相続税の基礎控除改正|改正の影響は?相続税を払う人が増えた?

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相続税の基礎控除

「相続税はお金持ちに課税されるもの。自分には関係ない」そう思っている方は注意が必要です。

なぜなら、平成27年(2015年)に相続税の基礎控除が改正され、相続税を払わなければいけない人が大幅に増加したからです。

この記事では、相続税の基礎控除の改正内容と、改正がもたらす私たちへの影響をわかりやすく解説します。

相続税の基礎控除とは

基礎控除は相続税の非課税枠のこと

相続税の基礎控除とは、遺贈・相続により被相続人から財産を取得した人ならだれでも使える「相続税の非課税枠」のことです。

基礎控除によって控除できる金額を、基礎控除額といいます。

相続税は、相続した財産の課税価格の合計額から、この基礎控除額を差し引いて残った分に対してかかります。

すなわち、基礎控除額を差し引いた結果が0円以下の場合、相続税はかからず、相続税の申告や納付は不要となります。

2024年の基礎控除額|いつから改正されていない?

現在(2024年)の相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出できます。

相続税の基礎控除額

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

この相続税の基礎控除額は、平成27年1月1日に改正されてから現在まで変更されていません。

法定相続人とは、民法で定められた「被相続人の財産を相続する権利を持つ人」です。法定相続人の数え方について詳しく知りたい方は、関連記事『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』をお読みください。

相続税の基礎控除の改正(2015年)

改正の内容|相続税の基礎控除の引き下げ

平成27年(2015年)に、相続税の課税を強化するため基礎控除額が引き下げられました。

基礎控除額が引き下げられるということは、非課税枠が少なくなるということです。すなわち、基礎控除改正により相続税を払わなければいけない人や、課税される相続税額が増加しました。

具体的には、以下のように相続税の基礎控除が改正されました。

【改正前】

5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

【改正後】

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人ごとの基礎控除額の変化は、以下の表のとおりです。

法定相続人の数改正前改正後
1人6,000万円3,600万円
2人7,000万円4,200万円
3人8,000万円4,800万円
4人9,000万円5,400万円

表からわかるとおり、改正前は相続財産が6,000万円を超えるまで相続税がかかりませんでした。しかし、改正後は3,600万円を超えれば相続税がかかる可能性が出てきたのです。

改正の影響|相続税を支払う人が増えた

基礎控除額が引き下げられると、相続税を払わなければいけない人が増えると解説しました。

相続税の課税割合 推移(基礎控除改正の影響)

国税庁の発表によると相続税の課税割合は、基礎控除改正前の平成26年には4.4%にとどまっていました。しかし、改正後の平成27年には8.0%、さらに令和4年には9.6%にまで増加しています。

このように、基礎控除の改正後は、相続税の課税対象者が改正前の2倍近くに増加しているのです。また、もちろん控除額が減っているわけですから相続税の納税額も上がっています。

そのため「自分に相続税は関係ない」と思っている方も、本当に相続税がかからないかどうか、一度確認してみることをおすすめします。

相続税の納付が必要かどうか、もし必要ならいくら払うのか確認したい方は、当サイトの『相続税計算機』をご利用ください。無料で利用でき、個人情報の登録も不要です。

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相続税の基礎控除改正の変遷

相続税の基礎控除の改正は、平成27年以前にも何度か行われています。ここではその改正の歴史をご紹介します。

相続税の基礎控除額の改正には以下のような変遷があります。

~昭和62年:2,000万円+(400万円×法定相続人の数)

昭和63年~:4,000万円+(800万円×法定相続人の数)

平成4年~:4,800万円+(950万円×法定相続人の数)

平成6年~:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

平成27年~:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税の基礎控除の導入・改正理由

相続税の基礎控除は、富裕層とはいえない一般家庭や中小零細企業の経営者家族は、相続税の課税対象から外した方がよいという考えから、昭和50年に導入されました。

そこからバブル景気に突入し土地の価値が高騰したことを受けて、昭和63年に基礎控除額も大幅に引き上げられました。

それからも、土地の相続における負担を減らすことや、相続後も相続人が事業を引き継いで継続できるようにという理由で、何度か基礎控除額は引き上げられました。

しかし前述したように平成27年、格差是正や富の再分配を目的として基礎控除額は引き下げられ、相続税の課税対象となる相続件数が、改正前の約2倍に増加しました。

相続税の基礎控除と同時に改正された制度

ここまで相続税の基礎控除の改正について紹介してきました。

以前よりも控除できる金額が減って、相続人からしたらデメリットばかりじゃないか」と思った方も多いでしょう。

しかし、平成27年の基礎控除額の引き下げと同時に、相続税に関するいくつかの特例や控除は相続人にとって有利になるよう改正されました。

以下でひとつずつ紹介していきます。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、決められた用途で使われていた土地に関して、その土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。

平成27年の1月1日以降に発生した相続から、「特定居住用宅地等」について減額できる限度面積が、240㎡から330㎡に拡大されました。

特定居住用宅地等とは、被相続人が住んでいた家の土地などのことです。そのため、多くの相続人にとってメリットのある改正となりました。

小規模宅地等の特例の計算方法や、相続税への影響については、関連記事『ケース別・小規模宅地等の特例の計算方法と計算例!適用要件や注意点も解説』をお読みください。

未成年者控除

未成年者控除とは、18歳未満の法定相続人が相続や遺贈により財産を取得した場合に、相続税を一部控除できる制度です。平成27年の改正により、控除できる税額が以下のように増加しました。

【改正前】

(18歳-相続したときの年齢)×6万円

【改正後】

(18歳-相続したときの年齢)×10万円

障害者控除

障害者控除とは、相続や遺贈によって財産を取得した障害者について、その障害の重さにより相続税を一部控除できる制度です。平成27年の改正により、控除できる税額が以下のように増加しました。

【改正前】

一般障害者:(85歳-相続したときの年齢)×6万円

特別障害者:(85歳-相続したときの年齢)×12万円

【改正後】

一般障害者:(85歳-相続したときの年齢)×10万円

特別障害者:(85歳-相続したときの年齢)×20万円

一般障害者と特別障害者の判定方法など、相続税の障害者控除について詳しくは、関連記事『相続税の障害者控除|障害等級などの要件・申告義務・計算方法は?』をお読みください。

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まとめ|相続税の基礎控除改正により節税がより重要に

平成27年に相続税の基礎控除が改正されたことで、相続税を払う人や、払う相続税額が増加しました。

よって現在は、改正前以上に「相続人それぞれが行う相続税の節税」が重要になっています。

相続税は自分の状況にあった節税方法を知っていれば、大幅に負担を少なくできる税金です。数千万円の相続税がかかるところが、節税によって0円になるケースも存在します。

ただし、相続税の負担を軽くできる制度や特例にはそれぞれ、適用するための条件や注意事項が多くあります。

「節税により相続税を低く抑えられた」と安心していたら、実は制度や特例が適用できておらず、多額の支払いを求められてしまうことも少なくありません。

そのため、もしご自身で相続税の節税を行うことに不安がある場合は、ぜひ相続税に強い税理士にご相談ください。

まずは相続税にどんな節税方法があるか確認するところから始めると良いでしょう。相続税の節税について詳しくは、関連記事『相続税を節税する方法12選!死後と生前それぞれの相続税対策を解説』をお読みください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

全国/電話相談可能

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