貸家建付地とは?相続税評価額の計算や小規模宅地等の特例との併用を解説

貸家建付地(かしやたてつけち)とは、アパートや賃貸マンションなどを建てて第三者に貸している土地のことです。貸家建付地は相続の際、自用地よりも評価額を下げられる可能性があります。
ただし、すべての賃貸不動産の土地が貸家建付地になるわけではなく、賃貸の実態や空室状況など一定の要件を満たさなければなりません。
また、貸家建付地は小規模宅地等の特例と併用できる場合があり、適用できればさらに大きな評価減が期待できます。
この記事では、貸家建付地とは何か、自用地や貸宅地との違い、相続税評価額の計算方法、小規模宅地等の特例との関係、相続税対策として活用する際の注意点までわかりやすく解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
貸家建付地とは|自用地や貸宅地との違い
貸家建付地とは貸家を建てた土地のこと|要件は3つ
貸家建付地(かしやたてつけち)とは、土地の所有者が、その土地にある自己所有の賃貸用建物を、第三者に賃貸している場合の土地のことです。
貸家建付地は相続において、自用地よりも評価額が低くなります。
ただし、土地が貸家建付地として評価されるには、一定の要件を満たす必要があります。要件を満たさない場合は自用地として評価され、評価減を受けられません。
貸家建付地として評価されるための要件は、以下の通りです。
- 土地の上に賃貸用の建物が建っていること
- 賃貸借契約に基づき有償で貸し付けられていること
- 相続開始時点で賃貸されていること
ただし、相続開始時点で空室であっても貸家建付地として評価できる場合もあるので、合わせて確認していきましょう。
①土地の上に賃貸用の建物が建っていること
貸家建付地として評価するためには、その土地の上に借家権の目的となる賃貸用の建物が建っている必要があります。
アパートやマンション、賃貸戸建てなどを第三者に貸し付けている場合が典型例です。
自宅の敷地や空き家の敷地など、借家権が成立していない土地については貸家建付地には該当せず、自用地として評価します。
②賃貸借契約に基づき有償で貸し付けられていること
無償で建物を使用させている場合(使用貸借)は、原則として借家権が成立しないため、貸家建付地評価は適用できません。
そのため、賃貸借契約に基づいて有償で貸し付けられていることが必要です。
なお、著しく低額な賃料で貸し付けている場合は、実態として使用貸借と判断される可能性もあるため注意しましょう。
③相続開始時点で賃貸されていること
貸家建付地として評価するためには、相続開始時点(被相続人が亡くなった時点)において、建物が賃貸されていることが原則です。
相続税の節税目的だけで直前に賃貸を始めたようなケースでは、実態が伴っているかどうかが問われます。
【補足】空室がある場合の取り扱い
アパートなどで一部の部屋が空室になっている場合、空室部分については貸家建付地としての評価が認められないことがあります。
ただし、国税庁は一定の要件を満たす一時的な空室については、引き続き賃貸されているものとして取り扱うことを認めています。
具体的には、以下の点から総合的に判断されます。
- 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
- 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
- 空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
- 空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
- 課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか
一方、長期間にわたり空室が続いている場合や、入居者募集を行っていない場合は、一時的な空室とは認められない可能性があります。
その結果、貸家建付地としての評価減が認められなかったり、賃貸割合が下がって評価減の効果が小さくなったりすることがあります。
自用地や貸宅地との違い
相続税における土地の評価では、その土地の「使われ方(利用区分)」によって評価額が異なります。
- 自用地(じようち)
自分で使っている土地(自宅の敷地など)
路線価などをもとに評価額が決まる - 貸家建付地
賃貸用建物が建っており、第三者に賃貸している土地
自用地評価額より低くなる(評価減あり) - 貸宅地(かしたくち)
他人に貸している(借地権を設定している)土地
さらに大きく評価が下がる
貸家建付地の評価が自用地より低くなる理由は、借家人(入居者)が建物を利用する権利(借家権)を持っているためです。
土地所有者は建物やその敷地を自由に利用・処分しにくくなることから、その利用制限を考慮して評価額が減額されます。
なお、貸家建付地はあくまで「土地」の評価方法です。土地の上に建っている建物(貸家・アパートなど)の相続税評価方法は別途定められています。
詳しくは関連記事『不動産の相続税評価額とは?土地・建物の計算方法をわかりやすく解説』をご覧ください。
貸家建付地の評価額は?
