取得費加算の特例をわかりやすく解説|適用のチェックシートや不動産・株式の計算式

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、譲渡所得税(売却益にかかる税金)を大幅に抑えられる可能性がある制度です。
しかし、「名前は聞いたことがあるけれど仕組みがよくわからない」「自分のケースで使えるのか判断できない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、取得費加算の特例の仕組みから適用要件、具体的な計算方法、株式への適用、申告手続きまでを、実務で迷わないようにわかりやすく解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
取得費加算の特例とは?わかりやすく解説
取得費加算の特例の基本的な仕組み
取得費加算の特例とは、正式には「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(租税特別措置法第39条)といいます。
相続で取得した財産(不動産や株式など)を売却すると、譲渡益に対して譲渡所得税が課税されます。
この譲渡益は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」で計算されますが、取得費加算の特例を適用すると、支払った相続税の一部を取得費に加算することが可能です。
取得費が増えることで課税対象となる譲渡益が減少し、その結果として譲渡所得税の負担を抑えることができます。
なぜこの特例が必要なのか?
相続財産を売却する際、相続人には実質的に二重の課税が生じる可能性があります。
まず、相続によって財産を取得した時点で相続税が課税されます。さらに、その財産を売却した場合には、譲渡益に対して譲渡所得税が課税されます。
このような二重課税の負担を緩和するために設けられているのが、取得費加算の特例です。相続税として納めた金額の一部を取得費に加算することで、課税の公平性が図られる仕組みとなっています。
節税効果はどれくらい?
節税効果をイメージするために、簡単な例で確認してみましょう。
特例を適用しない場合、売却価格5,000万円、取得費1,000万円、譲渡費用200万円とすると譲渡益(課税対象)は3,800万円です。(譲渡益=売却価格 − 取得費 − 譲渡費用)
一方、上記と同じ条件で取得費加算の特例を適用し、相続税の一部として500万円を取得費に加算できる場合、取得費は1,500万円となります。
この場合の譲渡益(課税対象)は3,300万円です。
このように、取得費に加算した500万円分だけ課税対象が減少します。
仮に長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率である20.315%が適用される場合、約101万円の税負担を軽減できる計算になります。
【注意】
加算できる相続税額には上限があり、この特例を適用しない場合の譲渡益(売却価格−取得費−譲渡費用)を超えることはできません。
つまり、特例を使っても譲渡所得をマイナス(損失)にすることはできません。
取得費加算の特例の適用要件
取得費加算の特例を利用するためには、3つの要件をすべて満たす必要があります。自分のケースに当てはまるかを確認しながら読み進めてください。
なお、取得費加算の特例は相続税の申告が適切に行われていることが前提となります。申告漏れや修正が必要な場合は、まず相続税の申告を正確に完了させることが重要です。
適用要件チェックシート
取得費加算の適用を受けるための要件は、次の通りです。
【取得費加算の特例の要件】
- 相続や遺贈によって財産を取得した
- その財産の取得に対して相続税が課税されている(相続税を支払っている)
- 「相続開始日の翌日」から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までに譲渡している
3つすべてにチェックが入れば、原則として取得費加算の特例を適用できます。
要件(1)相続や遺贈で財産を取得していること
取得費加算の特例の対象となるのは、相続(法定相続)または遺贈(遺言による取得)によって取得した財産です。原則として、生前贈与によって取得した財産は対象になりません。
ただし、生前贈与でも相続税の課税対象に含まれる場合には、その財産に対応する相続税額がある限り、特例の適用対象となる可能性があります。
【生前贈与でも相続税がかかるケース】
- 相続時精算課税
贈与時に、贈与税について毎年110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除がある代わりに、相続発生時には贈与財産が相続財産に加算される(基礎控除分は対象外) - 暦年贈与
