運送業トラック運転手の残業代請求は弁護士に相談!残業代の計算方法は?
「トラックドライバーをしているが残業代が支払われない」
「運送会社に勤めており、残業代を請求したいけどいくらもらえる?」
トラック運転手などの運送業は、1日の労働時間の把握が難しいことが多く、残業代トラブルが発生しやすい業種となっています。
2024年4月1日の労働基準法の改正により、トラック運転手の残業時間の上限は年960時間に制限されました。
しかし、業務量が減るわけではないため、長時間の残業を強いられている方もいるかもしれません。
そこで、この記事では、サービス残業にお悩みのトラックドライバーの方に向けて、残業代が発生する状況や給与の計算、未払い残業代の請求方法について詳しく解説します。
目次
2024年4月からトラック運転手の残業時間の上限が年960時間に
トラック運転手の残業時間(時間外労働)の上限は、2024年4月1日から年960時間になりました(厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)。
2024年3月31日までは残業時間の制限がなかったため、上限が新たに設けられたかたちになります。
残業時間の規定が適用されたことに伴い、いま一度残業代の計算方法や請求方法について確認しておきましょう。
トラック運転手の残業代に関するポイント
トラック運転手の残業代を計算するうえでは、以下のポイントを押さえておく必要があります。
会社からは何らかの理由を付けて「残業代は出ない」と伝えられるケースも多いので、しっかりと確認しましょう。
トラック運転手の残業代に関するポイント
- 歩合制でも残業代は支払われる
- 荷待ちを含めた待機時間や、渋滞で止まっている時間でも残業代は発生する
- 「休憩時間」も指揮命令下にあるなら残業代は発生する
歩合制でも残業代は支払われる
トラックドライバーの残業代を計算するポイントの1つとして、歩合制でも残業代が支払われるということが挙げられます。
会社側から「残業代は歩合給で支払っているので別途支払う予定はない」などと主張され、残業代が支払われないケースも多いです。
しかし、歩合給は成果に対する報酬であることから、時間外労働に対しての報酬である残業代とは性質が異なります。したがって、歩合制であったとしても残業代を受け取ることができます。
「残業代は歩合給で支払っている」という主張が認められるのは、以下の2点を満たした時だけです。
- 歩合給の金額が、実際の労働時間に応じて適切に増額されている
- 給与明細上、通常の労働時間の賃金と残業代の賃金が明確に区別できる
荷待ちを含めた待機時間や渋滞で止まっている時間でも残業代は発生する
トラック運転手の残業代は、荷待ちを含めた待機時間や、渋滞で止まっている時間でも発生します。
法律上では、会社の指揮命令下にあり、いつでも作業できる状態であれば労働時間となります。
荷待ちで待機している時間や、渋滞で止まっている時間は、労働時間とみなされます。
労働時間である以上、賃金あるいは残業代が発生することになります。
「休憩時間」も指揮命令下にあるなら残業代は発生する
休憩時間とは、労働から解放される自由に利用できる時間です(労働基準法34条3項)。
荷待ちなどの待機時間に休憩するように指示されたとしても、その時間は休憩時間ではなく労働時間とみなされます。
指揮命令下にあるなら休憩時間や仮眠時間も労働時間であり、労働時間である以上、賃金あるいは残業代は発生します。
トラック運転手の残業代計算方法
トラック運転手の残業代の基本的な計算方法は、以下のようになります。
トラック運転手の残業代計算方法
残業代=1時間あたりの賃金×割増賃金率(1.25%)×残業時間
1時間あたりの賃金=基準賃金÷月平均所定労働時間
まずは残業代計算において基準となる時給がいくらになるか計算するところから始めましょう。
残業代の計算方法について詳しく知りたい方は『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事をご覧ください。
歩合制を導入している場合は以下のようになります。
歩合制の場合
残業代=1時間あたりの賃金×割増賃金率(0.25%)×残業時間
1時間あたりの賃金=歩合給÷総労働時間
歩合制を導入している場合、割増賃金率が0.25%になることに注意が必要です。また、給料が歩合給と固定給の両方で支払われている場合は、それぞれ分けて残業代を計算する必要があります。
また、みなし残業(固定残業代)制が導入されている場合も、追加の残業代が受け取れる場合があります。
たとえば、月当たりに30時間分の固定残業代が支払われているとき、実際には40時間残業したとしたら超過した10時間分の残業代が受け取れます。
なお、歩合制やみなし残業(固定残業代)制が導入されている場合の残業代計算は、複雑になるケースが多いです。ご自身で残業代の計算が難しい場合には、専門家である弁護士に相談してみましょう。
トラック運送業で未払いの残業代を請求する方法
トラック運送業で未払いの残業代を請求する方法は、大きく以下の3つが挙げられます。
未払い残業代の請求方法
- 会社に自分で請求する