貸家建付地の相続税評価額の計算式
貸家建付地の相続税評価額は、次の計算式で求めます。
貸家建付地
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
「自分だけが使っている土地(自用地)だった場合の評価額から、借家人の権利分を差し引く」と考えるとわかりやすいでしょう。
カッコ内の「借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合」が評価減の割合にあたります。
計算で用いる各要素についても、解説していきます。
①自用地評価額
路線価方式または倍率方式で計算した、その土地本来の評価額です。
- 路線価方式の評価額=路線価×地積
- 倍率方式の評価額=固定資産税評価額×評価倍率
必要に応じて、補正率をかけることもあります。
路線価方式を使うか倍率方式を使うかを判断したり、路線価・評価倍率を調べたりする際には、国税庁が公表している「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を使います。
詳しくは関連記事『財産評価基準書とは?読み方と土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)を解説』をご覧ください。
②借地権割合
その土地が所在する地域ごとに、国税庁が定めている割合です。借地権(土地を借りる権利)の価値が、土地の価値全体に対してどのくらいの割合を占めるかを示します。
国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を見ると、路線価の数字の後にアルファベット(A~G)が記載されています。このアルファベットが借地権割合に対応しています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
都市部では60~70%、地方では30~50%程度となることが多いです。
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③借家権割合(しゃっかけんわりあい)
借家権(建物を借りる権利)の割合で、相続税評価上、全国一律30%とされています。
④賃貸割合(ちんたいわりあい)
貸家建付地の上に建つ建物のうち、課税時期現在において賃貸の用に供されている部分の床面積割合です。
- 賃貸割合 = 課税時期に賃貸の用に供されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 各独立部分の床面積の合計
たとえば、10部屋あるアパートのうち8部屋が入居済みの場合、賃貸割合は80%(8/10)となります。なお、空室であっても、入居者募集を継続しているなど賃貸の用に供していると認められる場合は算入できることがあります。個別事情に応じた判断が必要です。
具体的な計算例
次の条件で計算してみましょう。
| 条件 | 数値 |
|---|---|
| 自用地評価額 | 5,000万円 |
| 借地権割合 | 60%(記号D) |
| 借家権割合 | 30% |
| 賃貸割合 | 100%(全室入居) |
計算手順は以下の通りです。
- 評価減の割合を求める
60% × 30% × 100% = 18% - 貸家建付地の評価額を求める
5,000万円 × (1 − 0.18) = 5,000万円 × 0.82 = 4,100万円
自用地のままであれば5,000万円で評価されるところ、貸家建付地として評価することで4,100万円まで下がります。この差額900万円に対する相続税がかからなくなるため、節税効果が生まれます。
なお、仮に賃貸割合が80%の場合は次の通りです。
- 評価減の割合を求める
60% × 30% × 80% = 14.4% - 貸家建付地の評価額を求める
5,000万円 ×(1 − 0.144)= 5,000万円 × 0.856= 4,280万円
賃貸割合が100%の場合は900万円の評価減でしたが、80%になると評価減額は720万円になります。
賃貸割合が低いほど評価減の幅が小さくなることがわかります。
貸家建付地評価と小規模宅地等の特例は併用できる?