相続開始前3~7年以内(段階的に延長)に贈与された財産は、相続財産に加算される。(下表)
| 相続開始日 | 遡る期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から死亡日まで |
| 2031年1月1日以降 | 相続開始前7年以内 |
要件(2)相続税が課税されていること(相続税を支払っていること)
取得した財産に対して、実際に相続税が課税されていることが必要です。
たとえば、相続税の基礎控除である「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」の範囲内に収まり相続税が発生しなかった場合は、この特例を適用できません。一方で、相続税の申告を行い、相続税を支払っている場合は適用対象となります。
相続税が課税されているかどうかは、相続税申告書の控えで確認できます。
相続税の基礎控除については、関連記事『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』をご覧ください。
要件(3)3年10か月以内の期間内に譲渡していること
取得費加算の特例は、譲渡のタイミングに厳格な期限が設けられています。
具体的には、「相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売却している必要があります。
相続税の申告期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。そのため、実務上は「相続開始から約3年10か月以内」に売却することが目安となります。
ただし、正確な期限は「申告期限の翌日」を起算日として3年を経過する日で判定されるため、個別に日付を確認することが重要です。
【たとえば】
2026年6月1日に被相続人が死亡した場合、相続税の申告期限は2027年4月1日となり、取得費加算の特例の適用期限はその翌日から3年を経過するまで、つまり2030年4月2日となります。
1日でも過ぎると特例は適用できなくなるため、売却時期には十分注意が必要です。
【注意】取得費加算の特例を適用できないケース
次のような場合には、取得費加算の特例を適用できません。
特例などにより、相続税が発生しなかった場合
相続税では、さまざまな特例があります。特例の適用により相続税が発生しない場合には、取得費加算の特例は適用できません。
たとえば配偶者が相続した財産には、相続税の配偶者控除が適用されます。
これは相続した遺産のうち、「1億6,000万円」か「法定相続分」の多いほうまでが非課税になる制度で、これにより相続税が発生しなくなることも多いです。
その他、相続税に関して適用できる特例には、以下のものがあります。
- 小規模宅地等の特例
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 生命保険の非課税枠
- 退職手当金の非課税枠
相続税に適用できる特例については、関連記事『相続税の控除・特例一覧表|控除の金額や対象をわかりやすく解説』にて詳しく解説しています。
譲渡所得以外で申告する場合
取得費加算の特例は、譲渡所得の計算において取得費を増加させる制度です。
そのため、不動産や株式の売却であっても、課税区分が譲渡所得ではなく、たとえば事業所得や雑所得として申告する場合には、この特例を適用できません。
法人が遺贈による財産を取得した場合
取得費加算の特例は、個人に対する所得税の特例です。
そのため、法人が遺贈によって財産を取得した場合には、そもそも所得税ではなく法人税の課税対象となるため、この特例の適用対象外となります。
取得費加算の特例を不動産に適用する場合の計算方法
取得費に加算できる金額は、支払った相続税額の全額ではありません。売却した財産に対応する部分の相続税額のみが、取得費に加算されます。
取得費加算額の計算式
取得費加算額は、次の計算式で求めます。
取得費加算額の計算
取得費加算額=その人が納付した相続税額 × (譲渡した相続財産の相続税評価額 ÷ その人が相続した財産の相続税評価額の合計)
計算式に含まれる各用語の意味は、次の通りです。
- 納付した相続税額
その相続人(売却する人)が実際に支払った相続税の総額。 - 譲渡した相続財産の相続税評価額
今回売却する財産が相続税申告書において評価された金額。 - 相続した財産の相続税評価額の合計
その相続人の相続税の課税価格の基となった財産の価額。
「その相続人の相続税の課税価格(債務控除後)+その相続人の債務控除額」。
つまり、実質的には「債務や葬式費用を差し引く前の金額」を使用。
不動産を売却する場合の計算例
具体例で確認してみましょう。
