負担付死因贈与契約とは?負担付遺贈との違いや手続きと税金を解説

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「介護してくれるなら、この家をあげる」「一緒に住んでくれるなら、財産を渡す」

このように一定の条件を付けて財産を残したい場合に活用できるのが、負担付死因贈与契約です。

負担付死因贈与契約では、介護や生活支援などの負担について相手と生前に合意したうえで、自身の死亡後に財産を渡すことを約束できます。

同じように死亡後の財産の渡し方を決める方法として、負担付遺贈もあります。しかし、負担付死因贈与は受贈者との合意によって成立する「契約」であり、遺言とは仕組みや撤回のルールなどが異なります。

この記事では、負担付死因贈与契約の仕組みや負担付遺贈との違い、向いているケース、契約書の作り方、負担が履行されなかった場合の対応、相続税や不動産にかかる税金までわかりやすく解説します。

目次

負担付死因贈与契約とは?

負担付死因贈与契約とは、受贈者に一定の義務を負ってもらう代わりに、贈与者が死亡したときに財産を渡す契約です。

たとえば、「自分の介護をしてもらう代わりに、死亡後に自宅を渡す」といった契約が該当します。

負担付死因贈与契約では、財産を渡す人を「贈与者」、財産を受け取る人を「受贈者」といいます。

負担付死因贈与契約の仕組み

負担付死因贈与契約の大きな特徴は、贈与者と受贈者が生前に合意して契約を結ぶことです。

たとえば、父が長男との間で「今後、自分の介護をする代わりに、死亡後は長男に自宅を贈与する」と合意したケースを考えてみましょう。

この場合、父と長男が契約を結び、長男は契約で定めた介護を行います。そして、父が亡くなると死因贈与の効力が生じ、自宅を長男が取得します。

このように、負担付死因贈与契約では、財産を渡すことだけでなく、受贈者が負う義務についても生前に双方で合意しておけます。

なお、負担をいつから履行するかは契約内容によって異なります。介護のように贈与者の生前から履行する場合もあれば、「贈与者の死亡後に残された配偶者の生活を支援する」など、死亡後に履行する負担を定めることも可能です。

死因贈与については民法554条、負担付贈与については民法553条に規定があります。

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負担として設定できる内容

負担付死因贈与契約では、受贈者が負う義務について、当事者間の合意によってさまざまな内容を定められます。

代表的な負担には、次のようなものがあります。

介護・生活支援に関するもの

  • 贈与者の老後の介護・身の回りの世話をする
  • 同居して日常的な生活支援を行う
  • 入院・通院の付き添いをする

居住・不動産に関するもの

  • 贈与者が亡くなるまで同居し、住居を提供する(または同じ家に住み続ける)
  • 特定の不動産を処分しないで管理し続ける

金銭・債務に関するもの

  • 贈与者の借金・ローンを引き継いで返済する※
  • 葬儀費用を負担する
  • 他の相続人に一定額を支払う

※金融機関などの債権者の同意がないと、債権者に対しては相続人が返済義務を負い続ける点に注意が必要です

その他

  • 特定の家業・農地を継ぐ※
  • ペットの世話をする

※農地の死因贈与は農地法上の許可が必要となる場合がある

負担を設定するときは、受贈者が何を、いつまで、どの程度行うのかを具体的に決めておくことが重要です。

たとえば、「できる限り介護する」とだけ定めていると、どこまで介護すれば義務を果たしたことになるのか、贈与者と受贈者の認識が食い違う可能性があります。

介護を負担とするのであれば、介護の内容や頻度、期間、施設へ入所した場合の対応などをできる限り明確にしておきましょう。

負担の内容が曖昧だと、受贈者が義務を履行したかどうかをめぐってトラブルになるおそれがあります。

負担付死因贈与と負担付遺贈の違い

負担付死因贈与契約と負担付遺贈の比較表

負担付死因贈与と負担付遺贈の最大の違いは、財産を受け取る相手との合意が必要かどうかです。

負担付死因贈与は「介護をしてくれるなら、死亡後に自宅を渡す」など、贈与者と受贈者が生前に合意して成立する「契約」です。

一方、負担付遺贈は「自宅を長男に遺贈する代わりに、妻の生活を支援してもらう」など、遺言によって受遺者に一定の義務を負わせる方法です。受遺者の事前の同意は必要ありません。

