マンションの相続税はいくら?評価額の計算方法と新ルールを解説

マンションの相続税がいくらになるかは、評価額の計算方法と適用できる制度の組み合わせで大きく変わります。
2024年1月に導入された新ルール(区分所有補正)により、特に築浅・高層階・都心部のマンションでは相続税評価額が大幅に引き上げられる可能性があります。以前の計算を前提にしていると、思わぬ負担増につながることもあるため、注意が必要です。
本記事では、マンション相続税の評価額の計算方法(新ルール対応)、金額別の税額シミュレーション、相続税がかからないケースの目安を、税理士監修のもとわかりやすく解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
マンションに相続税はかかる?
マンション相続税がかからないケース
相続税がかかるかどうかは、マンション単体ではなく、預貯金・有価証券などを含む全財産の評価額の合計と基礎控除額(税金がかからない限度額)の大小で判断します。
相続税がかからないケースは主に以下の通りです。
- 全財産の評価額が基礎控除額以下の場合
- 小規模宅地等の特例を適用した結果、課税対象額が基礎控除額以下になる場合
- 配偶者の税額軽減を一定の要件のもとで適用した結果、納税額がゼロになる場合
全財産の評価額の合計が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。申告も不要です。
ただし、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などの特例を適用した結果として基礎控除以下になる場合は申告書の提出が必要です。
財産の評価額が基礎控除額を超えるなら課税対象
相続税は、亡くなった人(被相続人)の全財産の評価額が基礎控除額を超える場合に課税されます。
基礎控除額の計算方法は、以下の通りです。
基礎控除額の計算方法
基礎控除額 = 3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )
計算例:相続人が配偶者と子2人(計3人)の場合
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
基礎控除の計算方法を詳しく知りたい方は『相続税の基礎控除とは?控除額の計算式と超えた場合の手続き』の記事をご覧ください。
マンションの評価額を計算する方法
2024年からの新ルールで変わったマンションの評価額
マンションの相続税評価額は、土地部分(敷地利用権)と建物部分(区分所有権)を別々に計算し、それらを合計して求めます
マンションの相続税評価額 = 敷地利用権の価額+ 区分所有権の価額
2024年1月1日以後に相続・贈与などにより取得した居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)については、新しいルールが適用され、土地・建物それぞれの価額に「区分所有補正率」を掛けて計算します。
| 部分 | 評価方法 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 土地(敷地利用権) | 路線価 × 敷地面積 × 敷地権割合※ × 区分所有補正率 | 路線価図(国税庁)、登記簿 |
| 建物(区分所有権) | 固定資産税評価額 × 区分所有補正率 | 固定資産税納税通知書 |
※登記されていない場合は「敷地の共有持分割合」
新ルール導入の背景として、従来の評価方法では相続税評価額と実際の市場価格に大きな乖離が生じていました。
国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」によると、平成30年中の全国の分譲マンション取引事例では、乖離が全国平均で2.34倍に達しており、約65%の事例で相続税評価額が市場価格の半額以下(乖離率2倍以上)という実態が確認されています。
こうした実態と課税の公平性を図る観点から、新たな評価方法が導入されました。評価額が市場価格の60%未満の物件は60%水準になるよう引き上げ補正が行われます。なお、補正率の計算結果によっては評価額が引き下げられるケースもあります。
区分所有補正率の計算方法
新しいルールでは、区分所有補正率というものを利用し、評価額と市場価額との乖離を修正する仕組みになっています。
新ルールである区分所有補正は、評価乖離率と評価水準という指標を用いて計算します。
