相続放棄しても代襲相続は起きない|欠格・廃除との違いや遺言での対応も解説

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「親が相続放棄をしたら、自分(子ども)が代わりに相続しなければならないの?」と不安に感じている方は少なくありません。

結論からお伝えすると、相続放棄をした場合、その子どもへ代襲相続は発生しません。

ただし、相続欠格や廃除により相続人となれない場合は代襲相続が発生します。似たような状況に見えても、法律上のルールはまったく異なるため、混同しないことが大切です。

この記事では、相続放棄と代襲相続の関係を中心に、相続欠格・廃除となった場合との違い、代襲相続が発生しないケースの整理、遺言で代襲相続をコントロールできるかどうかまで、わかりやすく解説します。

※本記事の情報は2026年3月時点の民法および税法をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

代襲相続とは?基本をおさらい

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が相続できなくなった場合に、その人の子(直系卑属)が代わりに相続する制度のことです(民法887条2項)。

たとえば、祖父が亡くなる前に父がすでに死亡していた場合、父に代わって孫が相続人になります。これが代襲相続です。

代襲相続人が法定相続人になる例

代襲相続を行う孫を代襲相続人、代襲相続の対象となる父を被代襲者といいます。

代襲相続に関して詳しく知りたい方は『代襲相続とは?読み方・意味・範囲・割合をわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

相続放棄をしても代襲相続は起きない

相続放棄をした場合、その子どもへ代襲相続は発生しません。

相続放棄の意味と、代襲相続が起きない理由について解説を行います。

相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人の財産を相続する権利を一切放棄することをいいます。

相続財産は、金銭や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローン残高といったマイナスの財産も含まれます。

マイナスの財産の方が大きい場合に相続を行うと、金銭的に損となってしまうことがあるため、相続放棄をすることで一切の相続財産を受け取らないとすることが可能です。

相続放棄をしても代襲相続が起きない理由

相続放棄は「自分の意思で相続する権利をすべて手放す行為」です。法律はこれを「最初から相続人ではなかった」と扱います。

そのため、子どもが「親の代わりに相続する」という代襲相続の前提となる「親が相続人であったこと」がなかったことになり、代襲相続が起きる余地がありません。

条文上も代襲相続が発生するのは、相続人が「死亡・欠格・廃除」によって相続権を失った場合に限られており(民法887条2項)、相続放棄では代襲相続が発生しないとなっています。

相続放棄をした後の相続税への影響については、別の視点から解説している記事もあります。

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相続放棄したら相続税は払わなくていい?ほかの相続人への影響も解説

相続欠格・廃除の場合は代襲相続が発生する

相続放棄とは対照的に、相続欠格や相続廃除の場合は代襲相続が発生します。この違いを正確に理解しておくことが重要です。

相続欠格とは

相続欠格とは、相続人が一定の不正行為を行った場合に、法律上当然に相続権を失う制度です(民法891条)。

相続欠格に該当する行為が認められれば、本人の意思とは無関係に相続権がはく奪されます。

相続欠格に該当する具体的な行為は、以下のようなものです。

  • 故意に被相続人や先順位の相続人を死亡または死亡させようとして刑に処された
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴をしなかった
  • 詐欺や強迫によって遺言をさせた、または、遺言を取消し・変更させた
  • 故意に遺言書を破棄、隠匿、偽造した