そのため、相手が負担を引き受けることを生前に確認しておきたい場合は負担付死因贈与、相手との合意なしに自分の意思で財産の渡し方を決めたい場合は負担付遺贈が選択肢となります。

主な違いをまとめると、次のとおりです。

比較項目負担付死因贈与契約負担付遺贈
法的性質契約遺言
同意必要不要
撤回・解除原則として撤回できる*遺言者はいつでも自由に撤回できる
受取人の放棄一方的に「放棄」できる制度はない(合意解除・法定解除等によって結果として取得しない形になる可能性はある)特定遺贈はいつでも放棄できる(包括遺贈は3か月以内に家庭裁判所へ申述)
法的根拠民法554条・553条民法1002条(負担付遺贈)等
負担不履行時の扱い解除できる可能性がある相続人が履行を催告し、履行されない場合は家庭裁判所に遺言の取消しを請求できる
不動産取得税かかる相続人への遺贈・包括遺贈ならかからない

*受贈者が負担を履行した後は制限されることがある

違い(1)相手との合意の必要性

負担付死因贈与は契約であるため、贈与者と受贈者の双方が内容に合意しなければ成立しません。

たとえば、「介護をしてくれるなら死亡後に自宅を渡したい」と考えている場合、受贈者にも「介護を引き受け、その代わりに自宅を受け取る」という意思が必要です。

一方、負担付遺贈は遺言による一方的な意思表示であり、受遺者の事前の同意は必要ありません。

そのため、遺言者が亡くなった後に遺言書を確認し、受遺者が初めて「財産を受け取る代わりに一定の義務を負うことになっていた」と知るケースもあります。

ただし、受遺者がその負担を引き受けたくない場合には、遺贈を放棄することができます。

違い(2)撤回・放棄・契約方式

負担付死因贈与と負担付遺贈では、成立方法や撤回のしやすさにも違いがあります。

負担付死因贈与は契約であり、法律上は必ずしも遺言書のような厳格な方式を必要としません。ただし、口頭での契約では内容を証明することが難しいため、契約書を作成しておくことが重要です。

一方、負担付遺贈は遺言によって行うため、法律で定められた遺言の方式を守る必要があります。

また、遺言者は原則としていつでも遺言を撤回・変更できます(民法1022条)。

死因贈与は契約ですが、判例上、遺言の撤回に関する規定が原則として準用され、贈与者から撤回できる場合があります。
ただし、負担付死因贈与で受贈者がすでに介護などの負担を全部またはそれに近い程度履行している場合には、撤回が制限されることがあります。

撤回については、本記事内で後ほど詳しく解説します。

負担付死因贈与が向いているケース

負担付死因贈与は、財産を渡す相手に一定の義務を負ってもらい、その内容について生前に合意しておきたい場合に適しています。

特に、次のようなケースでは活用を検討できるでしょう。

介護や扶養をしてくれる人に財産を残したい

「自分の介護をしてくれる代わりに、死亡後に自宅を渡したい」といった場合には、負担付死因贈与が選択肢となります。

負担付死因贈与では、「介護をする」という受贈者の義務と、「死亡後に財産を渡す」という贈与者の約束をセットにして、生前に契約できます。

たとえば、介護の頻度や内容、いつまで介護を続けるのかなどを具体的に定め、その内容について受贈者の同意を得たうえで契約を結ぶことが可能です。

財産を渡すことと引き換えに、介護などの負担を引き受けてもらうことを、契約としてあらかじめ明確にしておきたい場合に適しています。

なお、「自分が亡くなった後も配偶者の生活を支援してほしい」など、贈与者の死亡後に履行する負担を定めることも可能です。

財産を渡す相手と生前に合意しておきたい

財産を渡す相手に「本当に引き受けてもらえるのか」を確認しておきたい場合にも、負担付死因贈与が向いています。

負担付遺贈では、受遺者の事前の同意がなくても、遺言によって財産と負担を指定できます。しかし、遺言者の死亡後に受遺者が負担の内容を知り、遺贈を放棄する可能性もあります。