簡易的なものとなりますが、以下のような区分所有補正率による修正がなされるのです。
- 評価水準が1を超える場合:区分所有補正率 = 評価乖離率
- 評価水準が0.6以上1以下の場合:(補正なし)
- 評価水準が0.6未満の場合:区分所有補正率 = 評価乖離率×0.6
評価水準=1÷評価乖離率
評価乖離率=-A+B+C-D+3.220
- A:マンションの築年数×0.033 (※築年数1年未満は1年として計算)
- B:マンションの総階数÷33×0.239 (※総階数÷33が1.0を超える場合は1.0で計算)
- C:評価対象となる住戸の所在階×0.018 (※地階は0として計算)
- D:敷地持分狭小度(※)×1.195 (※敷地利用権の面積÷専有面積)
国税庁は計算用のExcelシートを公開しています。
この計算明細書に、マンションの築年数、総階数、所在階、建物の専有部分の面積、敷地の面積、持分割合(敷地権割合)を入力すると、具体的な区分所有補正率を知ることが可能です。
築年数が新しいほど・階数が高いほど・高層階ほど・敷地持分が小さいほど評価が上がる仕組みとなっています。
ただし、以下のようなマンションについては区分所有補正率が適用されません。
- 地下を除く総階数が2階以下のマンション
- 区分建物の登記がなされていないマンション(一棟まるごと所有する賃貸マンションなど)
- 二世帯住宅(区分所有されている専有部分の数が3以下で、そのすべてに区分所有者またはその親族が居住)
- 居住用以外のテナント物件や、棚卸商品(販売目的の不動産)に該当するもの
マンションの土地の相続税評価額
マンションの土地部分の評価額の計算方法は、以下の通りです。
土地部分の評価額の計算方法
路線価等で求めた敷地全体の評価額×敷地権の割合×区分所有補正率
まず敷地全体の価格を求めてから、敷地権の割合と区分所有補正率を乗じることで算出します。ただし、補正率の計算結果によっては区分所有補正率が適用されず、敷地全体の評価額に敷地権の割合を乗じた価額がそのまま相続税評価額となるケースもあります。
敷地全体の評価額は、市街地の道路に面した土地の路線価をもとに計算されるのが一般的です(路線価方式)。路線価が定められていない土地については、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる倍率方式で算出します。
敷地権の割合は、法務局が発行する登記事項証明書の「敷地権の割合」という記載から確認できます。
路線価方式で計算する方法については『相続税の路線価とは?調べ方と計算方法を解説【土地の評価額・補正まで】』の記事で詳しく知ることが可能です。
マンションの建物の相続税評価額
マンションの建物の相続税評価額の計算方法は、以下の通りです。
建物部分の評価額の計算方法
固定資産税評価額×区分所有補正率
居住用マンションについては、固定資産税評価額に区分所有補正率を適用して相続税評価額を算出します。
ただし、補正率の計算結果によっては区分所有補正率が適用されず、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となるケースもあります。
固定資産税評価額は、市町村から毎年送られてくる「固定資産税の課税明細書」の記載から確認できます。
1億円のマンションの相続税は?評価額シミュレーション
新ルールによる評価額の具体的な影響例
市場価格1億円のマンションを相続するケースを例に、改正後の新ルールに基づく評価額の計算方法を見ていきましょう。
実際の評価額や税負担は条件によって変わるため、ここでは計算の流れを理解するための一例として紹介します。
シミュレーションの条件
- 市場価格:1億円
- 建物部分の固定資産税評価額:3,000万円
- マンションの敷地面積:2,500㎡
- 敷地の路線価:1㎡あたり40万円
- 築年数:5年
- 総階数:25階
- 所在階:23階
- 評価対象となる住戸の専有面積:60㎡
- 評価対象となる住戸の持分割合:80/16,000
土地の相続税評価額
- 敷地全体の評価額:路線価(40万円)×土地面積(2,500㎡)=10億円
- 専有部分に応じた土地の相続税評価額=10億円×80/16,000=500万円
建物(3,000万円)と合わせたマンションの相続税評価額は3,500万円となります。旧ルールでは、マンションの相続税評価額は3,500万円となります。
新ルールにより区分所有補正率を適用する場合は、以下のようになります。計算式の係数は、国税庁「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」に基づきます。