例えば、父親が遺産欲しさに祖父をだまして「父親にすべての財産を相続させる」という遺言を書かせたことが発覚した場合は、父親は相続欠格者となり相続を受けられません。

しかし、父親の子供が代襲相続により父親が本来受けられるはずだった相続を受けることができるのです。

相続廃除とは

相続廃除とは、被相続人の家庭裁判所への申し立てや遺言により、特定の相続人から相続権を奪う制度です(民法892・893条)。

相続人から虐待・侮辱・著しい非行があった場合に認められます。

例えば、子供からの虐待がひどかったために子供を相続人から廃除した場合、廃除した子供に子供(孫)がいた場合は、孫が代襲相続により相続人となるのです。

代襲相続発生原因についてのまとめ

原因本人の意思代襲相続
相続放棄あり(自発的)発生しない
相続欠格なし(法律上自動)発生する
相続廃除なし(被相続人が申立て)発生する

代襲相続が「できない場合」を整理する

代襲相続にはさまざまな制限があります。ここでは、代襲相続が発生しない主なケースをまとめます。

① 相続放棄をした場合

前述のとおり、相続放棄をした場合は代襲相続が発生しません。

相続放棄により最初から相続人ではなかったこととなるので、子どもにも相続は引き継がれないのが原則です。

② 被相続人に子供がおらず親が相続人となる場合

代襲相続は、子供や兄弟姉妹が相続人となる場合に、相続人がすでに死亡しているケースで認められます。

被相続人に子供がおらず親が生きている場合には、被相続人の配偶者と親(直系尊属)が相続人となるのです。

そのため、相続人が配偶者や親のみである以上、代襲相続ができないケースとなります。

③ 相続人である兄弟姉妹とその子供がすでに亡くなっている

兄弟姉妹が相続人になるケースでは、代襲相続は一代限りです(民法889条2項により民法887条2項を準用)。

亡くなった兄弟姉妹の子(甥・姪)までは代襲相続できますが、その子(大甥・大姪)は代襲相続できません。

そのため、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合に、兄弟姉妹だけでなく、兄弟姉妹の子供も亡くなっている場合は、代襲相続ができないケースとなるのです。

相続人の種別代襲相続の範囲
子(第1順位)孫・ひ孫・その先(無限)
直系尊属(第2順位)代襲相続なし
兄弟姉妹(第3順位)甥・姪まで(一代限り)

相続放棄をすると相続人が変わる点に注意

相続放棄をしても代襲相続は発生しませんが、相続放棄によって次の順位の相続人へ相続が移行します。このような事態を「相続放棄の連鎖」といいます。

相続放棄による具体的な相続人の変更

たとえば、父が亡くなり、子(第1順位の相続人)が全員相続放棄をした場合、次のように相続権が移ります。

  1. 父が死亡
  2. 第1順位:子が相続人となる
  3. 子が全員相続放棄
  4. 第2順位:直系尊属(父の親・存命であれば)が相続人に
  5. 直系尊属も相続放棄(または存在しない)
  6. 第3順位:兄弟姉妹が相続人に

この場合、それぞれの順位の相続人も相続放棄をする権利があります。ただし、突然自分が相続人になったことを知らないケースも多いため、注意が必要です。

また、相続放棄によって後順位の人が相続人となっても、配偶者は常に相続人のままとなります。

相続放棄の期限にも注意

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条1項)。

後順位の相続人については、先順位の相続人が相続放棄したことにより、自己が相続人になったことを知った時点からカウントが始まります(民法915条1項:「自己のために相続の開始があったことを知った時」)。

ただし、先順位者の放棄を知った時と自分が相続人になったことを知った時は、実務上多くの場合一致します。

第2・第3順位の相続人は、急に相続人になる場合があるため、早めに状況を確認することが大切です。

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相続放棄の期限は3か月|期限を過ぎた、期限を延長したい場合はどうする?

遺言で代襲相続を「させない」ことはできるか

「代襲相続を遺言で防ぎたい」と考える方もいますが、法律上できることとできないことがあります。

遺言で代襲相続をさせない方法

遺言で相続人が先に亡くなった場合に備えて、あらかじめ次の相続先を指定することで、代襲相続を防ぐことができます。

しかし、相続人が遺言者より先に死亡した場合、特段の事情がない限り、その部分の遺言は効力を失います(最高裁平成23年2月22日判決)。

遺言が無効となった部分の財産については、遺言のない法定相続として代襲相続人を含めた法定相続人間で遺産分割協議を行うことになるのです。

このような事態を避けるためにも、予備的受遺者(代替の受取人)を遺言に明記しておくことが重要になります。

財産の帰属先を確実にしたい場合は、「長男に○○の財産を相続する。長男が先に死亡したときは次男に相続させる」など予備的な相続相手を指定しておくのが一般的です。

このような遺言としておけば、長男が遺言者より先に死亡した場合は次男に相続がなされるので、代襲相続人が財産を取得することはできません。

具体的にどのような文言とするのが有効なのかという点は、専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。