一方、負担付死因贈与は双方の合意によって成立する契約です。

受贈者が負担の内容を理解し、引き受ける意思があることを生前に確認できるため、贈与者の死後に「財産を渡すつもりだった相手に拒否され、お願いしたかった負担も履行してもらえない」といった事態を避けやすくなります。

特定の人に不動産を渡したい

「自分が亡くなったら、この家を長男に渡す」など、特定の人に不動産を渡すことを生前に約束しておきたい場合にも、負担付死因贈与を活用できます。

不動産の死因贈与では、契約を結ぶだけでなく、贈与者の生前に「始期付所有権移転仮登記」をしておくことも可能です。

仮登記をしておけば、贈与者が死亡したときに受贈者が所有権移転登記をするための順位をあらかじめ確保できます。そのため、契約後に同じ不動産が第三者へ売却されるなどして、受贈者が不動産を取得できなくなるリスクを抑えることにつながります。

ただし、負担付死因贈与による不動産の取得は、遺贈よりも登録免許税や不動産取得税の負担が大きくなる場合があります。

不動産を特定の人に残したいだけであれば遺言でも対応できるため、負担付死因贈与を選ぶ必要があるかは他の方法と比較して検討しましょう。

負担付死因贈与契約のデメリット・注意点

負担の履行後は贈与者が撤回できない場合がある

負担付死因贈与は、遺言のように贈与者の意思だけでいつでも自由に撤回できるとは限りません。

特に、受贈者がすでに介護などの負担を履行した場合には、贈与者からの撤回が制限されることがあります。

負担付死因贈与の撤回については、本記事内で後ほど詳しく解説します。

負担の内容が曖昧だとトラブルになりやすい

介護や生活支援などを負担とする場合は、受贈者が何をすれば負担を履行したことになるのか、できるだけ具体的に決めておくことが重要です。

たとえば、「老後の面倒を見る」とだけ定めていると、贈与者は日常的な介護まで期待していたのに、受贈者は通院の付き添いや買い物の手伝いだけでよいと考えるなど、認識が食い違う可能性があります。

負担の内容や頻度、期間などをできる限り明確にし、負担を履行できなくなった場合の取り扱いについても契約書に定めておくとよいでしょう。

遺留分侵害額請求を受ける可能性がある

負担付死因贈与によって特定の人に多くの財産を渡すと、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の一定の法定相続人に保障されている最低限の遺産取得割合です(民法1042条)。

たとえば、主な相続財産である自宅を介護してくれた長男に負担付死因贈与すると、配偶者や他の子の遺留分を侵害することがあります。

その場合、財産を取得した長男が遺留分侵害額請求を受け、原則として侵害額に相当する金銭を支払わなければならない可能性があります(民法1046条)。

負担付死因贈与を検討するときは、贈与する財産だけでなく、他の相続財産や相続人の遺留分も踏まえて契約内容を決めることが大切です。

不動産では税負担が重くなる場合がある

不動産を負担付死因贈与によって取得すると、相続税のほか、登録免許税や不動産取得税がかかる場合があります。

特に相続人へ不動産を渡す場合、遺贈によって取得するケースと比べて、登録免許税や不動産取得税の負担が大きくなることがあります。

そのため、不動産を渡すことが目的であれば、負担付死因贈与だけでなく、遺言による遺贈なども含めて税負担を比較することが重要です。

具体的な税率や課税関係については、本記事内で後ほど詳しく解説します。

負担付死因贈与契約は撤回・解除できる?