賃貸用不動産の土地には、「貸家建付地評価」に加えて、「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります。この二つの関係を正しく理解することが重要です。
小規模宅地等の特例での評価減は可能
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす宅地について、相続税の評価額を大幅に減額できる特例制度です。
賃貸用不動産の敷地は「貸付事業用宅地等」として、200㎡までの部分について評価額を50%減額できます。

小規模宅地等の特例の主な要件
貸家建付地で小規模宅地等の特例を適用するための主な要件は、以下の通りです。
- 被相続人が行っていた貸付事業を引き継ぎ、その土地を取得した親族が申告期限まで事業と宅地の保有を継続すること
- 相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地は対象外
※相続開始前3年を超えて特定貸付事業(準事業を除く)を行っていた場合は、特例の対象になる
なお、貸付事業の態様や開始時期の例外、申告・保有要件の細目など、適用要件は条文上複雑です。個別事情によって結論が異なる場合もあるため、必ず専門家に確認することをおすすめします。
詳しい要件や手続きについては、以下の記事をご参照ください。
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小規模宅地等の特例とは?要件・計算方法をわかりやすく解説【フローチャート付き】
適用の順序:貸家建付地評価が先
貸家建付地で小規模宅地等の特例を適用する場合、まずは貸家建付地としての評価額を算出し、次に小規模宅地等の特例を適用します。
具体的な流れは以下の通りです。
- まず「貸家建付地評価」で評価額を計算する
自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) - 次に「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」を適用する
①で求めた評価額 × 50%
「貸家建付地評価で下がった後の金額」にさらに50%の減額が適用されるという仕組みです。
貸家建付地評価を活用した相続税対策
賃貸用不動産を建設・保有することで、相続税評価額を引き下げる効果が期待できます。ここでは、貸家建付地評価がどのように相続税対策につながるかを整理します。
現金から賃貸不動産への転換による評価減
現金1億円をそのまま相続した場合、相続税評価額は1億円です。
一方、同じ1億円で賃貸アパートを建設した場合、土地は貸家建付地評価、建物は貸家評価で評価減となるため、評価額が大幅に下がります。
この仕組みにより、同じ財産規模でも相続税の課税対象額を圧縮できる可能性があります。
対策を検討する際に注意すべきリスク
相続税対策としての賃貸不動産建設には、いくつかのリスクも伴います。
- 空室リスク:入居者が集まらない場合、賃貸割合が低下し評価減の効果が薄まる
- 資産の流動性低下:不動産は現金と異なり、すぐに換金できない
- 借入金のリスク:ローンを組んで建設した場合、相続人が債務を引き継ぐことになる
- 税制改正リスク:特例制度の要件や税率は変更される可能性がある
- 相続直前の対策は否認リスク:相続開始直前に行った対策は、税務署に否認される可能性がある
節税効果だけを重視するのではなく、収益性や資産全体のバランスも踏まえて慎重に判断することが大切です。
同族会社に土地・建物を貸している場合の注意点
個人が所有する土地と建物を、自らが経営する同族会社へ一括して賃貸し、その同族会社がさらに第三者(入居者)へ転貸(サブリース)しているケースがあります。
この場合も、実質的に第三者へ賃貸されているといえるため、原則として貸家建付地として評価することができます。
ただし、通常の賃貸と異なり、以下の点に注意が必要です。
- 適正な賃料で貸し付けていること
会社からの賃料が、固定資産税の額と同程度など著しく低額(使用貸借と同等)とみなされる場合は、貸家建付地としての評価減が認められない可能性があります。 - 同族会社が間に入っても、評価減の判定は「実際の入居状況」で決まる
空室がある場合の賃貸割合の計算などは、会社への一括賃貸ではなく、実際の入居者への転貸状況(空室率など)をもとに判定します。
貸家建付地の相続税評価でよくある疑問
Q.相続開始後に空室が増えた場合はどうなりますか?
相続開始時点での賃貸割合が評価に使われるため、その後の空室増加は評価額に影響しません。
ただし、相続開始前後の賃貸状況は税務調査の対象になることがあります。
Q.賃貸割合を100%にするために、一時的に入居させることはできますか?
相続税評価を下げる目的で形式的に入居させただけの場合は、賃貸借の実態がないとして否認される可能性があります。
たとえば親族を無償または名目的な賃料で入居させている場合などは、税務署から「賃貸に供されていない」と判断される可能性があります。
Q.建物が複数棟ある場合の評価方法はどうなりますか?
それぞれの建物の用途(賃貸・自用など)に応じて土地を按分し、各区分に対応した評価方法を適用します。
貸家建付地の相続税評価は税理士への確認が安心
貸家建付地とは、自分が所有する土地の上に賃貸用建物を建て、第三者へ貸している場合の土地を指します。貸家建付地として認められれば、自用地よりも相続税評価額が低くなり、相続税負担の軽減につながる可能性があります。
もっとも、貸家建付地評価を受けるためには、賃貸借契約に基づく有償賃貸や賃貸の実態が必要です。空室がある場合や同族会社が関係する場合には、評価方法や適用可否の判断が複雑になることもあります。
また、小規模宅地等の特例を併用できれば、さらに大きな評価減が期待できるケースもあります。
貸家建付地の評価を誤ると相続税額に大きな影響が生じるため、賃貸不動産を所有している方や相続税対策を検討している方は、税理士へ相談しながら適切に評価・申告を進めることが大切です。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士