- マンションの築年数 × 0.033
A = 5 × 0.033 = 0.165 - マンションの総階数 ÷ 33 × 0.239
B = 25 ÷ 33 = 0.757(小数点以下第4位切捨て)× 0.239 = 0.180(小数点以下第4位切捨て) - 評価対象となる住戸の所在階 × 0.018
C = 23 × 0.018 = 0.414 - 敷地持分狭小度(※)× 1.195(※敷地利用権の面積 ÷ 専有面積)
敷地持分狭小度 = 12.5㎡ ÷ 60㎡ = 0.209(小数点以下第4位切上げ)
D = 0.209 × 1.195 = 0.250(小数点以下第4位切上げ) - 評価乖離率:-0.165 + 0.180 + 0.414 – 0.250 + 3.220 = 3.399
評価水準は1 ÷ 3.399 = 0.294です。
評価水準が0.6未満であるため、区分所有補正率は「評価乖離率×0.6」となり、補正後の相続税評価額は以下の通りとなります。
3,500万円 × 3.399 × 0.6 = 7,137万9,000円
※実際の相続税申告書の作成では、土地と建物それぞれの旧評価額に対して区分所有補正率を掛けて計算し、最後に合算します(合計額は同じになります)。
旧ルールでは評価額が3,500万円だったマンションが、新ルールでは7,000万円を超える評価額となっており、倍以上になっています。
相続税額はいくら変わる?具体的な計算例
市場価格1億円のマンションを例に、配偶者と子1人が相続するケースで試算します。あくまで概算であり、実際の税負担は個別の状況により大きく異なります。
なお、以下では説明を簡潔にするため、新ルール後の評価額を約7,000万円として試算します。
| 項目 | 旧ルール | 新ルール |
|---|---|---|
| マンション評価額 | 3,500万円 | 7,000万円 |
| その他財産 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 遺産総額 | 5,500万円 | 9,000万円 |
| 基礎控除(2人) | 4,200万円 | 4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 1,300万円 | 4,800万円 |
| 相続税総額(税率適用後) | 約130万円 | 約620万円 |
※配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を適用しない場合の概算。実際の税額は個別の状況により異なります。税率・控除額は国税庁「相続税の税率」に基づきます。
この試算では、新ルール適用により相続税が約490万円増加しています。ただし、これは特例を一切使わない場合の試算です。実際には「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」を組み合わせることで、税額を大幅に軽減できる可能性があります。
特例の適用可否や最適な遺産分割については、早めに専門家へ相談しましょう。
賃貸マンションの相続税は計算方法が異なる
マンションの一室を賃貸している場合の相続税評価額
被相続人がマンションの一室を区分所有しており、その一室を賃貸していた場合の相続税評価額は、以下の計算式で求めます。
- 建物:自用の場合の評価額 ×(1-借家権割合30%)
※借家権割合は全国一律で30% - 土地:自用の場合の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)
※一室全体を賃貸している場合、賃貸割合は100%
自用とは、不動産を他人に貸し付けず、所有者自身が使用している状態のことです。賃貸不動産の相続税評価額は、まず「自用であればいくらになるか」というベースの価額を求め、そこから入居者の権利(借家権・借地権など)の分を差し引いて算出します。
自用の場合の評価額の計算方法は、すでに述べたとおりです。
2024年1月1日以後に取得した分譲マンションの一室(居住用の区分所有財産)については、賃貸に出している場合であっても新ルールによる「区分所有補正率」が適用されます。
借地権割合は地域によって30~90%の範囲で指定されていて、「国税庁のホームページの路線価図」で確認できます。
路線価図にはA~Gの記号で表記されているので、以下の表と対応させて借地権割合を確認してください。

