海難事故が起こった場合の海難審判・裁判への対応について弁護士が解説 | 事故慰謝料解決ナビ

海難事故が起こった場合の海難審判・裁判への対応について弁護士が解説

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この記事でわかること

  • 海難事故が起こった場合の法的な責任について理解できる
  • 海難事故が起こった場合、示談交渉や裁判手続が理解できる
  • 海難事故については弁護士に依頼すべきメリットが理解できる

海で船同士が衝突した、船を破損させたなどの海の事故に遭った場合にはどのような法的な責任・法的な手続があるのでしょうか。

今回は海難事故についての法的な問題点について解説していきます。

海難事故の法的責任

海難事故が起こった場合、どのような法的責任が発生するのでしょうか。

「海難」「海難事故」とは

海の上で発生する船に関する事故のことを「海難」といいます。

たとえば、旅行でフェリーや観覧船に乗った乗客が怪我をした、船同士が衝突して負傷者が出た・船が破損した、ヨットが転覆して怪我を負ったなどの事案です。

令和2年の海難発生状況について海上保安庁は以下のようなデータを公表しています。

  • 船舶事故など:船舶の運航に関連した損害や具体的な危険が生じた「船舶事故」は62隻(死者・不明者:4人)、船舶事故以外のものについては22隻です。
  • 人身事故:海上または海中における死傷者は80人(自殺や病気を除く)、死亡・不明者は35人、海上または海中における活動中に死傷者が発生しなかった人身にかかわるトラブルについては107人にものぼります。

こららのデータから、決して少なくない海に関する事故事例が発生していることがおわかりいただけると思います。 

海難事故による損害賠償責任など

海難事故が発生したことにより引き起こされる結果としては以下のものが考えられます。

  • 死亡事故や傷害事故などの人的損害
  • 船体の損傷や荷物の流出、施設の損壊などの物的損害
  • 燃料や輸送物の流出・散乱による海洋汚染などの自然損害

ここで、船員の過失によって第三者に損害が生じた場合には、損害を賠償する責任が発生します。これは不法行為責任といわれ民法上の責任です。

商法には船舶所有者間の責任の分担について特則が定められていますので説明しましょう。

船舶同士の衝突事故の場合、船舶の所有者または船員に過失があったとき裁判所はこれらの過失の軽重を考慮して、各船舶所有者について損害賠償の責任・額を決定することになります。ここで過失の軽重がわからない場合には各船舶所有者が等しい割合で負担することになっています。(商法第788条参照)

このほか以下のような場合には刑事責任に問われる可能もあるでしょう。

過失により「船舶の往来の危険を生じさせ」または「船舶を転覆され、沈没させ、若しくは破壊した」場合には業務上過失往来危険罪が成立する可能性があります。(刑法第129条参照)

また、海難事故によって人を死亡させたり傷害を負わせた場合には、業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。(刑法第211条参照)

さらに、海難審判庁による行政処分を受ける可能性もあります。

海難事故の将来的な発生を未然に防止するなど、行政目的のために海難事故を起こした当事者は以下のような行政上の責任を負う可能性があります。

  • 免許の取り消し
  • 業務の停止
  • 戒告

海難事故の示談・海難審判について

海難事故の場合の示談交渉や法的手続について解説します。

海難事故についての示談交渉

衝突などの海難事故を起こした船舶が日本籍船である場合には、日本の保険に加入している可能性が高いため、保険会社同士の話し合いにより示談交渉が進むことが多いです。

そこで、事故の態様や被害の程度が軽微な場合は保険会社同士の話し合いでスムーズに解決する場合が多いでしょう。

示談交渉は双方の当事者の損害賠償額と過失割合について話し合いで取り決めを行い、相手方の損害額について自己の過失割合に対応する賠償金を支払うことになります。双方の損害賠償請求額について相殺を行い、差額分を支払うということが一般的でしょう。示談交渉がまとまらない場合には裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することになります。