遺言でできないこと

一方で、法定相続における代襲相続の権利そのものを遺言で奪うことはできません。

代襲相続権は民法上の権利であり、被相続人の遺言によって一方的に消滅させることはできないのが原則です。

遺言による代襲相続への対処方法

やりたいこと遺言でできるか
相続財産の指定・変更できる
予備的な相続財産の指定・変更できる(条件付けが可能)
法定相続における代襲相続権の排除できない

相続放棄に関するよくある疑問

Q. 相続放棄をした後に撤回できる?

相続放棄の撤回は原則としてできません。

ただし、詐欺や強迫など取消しが認められる行為によって相続放棄を行っていた場合は、取消し(撤回)することが可能です(民法919条2項)。

相続放棄の取消しを行う場合は、家庭裁判所への申述が必要になります。

Q. 父親の相続放棄をしても祖父の代襲相続ができる?

子供が父親の相続を放棄しても、祖父の財産を代襲相続することができます。

子供が放棄したのはあくまでも父親の相続であり、祖父の相続についてまで放棄したとはなりません。

そのため、父親が亡くなった後に祖父が亡くなった場合には、代襲相続人として父親の代わりに祖父の財産を相続することが可能です。

Q. 代襲相続人は相続放棄ができる?

代襲相続人も相続放棄が可能です。

代襲相続によって相続人となった以上、相続を放棄することもできます。

相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行ってください。

Q. 胎児は代襲相続できる?

胎児は相続に関しては既に生まれたものとみなされます(民法886条)。

そのため、相続人である胎児の父親がすでに死亡している場合は、胎児が代襲相続人となるのです。

ただし、死産の場合は相続人になれません。

Q. 相続放棄の手続きはどうすればいい?

相続放棄は、原則として相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条1項)。

まず家庭裁判所の様式に則った申述書を作成し、放棄の理由や続柄を明記します。

添付書類として、被相続人の除籍謄本や住民票の除票、申述人本人の戸籍謄本などが必要です。具体的に必要となるものは家庭裁判所に確認すると良いでしょう。

これらの書類を、被相続人の最後の住所または居所を管轄する家庭裁判所へ提出してください。

提出後、裁判所から届く照会書に回答し、放棄の真意や財産処分の有無が認められれば受理されます。

Q.代襲相続が発生すると相続税に影響がある?

代襲相続が発生した場合、相続税の基礎控除額が変動したり、代襲相続人の相続税が加算されたりする可能性があります。

相続税の基礎控除への影響

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。代襲相続人も法定相続人としてカウントされるため、代襲相続が発生すると基礎控除額が変わる場合があります。

2割加算について

孫が代襲相続人となる場合は、相続税の2割加算はなされません。一方、甥・姪が代襲相続人となる場合は、相続税が2割加算となります。

甥・姪は一親等の血族にも配偶者にも含まれず、孫が代襲相続人になる場合のような適用除外規定がないためこのような違いが生じるのです。

ただし、孫への遺贈があった場合には、一親等の血族ではなく、代襲相続人でもないため、2割加算がなされます。

代襲相続における相続税への影響を詳しく知りたい方は『【代襲相続】相続税の基礎控除は?2割加算や法定相続分も解説』の記事をご覧ください。

また、疑問点については専門家である税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

この記事では、相続放棄と代襲相続の関係について解説しました。

重要なポイントを整理します。

  • 相続放棄をしても代襲相続は発生しない(民法939条・887条2項)
  • 相続欠格・廃除の場合は代襲相続が発生する(民法887条2項)
  • 相続放棄の連鎖により、第2・第3順位の相続人へ相続権が移ることがある
  • 遺言で相続人が先に死亡した場合の相続について記載することで、代襲相続人への財産移転を避けることができる
  • 遺言で法定相続上の代襲相続権を排除することは原則としてできない

相続放棄や代襲相続の問題は、家族関係や財産の状況によって対応方法が異なります。「自分のケースではどうなるのか」が気になる方は、弁護士や司法書士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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