- 労働審判を利用する
- 訴訟を提起する
残業代の請求方法については、『未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説』の記事でより詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。
(1)会社に自分で請求する
未払いの残業代を会社へ直接請求する方法は、大きく2つあります。話し合いで請求する、内容証明郵便で請求する方法です。
会社が労働者の残業を認知しておらず、請求することで残業代が支払われる可能性が高い場合は、話し合いの上で請求する方が早いでしょう。
しかし、意図的に支払っていない会社の場合、話し合いからトラブルに発展する可能性があります。
内容証明郵便で請求すれば、直接話し合う必要がなく、未払いになっている残業代を請求できます。
また、内容証明郵便を利用することの最大のメリットは、残業代の請求を行った証拠を残すことで時効の完成をストップすることにあります。内容証明郵便の書き方やメリットについては『【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説!』の記事をご覧ください。
(2)労働審判を利用する
会社との話し合いや内容証明郵便による請求でも残業代が支払われなかった場合は、労働審判によって解決を図ることもできます。
労働審判は、訴訟よりも速やかに手続きが進むため、早期の解決が期待できるでしょう。
関連記事
・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説
(3)訴訟を提起する
労働審判手続で解決出来なかった場合や、労働審判手続を利用しない場合には、会社に対して残業代未払いの訴訟を提起できます。
裁判官による判決が出るため、明確な結論を得ることができる方法です。また判決には強制力があり、同意の有無に関わらず双方が判決に従う義務を負うことになります。
ただし、訴訟を起こすには法的な知識や手続きが必要であり、解決までの期間が長くなりやすいというデメリットがあります。
関連記事
・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ?
未払い残業代を請求する場合の注意点
残業代を請求する場合には、以下の3点に注意しておきましょう。
残業代を請求する場合の注意点
- 残業をした証拠を集めておく
- 未払い残業代の正しい額を把握する
- 時効が成立する前に請求する
残業をした証拠を集めておく
未払いの残業代を請求する場合には、残業をした証拠を集めておくことが重要です。
集めておくべき証拠には、タイムカードやシフト表、雇用契約書などが挙げられます。
また、タコグラフも残業代の証拠として有効です。 タコグラフがあれば、運転により残業していたことを客観的な証明として示せる可能性があります。
さらに、運転日報や自身の出退勤のメモも残業をしていた証拠となる可能性があります。
証拠を集める際には、できるだけ数か月単位の証拠を集めておくことがポイントです。
残業代請求の証拠については、『残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は?』の記事でより詳しく解説しています。
未払いの残業代の正しい額を把握する
未払いの残業代を請求するためには、未払い残業代の額を正しく把握する必要があります。
請求する残業代を計算するときには、証拠のある・なしもメモをしておくと、会社への請求や弁護士への相談をおこなうときに便利です。
正確な額の把握をしたい、計算にかかる手間や時間を節約したいという方は、まず弁護士に相談するのがおすすめです。
時効が成立する前に請求する
未払い残業代の時効は3年です。
時効が成立してしまうと、残業代を受け取ることが難しくなってしまうため、時効が成立する前に未払いの残業代を請求しましょう。
関連記事
・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説
未払い残業代の請求は弁護士に相談ください
本来であれば、残業代は会社が正確に計算し、労働者へ支払うべきものです。しかし、トラック運転手の残業代は会社が拒む場合も多く、社会問題にもなっています。
会社に対して直接請求するとトラブルに発展する恐れもありますし、自分で手続きの準備をしているうちに時効にかかれば請求できなくなります。
自身で未払い残業の証拠を収集しても、証拠として認められるのか分からないケースもあるでしょう。
トラック運転手の未払い残業代の請求は、弁護士に相談することがおすすめです。
法律の専門家である弁護士であれば、安心して未払い残業代の請求を依頼することができます。
また、証拠の収集方法や適切な証拠についても、アドバイスをもらうことができるでしょう。
万が一、会社とのトラブルに発展した場合でも、スムーズに労働審判や訴訟などの法的手続きに移行することが可能です。
残業代を弁護士に相談するメリットについて詳しく知りたい方は、『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了