しかし、海難事故による損害額が高額にのぼる場合には簡単に示談交渉ができない場合もあるでしょう。そのような場合には、以下で説明する海難審判による判断を待って話し合いを行うことも考えられます。

海難審判について

海難審判とは国土交通省が管轄する海難審判所による審判のことをいいます。

海難審判の対象となる海難は、「船舶の運用に関連した船舶または船舶以外の施設の損傷」、「船舶の構造・施設または運用に関連した人の死傷」、「船舶の安全または運航の阻害」です。

海難審判は重大な海難について、海技士・小型船舶操縦士・水先人に対する懲戒を行うために調査・審判を行います。ここでいう重大な海難とは以下のものがあてはまります。

  • 旅客のうち死亡者もしくは行方不明者または2人以上の重傷者が発生
  • 5人以上の死亡者または行方不明者が発生
  • 火災または爆発による運航不能となった など

海難審判・裁判の流れ

海難審判や、それに続く裁判の流れは以下のとおりです。

  • 理事官による調査:理事官は海難を認知すると直ちに調査を行い、故意・過失があると認める関係者について審判開始の申立てを行う。
  • 審判開始の申立て:理事官が海難審判所に審判開始の申立てを行う。
  • 審判:海難審判は公開され、審判官と書記官が列席し、理事官立ち会いで執り行われる。当事者とそれを補佐する補佐人が出廷して口頭弁論で行われる。
  • 裁決:受審人に故意または過失があると認められた場合には裁決により懲戒処分が判断される。
  • 執行:審判の執行としては「免許の取り消し」「業務の停止」「戒告」がなされる。

なお、海難審判所の裁決に不服がある場合には、東京高等裁判所に対して裁決取消訴訟を提起することになります。この取消訴訟は裁決の言渡しの翌日から30日以内に提起しなければなりません。

海難事故に遭った場合には弁護士に相談すべき

海難事故が発生した場合には、すぐに弁護士に相談すべきである点を説明します。

示談交渉・賠償請求を代理してくれる

弁護士であれば、常日頃から多くの損害賠償請求事件にかかわり、依頼者の利益を最大化できるように交渉することを専門的に行っています。

保険会社は自社が取り決めた基準にもとづいて示談額を提示してくることがありますが、裁判所が認める基準よりも低い額での示談となることも多いです。

そして、海難事故は責任の内容や過失割合についても通常の交通事故などとは異なり、専門的な知識を有していなければ適切な主張・反論ができないことがあります。

そこで、海難事故に精通している弁護士に示談交渉を任せることで適時に適切な主張・反論、証拠の作成・提出を行ってくれますので依頼者の納得できる和解内容となることが期待できるでしょう。

海難審判においても代理人となれる

海難審判において当事者を代理することができるのは「海事補佐人」か「弁護士」です。

海事補佐人は弁護士と異なり登録資格制度ではありません。そのため、海難審判に精通し、法的能力が保障されている法律の専門家である弁護士に依頼することがおすすめです。

弁護士は日々裁判・審判に対応していますので手続当事者の法的利益を実現することが期待できるでしょう。

また、海難事故が起こると海上保安庁や運輸安全委員会によって調査が行われます。これらの調査で作成された報告書は後の海難審判においても重要な資料となります。

そこで誤った事実認定がなされないためにも、海難事故が発生した当所から弁護士に依頼して手続に関する法的なサポートを受けるべきでしょう。

裁判でも訴訟代理人として活動できる

弁護士であれば、損害賠償請求訴訟や、海難審判に不服がある場合にそれに引き続く裁決取消訴訟のみならず、刑事事件においても訴訟代理人として訴訟活動を行うことができます。

すなわち、弁護士であれば手続の当初から最後まで一貫して当事者の代理人として活動することができるので、適切な証拠の提出や有利な事実の認定のために動くことができるのです。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点