褥瘡で裁判は可能?過去の裁判例から解説 | 事故弁護士解決ナビ

褥瘡で裁判は可能?過去の裁判例から解説

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介護事故|褥瘡で裁判は可能?

この記事でわかること

  • 褥瘡を防ぐことは介護施設の責任
  • 裁判では安全配慮義務に違反していたかが問われる
  • 弁護士に早めに依頼をすることで裁判にも備えることが出来る

褥瘡(じょくそう)とは、長時間同じ体勢でいることにより、圧迫されたことが原因で起きる創傷のことをいい、一般的には「床ずれ」ともいわれます。

褥瘡は、寝たきりの介護施設利用者との関係で特に予防が大切であり、褥瘡の悪化は最悪の場合、死亡する可能性すらあります。このような褥瘡が生じてしまった場合、どうすればいいのでしょうか。

そこで、本記事では褥瘡による施設側の責任を解説し、あわせて利用者の取るべき行動についても説明します。本記事がご参考になれば幸いです。

褥瘡の管理予防は施設の責任

褥瘡は、施設の管理によって悪化を防ぐことが出来ます。一方で、軽度の褥瘡を完全に予防するということは、介護の現場ではむずかしいといえます。そのため、すべての褥瘡を施設の責任とすることはできません。

ここでは、褥瘡の原因や施設の褥瘡予防について解説します。

褥瘡は長時間同じ部位に圧迫が加わっていることが原因

褥瘡の原因は、身体の一定の箇所が長時間圧迫していることにあります。このような圧迫により、皮膚への血流が乏しくなる結果、皮膚の一部が壊死してしまいます。特に、寝たきり状態の人や高齢の方などではベッドの上で寝返りを打つことができないこともあり、褥瘡が悪化してしまう傾向にあるでしょう。

褥瘡は、初期であれば皮膚が薄くなる、水ぶくれが出来る程度ではありますが、皮膚が壊死すると周りが炎症して感染を起こすこともあります。感染をすることにより、高熱が出ることもあり、最悪の場合だと死亡することもあります。

介護施設には褥瘡を予防する責任がある

介護施設には、介護利用者との間で、施設利用契約を締結する上で利用者の安全に配慮する義務を負います。そのため、褥瘡についても予防をする義務を負っていることになります。

介護施設は、寝たきりになっている利用者については、利用者の皮膚の状態を確認する、身体の位置を変えるなどの対応が必要といえるでしょう。

また、褥瘡が悪化している場合は、壊死組織を取り除くなどの手術が必要かもしれません。

褥瘡により重大な損害が生じた場合は損害賠償請求も

褥瘡により重大な損害が生じた場合には、施設に対する損害賠償請求も考えられます。手術等の治療費はもちろんのこと、慰謝料の請求もありえます。

その際には、施設側に安全配慮義務に反していたといえる過失があるかが争点となるでしょう。十分に予防策をとっていたのか、ベッドなどの寝具に問題が無かったかを総合的に勘案して判断をすることになります。

褥瘡での裁判は可能か?判例の紹介

では、実際に褥瘡で利用者と介護施設で義務違反について意見が分かれ、裁判になった事例について紹介をします。

また、裁判のポイントや流れについてもあわせて解説します。

事案の概要

横浜地裁平成24年3月23日では、施設側が褥瘡の予防および適切な治療を行ったかどうかが争われました。

元々、施設利用者Aは横浜市内の病院で入院をしており、退院時に仙骨部に直径3センチの褥瘡を生じさせていました。病院から退院後、被告介護施設に入所することになりましたが、入所後、Aの褥瘡部分に細菌が侵入し、敗血症の状態になった結果、死亡するに至っております。なお、病院から施設に対してAの褥瘡についての情報は提供されておりました。

この裁判例では、Aの褥瘡悪化に関する施設側の債務不履行、注意義務違反の有無が特に争われました。

裁判所の判断

裁判所は、Aが本件施設に入所した当時87歳当高齢であること、一日のほとんどをベッドに寝た状態で過ごしていたこと、糖尿病に罹患していたため血流が阻害されやすい状態であったこと等から、Aには褥瘡が生じやすかったと認定しております。

そして、施設が病院からそのような診療情報を提供されていることも踏まえると、施設は2時間ごとにAの体位変換を行い、褥瘡の患部を清潔に保持しておく義務があったと認定しました。加えて、褥瘡が拡大・悪化しはじめた後は、従前の管理では足りず、より積極的な治療等をする注意義務があると判断しました。

その上で裁判所は、施設がAに対する適切な義務を果たしたとはいえないとして、施設に注意義務違反があると認定し、慰謝料等6,747万円の支払いを命じたのです。

本裁判例のポイント

本裁判例は、老人介護施設の死傷事故について施設側の責任を認めた裁判例になります。

裁判所は、死傷事故を施設が予見・回避することができたのかという見地から、注意義務を具体的に設定し、その義務に反したかという観点から判断しています。

本裁判例では、病院から情報提供を受けていたことから、施設はAの褥瘡について具体的に予見することができると認定しており、2時間おきに体位変換をする義務などがあったとしました。

また、褥瘡が悪化した後は、さらなる積極的な処置をするべきであるという認定をしており、Aの状態によって施設に求められる義務が変わってくるという点が参考になります。

このように介護事故では、利用者に損害が生じた具体的な状況を勘案して施設の義務違反を判断することになります。

介護事故に遭ったら、まずは弁護士に相談をしよう

では、褥瘡を含む介護事故に遭った際にどのように行動をするべきなのかについて解説します。

介護事故に遭った際には、すみやかに行動をしないと証拠が散逸するおそれもあり、適切な対応が求められます。

弁護士に相談することで早期解決が可能

褥瘡等により施設利用者に損害が生じた場合、まずは施設側からの説明を聞くことになります。その中で、不明点や疑問点があればさらに追求をすることにより、真実発見を目指します。

しかし、この時に法律の専門家でなければ違法性があるかどうかの判断はむずかしく、利用者家族のみでは交渉が長引く危険性があるでしょう。

弁護士などの専門家に依頼をすることで、早期解決が可能になるといえます。

証拠保全の見地からも専門家への相談が重要

また、介護事故で最もむずかしいのは有効な証拠を保全できるのかという点です。介護事故の多くは施設内で行われるため、客観的な証拠を利用者側で手に入れることは困難といえます。

そのため、施設側が任意に開示をしてくれない場合、施設の過失などは公にならない可能性があるでしょう。

弁護士に依頼をすることで、開示を強く求めることが出来ることに加え、裁判所を通じた証拠保全手続きなどを行うことも考えられます。

このように証拠の保全という観点からも弁護士への早期依頼にはメリットがあるといえるでしょう。

裁判までなると弁護士を付ける必要がある

加えて、施設側と慰謝料や治療費などで折り合いが付かない場合は、裁判を通じた解決を図る必要があります。裁判では、弁護士でないと代理人になることが出来ないため、弁護士への依頼は必須になります。

また、前述のとおり裁判をする前の交渉や証拠保全は大きな影響を与えるため、弁護士へ早期に相談をしておくことが有効であるといえるでしょう。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点