負担付死因贈与契約をやめる方法として、「撤回」と「解除」が問題になることがあります。

  • 撤回:贈与者が自らの意思で死因贈与を取りやめること
  • 解除:受贈者が約束した負担を履行しない場合などに契約関係を解消すること

負担付死因贈与では、受贈者がすでに介護などの負担を履行している場合、贈与者からの撤回が制限されることがあります。

詳しく確認していきましょう。

受贈者が負担を履行しない場合は解除できることがある

民法553条は、負担付贈与について「その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する」と定めています。

これにより、受贈者が負担を履行しない場合、贈与者(または相続人)は契約を解除できるとされています。

解除の方法は不履行の態様によって異なり、催告の上で解除する場合(民法541条)と、催告なく解除できる場合(民法542条)とが、一般の債務不履行解除の規律に従って検討されます。

催告したうえで解除する場合、以下の手順を踏むことが一般的です。

  1. 受贈者に対して相当の期間を定めて催告する(「○日以内に負担を履行してください」)
  2. 期間内に履行されない場合に解除の意思表示をする
  3. すでに財産が移転している場合は返還を求める

なお、負担を一部履行しなかっただけで必ず解除できるわけではありません。不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微な場合には、催告による解除が認められないためです。

負担をめぐるトラブルを防ぐためにも、契約書には負担の具体的な内容だけでなく、どのような場合に契約を解除できるのかについても明確に定めておくことが重要です。

贈与者が先に亡くなった後、受贈者が負担を履行しない場合の解除

贈与者が死亡した後に履行する負担を定めている場合、贈与者自身は受贈者に履行を求めることができません。

このような場合には、贈与者の相続人が受贈者に負担の履行を求め、負担が履行されなければ契約の解除が問題となることがあります。

ただし、相続人による解除が認められるかどうかは、契約内容や負担の性質、不履行の程度などによって判断が異なります。

贈与者の死亡後にトラブルが生じると、財産がすでに受贈者へ移転していることもあり、解決が複雑になる可能性があります。

死亡後に履行する負担を設定する場合は、誰が履行を確認するのか、不履行の場合にどのように対応するのかについても契約時に検討しておくことが大切です。

受贈者が負担を履行していると撤回できない可能性

負担付死因贈与の受贈者が負担を既に履行している場合は、負担付死因贈与の撤回が制限される可能性があります。

昭和57年4月30日の最高裁判決では、負担付死因贈与契約に基づいて、受贈者が贈与者へ長期にわたり自身の給与やボーナスの一部を支払い続けていた場合に、贈与者が負担付死因贈与と抵触する遺言を残していたものの、特段の事情がない限り撤回は認められないとの判断を示しました。

この判決では、負担の履行期が贈与者の生前と定められていた負担付死因贈与について、受贈者が負担の全部またはそれに類する程度の履行をした場合については、贈与者の最終意思を尊重するあまり受贈者の利益を犠牲にすることは相当でないとして、特段の事情がない限り撤回は認められないと判断しています。

そのため、負担付死因贈与契約に基づいて、すでに受贈者が負担のすべてや大半を履行した後に、負担付死因贈与の撤回を行うことは制限される可能性があるのです。

負担付死因贈与契約の作り方・手続き

負担付死因贈与契約は、当事者双方の合意があれば、法律上は口頭でも成立します。

ただし、トラブル防止のために以下のような流れで書面化・公正証書化することを強くおすすめします。

(1)内容の話し合い・合意

まず、贈与者と受贈者の間で以下の内容を具体的に決めます。

  • 渡す財産の内容(不動産・現金・株など)
  • 受贈者が果たすべき負担の具体的な内容・頻度・期間
  • 契約を解除できる場合
  • 負担を履行できなくなった場合の取り扱い

(2)契約書の作成

合意した内容を書面に残します。このとき、次の点を明記することが重要です。

  • 当事者の氏名・住所
  • 贈与する財産の特定(不動産なら地番・家屋番号まで)
  • 負担の内容(できるだけ具体的に)
  • 効力発生の条件(贈与者の死亡)
  • 負担不履行の場合の解除条件
  • 契約締結日

不動産については、登記事項証明書に記載されている事項を正確に記載しましょう。

また、預貯金については、「金融機関名」「支店名」「口座の種類」「口座番号」「名義人」について明示することが必要となります。

(3)公正証書の作成(強く推奨)

公正証書とは、公証人(法務大臣が任命する公的な証人)が作成する公文書です。私文書(自分たちで作った書面)と比べて以下のメリットがあります。

メリット詳細
証拠力が高い内容の真正性が公的に認証される
紛失・改ざんのリスクがない公証役場に原本が保管される
不動産登記に使いやすい死亡後の所有権移転登記に必要な書類として活用できる
贈与者の意思能力を事前に確認公証人が本人の意思を確認して作成するため、認知症リスクがある場合の予防策になる