自用地としての価額の求め方は、関連記事『相続税の路線価とは?調べ方と計算方法を解説【土地の評価額・補正まで】』をお読みください。
賃貸マンションを所有している場合の相続税評価額
被相続人が賃貸マンション(一棟)を所有している場合の相続税評価額は、以下の計算式で求めます。
- 建物の相続税評価額 = 自用の場合の価額 ×(1-借家権割合×賃貸割合)
- 土地の相続税評価額 = 自用の場合の価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
一棟所有の賃貸マンションは新ルールの対象外となるため、従来の路線価や固定資産税評価額をそのまま自用の場合の価額として計算します。
賃貸割合は、貸し出している床面積の割合を当てはめます。たとえば、100㎡の部屋が10部屋あるうち、8部屋に入居者がいる場合には、賃貸割合は80%となるのです。
※部屋ごとの面積が異なるマンションの場合は、部屋数ではなく実際の床面積の割合で計算します。
ただし、相続直前に空室になった部屋については、以下の条件を満たせば「一時的な空室」として賃貸中とみなすことができます。
- これまで継続的に貸し出されていた
- 空室の期間に別の用途で使われていない
- 空室の期間が一時的なものである
- その後の賃貸が一時的なものではない
マンション相続税を減額するための制度
小規模宅地等の特例
一定の要件を満たしている場合に、亡くなった人が住んでいたマンションの「土地(敷地利用権)」部分については、330㎡までの面積が80%減額される特例です。
適用できる主な人と条件
| 相続人 | 主な条件 |
|---|---|
| 配偶者 | 居住継続・保有継続の要件なし |
| 同居していた親族 | 申告期限まで居住・保有を継続 |
| 家なき子(別居家族) | 一定の要件あり |
賃貸として利用していたマンションについても、貸付事業用宅地等として200㎡までの面積を50%減額できる場合があります。

小規模宅地等の特例の適用要件については『小規模宅地等の特例とは?要件・計算方法をわかりやすく解説【フローチャート付き】』で詳しく知ることが可能です。
マンション特有の計算方法
マンションの場合、土地の評価額は「マンション全体の敷地面積 × 敷地権割合 × 区分所有補正率」で計算されます。例えば、マンション全体の敷地が1,000㎡、敷地権割合が1%、区分所有補正率が1の場合、評価対象となる土地は10㎡です。
計算例
- 敷地全体の路線価評価額:5億円
- 敷地権割合:1%(1/100)
- 土地評価額:5億円 × 1% = 500万円
- 特例適用後:500万円 × 20% = 100万円(80%減額)
特例の利用には申告が必要
この特例を適用するには、相続税が0円でも申告書の提出が必須です。また、申告期限(10ヶ月)までに遺産分割が完了している必要があります。
申告期限までに分割できない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、後から適用可能です。
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減を使えば、配偶者が相続する財産のうち、以下のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
配偶者の税額軽減の適用要件は以下の通りです。
- 戸籍上の配偶者であること
- 相続財産の仮装・隠蔽がないこと
- 原則として申告期限までに遺産分割が確定していること
(一定の場合は期限後も適用可) - 期限内に相続税の申告をしていること
具体例(1)
遺産総額2億円、相続人が配偶者と子1人の場合
- 配偶者の法定相続分:2億円 × 1/2 = 1億円
1億6,000万円 > 1億円 なので、1億6,000万円まで非課税
具体例(2)
遺産総額5億円、相続人が配偶者と子1人の場合
- 配偶者の法定相続分:5億円 × 1/2 = 2.5億円
2.5億円 > 1億6,000万円 のため、2.5億円まで非課税
配偶者の税額軽減は二次相続まで検討が必要
配偶者の税額軽減を利用して一次相続の税金をゼロにすることだけを考えると、家族全体のトータル納税額が増える可能性があります。
例えば、父の相続で母がマンションを含む全財産を無税で受け取った場合、母の死亡後の二次相続では、そのマンションも母の財産として相続財産に含まれます。その結果、子どもに適用される相続税率が上がる可能性があります。