(1)取得費加算額の計算
相続人Aが納付した相続税額が800万円、Aが相続した財産の相続税評価額の合計(課税価格)が8,000万円、今回売却する土地の相続税評価額が4,000万円とします。
この場合の取得費加算額は、800万円 ×(4,000万円 ÷ 8,000万円)=400万円となります。
(2)譲渡所得の計算
次に、譲渡所得を計算します。売却価格が5,000万円、取得費(購入時の価格)が1,500万円、譲渡費用が200万円とすると、取得費加算額を反映した譲渡益は次のとおりです。
5,000万円 −(1,500万円+400万円)− 200万円 = 2,900万円
取得費加算を適用しない場合、取得費加算額の400万円は計算に含まれず、譲渡益は3,300万円となります。
取得費加算の特例を適用し、譲渡益を2,900万円とすることで、約81万円の節税効果となります。
※長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率である20.315%を適用した場合
債務控除前の評価額を使うことに注意
計算式の分母を算出する際、単に「相続税の課税価格」をそのまま使うのではなく、「債務控除額(借入金や葬式費用など)」を足し戻した金額を使用します。
つまり、実質的には債務などを差し引く前のプラスの財産の合計額をベースに計算することになります。
- 債務がある場合:課税価格(債務控除後)に、差し引いた債務額を足し戻します。
- 債務がない場合:債務控除額がゼロのため、課税価格がそのまま分母となります。
正確な数値を把握するためには、相続税申告書の第11表(相続財産の明細)や、各人の合計額が記載されている第1表、債務が記載された第13表を突合して確認することが重要です。
相続税の課税価格については、関連記事『相続税の課税対象が一覧でわかる!課税対象外の財産も解説』でも確認可能です。
【補足】取得費が不明な場合はどうする?
相続した不動産や株式について、被相続人の取得費(購入時の価格)が分からないケースも少なくありません。
このような場合には、「概算取得費」として売却価格の5%を取得費とする方法を選択することができます。
取得費が全く分からない場合には有効な選択肢となりますが、概算取得費(売却価格の5%)は一般的に金額が小さくなります。
そのため、結果として譲渡所得が大きくなり、税負担が増える可能性がある点には注意しましょう。
取得費加算の特例を株式に適用する場合の計算方法
取得費加算の特例は、不動産だけでなく、相続した株式(上場株式・非上場株式)を売却する場合にも適用できます。
ただし、株式の場合は「どの株を売却したか」の判定や、取得費の計算方法に特有のルールがあるため、不動産よりもやや複雑になります。
なお、相続時における株式の評価方法(相続税計算の基礎となる評価額の算定方法)については、別記事で詳しく解説しています。
関連記事
株式の相続税はいくらかかる?上場・非上場株式の評価額と計算方法を解説
上場株式に適用する場合の特有ルール
取得費加算の特例が適用できるのは、「相続により取得した株式」を譲渡した場合に限られます。
そのため、同じ銘柄の株式を相続前から保有していた場合は注意が必要です。この場合、相続取得分とそれ以外の保有分が混在するため、どの株式を売却したのかを区分する必要があります。
上場株式の取得費は通常、総平均法に準ずる方法によって計算されるため、取得費の計算と取得費加算の対象となる株式の対応関係を整理する必要があります。
このようなケースでは計算が複雑になるため、税理士に確認することをおすすめします。
上場株式の取得費加算額の計算式
取得費加算額は、不動産と同様に次の計算式で求めます。
上場株式の取得加算額
取得費加算額=納付した相続税額 × (譲渡した株式の相続税評価額 ÷ 相続した財産の相続税評価額の合計)
上場株式の相続税評価額は、相続税申告書の控えに記載されています。
具体的には、株式の明細が記載された表(第11表など)に評価額が記載されているため、その金額を計算式に用います。
上場株式の計算例
具体例で確認してみましょう。
(1)取得費加算額の計算
相続人Bが納付した相続税額が600万円、Bが相続した財産全体の相続税評価額(課税価格)が6,000万円、相続したA社株式の相続税評価額が1,200万円とします(今回すべて売却)。
この場合の取得費加算額は、600万円 ×(1,200万円 ÷ 6,000万円)=120万円となります。
(2)譲渡益の計算
売却価格が1,500万円、取得費が1,000万円、譲渡費用が10万円とすると、取得費加算額を反映した譲渡益は次のとおりです。
1,500万円 −(1,000万円+120万円)− 10万円 = 370万円