公正証書を作成する際は、公証役場に事前に相談・予約をした上で、原則として当事者または代理人が公証役場で手続きを行います。

費用は財産の価額によって異なりますが、一般的に数万円程度からとなります。

具体的な金額は、事前に公証役場に連絡して確認しましょう。

ポイント|不動産には仮登記をする

不動産が対象の場合、贈与者の生存中に仮登記(始期付所有権移転仮登記)をしておくことで、将来本登記をした際の順位を保全でき、贈与者が第三者に売却したり抵当権を設定したりした場合でも、受贈者の権利を守りやすくなります。

仮登記をしておくことで、生前処分がされた場合でも受贈者の権利を主張しやすくなります。

ポイント|死因贈与執行者の指定を行う

負担付死因贈与契約を行う際には、死因贈与執行者(贈与の執行を行う者)を指名しておくと手続きがスムーズに進みやすいでしょう。

執行者が指名されていると、死因贈与による不動産の移転登記をする際に、相続人全員の同意がなくても受贈者と執行者により登記手続きを行うことが可能です。

また、相続人と受贈者の利害が対立する場合でも、適切に手続きを進めることができます。

執行者としては、専門家である弁護士や司法書士を指定しておくとよいでしょう。

負担付死因贈与契約にかかる税金

負担付死因贈与契約には税金が関わります。どの税金がかかるのかを正しく理解しておきましょう。

税務の取り扱いは個別の事情によって異なります。必ず専門家である税理士にご相談ください。

死因贈与には贈与税ではなく相続税がかかる

死因贈与契約によって取得した財産は、相続税法上「遺贈」に含まれるので(相続税法1条の3第1項1号)、相続税の課税対象となります。

贈与契約という形式をとっていても、死亡を条件とする財産の移転は、税務上は相続税の枠組みで処理されます。

死因贈与の受贈者が、被相続人の配偶者または一親等の血族(代襲相続人となった孫などを含む)以外の場合は、原則として相続税額が2割加算されます(相続税法18条)。

なお、被相続人の孫が養子となっている場合は、代襲相続人である場合を除き、2割加算の対象です。

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負担額を差し引いて相続税を計算できる場合がある

負担付死因贈与契約では、受贈者は財産を受け取ると同時に「負担」も引き受けています。税務上の課税価格への影響は負担の性質によって大きく異なります。

  • 負担が金銭債務の引受など客観的に金額を算定できる場合
    財産の評価額から引き受けた債務の額を差し引いて課税価格を計算する取り扱いとなる場合があります。
  • 負担が介護・同居などの労務である場合
    金銭的な評価が難しいため、課税価格に反映されない、または取り扱いが争点となる可能性があります。

たとえば、負担が金銭債務の引受であれば、財産評価額3,000万円から引き受けた債務500万円を差し引いた2,500万円が課税価格の基礎となる場合があります。

一方、負担付遺贈については遺贈のあった時において確実と認められる金額であるなら負担額の控除が可能とされているため(相続税法基本通達11の2-7)、負担付死因贈与契約でも金銭評価が難しい労務については、課税価格から差し引くことが困難になりやすいでしょう。

具体的な取り扱いは個別の事情によって異なるため、必ず税理士に確認してください。

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第三者が相続税を負担するケースがある

負担付死因贈与における負担の利益が第三者に帰属する場合には、その第三者が負担に相当する金額を死因贈与によって取得したものとみなされ、相続税が課されることがあります(相続税法基本通達9-11)。

例えば、「贈与者の死亡時に長男へ1,000万円を贈与する。その負担として、長男は贈与者の友人Aに100万円を支払う」というケースでは、Aは死因贈与によって100万円を取得したものとして相続税の対象となり、長男の課税価格は負担額を差し引いた900万円となります。