また、二次相続では配偶者の税額軽減も使えません。
申告書の提出は必須
配偶者の税額軽減を適用するには、小規模宅地等の特例と同様に相続税が0円でも申告書の提出が必須です。
配偶者の税額軽減の適用要件や計算方法については『相続税の配偶者控除とは?計算方法と二次相続への影響を解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
マンションを相続する際の流れ
マンションを相続する際の手続きの流れ
マンションを相続する際には、以下のような流れで手続きを行う必要があります。
- 遺言書の確認
- 相続財産の調査・評価
- 遺産分割協議
- 相続登記
- 相続税の申告・納付
遺言書の確認
被相続人(亡くなった方)が遺言書を残しているかどうかを確認します。遺品のほか、公証役場や法務局が預かっていないかどうかについても確認しましょう。
相続財産の調査・評価
相続人と相続財産を調べて確定します。相続人は、出生から死亡までの戸籍謄本の記録から確認しましょう。相続財産は預貯金・有価証券・不動産などに関する資料を調べる必要があります。
遺産分割協議
遺言書がない場合は、マンションを含めた遺産の分け方を相続人全員で話し合います。
原則として相続人全員の同意が必要であり、同意内容は遺産分割協議書にまとめましょう。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用します。
マンションの分割方法には、以下のようなものがあります。
- 現物(共有)分割:相続人同士の共有とする
- 換価分割:マンションを売却して現金化して分割する
- 代償分割:相続人の1人が相続して他の相続人に現金を支払う
相続登記
遺産分割の内容に従って、マンションなど不動産を相続した人に名義変更するための相続登記の申請を行います。
相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行う義務があります。正当な理由なく期限内に登記しない場合、10万円以下の過料が科される場合があります。
※2024年4月1日より前に発生した相続で未登記の不動産についても義務化の対象です。2027年3月31日までに登記が必要です。
登記申請を行う際には、登録免許税が生じます。
相続税の申告・納付
税務署に対して相続税の申告を行い、その内容に従って相続税を納付します。相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告・納付が必要です。
納付書の入手方法や書き方については『相続税の納付書の書き方|どこでもらえる?記入例つきでわかりやすく解説』の記事をご覧ください。
マンションの相続税が支払えない場合の対処法
相続税の支払いに充てる現金が足りないときは、延納や物納の申請、または不動産の売却によって納税を完了させることができます。
延納とは、分割払いを認める制度です。金銭による納付が困難な金額の範囲内で、担保を提供するなど一定の要件を満たす場合に申請できます。なお、利子税が課されるため、支払う総額は高くなります。
物納とは、不動産や株式などの相続財産をそのまま納めることで相続税を支払う方法です。現金納付が困難な場合に利用でき、一定の順位・要件を満たす財産に限り物納が認められます。
延納・物納はいずれも申告期限(10カ月)までに申請が必要です。また、これらはあくまで緊急的な救済措置であるため適用の審査は厳しく、必ずしも希望が通るわけではありません。
そのため、住み続ける予定がないのであれば、マンションを早期に売却して現金化する方法が、手続きの確実性と速やかさの観点から有効な選択肢となります。
売却の際は、譲渡所得税など他の税金が発生する点に注意が必要です。
なお、相続税が課された財産を、相続開始日の翌日から申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(通常は相続開始から約3年10ヶ月以内)に売却した場合は、納付した相続税額の一部を取得費に加算して譲渡所得の税負担を軽減できる「相続税の取得費加算の特例」を利用できる場合があります。
延納や物納の詳しい利用条件や手続きについては『相続税の延納・物納|利用条件や利子税、担保、申請手続きを解説』の記事をご覧ください。
2027年以降の貸付用不動産5年ルール
2026年度税制改正により、賃貸アパートや投資用マンションなどの貸付用不動産の相続について、新たな規制が導入される予定です(2027年1月1日以降の相続に適用)。