取得費加算を適用しない場合、取得費に120万円は加算されず、譲渡益は490万円となります。
上場株式の譲渡所得は原則として申告分離課税となり、税率は20.315%です。ただし、特定口座の区分や損益通算の有無によって実際の税額は変わる場合があります。
一部売却した場合の注意点
相続した株式を一部のみ売却する場合は、「譲渡した株数に対応する相続税評価額」を使って計算する必要があります。
たとえば、相続した株式が1,000株で評価額が1,000万円、そのうち500株を売却したときは、評価額も1/2の500万円として計算します。
この対応関係を誤ると取得費加算額を過大・過少に計算してしまうため、株数ベースで正確に按分することが重要です。
非上場株式の場合
非上場株式(同族会社の株式など)についても、取得費加算の特例を適用することは可能です。
ただし、非上場株式の相続税評価額は、類似業種比準方式や純資産価額方式などを用いて算定されるため、評価自体が非常に複雑になります。
さらに、売却時の価格算定や税務上の論点も多くなるため、非上場株式を譲渡する場合は税理士への相談を強くおすすめします。
取得費加算の特例の申告手続きと必要書類
取得費加算の特例は、確定申告によって適用を受けます。自動的に適用されるものではないため、必ず申告が必要です。
申告の流れ
取得費加算の特例は、次の流れで確定申告を行うことで適用を受けます。
ステップ1. 財産を売却する
まずは、相続によって取得した不動産や株式などの財産を売却します。この売却があって初めて、取得費加算の特例の適用対象となります。
ステップ2. 相続税申告書の控えを準備する
取得費加算額の計算には、相続税申告書に記載された評価額や納付税額を使用します。相続税申告書の控え(第11表・第13表など)を手元に用意しておきましょう。
ステップ3. 取得費加算額を計算する(計算明細書に記入)
計算式に基づいて取得費加算額を算出し、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」に記入します。ここでの計算結果が、確定申告書に反映される重要な数値となります。
ステップ4. 確定申告書(第三表)・譲渡所得の内訳書を作成する
売却した年の翌年に行う確定申告で、確定申告書(第三表)および譲渡所得の内訳書を作成します。取得費加算額を反映させたうえで、譲渡所得を計算します。
ステップ5. 計算明細書を添付して申告書を提出する(翌年2月16日〜3月15日)
作成した申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」などの必要書類を添付し、確定申告期間内に提出します。提出期限を過ぎると特例を適用できない可能性があるため注意が必要です。
必要書類一覧
取得費加算の特例を適用する際には、主に次の書類が必要となります。
特に、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」は、この特例を適用するうえで重要な書類です。国税庁のウェブサイトから様式をダウンロードし、計算式に従って数値を記入したうえで申告書に添付します。
計算明細書の記載内容
「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」では、取得費加算額の計算過程を具体的に記載します。
主な記載項目は次のとおりです。
- 所在地
- 種類
- 利用状況/数量
- 譲渡した年月日
- 相続税評価額
- 相続税の課税価格
- 相続税額
- 取得費加算額
これらの数値は、相続税申告書(第11表・第13表など)に基づいて正確に転記する必要があります。
記載内容に誤りがあると、特例が適用されない可能性や、修正申告が必要になる場合もあるため注意が必要です。
取得費加算の特例を適用するときの注意点・ポイント
取得費加算の特例は、適用を誤ると節税効果が得られないだけでなく、過少申告につながるおそれもあります。次のポイントを必ず確認しておきましょう。
代償分割で節税効果が薄れることがある
代償分割とは、特定の相続人が財産を多く取得する代わりに、他の相続人に対して現金などを支払ってバランスを取る遺産分割の方法です。
たとえば、不動産のように分けにくい財産がある場合に、一人がその不動産を相続し、代わりに他の相続人へお金を支払うことで公平に分けるケースがあります。
このような分割方法をとると、不動産を取得した人は代償金の支払いによって実質的に取得した財産額が調整されます。その結果、相続税の負担も変わることがあります。
その結果、相続税の負担が小さくなると、取得費に加算できる金額も小さくなります。
そのため、代償分割を行った場合は、想定していたよりも節税効果が小さくなる可能性があります。
