることもできます。

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按分割合は小数計算

相続税を計算する場合には、相続人ごとの按分割合は、各相続人が実際に取得した財産の課税価格を課税価格の合計額で割って小数計算することになります。遺産分割においては、民法で相続人の構成に応じて法定相続分が規定されていますが、現実には遺産を現物分割することが多いので、ほとんどの場合でこの按分割合は割り切れない数値になります。

たとえば、相続人が妻と子2人の場合であれば、法定相続分は、妻は1/2、子はそれぞれ1/4ずつで、このとおりに遺産を分割することができれば按分割合は割り切れる数値となりますが、現実には遺産を法定相続分どおりに分割できることはほとんどありません。

そこで、先に説明したとおり、按分割合の端数処理については、相続人全員の按分割合の合計値が1.00になるように、相続人全員の合意のもとに小数点以下第2位未満の端数を調整することが認められているのです。

各相続人の相続税額に影響

相続では遺産の額が高額になることがありますので、相続税の計算においては、この端数処理によっては按分割合のわずかな違いでも各相続人の相続税額に影響があります。

たとえば、相続人が3人で課税遺産総額が9,000万円(相続税の総額が480万円)のとき、遺産分割によって按分割合がそれぞれ1/3となった場合に、端数処理によって按分割合を「0.33、0.33、0.34」にすると相続税額は「158.4万円、158.4万円、163.2万円」(相続人間の税額の差は4.8万円)となり、「0.333、0.333、0.334」にすると「159.84万円、159.84万円、160.32万円」(相続人間の税額の差は0.48万円)となり、相続人の間の相続税額の差に約4万円の違いが生じます。

そのために、相続税の申告書では按分割合は小数点以下第10位まで記載できるようになっていますので、各相続人の相続税額をできる限り公平にするためには、按分割合は小数点以下第10位までの間で少数の桁数を多くするように端数処理することが望ましいといえます。

端数処理次第で節税にも

相続人の納付税額は、最終的には各相続人の相続税額に控除や加算を適用して算出します(Step8)。そのために、相続税額の控除や加算の適用がある相続人がいるときには、控除や加算を勘案して按分割合を端数処理することによって、各相続人の納付する相続税額および相続人全体で納付する相続税の総額を少なくすることができる場合もあり、節税につなげることができます。

たとえば、配偶者の税額軽減や未成年者控除などの税額控除を適用でき納付税額が低くなる相続人がいる場合には、そのメリットを活用するために按分割合の端数を切り上げることによって、他の相続人の相続税が低くなりますので、その結果として相続税の総額を少なくすることができます。

特に配偶者の税額軽減が適用できる場合には按分割合の端数を切り上げたとしても非課税となることが多く、節税の効果は大きいといえます。また、反対に、相続税額の2割加算の対象になる孫や兄弟姉妹などがいる場合には、その按分割合の端数を切り捨てれば、加算対象となる相続税額が低くなりますので、その結果として相続税の総額を少なくすることもできます。

節税の効果を確認するには

このように、按分割合の端数処理においては、相続人の間での公平を図りながら、相続人全員で納める相続税の総額が少なくなるように調整することができます。

ただし、この按分割合の端数の調整による節税の効果を確認するためには、実際に相続税の総額を正しく計算する必要があります。また、その過程においては、どのように端数を調整するかを、相続税額の控除や加算の適用などそれぞれの状況に応じて判断することも必要になります。

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相続税申告のご相談は税理士へ

相続税を申告するにあたっては、相続税の税額計算をしなければなりませんが、その計算方法はとても複雑です。しかも、遺産が不動産などの場合には財産の価格の評価が必要となり、また配偶者の税額軽減などの控除や税額加算の適用についての判断も必要になります。

そのため、相続税を正しく計算して、追徴課税などがないように相続税を適切に申告するためには、税理士にご相談されることをおすすめします。

税理士は、税金の申告など個別具体的な税務相談に応じることができる唯一の専門家です。税理士は、相続税の計算などの申告のサポートや代行にとどまらず、遺産分割や節税などについても有効なアドバイスを提供してくれます。

また、相続の手続きをどのように進めたらいいのかわからないとお困りの方や相続の手続きに不安がある方も、お気軽に税理士にお問い合わせください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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