なお、本内容は2026年度税制改正大綱(令和7年12月19日公表)に基づくものであり、詳細は通達確定後に変わる可能性があります。
| 対象となる不動産 | 対象外の不動産 |
|---|---|
| 賃貸アパート(一棟) | 自己居住用マンション |
| 投資用マンション(区分・一棟) | 自己居住用戸建て |
| 賃貸オフィスビル | 事業用不動産(自社使用) |
| 不動産小口化商品 | 相続・贈与で取得した不動産 |
不動産小口化商品(任意組合型・信託受益権型)は、5年ルールとは別枠の扱いとなり、取得時期にかかわらず通常の取引価額(時価)で評価される改正が適用される予定です。
5年ルールの概要と評価額の計算方法
被相続人が相続開始前5年以内に購入した貸付用不動産については、従来の路線価・固定資産税評価額ではなく、以下の方法で評価される予定です。
新評価額=取得価額を基に地価の変動等を考慮した価額×0.8(80%)
つまり、購入時の価格(取得価額)を基に、その後の地価変動などを加味した金額の80%が相続税評価額となります。地価が上昇している場合は取得価額を上回る評価額になることもあります。
5年ルールの適用時期と経過措置
5年ルールの適用が開始されるのは、2027年(令和9年)1月1日以降の相続・贈与です。
ただし、以下の両方を満たす場合は、従来の評価方法(路線価等による評価)が適用される予定です。
- 通達改正日の5年前から所有している土地の上に建築
- 通達改正日までに新築(または建築中)であること
※通達改正日は現時点で未定です(2026年中に国税庁から発表予定)
自宅マンションへの影響
この規制は亡くなる直前に賃貸物件を購入して相続税を圧縮するという節税スキームを封じるためのものです。
ご自身がお住まいのマンションを相続する場合は、2024年に導入された新ルールが適用されます。
一方で、以下のケースでは注意が必要です。
- 自宅を賃貸に出している場合 → 貸付用不動産に該当する可能性
- 親が投資用マンションを所有している場合 → 5年ルールの対象
- 相続対策として収益物件の購入を検討している場合 → 5年以上の長期保有が前提に
今後、収益物件を活用した相続対策を行う場合は、5年以上の長期保有を前提とした計画を立てることが重要です。直前対策ではなく早期対策が鍵となります。
マンションの相続税に関するよくある質問
Q. 夫(妻)が死亡した場合のマンション相続税はいくら?
配偶者が相続する場合は「配偶者の税額軽減」が適用され、取得財産が1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか多い方まで相続税がかかりません(相続税法第19条の2)。
ただし、適用には申告書の提出が必要です。一次相続で税額をゼロにすると二次相続で子の税負担が増加するリスクがある点に注意が必要です。
Q. 親のマンションを相続した場合の相続税はいくら?
親のマンションを相続した場合、マンションの評価額に他の財産を合算し、基礎控除額を超えた部分をもとに法定相続分に応じた税率を適用して計算します。2024年以降の新ルールでは区分所有補正率が加わるため、旧来の評価額より相続税が増加するケースがあります。
同居していた場合でも、申告期限まで居住・保有を継続するなど一定の要件を満たすときは、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等として330㎡まで最大80%減額)が適用できる可能性があります。
Q. 4000万円のマンションの相続税はいくら?
相続財産が市場価格4,000万円の分譲マンションのみの場合、相続人の構成によっては相続税がかからないケースもあります。例えば、相続人が配偶者と子1人(計2人)であれば基礎控除額は4,200万円で、マンションの評価額がこの金額以下であれば申告も納税も不要です。
2024年以降の新ルールでは居住用の区分所有財産に区分所有補正率が適用されます。仮にマンションの評価額が市場価格の60%水準となった場合を例にとると(約2,400万円)、基礎控除額4,200万円を下回るため相続税はかかりません。
ただし、評価額は築年数・階数・敷地持分などによって異なり、一律に市場価格の60%になるわけではありません。また、他の財産と合算して基礎控除額を超える場合は課税対象となります。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