遺産分割協議は3年10カ月以内に終わらせる必要がある
取得費加算の特例は、「相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に譲渡することが要件となっています。
遺産分割が未了のままでは売却ができないケースも多く、結果としてこの期限に間に合わなくなるリスクがあります。
特に、不動産の売却を前提としている場合は、遺産分割協議を早めにまとめ、スケジュールに余裕を持って売却手続きを進めることが重要です。
ほかの制度と併用できるケースがある
取得費加算の特例は、他の特例と併用できる場合があります。ただし、制度ごとに併用可否が異なるため、事前の確認が必要です。
居住用財産の3,000万円特別控除
自宅を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。取得費加算の特例と併用することができます。
特定居住用財産の買換え特例
自宅を売却して新たな住宅に買い替えた場合に、譲渡所得の課税を将来に繰り延べる制度です。取得費加算の特例と併用することができます。
ただし、適用にあたっては「2027年12月31日までにマイホームを売ること」、「売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるものであること」などの要件が定められています。
また、令和8年度改正では、一定のハザードエリア内への買い換えが対象外となる新要件も追加されています。
小規模宅地等の特例
相続した土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
取得費加算の特例と併用できますが、計算に用いる相続税評価額は、特例適用後の減額された金額となる点に注意が必要です。
小規模宅地の特例については、関連記事『小規模宅地等の特例の要件をわかりやすく解説。計算方法や注意点もわかる』にて詳しく解説しています。
【注意】空き家に係る3,000万円特別控除について
被相続人が一人で住んでいた家屋を売却した場合に適用できる特例です。取得費加算の特例とは併用できず、いずれか有利な制度を選択する必要があります。
どちらを選ぶほうが節税に有利なのかはケースバイケースのため、税理士による試算を確認することがおすすめです。
取得費加算の特例についてよくある質問
Q. 相続税の申告前に確定申告の期限が来てしまった場合はどうすればいいですか?
いったん取得費加算の特例を適用せずに譲渡所得を計算し、確定申告・納税を行います。
手順は以下の2ステップです。
- まずは期限内に確定申告
相続税額が確定していないため、いったん「取得費加算の特例」を適用せずに申告・納税を済ませます。 - 相続税申告後に還付手続き
相続税の申告書を提出した翌日から2か月以内に「更正の請求」を行います。これにより、特例を適用した場合との差額が還付されます。
この場合の還付手続き(更正の請求)は、通常の5年ではなく「2か月以内」という非常に短い期限が適用されます。相続税申告後は、速やかに手続きを行いましょう。
Q. 相続放棄をして遺贈で別の財産を受け取った場合、取得費加算の特例は使えますか?
相続放棄をした場合でも、遺言によって財産を取得する「遺贈」を受けたときは、その財産について取得費加算の特例を適用できる可能性があります。
取得費加算の特例は、「相続または遺贈により取得した財産」であり、かつ「その財産に対して相続税が課税されていること」が要件です。
そのため、遺贈によって取得した財産に相続税が課税されていれば、特例の適用対象となります。一方で、相続税が課税されていない場合は適用できません。
【まとめ】取得費加算の特例は税理士に相談すべき?
取得費加算の特例は、計算式自体はシンプルに見えますが、実際の申告では複数の書類を正確に読み解き、財産の種類ごとに適切に計算する必要があります。特に次のようなケースでは、専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。
- 相続した財産が多種類にわたる(不動産・株式・預貯金など)
- 非上場株式を売却する予定がある
- 複数の相続人がいて按分計算が複雑になる
- 相続税申告書の内容について不明な点がある
- 売却期限が迫っており、早急に対応が必要
税理士に依頼すると、過大・過少申告を防ぎ適正な節税ができたり、申告手続きの手間を省けたりします。
税理士への相談を検討されている方は、相続税に強い税理士の選び方を解説した以下の記事も参考にしてください。
関連記事
相続税に強い税理士の探し方とは?評判の良い税理士の見極め方7選

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士