不動産には登録免許税・不動産取得税がかかる

負担付死因贈与によって不動産を取得した場合は、相続税だけでなく、登録免許税や不動産取得税も考慮する必要があります。

負担付死因贈与では、不動産の所有権移転登記にかかる登録免許税は、固定資産税評価額の2%です。

相続による所有権移転登記や相続人に対する遺贈における登録免許税率は0.4%なので、負担付死因贈与のほうが税率が高くなっています。

また、死因贈与による不動産の取得には、原則として不動産取得税もかかります。相続による取得や相続人に対する遺贈などでは不動産取得税が非課税となるため、この点も死因贈与との大きな違いです。

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贈与者に譲渡所得税がかかる場合がある

負担付死因贈与では、財産を受け取る受贈者だけでなく、財産を渡す贈与者側に譲渡所得が生じる場合があります。

たとえば、不動産を死因贈与する代わりに、受贈者が贈与者の債務を引き受ける契約を結んでいた場合です。

このようなケースでは、受贈者が引き受ける債務の額が実質的な対価とみなされ、その対価に対応する部分について贈与者に譲渡所得が生じることがあります。

贈与者はすでに死亡しているため、譲渡所得について申告が必要となる場合には、相続人が準確定申告を行います。

このように、負担付死因贈与では受贈者にかかる相続税だけでなく、贈与者側の所得税まで発生する可能性があります。特に不動産などの資産と債務の引受けを組み合わせる場合は、契約前に税理士へ相談して課税関係を確認しておくことが重要です。

負担付死因贈与契約についてよくある質問

Q. 負担付死因贈与契約は口約束でも成立する?

負担付死因贈与契約は、贈与者と受贈者の合意があれば、原則として口約束でも成立します。

ただし、口約束では贈与者の死亡後に契約の有無や負担の内容を証明することが難しく、相続人と受贈者の間でトラブルになる可能性があります。

特に介護などの負担を設ける場合は、負担の内容や期間、履行されなかった場合の取り扱いなどを明確にした契約書を作成しておきましょう。

Q. 負担付死因贈与契約は認知症でも締結できる?

認知症だからといって、直ちに負担付死因贈与契約を締結できなくなるわけではありません。

ただし、契約を締結するには意思能力が必要です(民法3条の2)。契約内容を理解して判断できる意思能力を欠いている状態で締結した契約は無効となります。

贈与者の死亡後に契約の有効性をめぐって争いになる可能性もあるため、判断能力が十分にあるうちに契約を締結し、必要に応じて公正証書を作成するなどの対策を検討しましょう。

Q. 負担付死因贈与と遺言はどちらがおすすめ?

財産を渡す相手に介護や生活支援などの義務を負ってもらい、その内容について生前に合意しておきたい場合は、負担付死因贈与が適しています。

一方、相手に義務を負わせる必要がなく、財産の渡し方を自分の意思で決めておきたい場合は、遺言のほうが利用しやすいでしょう。遺言は相手との事前の合意が必要なく、遺言者は原則としていつでも内容を変更・撤回できます。

また、不動産を渡す場合は、登録免許税や不動産取得税などの負担にも違いがあります。

「相手との合意が必要か」「負担を設けるか」「将来変更する可能性があるか」などを踏まえて、自分の希望に合った方法を選ぶことが大切です。

まとめ|負担付死因贈与をすべきかは専門家へ相談を

負担付死因贈与は、単に「特定の人に財産を残したい」という場合よりも、介護や生活支援などをしてもらうことと、死亡後に財産を渡すことを生前に双方で約束しておきたい場合に適した方法です。

一方、契約を結んだ後に受贈者が負担を履行すれば、贈与者からの撤回が制限されることがあります。また、負担の内容が曖昧であれば履行したかどうかをめぐって争いになり、不動産を渡す場合には遺贈より税負担が大きくなる可能性もあります。

そのため、負担付死因贈与を選ぶときは、「誰に何をしてもらいたいのか」「その代わりに何を渡すのか」を具体的にしたうえで、遺言や負担付遺贈など他の方法と比較することが大切です。

特に、介護など継続的な負担を設定する場合や、不動産を対象とする場合は、契約内容によって後の手続きや税負担も変わります。契約書を作成する段階から弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談し、自分の希望を実現できる方法を検討しましょう。

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高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

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